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mono Le Creuset ●[ル・クルーゼ] SINCE1925~ VOL.70 西使14 15 調西西調ル・クルーゼの鍋といえば、一番人気は やはりオレンジのグラデーション。 この色は、同社を代表するシンボルとして カンパニーカラーにも採用されている。 鋳型に流し込む鉄を坩堝の中で ドロドロに溶かしている様子が そのカラーのイメージになったそうだ。 105 104 Photo / Le Creuset Japan Text / Teruhiko Doi (WPP)

monoENZO MARI エンツォ・マーリ エンツォ・マーリ(1932~) 109 108 mono アンティークローズ/2009年 2月に発表されたカラー。現在は 一部の店舗でのみ販売している。パウダーブルー/2010年2月

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mono

Le Creuset●[ル・クルーゼ]SINCE1925~

VOL.70

食卓の上の鍋を家族でつつく。

冬場の日本では見慣れた光景である。

一つの鍋やお皿の料理を

大人数でシェアする感覚は、

東洋では普通に受け入れられる

食文化だが、

西洋では敬遠されがちだ。

ただ、そういう文化が

全然ないわけではない。

有名なスイス料理のフォンデュや、

南フランスの家庭料理、

たとえばポトフやブイヤベースなどは

日本でも知られた料理だろう。

ちなみに、フランス料理で

鍋を使った煮込み料理が登場

したのは14〜15世紀頃のこと。

食文化という点では非常に

未開だった当時のフランスが

イタリアの調理法や

食事のスタイルを採り入れ、

フランス料理の基礎が

築かれた時代でもある。

食卓の上に鍋を乗せる感覚について、

東洋と西洋では大きな違いがある。

食文化の洗練度では自負のある

日本でも、土鍋や鉄鍋のデザインに

こだわりだしたのは最近の話だと思う。

西洋の鍋料理は、鍋のデザインが

美しくないと受け入れられない。

食欲を削がないカラフルさと

温かみのある形状を持つ

『ル・クルーゼ』の鍋は、

世界の調理器具に大きな影響を

与えた名品なのである。

ル・クルーゼの鍋といえば、一番人気はやはりオレンジのグラデーション。この色は、同社を代表するシンボルとしてカンパニーカラーにも採用されている。鋳型に流し込む鉄を坩堝の中でドロドロに溶かしている様子がそのカラーのイメージになったそうだ。

105 104

Photo / Le Creuset JapanText / Teruhiko Doi(WPP)

monoル・クルーゼの鍋が日本で人気になったのは90年代に入ってからのこと。アルミやステンレスのシルバー鍋、黒い鉄鍋が一般的だった料理用鍋の世界に鮮やかで可愛いカラーリングの鍋の登場は結構衝撃的な出来事だった。多様化した食文化もその普及に拍車をかけた。

世界でもっとも有名な

鋳物ホーロー鍋といえばル・クルーゼ。

そこに異論をはさむ人はいないはず。

特にカンパニーカラーの

オレンジ色の「ココット・ロンド」は、

創業の1925年から

生産が始まったベストセラー。

これ以上はないほど安定した形状、

食卓の上の素材感、

そして存在感は、

高品質な鋳物ホーロー鍋の

代名詞となり、

〝ル・クルーゼのあるダイニング〞の

確固たるイメージを

作り上げた存在でもある。

20世紀の西洋的な

ダイニング・デザインは、

ル・クルーゼから始まっている

と言っても過言ではないだろう。

著名なインテリアコーディネーターや

料理研究家たちがこぞって使うのは

その品質とデザインに惚れたからだ。

 

昔は日本でもホーロー製の洗面器

やコップ、広告看板などを日常的に

目にすることができた。そもそも鋳

物ホーロー(琺瑯)製品とは、鉄を

溶かして鋳型に流し込んで成型し、

そこにガラス質(ホーロー)を吹き

付けて焼成加工した製品のこと。つ

まり、土の成型物に釉薬をかけたも

のが焼き物、鉄の成型物に釉薬をか

けたものがホーローとなる。焼き物

の釉薬は長石を主成分とするが、ホ

ーローの場合はシリカと呼ばれる二

酸化ケイ素を主成分とするガラス質

となる。もちろん、ホーローの釉薬

は金属の酸化を防ぐための工夫だ。

産業革命期からある大量生産法であ

るが、特に鍋などの調理用品に関し

ては近年、料理が美味しくできると

いう理由から、その保温性や熱の周

りのよさが再評価されている。

鋳物ホーロー

鍋とは?

107 106

キッチン&ダイニングに夢を与えた

ル・クルーゼの機能とデザイン

プロダクトデザイナーが

デザインしたル・クルーゼ

Le Creuset Black ル・クルーゼ・ブラック

 

ル・クルーゼの創業は19

25年。前年に鋳物のスペシ

ャリストだったアルマン・ド

ゥザゲールと、ホーローのス

ペシャリストだったオクタ

ヴ・オーベックが出会ったこ

とがきっかけだった。彼らは

それぞれの専門的な知識を活

かして鋳物ホーロー鍋の工場

を設立した。場所は北フラン

スのサン・カンタン市郊外に

あったフレノワ・ル・グラン

村。ベルギーとの国境に近い

この辺りは古くから鉄などの

産業が栄えていた地域。フラ

るフランス語。同社のロゴマー

クは坩堝とその中で溶ける鉄

を上から見たイメージをデザ

インしたもの。創業当時から

その製法はほとんど変わらな

い。同社が軌道に乗ったのは

1935年頃から始めた積極

的な宣伝策から。当時普及が始

まったラジオを中心に製品の

良さをアピールし、その名が国

内外に知られるようになった。

 

製品としては、創業当時か

ら作られていたココット・ロン

ドを始め、1934年にはフ

タ裏の突起で機能的に調理が

可能になったデュッフを発売。

1950年代にはグリルのフ

ァーストモデルを出し、斬新

なイエローカラーで大人気を

博した。また1958年には

レイモンド・ローウィ、197

2年にはエンツォ・マーリとい

った当代きってのインダスト

リアルデザイナーに製品デザ

インを依頼。経営的にも、19

50年代にフランスだけでな

く他のヨーロッパ各国やアメ

リカなどの海外市場へ進出。

1952年にはEU外の国の

輸出が半数を占めるまで成長

した。1991年には日本支

社「ル・クルーゼ 

ジャポン」

 

この1月に発表された「ル・

クルーゼ・ブラック」は、鋳

物の基本に立ち返ったような、

ブラック仕様の新製品。実に

シンプルで飽きのこない、長

く使い込むことで愛着が深ま

るスタイルは、ダッチオーブ

ンなどの鉄鍋を想像しがちだ

が、その機能性と使いやすさ

はル・クルーゼの方が圧倒的

に優れている。これまでにレ

ストランやホテルなど一部の

流通でのみ販売していた商品

で、内側は油がなじんで味が

出るマットホーロー加工。ト

レンドやスタイルに左右され

ないシンプルなデザインは、

最近増加傾向にあるキッチン

男子を満足させる使い心地を

 

イタリア・ノヴァラ生まれ。3次元知覚と工業デザイン

を融合して独自の世界観を築いた。プロダクトデザイナー

としてだけではなく、アーティストやデザイン理論の構築

など活動は幅広い。イタリアモダンデザインを代表する巨

匠として知られる。家具を中心とした作品数もかなり多く、

日本では最近、飛騨産業との協業で杉圧縮材の家具などを

発表して話題に。

 

フランス系アメリカ人のデザイナー。パリ出身でアメリ

カで活動。口紅の先を初めて尖らせたそのデザインと、ペ

ンシルバニア鉄道の流線型の車両との共通項はあまりにも

有名。タバコのラッキーストライクのパッケージデザイン

も手がけ、そのデザイン力に感嘆した日本専売公社が戦後、

ピースのデザインを依頼した。不二家のルックチョコレー

ト外装も彼の作品。

ンスよりも先に工業化を進め

たベルギーの影響が大きく、

同時に資源が豊富な地域でも

あり、イギリスやドイツに近

接した地理的な好条件もあっ

て、この地では鉄の産業が盛

んだった。200年以上も前

から鋳物製品が伝統的に作ら

れていた地域だったのだ。

 

社名の「ル・クルーゼ」と

は〝坩堝(るつぼ)〞を意味す

が設立され、その頃から日本

国内での知名度が急速に高ま

っていった。西洋のお洒落なキ

ッチンスタイルをイメージさ

せる宣伝効果も大きかったが、

プロの料理人やスタイリスト

たちから絶大な支持があった

ことも、日本での成功の一因と

いえるのではないだろうか。

高級な鍋、という価値観を定

着させた同社の功績は大きい。

現在ではテーブルウエアをトー

タルにコーディネートできるブ

ランドとして成長し、世界60

ヵ国以上に輸出されている。

実現してくれるはず。写真の

マットブラックのココット・

ロンドで価格2万5000円

(直径18㎝)〜

さまざまなサイズと用途、そしてダイニングテーブルの上に鍋ごと出しても雰囲気がさらに良くなるル・クルーゼの製品。ホーロー独特の柔らかな形状と色合いで、その人気は不動である。

本社工場設立以来、同社は人口約3000人のフレノワ・ル・グランで鋳物ホーローウエアを製造し続けている。職人たちは親子代々という者も少なくなく、伝統技術が途絶えることがない。もちろん最新の技術導入にも積極的で、鋳物の薄さ3㎜は他社には出来ない高度な技術だ。カラーも豊富に揃っている。

コケル/1958年発表。デザイナーはレイモンド・ローウィ。インダストリアルデザインの父、とも呼ばれるローウィは機能的かつスタイリッシュなデザインをコケルに与えた。後年発表するスチュードベーカー・アヴァンティのフロントグリルを連想させるような曲線と、スタイリッシュな造形が美しい。残念ながら現在、生産・販売は終了している。

Photo / picture alliance アフロPhoto / Opale アフロ

ママ/1972年発表。エンツォ・マーリの作品を知る人は、その独自の世界観に魅了される。「ママ」は、はり取っ手が大きく、料理が不慣れなお父さんでも使いやすいガラスフタになっている「パパ」と併せて発売されている。マーリらしい点はユーモラスな形状のハンドル。全体的なバランスは素晴らしく、間違いなくマーリの代表作といえる存在だ。現在、生産・販売は終了。

レイモンド・ローウィ

RAYMOND  LOEWYレイモンド・ローウィ(1893~1986)

ENZO MARIエンツォ・マーリ(1932~)

エンツォ・マーリ

109 108

mono

アンティークローズ/2009年2月に発表されたカラー。現在は一部の店舗でのみ販売している。

パウダーブルー/2010年2月に発表された日本発カラー。現在生産・販売は終了している。

←創業者アルマン・ドゥザゲール

ル・クルーゼ製品に関するお問い合わせは●ル・クルーゼ カスタマーダイヤル☎03-3585-0198http://www.lecreuset.co.jp/

シフォンピンク/2012年9月発表された日本発のカラー。現在生産・販売は終了している。

モーヴピンク/2014年9月発表の日本発カラー。ココットロンド価格2万5000円~

ローズマリー/2010年9月発表の日本発カラー。現在は一部の店舗でのみ販売している。

マットブラック/すき焼きなどの鍋料理に最適な浅めのデザインがグッド。リゾットにもいい。価格3万7800円。

ライラックミスト/2009年1月発表の日本発カラー。現在は一部の店舗でのみ販売している。

マロニエ/2009年9月発表の日本発カラー。現在生産・販売は終了している。

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