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Kitakyushu Model 北九州モデル Waste Management 廃棄物管理 Japanese/日本語

Waste ManagementWaste Management 廃棄物管理 Japanese/日本語 1 Contents Page 用語集 2 1 はじめに 7 1.1 目的 7 1.2 持続可能な廃棄物管理方針 7 1.3 ゆりかごからゆりかごまでの概念

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Kitakyushu Model

北九州モデル

Waste Management

廃棄物管理

Japanese/日本語

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1

Contents

Page

用語集 2

1 はじめに 7

1.1 目的 7

1.2 持続可能な廃棄物管理方針 7

1.3 ゆりかごからゆりかごまでの概念 8

2 現状・政策調査 9

2.1 目的 9

2.2 現状・政策調査の実施 10

3 廃棄物管理戦略の策定 13

3.1 目的 13

3.2 政策・戦略策定 13

3.3 廃棄物の特徴分析と予測 15

3.4 目的、目標及び数値目標 16

4 戦略の構成要素 17

4.1 目的 17

4.2 意識と行動の変化 18

4.3 廃棄物の分別と保管についての対策の作成 19

4.4 廃棄物の収集と運搬についての対策の作成 24

4.5 廃棄物の積替と他の中間施設についての対策の作成28

4.6 廃棄物の資源再生についての対策の作成 31

4.7 産業エコパーク:戦略的ビジネスとしての廃棄物管理39

5 戦略の検証と計測ツール 43

5.1 目的 43

5.2 主な考慮事項 43

5.3 主な具体策 44

5.4 ステークホルダーとの協議 45

5.5 期待される効果と取り組むべき課題 45

6 調達と資金手当 46

6.1 目的 46

6.2 主な考慮事項 46

6.3 廃棄物管理インフラの調達 47

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用語集

ASPIRE A Sustainability Poverty and Infrastructure Routine

for Evaluation の略。統合的計画、モニター、評価モ

デルであり、持続可能性と貧困削減の達成度 is an

integrated planning, monitoring and evaluation model

for assessing the sustainability and poverty reduction

performance of infrastructure projects in developing

countries (http://www.oasys-

software.com/products/environmental/aspire.html).

ASTM American Society for Testing and Materials の略。 (現

在、ASTM インターナショナルとして知られている。).

AWCS Automated Waste Collection System の略。自動廃棄

物収集システム。

入札者(Bidder) 運営、サービス、供給の提供を行う事業者。

BOO Build Own Operate の略。建設、維持管理、運営。

BOT Build Operate Transfer の略。建設、運営、移転。

BOOT Build Own Operate Transfer の略。建設、維持管理、

運営、移転。

BREEAM British Research Establishment Environmental

Assessment Method の略。 持続可能な建築物に関す

る、世界有数の設計及びアセスメント方法論。

BS British Standards の略。英国規格。

C&I Waste Commercial and Industrial Waste の略。産業廃棄物。

Capex Capital expenditure の略。資本支出。

CBO Community Based Organisation の略。地域社会に拠

点を置く市民団体など。

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3

CDEW Construction, Demolition and Excavation Waste の

略。建設、取り壊し、掘削による建設廃材。

D&B Design and Build の略。設計、建設。

DBB Design Bid Build の略。設計、入札、建設。

DBFO Design Build Finance and Operate の略。設計、建設、

資金調達、運営。

DBFOT Design Build Finance Operate and Transfer の略。設

計、建設、資金調達、運営、移転。

回収施設(Dirty MRF)

分別されていない廃棄物の流れから資源回収する施

設。

※適切な表現がないため、本文中では回収施設

(MRF)と区別して記述していない

EIA Environmental Impact Assessment の略。環境影響ア

セスメント。

EPC Engineering Procurement Contractor の略。設計調達

建築事業者。

EU European Union の略。欧州連合。

FAQs Frequently Asked Questions の略。よくある質問集。

ファイナンシャルアドバイザ

ー(Financial Advisor)

資金調達に詳しい調達チームの専門家。

ガス化(Gasification) 空気の少ない環境下での熱による分解。

有害廃棄物(Hazardous

waste)

人体への健康及び環境に危険を及ぼす廃棄物

IBA Incinerator Bottom Ash の略。焼却施設で発生する主

灰。

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焼却(Incineration) 空気の多い環境下での熱による分解。有機物は主

灰、CO2 として排出される。

不活性廃棄物(Inert

waste)

物理的、化学的、生物的に重要となる変化がなく(最

終処分場において)、公害や人体への健康を害するよ

うな反応を行わない廃棄物。

日本工業規格(JIS) Japanese Industrial Standards の略。

LCA Life-cycle Assessment の略。

リーガル(法的)アドバイザ

ー(Legal Advisor)

契約法に詳しい調達チームの専門家

LSIP London Sustainable Industries Park の略。

MBT Mechanical Biological Treatment の略。機械による分

別後、生物的処理を実施。

混合されたリサイクルできる

資源(Mixed dry

recyclables)

収集された新聞、紙、段ボール、缶、プラスチック、ガ

ラス、布、木の、混合したもの

回収施設(MRF) 分別された廃棄物の流れから資源回収する施設。混

合されたリサイクルできる資源など。

MSW Municipal Solid Waste の略。家庭廃棄物やそれと同

等の廃棄物で地方自治体により回収される一般廃棄

物。例)都市の一般廃棄物。

NGO Non-Governmental Organisation の略。非政府組

織。

有害でない廃棄物(Non-

hazardous waste)

不活性及び有害でない廃棄物

Opex Operating expenditure の略。運営コスト。

有機廃棄物(Organic

waste)

食品及び生廃棄物。枯れた植物、花、草、もしくはそ

のように生物分解可能な資源。

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5

PPP or 3P Public Private Partnership の略。官民パートナーシッ

プ。

調達発注者(Procuring

entity)

作業、サービス、供給を購入する組織。

熱分解(Pyrolysis) 空気がない環境下での熱による分解

3Rs Reduce、re-use、recycle の略。削減、再利用、リサイク

ル。

RCV Refuse Collection Vehicle の略。廃棄物収集車。日本

ではパッカー車とも呼ばれる。

残渣、残りの廃棄物

(Residual waste)

再利用及びリサイクルできない廃棄物。

RWMS Resource and Waste Management Strategy の略。廃

棄物管理戦略。

SEA Strategic Environmental Assessment の略。環境戦略

アセスメント。

業務委託契約(Services

contract)

調達発注者の要求に応じてサービスを実施する契

約。サービスは、報酬に対する、産業的、商業的な内

容や、職人や専門家による実施など。

SRF Solid Recovered Fuel の略。固形再生燃料。

ステークホルダー

(Stakeholder)

提案された活動に対して影響を受ける個人、または組

織。

サプライコントラクト、供給

契約(Supply contract)

所有権移転の有無による取引形態として、物品の購

入、リース、レンタル、割賦。

テクニカルアドバイザー

(Technical Advisor)

廃棄物管理に詳しい調達チームの専門家

UK United Kingdom の略。英国。

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UNEP United Nations Environment Programme の略。国連

環境計画。

WFD (European Union) Waste Framework Directive の略。

廃棄物管理フレームワークの指針。

事業契約(Works

contract)

調達発注者の要求に応じて事業を実施する契約。事

業は通常、建築物もしくは土木工事を意味し、経済的

且つ詳細な機能の遂行を独自で実施。

WRAP Waste & Resources Action Programmeの略。廃棄物・

資源行動施策。

WRATE Waste and Resources Assessment Tool for the

Environmentの略。環境のための廃棄物・資源アセスメ

ントツール。

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1 はじめに

1.1 目的

廃棄物管理の戦略は、想定した期間(通常 5 年から 20 年)の廃棄物管理のフレームワ

ークを提供することである。このフレームワークは、廃棄物発生の最小化、分別、保管、

収集及び下記に説明する廃棄物管理の優先順位に沿って廃棄物を管理し、資源として

廃棄物の価値を高め、埋立てをなるべくしないようにする管理方法をいう。

1.2 持続可能な廃棄物管理方針

廃棄物管理の優先順位(図Ⅲ-1)とは、廃棄物の発生抑制から、再利用、再資源化(リサ

イクル)、エネルギー源としての利用及び最後の手段としての埋立ての中で、好ましいア

プローチを設定するための方針である。 これは、グローバルにも認知されたものであり、

多くの国で、持続可能な廃棄物管理を考える際の方針となる。日本では「3R 政策(循環

型社会に向けて)」が採用されており、原材料と他の資源の有効活用を通して、廃棄物

管理の上位(廃棄物の発生抑制、再利用、再資源化・リサイクル)に位置づけられる 3R

推進を目的とした循環型社会に向けたものとなっている。廃棄物管理の優先順位は、全

ヨーロッパの国々が採用している「ヨーロッパにおける廃棄物枠組み指令」にも示されて

いる。

伝統的な最終処理方法から、より統合された循環的アプローチへ、すなわち、生産と消

費において捨てられる原材料に価値を見出すということに考え方は変わってきている。

廃棄物管理の優先順位と資源循環、すなわち『ゆりかごからゆりかごまで』(墓場がない)

というアプローチを導入することにより、以下のように特徴づけられる資源廃棄物管理シ

ステムが考えられる。

原材料、収集、処理方法の多様性

1-1 北九州市における廃棄物管理の取組みの経緯

<市民意識の変化>

北九州市民が廃棄物処理に理解を示すきっかけとなったの

は、昭和 41 年(1966 年)の清掃紛争である。

市職員のストライキにより、ごみ収集、し尿収集が 2 週間ほど

停止し、路上にごみが山積みとなった。こうした経験を通じて

市民の意識が変化し、行政と共に対応策を検討していこうと

いう状況が醸成された。

<廃棄物処理の変遷>

北九州市では下記のような変遷により、処理重視型の廃棄物

管理から、リサイクルの促進、さらに循環型社会の構築へと取

り組みを進めている。

(1) 旧 5 市時代

・各戸にコンクリートのごみ箱設置/掻き出し竹篭に入れ

車の荷台に放り上げて収集

・ごみ処理施設は 1 箇所、半分は焼却、他は全て埋立て

・し尿処理施設は未整備、大部分は海洋投入と農村還元

(2) 廃棄物処理の体制づくり

・独立した清掃事業局の新設

・北九州市長期総合基本計画の策定

・高性能の焼却施設建設

・各家庭に統一的なポリ容器設置

・下水道敷設、終末処理場の整備

(3) 廃棄物処理の高度化

・ポリ袋ステーション方式での収集

・家庭ごみ収集指定袋制度

・粗大ごみ戸別収集有料化

・焼却処理施設による熱・電力の供給

・リサイクル品目別の指定袋による資源回収

・リサイクル事業とエコタウンの推進

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製品の最終処理と初期段階の設計方針の統合

持続可能な最終処理の方法を考慮した製品設計

究極の目的は、原材料資源の効率的且つ循環した管理を達成し、廃棄物を削減し、可

能な限り埋立てに持っていく廃棄物をゼロにすることである。

図Ⅲ-1: 廃棄物管理の優先順位

1.3 ゆりかごからゆりかごまでの概念

ゆりかごからゆりかごまで(循環型社会)の概念は、人間の活動による環境への悪影響を

排除する目的で、自然の資源をもっと有効に活用しようという斬新的なアプローチである。

循環する原材料やエネルギーの流れは、廃棄物の発生を抑制しようとするゆりかごから

ゆりかごまでの発想の中心となるものである。

1.3-1 循環型社会の構築について

北九州市では、循環型社会形成推進基本計画が、持続

可能な社会の実現に向け、従来の「循環型」の取組み

に「低炭素」、「自然共生」の取組みを加え、先駆的

な廃棄物行政の在り方を示す計画であることを明示。

計画の視点として、下記 3つを挙げ、具体的な取り組

みの概要を定めている。

最適な「地域循環園」の構築

低炭素社会、自然共生社会への貢献

環境国際協力・ビジネスの推進

●Reference:

<Toolkit>

・環境に関する国の法律及び北九州市の計画(J)

・有关环境的国家法律以及北九州市的规划(C)

・環境基本計画、環境基本条例、環境首都グランド・デ

ザインとの関係(J)

・环境基本规划、环境基本条例、环境首都整体规划之间

的关系(C)

・北九州市循環型社会形成推進基本計画(J)

・廃棄物管理パターンの考え方(J)

・新リサイクルシステム導入時に要求される行政側のプ

ランニングスキル(J)

<Case Study>

・ヒアリングメモ(廃棄物経緯)(J)

・年表(J)

・Domestic Waste Treatment in Kitakyushu City(E)

・普通废弃物处理(C)

発生抑制

再利用の準備

再資源化

(リサイクル)

他の再生方法

埋立て

設計や製造に使用する原材料をできるだけ少なくする。

製品寿命をより長くする。(再利用)

有害な資源の利用を少なくする。

チェック、クリーニング、修理、改装

全体の修理もしくは部品の入れ替え

廃棄物を新しい素材や製品にする、質的条件に合致す

ればコンポストも含める。

嫌気性消化、エネルギー回収を行う焼却、エネルギー

(燃料、熱、電力)を生み出すガス化及び熱分解、廃棄物

からの資源。少しでもエネルギー回収を実施。

エネルギー回収を伴わない埋立て及び焼却

●Reference

<Toolkit>

・一般廃棄物行政概論(J)

・Introduction to the municipal waste

Administration(E)

<Case Study>

・ごみ処理今昔物語(J)

・History on solid waste management(E)

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循環する資源管理経済を作っていく上で、政府の果たす役割は重要である。財政、産

業貿易、環境、エネルギー・気候変動、交通、都市計画及びその他の政府関連事項を

扱う部署に横断的に政府指針を 行き届かせることが一番良い方法である。横断的に連

携することで、以下のような資源管理経済を 作り上げる際に必要な戦略や政策について

の根本的な考え方を共有することができる。

最も重要な概念である持続可能な開発戦略

気候変動、エネルギー、炭素管理政策

生産管理

消費・生産、交通、エネルギー、水及び土地利用計画の適切な戦略

資源循環システムの構築のためには、リサイクル資源(例:金属、プラスチック、紙、電気

製品等)の流通市場が必要である。流通市場の需要促進とリサイクル・インフラ構築によ

る供給増進がポイントである。産業資源を有効活用するために、資源、エネルギー、水及

び他の副産物を交換 して、お互い利点のある企業が協力し合う可能性を確認することも

必要である。

2 現状・政策調査

2.1 目的

現状・政策調査は、都市全体の廃棄物管理戦略(RWMS)を策定する際の最初の段階で

ある。机上や他のリサーチ方法によって、情報収集する。その目的は、廃棄物管理の将

来の政策方針や戦略を 導入するために必要な現状を把握することである。更なるリサー

チと技術フィージビリティスタディにより、新しい政策提案の元になる明確な情報・データ

を作成することも可能である。この作業は、廃棄物管理コンサルタントが、市町村、県及

び国と相談しながら実施していく。

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2.2 現状・政策調査の実施

現状・政策調査は、一定期間内(例:暦年ベース、決算ベース)で行う。情報の正確性を

期すために、情報は信頼できるソース(同じような専門家からの情報や入手可能な刊行

物情報を含む) から入手すべきである。市町村、地方及び国のソースを含むことがほと

んどである。現状・政策調査は、廃棄物の流れ、例えば、建設廃材:一般廃棄物:事業系

廃棄物・産業廃棄物(それらに対応する記述)も考慮すべきである。 表Ⅲ- 1 は、このプ

ロセスで入手すべき情報のチェックリストである。この作業は、廃棄物管理の専門家、す

なわち、廃棄物に精通しているアドバイザー、行政機関の代表者によって実施する。

表Ⅲ- 1: 現状・政策調査チェックリスト

必要な情報 チェックリスト

政策と規制

現在ある廃棄物管理についての市町村、地方及び国の政策は何が

あるか

循環型経済の発展と持続可能でない廃棄物管理の防止(例えば埋

立てなど)を支援する、経済的・政策的手法は何か。これには、廃棄

物管理料金、従量制課金、埋立て税、廃棄物インフラ構築を支援す

る資本投資の補助金(例:建設、土地代、建物のリースなど)、研究

開発補助金などが含まれる。

資源と廃棄物管理において現在、目標や数値目標、指標がある

か 。これには、廃棄物生成の指標や数値目標(例:一人当たりの廃

棄物排出量など)、廃棄物管理(例:埋立てに持ち込まない廃棄物

の比率、再利用及びリサイクル比率など)、資源利用(例:製品や建

築物の中に含まれるリサイクル物の比率)などが含まれる。

既存の目標や数値目標に対しての進捗はどのようなものか、またど

のように計測したか

他の関連する政策で資源と廃棄物管理に影響を与えるものは何か

(例えば、エネルギー保全と供給、気候変動への適応と緩和、水資

●Reference:

<Case Study>

・現状・政策調査チェックリスト(北九州版)(J/E/C)

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必要な情報 チェックリスト

源と水質、環境セクターの経済及び雇用など)

コンポストやリサイクルされたセメントの骨材、主灰の利用など二次

原材料の再利用促進に関する政策や基準はあるか

政策導入を支援する既存の法令は何か

廃棄物のデータは、政府、地方自治体若しくは民間企業によって記

録され、報告されているか

管理・管轄 廃棄物管理、役割と責任、各省庁等の法の適用範囲と執行権に関

して、既存関係団体間の調整をどのようにしているか。(市町村、地

方自治体、民間企業、NGO、地域活動団体(CBOs)、インフォーマ

ルセクターなどを含む).

収集、廃棄物の管理と廃棄に関して実際に誰が責任をもって実施し

ているか

廃棄物の特徴 全ての発生源(地方自治体、民間企業や産業、建設業)からの廃棄

物発生を確認することが最も現状調査において重要なことである。

そのような情報がない場合は、特徴分析を実施する必要がある。こ

れは、物理的な廃棄物の検査と今後の戦略立案における廃棄物予

測、主要なパラメータ(水分含有量、カロリー、焼却灰の成分など)の

決定のために必要な廃棄物サンプルの化学分析などを含む。

※「廃棄物の特徴分析と予測」を参照のこと

廃棄物量の予測と経済発展への関連性確認

全ての発生源からの廃棄物の組成(例:有機廃棄物、リサイクル可

能品の含有量、残渣の量など)

廃棄物のカロリーと水分含有量

廃棄物管理と廃棄物

産業

各々のプロセスで発生する廃棄物の、現在もしくは予定されている

廃棄物管理の取り決め(分別手法、収集、運搬、中間及び最終処

理)

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必要な情報 チェックリスト

資源と廃棄物管理に関連する教育や行動施策があるか

現在の廃棄物管理施設のキャパシティと処理量はどの程度か。廃

棄物インフラの供給との間にキャパシティのギャップはあるか。(再利

用センター、リサイクルセンター、エネルギーや埋立てなども含む)

クローズドループリサイクルの仕組みの向上、環境や健康への悪影

響の削減、自然及び二次原材料の保全のために、NGO/CBOs や

民間企業、インフォーマルセクターなどと友好関係を構築できる可

能性はあるか

他地域から廃棄物を持ち込む可能性があるか

廃棄物関連の運搬やロジスティクスを支える交通インフラの適正性

廃棄物産業とそれ以外の産業における環境化促進支援のための、

原材料の流れとサプライチェーンはどのようになっているか(例え

ば、セメント窯、発電所、製鉄業での固形再生燃料の利用)

現地の廃棄物市場の構成と新規参入の機会はどのようなものがある

現在の廃棄物産業における参入企業にどのような企業があり、それ

らは市町村、地方及び国、国際のどのレベルで実施しているか

経済面・財務面 廃棄物管理のコストを賄う、既存の料金制度はあるか。それらに対

し、料金回収率が低い、またはサービスに対しての料金不払いなど

の問題はあるか。

資源と廃棄物管理における経済的背景、市場はどのようなものか。

(例:商品市場、地理的背景、リスク許容度、流通市場、地場産業な

ど)

新たな廃棄物管理施策の実行もしくは廃棄物インフラ開発を支える

資金的、財務的な制度には何があるか(例:再生エネルギーの FIT

など)

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必要な情報 チェックリスト

どのような投資インセンティブがあるか

廃棄物産業への外部援助や教訓を、二国間(JICA など)もしくは複

数国間(UN、ADB、WB など)の資金提供機関から得たか

廃棄物管理のインフラを向上させるための財務的なスキームとして

何があるか(地方債、カーボンクレジット、PPP など)

プロジェクトの背景を踏まえた持続可能な廃棄物管理の構築を、環

境的、経済的、社会的に推進するものは何か

3 廃棄物管理戦略の策定

3.1 目的

この段階の目的は、廃棄物管理戦略の目的・目標を設定することである。主要なステー

クホルダーだけでなく、戦略策定に関心のある広義のステークホルダーも相当程度巻き

込み意見聴取することが必要である。

3.2 政策・戦略策定

表Ⅲ- 2 は、戦略でカバーすべきセクションのチェックリストである。

関連する地政学、社会的・経済的状況を考慮して、持続可能な開発、エネルギー保全・

供給、気候変動の緩和・許容、大気汚染、経済開発、雇用といった他の関連する政策に

ついても触れるべきである。また、政策提案は、持続可能性と他の基準(例:費用対効果

分析)に照らして評価し、その政策提案が目的に適っているか確認し、影響を受ける広

範囲な人々や組織が戦略に関与することを促すために、公開ヒアリングを実施する。

<環境首都グランド・デザイン>

‘環境は人の生存を支えるために欠くことのできないもの’

との原点に立ち返り、「真の豊かさ」にあふれたまちを育

み、未来の世代に引き継ぐことを決意したもの。

<環境基本計画>

「環境首都グランド・デザイン」を具体化する行動計画とし

て、2007年 10月に、北九州市環境基本条例に基づき策定

されたもの。2012年度改定。

<循環型社会形成推進基本計画>

従来の「循環型」の取組みに「低炭素」、「自然共生」の取

組みを加え、先駆的な廃棄物行政のあり方を示したもの。

環境基本計画の部門別計画である。

●Reference:

<Toolkit>

・環境首都グランド・デザイン(J)

・環境首都グランド・デザイン(英):COMMITMENT OF

THE RESIDENTS OF KITAKYUSHU TO ALL PEOPLE, THE

EARTH AND FUTURE GENERATIONS(E)

・環境基本計画(J)

・北九州市一般廃棄物処理基本計画(J)

・北九州市循環型社会形成推進基本計画(J)

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14

意識・行動の変化が、あらゆるステークホルダーを巻き込むことになる廃棄物管理戦略

導入に際しての基礎となる。廃棄物管理に関心を持たせ行動変化することにモチベーシ

ョンを与えることは、廃棄物管理に関する情報や知識を社会全体に提供することによっ

てはじめて 可能となる。学校、大学、製造者、供給者、消費者及び政府機関を含むあら

ゆるコミュニティを巻き込むためには、多方面からのアプローチが必要となる。

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15

表Ⅲ- 2: 政策・戦略策定チェックリスト

要件 内容

事前作業 戦略の目的と範囲(例:地理的範囲、廃棄物の流れでどこに戦略を策定

するか)、戦略策定対象期間の設定及び政策提案の要約の作成

現状 戦略策定や更なる持続可能な都市の開発に向けて何故、変化が必要か

の検討に資するための、現状把握(例:廃棄物発生状況、構成、管理、イ

ンフラのキャパシティ)

目的、目標、指標及

び数値目標

後続の廃棄物管理施策の進捗をモニターし追跡するための定量的な指

標を用いた戦略の核となる目的、目標の設定

政策提案 政策及び実行の施策詳細

関連政策と法令 戦略に織り込まれている政策提案を実施するにあたって、現在及び予定

されている法令を参照すること。エコタウンモデルにある統合的アプロー

チを明確に打ち出すにあたって関連政策領域との関係付けを行うこと。

実行計画 時間軸を入れた、政策の実行計画

3.3 廃棄物の特徴分析と予測

3.3.1 目的

廃棄物の発生現状や流れに関する情報を収集して廃棄物の特徴を分析し予測を行う。

3.3.2 廃棄物の特徴分析と予測の実施

このタスクは、公になっている情報源の机上リサーチ、実例、統計的サンプリングや分析

施策に基づく物理的な廃棄物調査を組み合わせて実施する。さらに、代表的な廃棄物

のサンプルの化学的分析を行うことも水分構成、純ネットカロリー値、灰成分、重金属成

分、総有機炭素成分等を見極めるのに必要である。廃棄物の特徴分析は、認定標準、

3.3.2-1 廃棄物の発生予測

北九州市では、人口減少による影響を反映させるた

め、1人 1日あたり排出量の推移より将来予測を行

い、その結果に将来推計人口を乗じて総排出量を算

出。

排出量に関しては、様々な 3R施策によりその効果によ

って廃棄物量の変化があるため、それらの施策の効果

が維持される場合と効果が失われる場合の幅があるこ

とを定義し、将来予測を実施している。

●Reference

<Toolkit>

・北九州市循環型社会形成推進基本計画(J)

<Case Study>

・資源化量(J)

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ASTM D5231-92 (2008) ‘Standard Test Method for Determination of the Composition

of Unprocessed Municipal Solid Waste’ に準拠して実施する。

(http://www.astm.org/Standards/D5231.htm)

この結果は、プロジェクトに関係する典型的な廃棄物発生率(例:人口データが必要とな

るが、一人当たりの KG 廃棄物)の算定に用いられる。 このプロセスからの成果物は、廃

棄物の流れに沿った年間何万トンといった数値である。

現状の廃棄物の発生データは、提案された戦略の期間での発生予測に使われる。発生

予測は、各廃棄物管理の流れにおける廃棄物の増加を定義することである。例えば、一

般廃棄物の増加は、事業系廃棄物・産業廃棄物や建設廃材の増加傾向とは恐らく異な

る。 廃棄物の増加は、通常、経済成長と比例しているため、現状・政策調査のところで、

識別すべきものである。

廃棄物管理・サービス(例:利用状況、質、コスト)の決定及びどこを改善すべきかを洗い

出すためには、家庭及び企業調査が必要となる場合もある。この作業は、廃棄物コンサ

ルタントが、国の廃棄物コンサルタントや関連する政府部門と相談して実施していく。

3.4 目的、目標及び数値目標

3.4.1 目的

目的、目標、指標及び数値目標は、現状・政策調査で収集した情報を元にプロジェクト

ごとに作成すべきものである。

3.4.2-1 指標、目標について

北九州市では 3Rの推進、及びこれまでの削減率等を考

慮し、下記の目標を設定している。

目標、指標(2011年設定):

市民一人一日あたりの家庭ごみ量 2020年(H32)

までに、2009年(H21)度比で 7%削減

リサイクル率 2020年に 35%以上達成

一般廃棄物処理に伴い発生する CO2排出量 2020年

(H32)までに、2009年(H21)度比で 22,000t削

減(排出量 100,000t以下)

3.4.2-2 指標、目標が目的達成のための施策に十分か

北九州市で作成している循環型社会形成推進基本計画

の基本理念及び計画については、まず理念を作成し、

それに基づく定性的な計画を決定している。指標目標

は現実的に達成しうる数値を、予測に基づき設定して

いるもので、数値目標の達成をもって、定性的な計画

の達成につながる形になっている。

●Reference:

<Toolkit>

・北九州市循環型社会形成推進基本計画(J)

3.4.2-3 測定とレポートについて

北九州市では、幅広く市民に廃棄物処理の状況を知っ

てもらうため、廃棄物レポートを毎年作成し、家庭ご

みの収集量、リサイクル率、処理経費等を算定し報告

している。報告内容は、年 3回発行される環境情報誌

「かえるプレス」内で公表。

●Reference:

<Case Study>

・かえるプレス(J)

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17

3.4.2 目的、目標及び数値目標の策定

このプロセスで必要と思われることは、以下の通りである。

取り入れるべき現状の市町村、地方及び国の指標及び数値目標を確認する。 (戦略

が他の重要な政策や戦略と合致しているかを確認する。)

現状の指標や数値目標が主な目的と目標(例:背伸びしたくらいの数値目標も必要)

に合った施策を実行するのに十分であるかを確認する。

取り入れようとする現状の計測、モニター及び報告制度(例:国際的なベストプラクテ

ィス、政府要件)を確認する。

廃棄物管理の指標と数値目標が、より広範囲な都市の持続可能なフレームワークに

どう関連付けるかを考慮する。例えば、それらが他の政策目的、目標と利害が一致し

ているのか、それとも背反しているのか。

4 戦略の構成要素

4.1 目的

詳細な戦略は、セクション 3 で記述した目的、目標及び数値目標で定義された持続可

能な廃棄物管理にとって望ましいものを元に策定する。さらに、廃棄物の分別、保管、収

集、運搬、中間処理及び最終処理を含む現状の廃棄物管理のインフラに関する知見を

元に策定する。

4.2-1 北九州市の教育施策について

北九州市では、今日の環境問題を解決するためには地域

社会を構成する各主体が、知恵を持ち寄り、共に考え、

主体的に行動する「市民環境力」を発揮していくことが

求められているという観点のもと、下記のような環境教

育、普及啓発を実施。

北九州環境みらい学習システムとして環境学

習施策やエコツアーなどを整備

「分別大辞典」や環境情報誌「かえるプレ

ス」等を通し、廃棄物の減量化・資源化を推

教育委員会と連携し、「みどりのノート」を

各小学校に配布して、教育委員会と環境教育

を連携実施

企業内研修や市民センターにおけるサークル

活動、及び北九州 ESD協議会や NPO団体との

連携を通し、生涯教育としての社会人への環

境教育を推進

3R活動に積極的な個人、市民団体、学校、事

業者への表彰

収集日や分別などのルールを守っていない家

庭ごみに対して、ステッカーを貼る、収集し

ないなどの指導強化

●Reference:

<Case Study>

・北九州市小学校高学年用環境教育副読本(J)

・みどりのノート(J)

・Environmental Education in Kitakyushu(E)

・How to promote environmental education(E)

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4.2 意識と行動の変化

既述した通り、廃棄物に対する意識と行動の変化(例:廃棄物は資源なり)は、全てのス

テークホルダーを巻き込む RWMS を効率的に導入するための基本である。廃棄物の発

生の抑制、再利用及びリサイクルを推進する際の主な障害は以下の通りである。

廃棄物の問題点に対する市民の意識の欠如

リサイクル資源や廃棄物の不適切な保管スペースしか持たない貧弱に設計された

建物や公共の場

廃棄物に対する意識の醸成により、市民の態度を変化させ、廃棄物の発生や処理に対

する行動にも変化が起こる。これらは、廃棄物管理への関心を高め、時間をかけて、市

民にモチベーションを与えるような廃棄物に関する情報や知識を社会全体に提供するこ

とによって初めて可能となる。

行動を変化させるには、伝統的なマーケティングの考え方、ツール及び事例を使った長

期的なビジョンや戦略アプローチが必要である。戦略的アプローチとしては、認識してい

る問題に焦点を絞ってコミュニケーションをとることと、物理的な問題を解決する効率的な

インフラを作ることのバランスを取ることが必要である。このアプローチには、周囲に影響

を及ぼす、現地のネットワークやステークホルダーと一緒に作業し、お互いに支援し合う

ことが必要である。

持続可能な廃棄物管理への意識を向上させ、参加を促すためには、色々なコミュニケー

ションや関与の方法がとられる。

リサイクルと廃棄物収集についての簡単なガイド、及び収集日のカレンダー (北九州

市環境局 2008 年 3 月、家庭廃棄物の分別回収のガイド )

4.3.1-1 北九州市の計画の視点

北九州市では、地域社会を構成する各主体が「市民環

境力」を発揮し、環境に配慮した行動を主体的に行う

ことにより、環境負荷の抑制に努め、今後の課題であ

る「総合的・先導的な廃棄物対策の推進」及び「環境

産業拠点都市機能の充実と資源の循環利用の促進」に

対応していくこととなると考え、様々な施策を検討し

ている。

●Reference

<Toolkit>

・北九州市循環型社会形成推進基本計画(J)

4.3.1-2 他分野の目標との関連性

北九州市では環境産業拠点機能の充実を図っていくた

め、様々な事業活動において資源の循環利用の取組みを

進めている。

上下水道局による汚泥の資源化政策により、乾燥

ケーキにされた汚泥を日明工場で焼却、廃棄物発

電の熱源として利用

堆肥などの再生利用可能な有機質資材の活用によ

る持続性の高い農業生産、地産地消を推進

公共工事に伴い発生するコンクリート殻等の建設

副産物の発生抑制、再利用、適正処理への取組

み、及び「建設リサイクル資材認定制度」に基づ

くリサイクル建設資材利用を促進

また、スラバヤ(インドネシア)への技術協力では、コ

ミュニティや各家庭で実施できるコンポスト装置の普及

を実施。廃棄物の減量化のみならず、衛生状況改善にも

大きく貢献。

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学校、住民、事業者を対象とした、廃棄物の発生抑制、リサイクルの仕組みが何故重

要なのかといったよくある質問集(http://www.recyclenow.com/schools/)を含む教育

セット

廃棄物の発生抑制やリサイクルに役立つ計画について推進している住民、事業者及

びコミュニティからリサイクルチャンピオン選定

戸別訪問のように長期期間の活動や情報セットを含むメディア・文化キャンペーン

4.3 廃棄物の分別と保管についての対策の作成

4.3.1 主な考慮事項

適切な廃棄物の分別と保管に関する戦略は、埋立てではなく資源市場に回せるような再

生可能な原材料を回収できるようにすることが必要である。廃棄物の分別を考える際の

重要な要素のひとつが、コストと高品質なリサイクル資源(例:金属、紙・厚紙、高密度な

プラスチック等)販売から得られる収益である。廃棄物の分別と保管の対策として考慮す

べき要素を表 Ⅲ-3 に示す。

表 Ⅲ-3: 廃棄物の分別と保管についての対策作成に影響を与える要素

要素 考慮点

政策 持続可能な廃棄物管理方針にどのように適用するかを考える。例

えば、埋立てに回さない廃棄物の量を最大限にし(例:廃棄物の

指標を用いて推進する)、他の環境、社会、経済にメリットをもたら

す資源への転換に焦点を当てるアプローチをとっているか。

CO2 削減に関する環境問題に大きく貢献する資源の分別に

焦点を当てる。

雇用拡大に貢献する廃棄物管理インフラが必要な資源に焦

点を当てる。

4.3.1-3 北九州市の廃棄物の特性

<家庭ごみ組成>

北九州市では、厨芥類以外の廃棄物について分別収集を

進めている。下記のうち、紙類中にはリサイクル可能な

古紙(15.4pt)、プラスチック類中にはプラスチック製

容器包装(4.2pt)が含まれる。

<2009年度>

厨芥類(生ごみ) 48.2%、紙類 25.6%、プラスチック類

7.4%、金属類 0.6%、ガラス類 0.6%、その他 17.7%

<家庭ごみ量>

北九州は人口、及び一人当たりの家庭ごみ排出量が減少

傾向にあることを踏まえ、家庭ごみ量については下記の

通りに目標を設定。

2009年:506g/人/日、2015年:495g/人/日(目標)、

2020年:470g/人/日(目標)

4.3.1-4 分別品目と収集運搬の管理運営について

北九州市では、1992年まで衛生面を重視して全量焼却

処理してきたが、廃棄物管理に対する考え方の変化に

応じてその後段階的にリサイクル品目を追加。

4.3.1-5 北九州市における分別促進の施策

有料指定袋の導入

⇒当初廃棄物量削減のために導入した有料指定袋

の制度(1998年)を、更に家庭ごみとリサイクル

品目の廃棄物袋の価格に差を設け、家庭ごみ用の

袋を一番高くすることで、できるだけ分別したほ

うが経済的に得になる仕組みを提供。(料金改定

は 2006年)

監視・指導課の設置

⇒不法投棄、分別、収集日のルール違反者に対し

て指導徹底。

補助金の提供

⇒市民による自主的な活動を促すため、コミュニ

ティによる古紙回収に対して、量及び回収方法

(拠点回収・軒先回収等)に応じて補助金を提供

し、効率的な収集及び分別促進。

収集回数の調整によるコストのバランス化

⇒限られたコストの中でリサイクル品目を増やす

必要があるため、分別を行うことで家庭ごみの排

出量が減らされた分、家庭ごみ収集回数減らし

(当初週 3回→2回)、その分を増加させたリサイ

クル品目の回収に充て、コストが増加しないよう

調整。

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要素 考慮点

高収益をもたらし廃棄物管理インフラ構築に貢献する高価値

資源に焦点を当てる。

関連する政策目標によって、持続可能な廃棄物管理で取るべきア

クションは影響される。例えば、貧弱な土壌しかない国で使用する

高品質の有機廃棄物、肥料を作る際の農業、食品安全に関する

政策目標。この場合、家庭、企業及び公園から出る有機廃棄物の

発生元を明らかにすることが、汚染を減らし、生物学的処理方法で

適切な肥料供給資源とするために必要である。

廃棄物回収の際に廃棄物を出した者に対しての課金(手数料)の

政策決定例:廃棄物の品目及び量に応じた課金等

廃棄物の特徴 廃棄物の構成と廃棄物の発生の現状と予測を含む廃棄物の特徴

分析に関する情報は、現状・政策調査のところで実施済み。これ

によって、どのような資源がどれくらい現地にあるか、違った廃棄物

管理ルートが他にあるかが分かる。

管理・管轄 資源を収集・運搬する管理・管轄方法(つまり、誰が廃棄物を管理

するか。) は、提案する戦略期間を通して将来的にも変更される場

合がある。

リサイクルの運搬と廃棄物管理サービスについてどのように資金手

当てをするか。(例:適当な廃棄物料金体系、PPP 等)

市、地方自治体内に廃棄物管理に関する十分な能力と知見があ

るか。(つまり、スキル不足)

住民 市民に家庭のリサイクル資源と廃棄物を分別する自覚を持っても

らう。

建物の類型と開発密集度に応じた適切な廃棄物の分別と保管方

法。分別と保管方法によりいかに収集を容易にできるようにする

4.3.1-6 北九州市における分別の種類決定の考慮点

市民にとっての分別の分かりやすさ

⇒コスト面及び衛生面より家庭での分別が必

要となるため、市民の協力が不可欠

⇒廃棄物の分け方・出し方を解説した分別大

辞典での分かりやすい分別指導や、かえるプ

レス(環境情報誌)などによる廃棄物管理実

態の情報提供をおこない、協力を要請

リサイクル技術の確立、再生品需要の有無

⇒無駄な分別収集/リサイクルを避けるため、

リサイクルされるルート、社会システムの整

備、再生品の需要が必要

コストを含めた効率性

⇒回収された資源以上にエネルギーやコスト

がかかるものは非効率なため、分別するタイ

ミング(家庭、収集後選別など)、排出量、

収集運搬・選別にかかるコストを考慮

その他

⇒最終処分場の逼迫状況、リサイクル意識な

ど社会的な背景等を考慮

4.3.1-7 分別された廃棄物の管理施設

<一般廃棄物>

100万人都市の廃棄物量及び、メンテナンスや故障に

よる停止時にも市として安定的に処理ができることを

考慮し、北九州市では 3焼却工場(各工場 3炉)体制

としている。廃棄物自体の量は減少傾向にあるため、

将来的な増設は現在のところ計画されていない。

<回収された資源>

分別回収された資源は各エコタウン内リサイクル企業

及びその他リサイクル企業にて処理。

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要素 考慮点

か。

現状の収集・運搬 リサイクル資源と廃棄物収集の施設・インフラは、どのようなものが

あるか、また、どのようなものが必要か。(例:収集車、コミュニティ・リ

サイクル・センター、廃棄物輸送拠点)

現状の廃棄物管理インフラ

色々な廃棄物の流れと将来の廃棄物管理インフラ構築の可能性

を勘案して、現状の廃棄物のインフラはどうであるか。将来の廃棄

物管理インフラ構築の可能性については、ある特定種類の廃棄物

管理インフラ(資源の分別を更に進めて)に対する需要と、廃棄物

管理施設の採算性を取るために十分な供給資源があることのバラ

ンスを担保することが必要である。

4.3.2 主な具体策

家庭や商業施設・集会所における廃棄物の分別

全ての廃棄物の流れ、例えば、一般廃棄物、事業系廃棄物・産業廃棄物、建設廃材に

対して適切な廃棄物の分別戦略を策定する。 一般廃棄物では、少なくとも 3 つの廃棄

物の分別戦略が考えられる。 (つまり、有機廃棄物、乾燥し混合されたリサイクル可能品、

その他残渣) スペース余剰、廃棄物管理インフラの能力、資源の流通市場等この方法

論で記述するような他の要素に応じて再利用可能な資源を更に分別する ことも考えられ

る。

廃棄物管理、政策及び規制の管理・管轄方法にもよるが、行政は主に家庭から収集さ

れた廃棄物の分別方法を決定することが通常である。事業系廃棄物を出す者は、廃棄

物の種類・量に応じて分別方法を自由に選択することができる。その代わり、事業系廃

棄物を出す者は、廃棄物の分別に関する地方政策や規制に準拠することが必要である。

●Reference:

<Case Study>

・日明かんびん資源化センター/ Hiagari Recycling Center for waste cans and bottles(J/E)

・家庭ごみの分け方・出し方 <分別大辞典>(J)

・How to Divide and Put Household Garbage Out<Guide

For Separate collection>(E)

・家庭垃圾的分类方法和仍出方法<分类百科词典>(C)

4.3.1-8 市民,事業者による自主的な古紙回収

<市民>

市民が自主的に新聞や雑誌など家庭系古紙を回収す

る(資源集団回収)。行政は奨励金の支給や保管庫の

貸与等を行い、古紙のリサイクルを支援。

<事業者>

オフィスなどの事業所が自主的に新聞やコピー用紙

などの古紙を共同で回収する。行政は保管庫の貸与等

を行い、古紙のリサイクルを支援。

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物理的な発生源での廃棄物分別処理は、家庭や職場に関係なく、廃棄物を出した者が

行う。従って、適切な管理手法、教育、啓発、コミュニケーション施策を通して行動をどう

変えるかが主な課題となる。

廃棄物の保管

廃棄物コンテナを収納したり、リサイクル品・廃棄物を収集したりするためには、適切な建

物内や公共でのオープンスペースが必要である。満足なスペースがないとしばしば、廃

棄物を数種類に分別することができなくなってしまう。特に発展途上経済の低所得・中所

得階層では、よくあることである。

新築もしくは改装した建物に、適切な廃棄物の保管場所を設計するための開発者向け

指針を策定することは、地方自治体の責任である。ここには、内外の保管場所を用意し、

適当なアクセス・収集ができるようにすることも含める。

公共の場で出る廃棄物の保管についても指針が必要である。これらに代えて、多くの国

では、廃棄物とリサイクルの保管に関する設計標準が通常存在する。

廃棄物の分別、保管の具体策は、単純なビニール袋、オープン・プラスチック・コンテナ、

据付の廃棄物箱、移動可能な廃棄物箱、ユーロビン(下にキャスターが付いた小型コン

テナ)、大型容器、移動式・固定式圧縮機から地下保管コンテナや自動廃棄物収集シス

テムまで多岐に亘る。

公共の場における廃棄物の分別と収集

廃棄物は、公共の場でも発生する(例:公共・市政の建物、特に交通量の多い公道や歩

道、公園等)。外出先でのリサイクル環境の準備は、住民が住みたい、働きたいと思うよう

な好環境を提供する上で重要である。住民者、訪問者、旅行者は街を歩き回る際に、リ

サイクルを体験する良い機会となる。

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公共のリサイクル戦略は、家庭で実践しているようなリサイクル戦略と同じようにする。こ

のことにより、リサイクルを促進し、埋立てにまわす廃棄物も削減することができる。

主要なリサイクル資源(例:新聞、缶、その他廃棄物)を分別するのに役立つ各種コンテ

ナや廃棄物箱がある。 街の中心にある公園に例えば、自動的に空になる廃棄物箱 を

置くことも可能である。(参考: ストックホルムの例

http://www.envacconcept.com/the_magazine/1-11-theme-old-and-new-

pioneers/first-self-emptying-litter-bins-in-a-public-space).

4.3.3 期待される効果と取り組むべき課題

期待される効果

家庭、商業施設、コミュニティの建物内及び公共の場について最初から設計すること

により、廃棄物の保管場所を確保できる。

建物内に十分なスペースを設けることにより、リサイクル資源と廃棄物の分別が可能

となる。

地下の廃棄物保管の仕組みにより、スペースの有効活用を図る。

企業、産業、コミュニティが一体化することにより、商店、ショッピングモール、図書館

等において、色々な製品(例:電池、包装資材等)のリサイクルと引き取りを行う機会

を与える。

一般の大型廃棄物や危険廃棄物の回収サービスを提供することもできる。

取り組むべき課題

リサイクル資源や廃棄物を保管するには、現状の建物内にはスペースがない場合が

ある。

リサイクル資源と廃棄物を分別するメリットをコミュニティが理解できない。

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色々なコミュニティがあり、接触することが難しい。(例:多様なエスニックコミュニティ

が存在する都市では、言語や文化の違いに起因する)

例えば日々の生活のやりくりなど、各人には他にもっと高い優先度や必要性がある。

(つまり、スラム街)

4.4 廃棄物の収集と運搬についての対策の作成

4.4.1 主な考慮事項

収集の仕組みは廃棄物の発生源で分別された資源を別々に収集・運搬するため、廃棄

物収集と運搬についての対策は、主に廃棄物の分別・保管に適した戦略に依存する。

例えば、有機廃棄物、乾燥し混合されたリサイクル可能品、その他残渣という 3 つの廃

棄物の流れに沿った分別戦略には、これらの資源を別々に収集・運搬するということが

必要である。廃棄物収集方法は、対象となる建物の種類や開発密集度にも依存する。

廃棄物収集と運搬についての対策を作成するに当たって主に考慮すべき点を示したも

のが、表Ⅲ-4.である。

表Ⅲ- 4: 廃棄物収集と運搬についての対策作成に影響を与える要素

要素 考慮点

廃棄物の分別と保管要

廃棄物の分別と保管のために採られた戦略に必要な収集と運搬

はどうようなものか。

収集すべき廃棄物の種類は何で、量はどの程度か。

例えば、温暖な気候で発生する臭気を出さないために、収集を週

1 回以上頻繁に行うといった別の廃棄物の流れ(有機廃棄物のよ

うな)を考える必要があるか。

現状の建物に対して何か必要なサービスがあるか。(例:アクセス、

車の巡回度等について)

4.4.1-1 収集運搬における主要考慮点

北九州市では市内 3か所に焼却工場を設けており、最

終処分場も市内にあるため、電車や船を利用する必要

があるような長距離運搬は不要。

できる限り大型のパッカー車の利用、及び狭い場所に

ついては小型のパッカー車を利用する等、効率的な収

集業務を行っている。

また、ハイブリッドのパッカー車を導入し、CO2削減

に貢献。

4.4.1-2 北九州市の廃棄物収集について

北九州市では 10-20世帯に一つといった割合でごみを

収集する拠点としてのステーションを配置し、効率的

な運営を実施。ステーションの清掃、管理については

住民が行っている。

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要素 考慮点

収集場所 誰が家庭、商業、産業廃棄物の収集に対して責任を持つか。(例:

家庭廃棄物は、通常地方政府によって収集され、事業系廃棄物

は、契約している私企業によって収集される。)

どのような住宅(例 :小規模な住居、一戸建て、別荘、長屋、低層

階や高層階の構築物)にサービスを提供するか。

最も適切な収集方法は何か。(例:単純なカート、オープンパネル

バン、荷物用のローリー車、廃棄物用ローリー車、パッカー車等)

特定の廃棄物について、収集・運搬の距離を考えて、どこを収集

場所とするのがいいか。

廃棄物の輸送もしくは他の中間施設の必要があるか。

廃棄物の収集・運搬による潜在的な環境影響を低減する必要があ

るか。(例:大気汚染や交通渋滞による)

経済面・財務面 どのようにして廃棄物の収集・運搬要件に対して、資金手当てする

か。

収集の際に廃棄物を出している者に対して課金するか。例:廃棄

物の品目及び量に応じた課金等。

誰が、廃棄物収集・運搬設備の調達、運営、所有の責任者となる

か。

廃棄物の収集・運搬サービスを契約・提供する意思のある既存業

者があるか。

環境 廃棄物の収集・運搬の環境影響を低減するために、長距離に利用

できる鉄道や海上輸送が存在するか。

道路を使わない廃棄物関連の運搬手段や廃棄物から発生する

CO2 を削減するための政策目標はあるか。

鉄道や海上輸送を利用する際に必要な補助的なインフラはある

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要素 考慮点

か。

社会 廃棄物の収集・運搬について、廃棄物関連のインフォーマルセク

ターの関与状況はどうなっているか。

CBO(地域団体)や NGO を巻き込むことは可能か。

廃棄物関連のインフォーマルセクター(つまり、ウエスト・ピッカー)

をどのようにしたら公式な廃棄物管理部門に統合することができる

か。

4.4.2 主な具体策

家庭と商業ビルから出る廃棄物収集

廃棄物は、個人の住宅、居住地域、高層住宅及び雑居ビルのような住宅と商業用ビル

から収集する必要がある。例えば、住居者は、収集日に歩道の際や指定されたコミュニ

ティの保管場所にごみ入れやごみ袋をもっていくことが求められる。密集度の高い住宅

や商業ビルでは、建物の入居者や設備管理者が、リサイクル資源及び廃棄物を保管室

にもっていくのが一般的である。(参照:持続可能なビクトリア 2010。 複合ユニット構造物

における廃棄物管理のベストプラクティスへの招待 www.resourcesmart.vic.gov.au).

自動廃棄物収集システム (AWCS)も適切な収集の解決策である。これは、 廃棄物収集

拠点から空気圧で地下の連動したパイプを使って、廃棄物を送り、次の運搬に備えて圧

縮して積み荷にする仕組みである。この仕組みは、分別された廃棄物と缶に使われる。

しかしながら、この仕組みを採算に乗せるには、相当程度の導入件数と開発密集度が高

いことが必要である。

廃棄物の運搬

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27

道路を利用した運搬の場合、機械的に持ち上げて廃棄物容器を空にする特別な「廃棄

物収集車」 (RCV)を使用することが一般的である。この収集車は、収集効率を上げるた

めに廃棄物を圧縮することもできる。

更に 、オープンコンテナ、移動式圧縮機や大型容器からの収集用に容器ごと直接接続

できるトラックや可動式クレーンの付いたトラックが使われている。

ほとんどの廃棄物戦略では、ごみ袋に入った廃棄物、大型廃棄物や通常でない廃棄物

の収集に適した、特別でない収集方法が求められる。これは、パネルバンであったり、

箱型トラックであったりする。

道路を利用しないごみの運搬には、鉄道や波止場といった貨物列車や平底船に積載す

る施設が必要となる。この対策はよく使われるが、リサイクル資源と廃棄物は圧縮してコン

テナに入れ、衛生的かつ効率的に輸送できるようにしなければならない。

発展途上国における廃棄物の運搬には、人や動物がカートを押したり、オート三輪車、

三輪の自動リヤカー、トラクター、トレーラー、小型オープントラックだけでなく上述したあ

らゆる種類の車を使ったもっと単純な形の運搬を組合せることが多い。(参照: UNEP 報

告書「途上国における一般廃棄物の収集」 )

期待される効果

廃棄物の収集・運搬に関連した人々に事業機会を提供する。

廃棄物の収集・運搬に関するアプローチにより、NGO 等やインフォーマルセクターを

統合する可能性を提供する。

回収拠点と再利用・リサイクルセンターとのネットワーク化が図られる。

取り組むべき課題

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28

収集・運搬対策は、建物の設計や自動システムのようなインフラを後から導入する際

の制約に大きく影響される。既存の建物構造では、十分な保管スペースを確保したり、

望ましい収集・運搬対策を選択したりすることが難しい場合がある。 新しい建物構造

では、廃棄物の保管、収集・運搬ができるように指導する必要がある。

長距離に及ぶ廃棄物の運搬には、もっとコスト効率を上げ、環境的にもメリットのある

ように、廃棄物の輸送や他の中間施設が必要となる。

特定の環境面、社会面の影響やコストを勘案し、収集と運搬方法の組み合わせ方を

考慮しなければならないことが多い。

4.5 廃棄物の積替と他の中間施設についての対策の作成

4.5.1 主な考慮事項

廃棄物の輸送には、通常、中間施設内で運搬方法を変える(移す)作業が含まれる。こ

のプロセスの目的は、積荷効率を上げ、収集場所から遠く離れている場所への運搬に

ついて、環境への影響を軽減することである。このプロセスの例として、廃棄物収集車か

ら大型のトレーラートラックに積替えたり、車から列車や平底船に積替えたりすることなど

がある。輸送拠点のメリットを最大限にするためには、場所(ロケーション)が重要である。

廃棄物の積替えや他の中間施設についての対策作成に際して、主な考慮事項を表Ⅲ-

5 に示す。

このプロセスの最初の考慮事項は、積荷効率を上げ、 収集点から離れた場所への運搬

について、環境への影響を軽減するために、廃棄物の積替えと他の中間施設が必要で

あるかどうかである。 更に言えば、どこにどれくらいの施設が必要となるかである。廃棄

物の輸送対策には、政府機関や地方の規制当局の免許・許可が必要となる

※北九州市では市内 3か所に焼却工場を設けており、最

終処分場も市内にあるため、中継点や、電車や船を利用

する必要があるような長距離運搬は不要。

パッカー車による効率的な運搬を行っている。

4.5-1 ごみ処理の広域連携

北九州市では、周辺自治体を含めた地域全体の環境保

全・循環型社会の構築に向けて、下記の三原則に沿って

期間を定めて、他都市の一般廃棄物を広域的に受け入れ

ている。

・本市のごみ処理に支障がないこと

・本市と同等以上のリサイクル、減量努力を行うこと

・本市と一体的な地域整備に取り組む信義、信頼関係

が成り立っていること

現在、直方市、行橋市、みやこ町、遠賀・中間 1市 4町

のごみを受け入れ処理している(各市町村から処理経費

を徴収)。

4.5-2 スラバヤ市での廃棄物収集

北九州市にて協力を実施しているインドネシア・スラバ

ヤ市では、デポと呼ばれる廃棄物収集中継地点を市内約

190か所に設けている。リヤカーにて収集された廃棄物

をデポに一旦集め、有価物を分別した後、収集車にて最

終処分場に運搬されている。

北九州市の地場産業である西原商事により、このデポの

うち一か所にてリサイクル型廃棄物中間処理施設パイロ

ット事業を行い、一般廃棄物の多くを占める生ごみの分

別及びコンポスト化の取組みを実施している。

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29

表 Ⅲ-5: 廃棄物の積替と他の中間施設についての対策作成に影響を与える要素

要素 考慮点

必要性 特定の廃棄物の種類の、収集点からの運搬距離はどれくらいか。

収集頻度と運搬に使用される車の種類。

廃棄物の収集・運搬の潜在的な環境影響を低減する必要がある

か。 (例:大気汚染や交通渋滞による)

場所 必要な施設はどこにあるか。

廃棄物の積替と他の中間施設を準備するのに適当な場所はある

か。

経済面・財務面 どのようにして廃棄物の輸送に対して、資金手当てするか。

既存の車の数を増やしたり、運搬頻度を上げたりするのと比べた

場合、どれくらいのコストがかる、もしくはメリットがあるか。

誰が、設計、建設、運営及び所有者となるか。

環境 廃棄物の積替と他の中間施設を作って運営していく際に、潜在的

な環境影響を監視・管理する認可もしくは免許制度があるか。

廃棄物の収集・運搬の環境影響を低減するために、長距離用の鉄

道や海上輸送があるか。

外観と臭気の影響を考慮する。

社会 熟練者と非熟練者の雇用の可能性を考慮する。

4.5.2 主な具体策

廃棄物の積替と中間施設

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廃棄物の積替拠点には、保管と車のターンが可能な高さとスペースを持った、大きい受

入れ施設が必要である。その設備は、積替と梱包に適しているべきである。もし、他の廃

棄物処理や選別作業が実施されない場合は、機械でつかんで引き上げる以外の特別な

設備は必要ない。更なる圧縮設備は、必要になる場合とそうでない場合がある。

廃棄物の積替は、資源もしくは廃棄物の処理形態と関係してくる。 財務面で非常に良い

結果をもたらすリサイクル資源を生み出すためには、汚染を取り除き資源を更に分別し

ていく必要がある。他の廃棄物管理インフラ構築に関してこのような施設を設ける場合は、

計画や許認可の要件は、積替拠点のみの利用よりも厳しいものとなる。

4.5.3 期待される効果と取り組むべき課題

期待される効果

廃棄物の積替と他の中間施設の構築は、施設の数や規模にもよるが、相当程度の

雇用を生み出す。

河川に沿った港の再開発により、鉄道と海上輸送のインフラ利用を促進できる。

取り組むべき課題

廃棄物積替拠点を確立するためのコスト(場所の買収、計画、許認可、建設及び運

営)は、期待される効果とのバランスをよく勘案する必要がある。渋滞を減らす、温暖

化ガス排出量の削減といった要素がよく考慮されるが、財務面に直接メリットを与えな

いものもあるため、戦略的な意思決定が求められる。

廃棄物の積替と中間施設は、その目的からして、他の廃棄物処理施設群から離れた

ところにあることが通常である。全ての廃棄物処理施設について言うならば、施設の

設計や運営における環境影響を緩和することが必要であるが、他の廃棄物処理施

設から離れた場所に、廃棄物の積替と他の中間施設があることの方がもっと重要で

ある。

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4.6 廃棄物の資源再生についての対策の作成

4.6.1 主な考慮事項

資源再生の構築において考慮するべきチェックリストは以下表Ⅲ-6 の通り。

表Ⅲ-6: 資源再生の構築に影響する要因

要素 考慮点

政策、契約、規制背景 廃棄物管理インフラの構築を決める要因となる政策目標に何があ

るか。(例:埋立て処分場もしくは焼却場に持ち込む廃棄物の量を

極力ゼロにする)

どのような経済的、政策的手法が廃棄物管理インフラの構築支援

に使用されているか。

どのような種類の廃棄物管理インフラ構築が都市計画プロセスに

取り込まれているか。

廃棄物管理インフラの構築が寄与するようなより広範囲な再生目

的はあるか。

下水処理施設からの汚泥焼却などのような、廃棄物管理インフラと

他のインフラ構築の間に相乗効果はあるか。(例:廃棄物焼却施設

から食品産業への熱供給)

廃棄物管理インフラ構築を適正な費用で作れる場所があるか。

廃棄物管理インフラ構築のための、運搬・配送インフラはあるか。

規模 どのような種類及び量の廃棄物を 1 つの施設で処理しなければな

らないか。(分別処理の戦略と連携して考慮する)

採算性を取るために、他地域からの廃棄物持ち込みの必要性が

あるか。その場合、政策目標、規制、運搬・配送インフラがこれに

対して十分か。

特定の市の背景を考慮すると、より小規模なインフラの構築の方が

4.6.1-1 関連法令の概要

・資源有効利用促進法

・容器包装リサイクル法

・家電リサイクル法

・食品リサイクル法

・建設リサイクル法

・自動車リサイクル法

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要素 考慮点

適しているか。(もしくはその反対) 例えば、より大規模なほうが採

算性が取れる従来型の焼却施設が、土地の確保が難しい場合や

コストのために構築できない。(例 100,000 トン/年以上、など)

持ち込みの廃棄物管理収入(年間処理量ベース)

既存インフラ どのような既存の廃棄物管理インフラがあり、それらの実用耐用年

数はどのぐらいか。

既存のインフラは政策目標と規制要件を満たしているか。将来的

の処理能力とのギャップが発生しそうか。

どのような廃棄物管理インフラが、短期(5 年内)、中期(5-15 年

内)、長期(15 年超)に必要となってくるか。

将来的に廃棄物管理インフラを別の種類に変更する必要が生じる

ような政策の方向性や規制要件に変わる傾向はあるか。

クローズドループの構築に最も適しているインフラの種類は何か。

流通市場 市町村、県及び国、国際的なリサイクル資源の市場にはどのような

ものがあるか。

既存の流通市場は廃棄物管理プロセスから生成されたものの販売

及び取扱いをしているか。

流通市場の構築を後押しするためにどのような作業が必要となる

か。 (例:政策の変更、法令、 産業間の協力、基準と品質要件の

策定)

経済面・財務面 設計、建築、発注、検証、運営、所有において誰に責任があるか。

どのような調達手法が一番適しているか。

インフラ開発のための投資機会があるか。

現状の経済環境を鑑みて、どのような財源があるか。

再生資源の開発、生成や使用において財政的なインセンティブは

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要素 考慮点

あるか。

環境 廃棄物管理インフラの構築と運営によって発生しうる環境影響をモ

ニターするために適した免許、または許可体制はあるか

社会

(社会認識)

政治的、社会的な意識が廃棄物管理インフラの構築にどのように

影響する可能性があるか。(例:焼却施設による大気汚染及び健康

被害など、特定の処理技術に対する反対など)

計画時点でステークホルダーが与える影響はどのようなもので、ま

た廃棄物管理インフラの構築にそれがリスクとなり得るか。

熟練者と非熟練者の雇用の可能性はどのようなものがあるか。

新しい廃棄物管理インフラは健康向上に貢献するものであるか

(例:より清浄な大気と地下水の品質、不十分な廃棄物管理に伴う

疾病の回避)

4.6.2 主な具体策

3 つの主な廃棄物の流れ、すなわち一般廃棄物、産業廃棄物、建設廃材により、それぞ

れ違った種類の廃棄物を処理する必要がある。

廃棄物管理の種類は以下を含む;

不活性廃棄物

有害ではない廃棄物

有害廃棄物

主な廃棄物処理カテゴリーと技術の概要を、下記表Ⅲ-7 で示している。

4.6.2-1 北九州市での焼却処理について

100万人の人口を抱える北九州市では、3工場(各 3

炉)体制で焼却処理を実施している。

新門司工場では最終処分場が逼迫している状況を考慮

し、主灰のリサイクルが可能な灰溶融施設の設置を行っ

た。他 2工場では、ストーカ炉を採用している。

<3工場設置理由>

1 ごみ収集車両の搬送効率

北九州市は、市内の道路事情から、積載能力が 2 トンから

3 トンのごみ収集車両を採用している。1回のごみ収集時

間はおよそ 30分で、その後焼却工場に搬送する作業を 1

日 5回繰り返しながら収集作業を行っている。

この収集車両の搬送効率を考え、市内に 3箇所の焼却工

場を設置している。

2 焼却工場の設備投資

2工場体制と 3工場体制を比較した場合、2工場体制で

は、1工場が定期整備や故障で停止すると他の 1工場で

市内全域のごみを処理しなければならず、この場合に備え

て過剰の設備投資が要求される。

3工場体制で同様の場合、ごみは 2工場で処理することに

なり、余裕率のある通常の設備投資で建設を行うことがで

きる。

3 市民サービスの向上

北九州市では地元企業育成のため、一部の産廃(紙、木

材、動植物残渣、繊維など)を有料で焼却処理を行ってい

る。市内に焼却工場を 3箇所設置することにより、市民サ

ービスの向上を図っている。

焼却工場によっては下水処理場や卸売市場環境センタ

ー(ごみ収集車両基地)に隣接しており、熱や電気の

効率的な利用が可能となっているところが大きな特徴

である。

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これらは、機械選別や、生物学的もしくは焼却処理、統合処理センター、エコタウン、最

終処分場など多岐に渡る。

表Ⅲ- 7: 廃棄物処理カテゴリーと技術

廃棄物処理カテゴリー 廃棄物処理技術

機械による分別/燃料生成 資源再生設備

機械選別・生物的処理

機械選別・熱処理

生物的処理 好気性コンポスト

嫌気性消化

バイオ燃料生成

焼却処理 固形再生燃料の混焼(セメント窯、 電力会社、製鉄業)

焼却(ストーカ式、 流動床式、ロータリーキルン)

高度焼却処理 ガス化

熱分解

プラズマガス化

最終処理 焼却 (エネルギー回収なし)

不活性廃棄物の管理型最終処分

活性廃棄物の管理型最終処分(エネルギー回収無し)

有害廃棄物の管理型最終処分

統合処理センター/産業エコ

パーク

上記技術と産業における処理の組み合わせ

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機械による分別/燃料生成

乾燥し混合されたリサイクル資源は、物理的かつ機械的に、資源の特性によって分別さ

れる。これらは、形による選別(紙やカード類の分別に対しては、立体ではなく平面であ

ることなど)から、プラスチックなど赤外線検出技術に近いものを使用して電流密度で分

別することにまで幅が広がっている。また、手作業での分別については、分別場におい

て従業員がそれぞれの資源に分ける作業を行っている。これらの技術はほとんどの場合

組合せた形で使用され、資源回収施設(Materials Recovery Facility:MRF)にて資源を

分別し、再生処理工場に梱包し輸送される。

機械による分別後に残った、市場価値がない、もしくは資源として再生できない廃棄物

については、固形再生燃料にし、セメント窯、製鉄業、もしくは電力会社で燃料として混

焼される。それ以外に、固形再生燃料はエネルギー回収(電力、熱)として焼却、もしくは

高度焼却施設にて使用されることもある。

上記のような分別後に残った廃棄物についての使用用途は、組成や政策、戦略目的な

どによって多岐に渡る。例えば、高い価値を持つ素材が残されている場合は、回収施設

で資源を抜き取る作業を行うことも考えられる。また、機械選別・生物的処理(mechanical

biological treatment:MBT)は、機械選別した後、廃棄物の状態を安定化させるために生

物的処理を行うものである。

生物的処理

有機系廃棄物については土壌に対しての栄養分として利用価値を考慮できる。有機肥

料として使用できる高品質のコンポストを作成する目的として、廃棄物の生物的処理とし

ては主に好気性コンポストと嫌気性消化がある。

化学肥料に代えて有機肥料を利用することは、不毛な土壌の質を改善させるとともに、コ

ンポストの品質が高ければ収入を得ることができるという利点がある。ただし、有機廃棄

4.6.2-2 北九州市での最終処理について

北九州市では内陸部に十分な処分場を確保できないこ

とから、管理型の海面埋立て処分を行っており、長

期、安定的な廃棄物処分場の確保、及び廃棄物の適正

処分を行うという観点から最終処分場の管理を実施。

4.6.2-3 生ごみの減量化・資源化

家庭ごみの約半分を生ごみが占めているため、リデュー

スの観点から「使い切り」「食べ切り」「水切り」運動

を周知。

やむを得ず排出される生ごみについては、生ごみコンポ

スト化のノウハウを伝える講座の開催等を通じて、地域

や家庭での減量化・資源化を推進。

電気式生ごみ処理機の助成制度の活用を促進し普及率の

向上を図るとともに、できた堆肥についての利用方法を

紹介するなど、生ごみコンポストの活用策について検

討。

4.6.2-4 スラバヤ市での生ごみコンポスト化

北九州市にて協力を実施しているインドネシア・スラバ

ヤ市では、約 17,000世帯で「高倉式コンポスト」によ

る生ごみコンポスト化に取組んでいる。

また、スラバヤ市が市場ごみ(野菜くずなど)を原料に

したコンポストセンターを 17ヶ所設置している。

●Reference:

<Case Study>

・クリーンな環境のための北九州イニシアティブ(J)

・Kitakyushu Initiative for a Clean Environment

(E)

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物については発生源で分別する必要があり、適したコンテナの設置スペースが必要とな

るため、これが制約事項となる可能性もある。

好気性コンポスト

酸素がある状態でコンポストされた有機廃棄物は土壌を肥沃にすることができる。こ

れによって利用できる熱及び電力回収はできない。いくつかの利用でき実績のある

技術は以下の通り。

家庭でのコンポスト

ウィンドローコンポスト(干し草、枯葉)

エアレーティッドスタティックパイル(通気性のある環境で、山状に積み重ねたも

の)

容器内コンポスト

虫(みみず)を用いたコンポスト.

嫌気性消化

嫌気性消化は有機廃棄物を空気に触れない環境で腐敗させることにより、電力及

び熱生成に利用できるバイオガスを生成することができる。それに加え、このプロセ

スから固形及び液状のコンポストに似た副産物が生み出されるため、農業用の有機

肥料などに使用することができる。

生成されたバイオガスは更にバイオメタンに精製し、車両の燃料やガス供給網に注

入することも可能である。このように、市場には様々な技術があり、ソリューションを提

供している。

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焼却処理

機械選別を通して資源回収できなかった廃棄物については焼却され、量や塊を低減し、

エネルギー回収される。焼却処理については大型焼却施設(手法については多岐に渡

る)から、エネルギー源として利用できる合成ガスを生成する高度焼却処理(ガス化、熱

分解)など様々である。どの手法からも残灰及び炭化物が副産物として残ることとなる。

例えば、焼却施設から出る主灰については建設用骨材として利用することも可能である

が、これについては化学物質(塩素、重金属など)についての基準にもよるため、建設用

骨材としての利用については国によって様々である。

(http://aggregain.wrap.org.uk/specifier/materials/incinerator.html).

例えば、溶融された主灰を建築や道路のアスファルトに使用する場合、通常は JIS 規格

を順守することが求められる。 (JIS A 5031、JIS A 5032).

焼却施設から発生する大気汚染対策のための残渣(飛灰)は通常、有害廃棄物としてと

らえられ、有害廃棄物用に管理された埋立て処分場で処理される必要がある。

埋立て

資源回収後の残渣としての廃棄物は埋立て処分場に直接送られることもあるが、これは

もっとも好ましくない選択肢であり、他の処理方法及び回収の選択肢がない場合に用い

られるべきである。衛生埋立てを実施していない場合は、ガス回収できる衛生埋立てに

切り替える必要がある。回収したガスはその場で焼却するか、エネルギー回収を行う。

このような管理された埋立て処分場にて不活性廃棄物、有害でない廃棄物、及び有害

廃棄物を処理することは最も実績があり、また経済性のある廃棄物管理手法であり、多く

の開発途上国や新興国の課題解決につながるものである。ただし、先進国の失敗に学

び、これまでに述べてきたようなより持続可能な廃棄物管理の手法を取り入れていくこと

が必要である。

●Reference:

<Toolkit>

・焼却工場建設時に要求される行政側のプランニングス

キル(J)

・廃棄物管理マネージメントにかかる北九州市の技術力

(J)

・新門司工場建設工事工程表(J)

<Case Study>

・日明工場/HIAGARI INCINERATION FACILITY,CITY OF

KITAKYUSHU(J/E)

・日明工厂(C)

・皇后崎工場(J)

・KOGASAKI INCINERATION FACILITY(E)

・皇后崎工厂(C)

・新門司工場(J)

・SHINMOJI INCINERATION FACILITY(E)

・新门司工厂(C)

・ヒアリングメモ(焼却)(J)

●Reference:

<Toolkit>

・北九州市最終処分場建設工事スケジュール(J)

<Case Study>

・響灘西地区廃棄物処分場(J)

・HIBIKINADA-NISHI FINAL DISPOSAL SITE(E)

・北九州市の廃棄物処分場(J)

・ヒアリングメモ(最終処分)(J)

・クリーンな環境のための北九州イニシアティブ(J)

・Kitakyushu Initiative for a Clean Environment

(E)

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4.6.3 期待される効果と取り組むべき課題

期待される効果

ここに述べてきた全ての廃棄物管理技術は、統合処理センターや、もう少し大きな規

模で考えると、産業エコパークのように資源の有効活用ができるよう相互に補完し合

える企業を集積した中で、様々に組み合わせて使用される。このような統合的アプロ

ーチによる廃棄物管理は、埋立てしない廃棄物の量を最大化し、エネルギーのよう

に価値ある二次資源の再生を可能にするものである。産業エコパークについては、

セクション 4.7 の中で詳しく述べられている。

廃棄物管理インフラの構築は大幅に雇用を促進(どのような廃棄物管理技術を使用

するかによる)し、地域の技術スキルを多様化させることにつながる。

資源集約型産業の成長は、成長産業である環境製品やサービス、再生可能エネル

ギー技術や低炭素化技術に大きく貢献するものである。

高品質な有機肥料の作成は、発展途上国の中小規模の農業従事者にとってより経

済的な肥料を提供することとなり、また食物の生産や安全に役立つ。

取り組むべき課題

廃棄物管理インフラの構築(資金調達と投資、場所の確保、計画、承認、建築、運営

等)によるコストとリスクについては、他の対策を採用した場合のコスト及び関連する

政策の目標とのバランスを注意深く考慮する必要がある。多くの廃棄物管理インフラ

を経済的に実現可能とするには、長期に渡る契約や施設の運営を行う必要がある。

ただし、これにより柔軟性が妨げられ、例えば 25 年間、特定のアプローチに戦略が

縛られてしまう可能性がある。従って、処理方法及び廃棄物管理インフラ構築時には、

これらのことを踏まえて考慮することが重要である。

4.7.1-1 エコタウンとは

北九州市では地域の特性を活かした形でエコタウンを

構築し、ゼロエミッションの取組みを行い資源循環型

社会の推進を図っている。

全国 26か所ほどのエコタウンが存在しているが、多種

多様かつ大規模であることが北九州の特徴。

北九州市では、環境・リサイクル産業の振興を柱とす

る「北九州エコタウンプラン」を策定し、平成 9年

(1997年)7月に国からの承認を受け、環境保全政策

と産業振興政策を統合した独自の地域政策として、若

松区響灘地区で事業に着手。

<地域特性>

モノづくりの街:人材・技術・ノウハウの蓄

積、産業インフラ

連携・ネットワーク:公害克服で培われた市

民、企業、行政の連携

環境国際協力:アジア諸都市を中心に 20年以上

の実績

響灘地区の優位性:土地、管理型の最終処分

場、産業集積、港湾など

また、北九州方式として下記の 3点セットで総合的な

展開を実施。

教育・基礎研究:環境政策理念の確立、基礎研

究、人材育成、産学連携拠点

技術・実証研究:実証研究支援、地元企業のイ

ンキュベート

事業化:各種リサイクル事業、環境ビジネス展

開、中小・ベンチャー企業の支援

●Reference

<Case Study>

・北九州エコタウン事業の概要(J)

・北九州エコタウンの取組み(J)

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39

廃棄物管理インフラ施設は技術プロセスにもよるが 10-25 年で寿命を迎える。選択し

た技術の当初の耐用年数以上に廃棄物管理インフラの継続性が確保されるよう、メ

ンテナンス要件と長期的計画を考慮しなければならない。埋立てにおいても、年数と

共にキャパシティが縮小していくため、いずれ寿命が来る。

資源に対する市場の需給と生産量は、持ち込みの廃棄物管理収入やプラントの採

算性に影響を与える可能性がある。

4.7 産業エコパーク:戦略的ビジネスとしての廃棄物管理

4.7.1 はじめに

北九州市では、資源循環型社会の構築のため、エコタウンを導入している。これは、エネ

ルギー、水、廃棄物、資源などの保護により産業との共生を模索する上で、特徴的な取

り組みである。

北九州のアプローチはリサイクル産業の地理的な産業集積、学術研究施設の提供など

であり、このような取り組みが産学連携や事業化の支援、既存産業や事業の有効活用の

場を生み出している。

また、資源保護という観点からの環境面での利点に加え、このような取り組みは社会的、

経済的な効果を地域にもたらしている。例えば、雇用促進やコスト削減、ビジネスの競争

優位性、投資の誘致、及び結果としての環境産業分野の成長などである。 (既存産業か

らの多様化、及び連携)

この目的を達成するため、北九州エコタウンは、環境産業団地を創り出すために教育、

研究、技術及び産業化支援を実施している北九州市環境局及び環境産業振興の戦略

4.7.2-1 産官の協力体制について

北九州では行政主導でエコタウンとしてのリサイクル

事業の産業化を確立しているため、入口としての資源

回収体系構築から、出口としてのリサイクル製品の販

路支援までを幅広く行政が支援を行っている。

<資源回収体系構築(入口)>

法律・規制の強化

広域的回収ルート確立による資源回収量の確保

市内拠点回収システム:資源回収ボックス設置

<リサイクル製品の販売支援(出口)>

北九州エコプレミアム産業創造事業による環境

に配慮した製品の奨励

グリーン購入推進によるリサイクル商品購入の

促進

エコタウンセンターでの展示

●Reference

<Toolkit>

・中国におけるエコタウン導入ガイドライン(J)

・中国生态度工业园建设手册(C)

・新規リサイクル事業立地の検討ポイント(J)

・新资源再生项目立地条件探讨要点(C)

<Case Study>

・北九州エコタウン事業(J)

・Kitakyushu Eco-town Project(E)

4.7.2-2 運搬とロジスティクスについて

リサイクル資源の収集・運搬については、家庭ごみと

同様のステーション回収、商業施設などでの拠点回

収、民間による回収、市民による回収をミックスさ

せ、効率化を図っている。また、エコタウン内の企業

間については、企業の立地が近接しているため、効率

的に運搬可能。

また、北九州港が 2002年 5月に国土交通省より循環資

源を安全かつ効率的に取り扱える港としてリサイクル

ポートの指定を受け、全国のリサイクルポートと循環

資源の海上輸送ネットワークを形成している。

その他、新若戸道路や北九州貨物ターミナルを整備。

4.7.2-3 既存産業と原材料フロー

北九州市は、製鉄をはじめとする「ものづくり」企業

の街として発展してきた経緯があり、地場の技術・人

材・ノウハウをエコタウン事業に利用。

原材料のインプットとアウトプットについては、各産

業のマッピングを行い、識別している。

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に支えられている。このような取り組みは、長期間における産業区域の開発を促進し、環

境に配慮した産業や技術への貢献を指向する投資家に確信をもたらすものとなる。

4.7.2 主な考慮事項

産業共生支援の可能性に関しては、最初の現状・政策調査で確認されるものである。要

素として含まれる事項;

民間企業と公共機関のパートナーシップ、及び非営利団体等や非公式の団体など

の連携を生み出す可能性

廃棄物関連の運搬・配送を支える既存の交通機関の適正性のアセスメント

既存産業と資源循環フロー、サプライチェーンロジスティクス.

エコタウンとして地理的な産業集積を構築する場合の主要な考慮点は下記の通り。 (同

時に、現状・政策調査での情報を元にする);

既存及び可能性のある産業、原材料のインプットの要件とアウトプットの識別

既存生産インフラの改修要件

土地の取得可能性とコスト

土地利用政策と、戦略的雇用や産業ゾーンのような利用目的の指定

学術研究所に近接

原材料の十分な確保及びアウトプットの流通市場促進

物理的な資源の移動に関する運搬、配送、ロジスティクス (例: 港、コンテナターミナ

ル、鉄道・道路インフラ、ユーティリティ配送インフラ等)

企業間連携(ビジネス面、資金面)

4.7.2-4 資源の確保と二次製品市場のプロモーション

資源の量を確保し、採算性を上げる必要があるため、

ほとんどの企業が北九州市のみならず、九州一円や西

日本まで回収範囲を広げ、資源確保を実施。

二次製品については、行政主導で環境負荷が少ない商

品やサービスを奨励するエコプレミアム制度や、行政

による積極的なグリーン購入、及び市民への促進活動

等実施。

4.7.2-5 パートナーシップと資金調達について

教育・基礎研究や人材育成を進めるため、北九州学術

研究都市として一つのキャンパス内に大学や研究機関

を集め、産学連携を図っている。

ゼロエミッションをめざし、原材料として活用できる

廃棄物はエコタウン内で相互に取引を行えるよう、行

政もヒアリングを行うなどで支援。

また、エコタウン関連の補助金としては下記を準備。

国際物流特区企業集積特別補助金(企業立地に

関する補助)

北九州市資源リサイクル産業施設促進費(リサ

イクル産業施設の整備に関する補助)

環境未来技術開発助成金(研修開発に関する補

助金)

●Reference:

<Case Study>

・平成 24年度版 北九州エコプレミアム(J)

・北九州エコプレミアム事業(J)

・Kitakyushu Eco-Premium Industry Creation

Project(E)

・北九州エコタウン事業(J)

・Kitakyushu Eco-town Project(E)

・北九州生态工业园区工程(C)

・ヒアリングメモ (エコタウン)(J)

・ヒアリングメモ(環境産業推進)(J)

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41

4.7.3 主な具体策

エコタウンの構築は、既存の産業エリアをベースとするか、今後成長する可能性があり、

循環型社会達成の目的を支援するための新しい産業ゾーンの形をとるかとなる。エコタ

ウンの構築は様々な関係者の連携が必要となる。詳細は以下、表Ⅲ-8 の通り。

表 Ⅲ-8: エコタウン構築の要件

要件 説明

政策制度 エコタウンを支援するため、廃棄物管理政策制度により拡大生産者責任を促進することが重要である。

都市計画制度 運搬、配送、ロジスティックスインフラを含む産業共生及びエコタウン構築を支援する地域の計画者による都市計画フレームワークの構築。

北九州市のように、エコタウンがお互いのシナジーを生み出すような地理的な産業集積を支援するべきである。このような取り組みは、資源と製品・副産物の提供先が手近にあることで、コスト削減を可能とし、ビジネスの競争優位性をもたらす。

企業連盟 地域の企業団体を立ち上げ、全ての関係する組織を一同に集めお互いに相乗効果のある企業や産業の支援を促進する。

行政の支援 エコタウンへの新しい企業及び産業の誘致に関わる行政の支援。産業衰退率測定や、財政的・技術的な起業及び中小企業支援、スキル開発トレーニング、ナレッジマネジメント、ナレッジトランスファー。

資源配置図 エコタウン内の企業の配置図により、インプットとなる原材料、製品、副産物、廃棄物、その他資源消費(エネルギー、水など)を全て明確化する

研究開発 エコタウンに近接して学術研究機関を構築する。

これにより、産学連携によりその研究成果が、産業共生を支援することになる新しい技術と仕組みの開発につながる。

資金調達 行政及び研究機関による、高等教育機関での科学技術研究や、ナレッジマネジメント及びナレッジトランスファーに対する資金提供。

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42

要件 説明

市民参画 環境産業及びエコタウン内で製造された現地製品やサービスの促進を行うための、市民参画を図る組織の形成(例:北九州市環境局)

4.7.4 期待される効果と取り組むべき課題

期待される効果

エコタウン内における雇用創出は、エコタウン構築の社会的、経済的な動機となる。

現地の学術研究機関と連携することにより、地域の技術スキルの構築、及び新しい成長産業を支える労働力の提供を支援することとなる。

現地の産業、製品、サービスの促進を行うために、市民参画及び意識向上(学校教育や公民館などを通して)を図る。

取り組むべき課題

地域の開発政策に、環境面、社会面、経済面の政策を考慮する必要がある。

土地の取得可能性やコスト、土地計画や既存インフラの場所との矛盾がエコタウン産業集積を構築する上での制約となり得る。

エコタウン構築に際し、追加的な運搬や配送インフラ、資源の物理的移動に必要なサプライチェーンロジスティクスに、相当程度の資本的支出と運転支援が必要となる可能性がある。

リサイクル可能品及び廃棄物発生量の変動がリサイクル産業にとってインプットとなる資源の供給量の確保及び供給コストに影響を与える可能性がある。

二次製品の製造基準、及びそれら製品の品質に対する産業の許容度。

4.7.4-1 雇用創出について

雇用創出効果としては、エコタウン内で約 1,399人の

従事者。事業数としては 29事業(全国で最大規模の事

業集積)、実証研究所 57研究所、投資額は 668億円

(市 67億円、国等 120億円、民間 481億円)

※全て 2012年調べ

4.7.4-2 市民の参加と意識改革

当初、廃棄物を持ち込まないでほしいという住民の反

対もあったが、廃棄物は資源であり、地域振興施策に

なるということを説明。市民の不安感・不信感・不快

感を払しょくするため、エコタウン内の工場を全て見

学可能としている。

また、エコタウンセンターを設け、北九州エコタウン

事業を総合的に支援し、環境学習や研修・講義を実施

するための中核的支援施設として整備している。

特に不安感の強い、蛍光管、医療用具、PCB処理につ

いては事業計画段階から安全性を確認し、操業開始後

も環境管理(自主測定データの公開、エコタウン地区

環境モニタリングの実施)を行っている。

4.7.4-3 地域振興政策と、環境・社会・経済政策との

関係性

北九州市では、諸手続きの迅速化や支援を行うため、

窓口を一本化し、環境局環境未来都市推進室が対応。

環境局が産業振興に踏み込んでいるのは国内では珍し

いと思われる。

4.7.4-4 二次製品の品質に対しての意識

北九州市では前述の通りグリーン購入促進や、エコプ

レミアム産業創造事業を通して商品やサービスの表彰

などを実施し、市として奨励することで市民への理解

や興味が深まるよう促している。

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43

5 戦略の検証と計測ツール

5.1 目的

策定した戦略に対し、プロジェクト全体を通して検証し、次の段階の戦略策定を進めるこ

とが適切かどうかを確認するべきである。一般的に検証と計測は、実現可能性、環境性

能、経済性、財政的な達成度に関連付いているものであり、定量的なものとなる傾向に

ある。

5.2 主な考慮事項

戦略策定の中で定めた目的、目標、数値目標(セクション 3 参照)はプロジェクト期間を

通じて適用されるものである。戦略の実現可能性は現状・政策調査を利用しプロジェクト

の初期段階で検証されるべきであり、社会的、環境的、そして財政的な性能については、

実施項目が評価されるのと同時に検証され(適切な達成するべき目標があることを前提

とする)、詳細な財務実績については終了まで常に検証を続けることとなる。

実現可能性と環境性の検証と計測は廃棄物管理の専門家、廃棄物に精通したアドバイ

ザーや行政の代表などによって実施されるべきものである。

財務実績の検証と計測は廃棄物管理の専門家の支援の下、ファイナンシャルアドバイ

ザー、廃棄物に精通したアドバイザーや行政の代表などによって実施されるべきもので

ある。

社会的性能の検証と計測は、雇用創出、経済成長への貢献、戦略により影響を直接もし

くは間接的に受けるより広範囲なステークホルダーのメリットなど、様々な要素に関連す

るものである。これについてはより広範囲な持続可能性評価やステークホルダーとの協

議、ある特定の目的をもった経済的評価などの形式をとることもあり、廃棄物管理の専門

家の支援の下、上記分野に関連する専門家や、廃棄物に精通したアドバイザーや行政

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44

の代表などを集めて実施される。ステークホルダーとの協議については以後のセクション

に記述する。

5.3 主な具体策

廃棄物管理戦略に適用される検証と評価ツールのチェックリストは、以下表Ⅲ-9 の通り

である。

表 Ⅲ-9: 検証と測定チェックリスト

項目 検証と測定ツール

実現可能性 センシティビティ分析:廃棄物発生、廃棄物組成、人口統計、廃棄物収集効率

マルチクライテリア分析:評価基準及び重要性により明確にされた関係者の実施手法選択の比較アセスメント.

マスバランスアプローチ:エネルギーとプロセスのマスバランス計測及びプロセスフローダイアグラム

環境的性能 ライフサイクルアセスメント (LCA)

温室効果ガス計測 マスバランスアプローチ:エネルギーとプロセスのマスバランス計

環境影響評価:Environmental Impact Assessment (EIA). 戦略的環境影響評価:Strategic Environmental Assessment

(SEA).

コスト 実績に基づいた資本支出と運営コストの試算表 ライフサイクルにおける代替コスト

財政的性能 純現在価値、プロジェクト内部収益率などを確立するための割引キャッシュフローモデル

社会的性能 持続可能性評価 (ASPIRE Tool)のためのステークホルダーからの意見聴取

貧困と社会分析

能力強化とナレッジマネジメント計画

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45

項目 検証と測定ツール

再定住アクションプラン

5.4 ステークホルダーとの協議

上記に加え、全てのステークホルダーが参加して、定性的な戦略の検証を実施するべき

である。これには、規制当局、地方自治体、業界団体及び市民が含まれる。ステークホ

ルダーとの誠意ある協議は、意義ある対話集会を開ける最も早い段階において利害団

体との関係を築くことになるであろう。各ステークホルダーは異なった優先順位を持って

いるため、協議には、各々違った方法や手段のアプローチを取る必要がある。そのため、

ステークホルダーとの協議は、廃棄物関連のコミュニケーションや公開協議の専門家が

ステークホルダー毎に準備、実施、管理する必要がある。

ステークホルダーとの協議は、今後サービス提供者になる可能性のある事業者や融資

者にも対象を広め、その代表者とのワークショップ形式で行う。そこでは、市場関係者に

戦略的な提案が説明され、全般的なコメントや意見が寄せられることが期待できる。説明

会で、調達発注者がどのような重要なリスクを負っているかが明らかになる場合には、特

に市場関係者にとってメリットが大きい。従って、説明会の参加者は広く集める必要があ

るが、実施運営については廃棄物の専門家及びファシリテーションの専門家によって実

施されるべきである。

5.5 期待される効果と取り組むべき課題

期待される効果

5.4-1 関係者とのコミュニケーションについて

北九州市では、地域社会全体で持続可能な都市のモデ

ルに取り組むべきという考えのもと、地域社会を構成

する各主体がそれぞれの役割を認識し、連携・共同し

て取組みを行っていくこととし、協力を呼び掛けてい

る。

市民:ライフスタイルの見直しなどの推進

環境学習、環境保全活動への参加・協力

事業者:事業者として社会的責任を果たす

情報公開等を一層推進する

NPO等:「集団回収」等の積極的な取り組み

各主体の連携・協働のつなぎ手

環境学習、ソーシャルビジネス等の実施

行政:コーディネータとして各主体の行動促進

地域特性に応じた取り組みの実施

持続可能な取り組みの率先

5.4-2 コミュニティの形成について

北九州市では、住民主体の地域づくり・まちづくりを

推進するため、まちづくり協議会を形成し、相互情報

共有や交流などの活動拠点となる市民センターを設置

している。

協議会を構成する団体は、自治会・町内会・婦人会な

ど地域による。

5.4-3 リスクコミュニケーションについて

北九州市が住民への説明を行う際は、住民の理解と信

頼を得るため、データや施設を公開し、リスクコミュ

ニケーションを意識したできる限りの情報を提供。

例えばエコタウン設立時は、住民から「街に廃棄物

(回収資源)を持ち込むな」という反対があったが、

データ測定やモニタリング実施などを行い、またエコ

タウン内企業は全て見学ができるよう公開し、住民か

らの信頼獲得に努めている。

●Reference

<Toolkit>

・北九州市民は環境問題とどう向き合ってきたか~リス

クコミュニケーション実践の歴史(J)

・How citizens in the City of Kitakyushu have

faced environmental problems(E)

<Case Study>

・100万人のごみ戦争(J)

・ヒアリングメモ(コミュニティ)(J)

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検証と測定は政策提案及び戦略の一部として策定された実施計画が目的に即して

いるかを確認できるものである

検証と測定結果はプロセス及び後続の施策実施の意思決定を支援する

提案内容が実現可能であること、及び主な関係者の懸念点が考慮されていることが

証明される

取り組むべき課題

検証結果として望ましい、もしくは期待された結果が出なかった場合に別の選択肢を

考慮する必要がある

ステークホルダーたちの相反する期待や目標を調整し、バランスを取る必要がある

6 調達と資金手当

6.1 目的

調達の目的は、リスクの転嫁とコストに関して、可能な限り最高な取引条件のもとに好まし

い具体策を実現することである。こうした調達を実施するためには入札の形態をとる。こ

の入札は、案件の調達額や複雑性によって多くの段階で構成される。多段階の調達プ

ロセスにおいて、参加企業の数は、競争原理を維持しつつ、各段階で少しずつ減少して

いくことになる。

6.2 主な考慮事項

戦略遂行に必要なインフラやサービスの調達及び資金手当を成功させるには、特定のリ

スク課題における市場の状況と共に、起こり得るリスクを認識し理解することが必要である。

6.2-1北九州市の調達・実施に関連する取り組み、特徴

<分別>

北九州では、廃棄物減量化に向けて家庭ごみ有料指定

袋の料金改定及び資源化物の有料指定袋制度導入を実

施したが(2006年)、導入時には下記を実施

環境情報誌「かえるプレス」、ポスター掲示、

テレビ・ラジオでの CMやお知らせ

市民説明会実施(自治会や学校、企業などに出

向いて行う出前方式の説明会。累計 1300回を超

える。)

お試し袋セットの配布、及び電話での対応

ごみ出しマナーアップ運動として、ステーショ

ン 3-4か所ごとに市民ボランティアや市職員を

置き、指定袋による分別収集を指導

<収集・運搬>

北九州市では環境センター(直営)30%、環境整備協会

(外郭団体)40%、民間 30%で収集を運営実施。

今後においても、市として管理を行っていくことは変

わらないが、コストなどの条件や状況を勘案して、最

良のバランスを考慮していく。

<処理>

北九州の場合、環境局施設課が焼却施設を管理し、直

営での運営を実施。

運転部分は民間企業に委託を行っているが、地場産業

への発注を行えるよう、メンテナンスは市が実施。

(運転とメンテナンス両方を民間企業に委託してしま

うと、技術者が育たない。)

通常行政はメーカに任せてしまうことが多いため、産

業振興を重視した北九州としての特徴的な取り組みと

言える。

北九州市では、中小企業振興策として、中小企業の産

業廃棄物(指定 5品目)を一般廃棄物と共に「併せ産

廃」として受け入れを実施。処理施設計画時には、家

庭からの一般廃棄物に併せて、上記併せ産廃の量も考

慮している。

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6.3 廃棄物管理インフラの調達

多くの国や途上国では、中央政府の支援のみではインフラ整備に対する資金提供がで

きず、地方自治体はそれぞれ、税収、サービス利用料、市の財源、民間の市場からの借

り入れ等独自の資金調達源を利用している。パブリックプライベートパートナーシップ

(PPPs もしくは 3Ps) もインフラ用の資金調達源として一般的な調達ルートとなってきてい

る。(http://www.localpartnerships.org.uk; http://www.worldbank.org;

http://www.unece.org; http://www.pppportal.jp).

インフラ事業(もしくは全体請負や業務委託)の調達を始めるに前に、専門的(廃棄物管

理)、法律的、財政的な調達とリスク管理のアドバイスが行える専門家を含めたプロジェク

トリスクワークショップを開催する必要があり、このようなステークホルダーには、廃棄物に

精通したアドバイザーや行政の代表者などを含める場合もある。表Ⅲ-10 は、プライマリ

ーリスクとして一般的なインフラ構築プロジェクトに関連するリスク要素の概要と、セカンダ

リーリスクとしてプロジェクトリスクワークショップで考慮されるべき廃棄物インフラに特化し

たリスク要素を示したものである。

表Ⅲ- 10: プロジェクトリスクワークショップのチェックリスト

プライマリーリスク セカンダリーリスク

計画 計画の許可・計画場所の承認の遅延

計画の許可・計画場所の承認の却下

面倒な条件/要件

設計 契約仕様から設計への転換に関わる不履行

調達発注者による設計変更

委託業者による設計変更

外的影響による設計変更

施工 予測不可能な土地の条件

<廃棄物発電特別会計の設置>

・廃棄物発電に係る売電事業に関する事業収支を明確に

するため、1995年 7月に廃棄物発電特別会計を設置し

た。

・収入は売電に係る設備費調達のための起債(電気事業

債)と電力会社への売電収入など。

・支出は売電に係る設備の維持管理費用、薬品代、運転

管理人件費、起債の償還金など。

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プライマリーリスク セカンダリーリスク

場所へのアクセス確保の遅延

ユーティリティ使用不可能等

第三者団体からのクレーム

賠償対象事象

救済対象事象

不可抗力

不可抗力による終了

主たる契約者の業務不履行

ストライキなどの労働争議

抗議行動

運営 潜在的欠陥

調達発注者による仕様変更

救済対象事象

不可抗力

不可抗力による終了

標準以下の性能

調達発注者の業務不履行による終了

委託業者(運営委託業者)の不履行による資金の貸し手の介入

委託業者の業務不履行による終了

金融面 インフレーション

資金調達の構成の変更

保険

資金調達前後の金利リスク

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プライマリーリスク セカンダリーリスク

需要 サービスに対する需要量の変化

規制 大幅な法令の変更

特定産業に関連する法令の変更

一般的な法令の変更

税制の変更

資本コストに関する新しい法令への順守

プロジェクトリスクワークショップの成果物は、識別されたリスクを、調達発注者、委託業者

の両者に割り当てし、提示することである。これをリスクレジスターと呼んでいる。このよう

な初期のリスク割り当ては、調達発注者に特定のリスクや全体的なリスク許容度の理解を

促すものである。

インフラの調達は個々に与えられたワークパッケージ、もしくは設計調達建設(EPC 事業)

の支援によるかのどちらかによって実施されるが、どちらの手法も設計と建設には有効で

ある(インフラの運営とメンテナンスは別途調達発注者によって調整される)。

その 2 つの調達手法の主な違いは、リスク転嫁のレベルによるものである。個別のワーク

パッケージが使用される場合、調達発注者が設計とインターフェースリスクの大部分を担

い、建設管理の責任も引き受ける場合がある。一方で EPC 事業者が利用される場合は、

多くの設計、インターフェースリスクが、建設管理の責任と共に EPC 事業者に転嫁され

る。

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6.3.1 廃棄物管理サービスの調達

この中での「サービス」とは、廃棄物の収集、運営、設備のメンテナンス、運営のための設

備提供などを含んだ廃棄物管理のことを示す。供給契約のみの場合、または業務委託

契約については、通常調達発注者の予算から直接資金提供されることが多い。

供給契約が利用されるのは、調達発注者が廃棄物コンテナ等、設備のみの調達を希望

した場合である。このような契約は、調達発注者が運営の責任を担い、要求事項を正確

に特定できる場合に適している。設備の仕様は多岐にわたり、表Ⅲ-11 で示しているよう

に、比較的単純な機能のコンテナから、専門的な技術が詳細に施された車両などにまで

及ぶ。

表Ⅲ- 11: コンテナの仕様リスト例

コンテナの仕様考慮点 車両の仕様考慮点

一般的な要件

キャパシティ

建築原材料

開口部

最終加工

一般的な要件

キャパシティ

エンジンの種類

最小回転半径

乗車部の構造

廃棄物容器を持ち上げるメカニズム

高さ

圧縮率

総重量

最終加工

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供給契約による調達の決定は通常コストのみを考慮して行われるものであるが、例えば

車両メンテナンスパッケージなど他の要素が考慮される場合もある。

設備購入にあたっては、単純な資産としての購入から様々なリース契約、セール・アン

ド・リースバック(自分の所有する設備等を売却すると同時に購入者から賃借すること)の

ようなより複雑な手法まで多岐に渡る。どれを選択するかは、調達発注者がどのような資

金状況であるか、及び資産管理の方針を取っているかによるものである。

業務委託は調達発注者が第三者を通じて運営を実施したい場合に用いられる。業務委

託契約には、コンテナ、収集車などの設備が含まれるが、必要な設備の調達は通常委

託業者の責任となり、サービス仕様に含まれる。 廃棄物収集のサービス仕様はインプッ

トベースとアウトプットベースが合わさったものとなる。インプットベースは何が要件であり、

その要件をどのように達成するかというところが指定されているものである。一方、アウト

プットベースは何が要件であるかは同じく指定されているが、どのように達成するかは指

定されていない。後者については、委託業者が決めるからである。表Ⅲ-12 ではインプッ

トとアウトプットベースの要件と達成方法を特定させるための対比例を示したものである。

表Ⅲ- 12: インプットベースとアウトプットベース要件例

ベース 何を どのように

インプットベース 収集頻度 委託業者は週に 1 度、7 時

から 16 時の間に、全ての家

庭(場所)が廃棄物収集のサ

ービスを受けられるようにし

なければならない

アウトプットベース 原材料リサイクル 委託業者は収集した廃棄物

の少なくとも 50%はリサイクル

されるようにしなければなら

ない。

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ベース 何を どのように

インプットベース 実施ポイント 委託業者は下記を実施しな

ければならない;

全てのリサイクル可能な廃棄

物は・・・

全てのリサイクル不可な廃棄

物は・・・

アウトプットベース 収集周回 委託業者は年間の移動距離

及び収集車両が最低限にな

るよう収集周回を設定しなけ

ればならない。

インプット コンテナタイプ 委託業者は決められたデザ

イン及び色の頑丈なコンテ

ナを支給しなければならな

い。すべてのコンテナには

50%のリサイクル可能なマテ

リアルが含まれる。

アウトプット コンテナタイプ 委託業者は決められた色

で、提案された手法及び収

集頻度に適したデザイン及

び容量のコンテナを支給し

なければならない。すべての

コンテナには一部のリサイク

ル可能なマテリアルが含ま

れる。

調達発注者と委託業者間におけるリスク分担の取り決めにより、インプットベースの要件

(通常、調達発注者がリスクを担う)と、アウトプットベースの要件(通常、委託業者がリスク

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を担う)のバランスの状況を映し出すものとなる。例えば、調達発注者が何らかの設備に

対して特定の規定を設けたとし、それが運営実施に影響を与えるものであったとすれば、

委託業者はその決定による欠陥の責任を引き受けることに難色を示すことになる。しかし、

もし要件が、単に目的に沿った設備を提供することであって、その設備が責任を果たさ

なかった場合には、その欠陥は委託業者の責任であることを明確にすることができる。

業務委託による調達、特にアウトプットベースに偏っている場合は、提供されるサービス

の質及び価格が、対価に見合っているかどうかを評価する必要がある。調達検討プロセ

スにおいては、提案された運営実施方法を理解し評価するのに十分な時間を取るべき

である。

6.3.2 調達ルート

リスク管理のアプローチはどのような調達手段を選択したいかにより影響を受けるもので

あり、どの程度関与したいかを考慮するべきである。例えば、運営とメンテナンスは要件

に含まれるか、調達発注者がどの程度直接関与したいと考えているか、など。(インプット

に対するアウトプットについての要求)

どのような資金調達方法を取りたいか、誰が資金手当てをするかといったことも、調達手

法の選択に影響を及ぼすものである。プロジェクトファイナンスに関する独自の選択基準

を持っている貸し手の第三者機関もこれに含まれる。

表Ⅲ-13 にいくつかの一般的な調達ルートを示している。

表Ⅲ- 13: 調達ルート

ルート 説明 利点/不利な点

Design and 同一の契約者が設計及び建設の責任を負う DBB よりインターフェースリスク

6.2-2 PFI方式を活用した廃棄物処理施設

北九州市では PFI方式によりプラスチック資源センタ

ー事業を実施している。

・施設名:北九州市プラスチック資源化センター

・事業期間:2006~2021年度

・取扱品目:プラスチック製容器包装

・処理能力:60トン/日

・処理方法:選別、圧縮、梱包

・事業方式:BOO方式

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ルート 説明 利点/不利な点

Build (DB)

設計、建設

建設契約 は低い。対価に見合った価値を

総合的に評価する必要がある。

運営とメンテナンスは別の契約

形態になることが多い(第三者、

もしくは直営)。

Design Bid

Build (DBB)

設計、入札、

建設

2 つの異なった契約者が別々の契約の下、

設計と建設に対して入札及び実施を行う

重大なインターフェースリスクあ

り。設計・建設費については DB

よりコスト的に良い条件になるか

もしれない。運営とメンテナンス

は別の契約形態になることが多

い(第三者、もしくは直営)。

Design Build

and Operate

(DBO)

設計、建設、

運営

公共機関が新しいインフラ資産への資金調

達を行い、またその資産を保持する。民間企

業は、競争的且つ透明性のある入札プロセ

スを経て単一の DBO 契約を結び、当インフ

ラの設計、建設、運営を一括で行う。

設計、建設、運営(メンテナンス)

の責任を、単一の事業体に委ね

ることができる。

調達発注者はプロジェクト仕様

の中に、自らの要件を明確にし

なければならない。

調達発注者は運営収入リスクも

ある一方で、利益を伴う運営収

入確保になることもある。

Design Build

Operate and

Transfer

(DBOT)

設計、建設、

運営、移転

DBO に似ているが、リース期間終了に伴い

資産が調達発注者に移転される。

調達発注者が土地や資金など

に代表される資産を提供できる

場合に適する。

調達発注者は資産を受け取る。

(残余価格を考慮)

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ルート 説明 利点/不利な点

Design Build

Finance and

Operate

(DBFO)

設計、建設、

資金調達、

運営

財政的手法としては BOOT に似ているが、

コンセッション方式(営業権付与)よりも長期

のリース期間で運営される。リース期間の終

了時に委託業者の所有物として資産(必ずし

も建設された土地とは限らない)が残る。

Build Own Operate (BOO)とも呼ばれる。

調達発注者が土地に代表される

資産を提供できる場合に適す

る。調達発注者は資産を受ける

ことはないが、残余価値がないこ

とについては考慮するべき問題

である。

Design Build

Finance

Operate and

Transfer

(DBFOT)

設計、建設、

資金調達、

運営、移転

DBFO に似ているが、リース期間の終了時に

資産が調達発注者に移転される。

調達発注者が土地に代表される

資産を提供できる場合に適す

る。調達発注者は資産を受けら

れるが、残余価値に相当する長

期負債をかかえる可能性があ

る。

Build

Operate

Transfer

(BOT)

建設、運営、

移転

BOOT に似ているが、運営期間が通常

BOOT より短く、移転により第三者機関によ

って長期間の運営とメンテナンスが実施され

る。

調達発注者が提供する資産を

持っていない場合に適してい

る。調達発注者は資産を受け取

るが、BOOT よりも高くなる場合

がある。運営は直営で実施され

ることもある。

Build Own

Operate

Transfer

(BOOT)

建設、直営、

財政的手法として、ディベロッパーが設計及

び建設を僅かなコストもしくは無料で調達発

注者に対して提供し、一定期間運営実施し

た後に、施設が発注者に移転される。

調達発注者が提供する資産を

持っていない場合に適してい

る。調達発注者は資産を受け取

る(残余価値は財政的手法の中

で考慮)

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ルート 説明 利点/不利な点

移転 コンセッション方式の性格上、将

来の活動に制約が生じる恐れが

ある。

より詳細な調達ルートに関する情報は、下記を参照

www.businessdirectory.com.

様々な調達ルート毎のプロジェクトリスクのパターンを図 2 に示している。BOT は解説の

ために DBOT とは別に示されているが、実質的には BOT に設計(Design)要素も含まれ

る場合がある。

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図Ⅲ-2: 調達ルートのプロジェクトリスクのパターン

図 Ⅲ-2 は調達発注者が、インフラの建設とその後の運営に関する責任を、コンセッショ

ン方式を利用することによって民間企業に移すことが、一番プロジェクトリスクが低くなる

ことを示している。(つまり、一括型)

一方、調達発注者が、個々のワークパッケージを使用し、自己資金や収益の中から直接

資金手当して、インフラ調達の責任を担うことが一番プロジェクトリスクは高くなる。(つまり、

分割型)

Segregated Integrated

High Risk

Low Risk

DBB

DB

BOT

DBB with CM

DBODBOTDBFOT

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6.3.3 調達における役割

調達・実施計画に参画する様々な関係者の一般的な役割と責任は以下表Ⅲ-14 の通り

である。

表 Ⅲ-14: 役割と責任

関係者 役割と責任

調達発注者 主となる意思決定者

調達プロセスにおけるプロジェクト管理

適切な入札者の指名

契約の締結

分野の専門家 入札者への専門分野の詳細なデューデリジェンス(資産価値や想定

される収益力、リスクを詳細に調査・分析すること)

アウトプット仕様の作成

達成度管理の仕組みの作成

入札者による詳細な解決提案に対するアドバイス

詳細提案書の評価

財務の専門家 入札者への財務面でのデューデリジェンス

入札者によって提案された資金調達方法に対するアドバイス

資金調達方法の評価

支払手段の作成

法務の専門家 契約書の作成準備

法的責任に対するアドバイス

入札者によって提案された事業形態に対するアドバイス

商取引条件の評価

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