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河川工学(第6,7,8回)
河川流の一次元解析(準定流・不定流)河道の平面二次元流と氾濫流の解析
河口の水理
河川流の一次元解析(準定流・不定流)
準定流の解析1連続した降雨による洪水では,河道の近い領域に降った雨水から徐々に河道に集まる
ハイドログラフの形状は雨の降り始めから流量が徐々に増加し,雨がやんだ後,減少するような滑らかな曲線となる
洪水のピーク時付近では,流速の時間変化は非常に小さくなる流速や水深の流下方向への変化率も河床勾配に比べて無視できるような急勾配河川の洪水流となる
運動方程式に等流公式を用いた準定流あるいはキネマティックウェイブとして取り扱いすることが可能
準定流の解析2(Kinematic Wave 法)
等流(Ib=Ie )に対してマニングの式(流量表示)を用いる
準定常流では,洪水は水深や流速がゆっくりと変化するため,運動方程式左辺にある加速度項は省略される
( )eb IIgxhg
xVV
tV
−=∂∂
+∂∂
+∂∂
省略
( )eb IIg −=0be II =
等流近似
キネマティックウェイブ法が適用可能
2/13/21eIR
nAAVQ ==
準定流の解析3マニングの式(流量表示)
2/13/21bIR
nAAVQ ==
径深Rは,断面積Aの関数
粗度係数,河床勾配が一定と仮定すれば,流量Qは,Aの関数
非定常の連続式に代入
0=∂∂
+∂∂
xQ
tA 0=
∂∂
+∂∂
=∂∂
∂∂
+∂∂
xAV
tA
xA
AQ
tA
w wVAQ=
∂∂
(洪水伝播速度)
( )
kVdAdR
RAV
dAdR
RA
nIR
RdAdRAR
nI
AAR
nI
AQV
b
bbw
=
+=
+=
+=
∂∂
=∂∂
= −
1321
32
32
2/13/2
3/23/12/13/22/1
マニングの式を適用して
be II =
係数k:河道の断面形状で決まる
(広幅長方形断面で5/3)平均流速Vより大きくなる
クライツ・セドン(Kleita-Seddon)の法則
洪水波伝播速度がもし一定なら(一様断面水路など)は波の形は変わらずに下流に進行する(ハイドログラフは形を変えずに下流に進行する).
x
h
洪水波伝播のイメージ
kVdAdR
RAVVw =
+= 1
32
マニングの式を適用した洪水伝播速度
0=∂∂
+∂∂
xAV
tA
w
非定常の連続式
( )tVxfA w−=一般解(任意の関数形 f )
不定流の解析1(dynamic wave 法)
河床勾配が小さく非定常効果が無視できない場合低平地の緩流河川潮位変動などの水理条件が洪水の伝播にも影響する河口部の流れ
(加速度項を全て無視した)キネマティックウェイブ法では適用不可
運動方程式の全ての項を省略せずに解くダイナミックウェイブとして取り扱う
( )eb IIgxhg
xVV
tV
−=∂∂
+∂∂
+∂∂0=
∂∂
+∂∂
xQ
tA
非定常の連続式 運動方程式
これらの式の解析解を得るのは困難であるため,特性曲線法等の数値計算手法が用いられる
補足1:非定常流の連続式について
0=∂∂
+∂∂
xQ
tA
txtAt
tS
∆∆∂∂
=∆∂∂
QQoutlet
=x∆
xAS ∆=QQinlet =
ttA∆
∂∂
outletinlet QQttS
−=∆∂∂
txxQtx
tA
∆∆∂∂
−=∆∆∂∂
A
不定流の解析2(特性曲線法)
( )eb IIgxhg
xVV
tV
−=∂∂
+∂∂
+∂∂
0)(=
∂∂
+∂∂
xhV
th
連続式 運動方程式
特性曲線法:流水中の長波の伝播速度(V±c)で河道内を移動する観測者が流れを見たとき,そこでの水理量の間にある物理的な関係が保存されることを利用した方法
簡単のため,河道を長方形断面(幅B,水深h)の一様水路とする
不定流の基礎方程式
河道の平面二次元流と氾濫流の解析
平面2次元流:河川流や氾濫流では水深平均された平面2次元的な流
れとして解析してよい(水深方向の流れは小さく,平面的な流れが卓越している).
2 2 2
4/3
U U U gn U U VU V gt x y x h
η∂ ∂ ∂ ∂ ++ + = − −
∂ ∂ ∂ ∂
2 2 2
4/3
V V V gn V U VU V gt x y y h
η∂ ∂ ∂ ∂ ++ + = − −
∂ ∂ ∂ ∂
[ ] [ ] 0h Uh Vht x y
∂ ∂ ∂+ + =
∂ ∂ ∂
U:水深平均x方向流速 V:水深平均y方向流速 h:水深
連続の式
x方向運動方程式
y方向運動方程式
コンピューターを用いた数値解析が主流.
河道の平面二次元流解析
平面二次元流解析の例1
愛媛県西部にある大洲市肱川の湾曲部の流れ
平面二次元流解析平面二次元流解析
平面二次元流解析の例2
松山平野を流れる重信川の河口部
洪水の流れで地形が変化する様子を再現
氾濫解析1洪水時が発生すると破堤および越水が起き,堤内地に氾濫が起きる
人口や財産が集中している都市部では,甚大な被害をもたらす.
氾濫水の挙動を把握し,正確な浸水地域の予測を行うことが,避難経路・時間の確保や,氾濫被害額などの水害防止計画を行う上で重要
平面二次元流解析による洪水氾濫予測およびハザードマップの作成
氾濫解析2
氾濫予測に用いる平面二次元流解析に必要な情報(1) 破堤・越流部の形状(2) 流量・水位のハイドログラフ(3) 氾濫域内の地形や構造物(建物など)(4) 土地利用状況(道路,農地など)
これらの条件を平面次元解析モデルの中にどの様に合理的に組み込むかが重要であり,問題となっている
氾濫解析3(破堤・越流の位置や水深・幅について)
氾濫予測における破堤・越流の位置は,過去に発生した場所,狭窄部,合流点など,地形的に危険な場所に設定される.
河川の上流部など,堤防が施工されていない無堤防からの氾濫は,洪水時の水位と河床高の関係から越流時の越水深,越流幅が算定される
破堤を前提とする場合,河岸の強度特性に応じて破堤時の水位および決壊部の形状・規模などの破堤条件が決められる
氾濫解析4(破堤幅について)
破堤幅は,過去の破堤時のデータに基づいた経験式が提案されている.
( )
+
=df
dfb B
tBB
60/1 min600 ≤≤ t
min60>t
Bd は,破堤後の経過時間t(min)における破堤幅(m)Bdf は,最終の破堤幅(m)
破堤場所が合流部の場合それ以外の場合
( ) 8.310log0.2 BBbf ×=
B (河道幅)
(a) 完全越流 (b)潜り越流
氾濫解析5(破堤断面からの越流について)
破堤断面を越流した流れは,氾濫域の水位によって(a) 完全越流,(b)潜り越流の二つの形態をとる.
流量Q(m3/s)は,堰の流量公式を用いて算定される(基本的に越流幅と水深の関数となる)
(a) 完全越流
(b)潜り越流
2/3155.1 hBQ b=
21203.4 hhhBQ b −=
本間公式(経験式)
氾濫解析の例急流河川である重信川には、市街地での洪水被害を軽減、回避するため霞堤が整備されている
霞堤は急流河川に用いられる歴史的治水方式重信川に9箇所配置
井門霞堤は周辺の地盤高が開口部の計画高水位より低く、計画高水流量規模の洪水で浸水氾濫が予想
霞堤より上流で破堤した場合水を川の中へ誘引することで
下流域での氾濫被害の拡散を軽減・防止する
氾濫戻し効果遊水効果
開口部から水が逆流し住居側に流れ込むことで、下流に流れる洪水の流量を減少させる
霞堤とは・・・• 開口部を持つ不連続な二重構造型の堤防• 洪水被害の軽減・防止として二つの効果を持つ
川の流れ 川の流れ
霞堤(かすみてい)
河口の水理
潮汐と河口付近の水面形河川水が海域へ流出する河口では,河道の縦断形状や横断面が急激に増大したり,流行や密度の異なる河川水(淡水)と海水(塩水)が混合するため複雑な流れ挙動を示す.
堤防の高さや構造を設計するために必要な河口付近の水位は,潮汐による潮位変動と河川流量との関係で決まり,河川流量が一定であっても潮位の変動とともに非定常な挙動を示す.
(b)限界水位を超える流れ
(a)常流から射流へ遷移(海面の影響は無いが下流が段落ち流れとなり水面変動は大きい)
(a)高潮が生じやすい状態(閉鎖性の内湾に接続する河川に発生.海水が河道内に流入する感潮河川)
潮汐による海水の流れを潮流海水が浸入する河道区間を感潮区間と呼ぶ
河口(estuary)は潮汐の変動をうけ(感潮域),淡水と塩水が混在する複雑な領域である.逆にそれが多様な生息場を提供し生態系は豊か.
異なる密度を有する流体の流れを取り扱う必要がある.このような流れを密度流(density current)という.
平均水深
満潮位
干潮位
河川水の動き(常に上流から下流)
海水の動き
①満潮から干潮(下げ潮)では上流から下流へ
②干潮から満潮(上げ潮)では下流から上流へ
①
②
河口部では河川水と海水が混合する.
河口密度流の形態1
河口密度流の形態2
塩水(海水)
淡水(河川水)
強混合(well mixed type)
塩水
淡水
緩混合(partially mixed type)
密度大きい密度小さい
密度大きい
密度小さい
塩水(海水)淡水(河川水)
弱混合(stratified type),塩水くさび
2種類の密度の境目
密度小さい密度大きい
干満差小
干満差中
干満差大