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残留性有機汚染物質 (Persistent Organic Pollutants: POPs)
1992年の国連環境会議の決議(アジェンダ21:持続可能な開発)を受けて、2001年にストックホルムでPOPsを規制する条約が採択された。
12種類の化合物が規制対象。 50カ国が締結。先進国の中で米国は締結していない。 POPsの性質:
発がん性、催奇形性、免疫毒などの毒性 物理的、化学的、生物学的に安定、難分解性 水に溶けにくく、脂肪に溶けやすい ⇒ 生体内に蓄積
長距離移動性(海洋、大気による輸送) ⇒ 地球規模の汚染
物質名 分子構造 用途 国内の規制など
DDT 有機塩素系殺虫剤 1971年 農薬登録失効 1981年 化審法第1種特定化学物質に指定
アルドリン 有機塩素系殺虫剤 1975年 農薬登録失効 1981年 化審法第1種特定化学物質に指定
ディルドリン 有機塩素系殺虫剤 1973年 農薬登録失効 1981年 化審法第1種特定化学物質に指定
エンドリン 有機塩素系殺虫剤 1976年 農薬登録失効 1981年 化審法第1種特定化学物質に指定
POPs:有機塩素系殺虫剤
POPs: PCB、ダイオキシン 物質名 分子構造 用途 国内の規制など
PCB
(ポリ塩化ビフェニル)
絶縁媒体、熱媒体、可塑剤など、非意図的にも生成
1981年 化審法第1
種特定化学物質に指定、PCB廃棄物特別処置法
PCDD
(ポリ塩化ジベンゾダイオキシン)
非意図的に生成 1999年 ダイオキシ
ン類対策特別処置法
PCDF
(ポリ塩化ジベンゾフラン)
非意図的に生成 1999年 ダイオキシ
ン類対策特別処置法
ストックホルム条約(2001)により、残留性有機汚染物質(POPs)の製造、使用、輸出入が禁止され、適正な保管、廃棄が求められている。 有機塩素系殺虫剤9種とPCB、PCDD、PCDFの12種が指定されている。
PCB、ダイオキシンと環境問題 1968年、北九州一帯でカネミ油症事件が発生。カネミ倉庫社製の米ぬか油(ライスオイル)に製造工程中に熱媒体として使用されたPCBが腐蝕したパイプの孔からもれて油に混入し、この油を食用に供した 人たちに被害が起きた。皮膚病や手足のしびれを発症。
1972年、製造、使用、廃棄が禁止(米国では1977年に禁止) ダイオキシンは米軍によるベトナムでの枯葉作戦によって毒性が広く知られるようになった(除草剤の副生成物)
ダイオキシンは青酸カリの約1万倍の致死性毒性のほかに、発がん性、催奇性などの慢性毒性、さらに内分泌かく乱作用をもつ。
PCB、ダイオキシンは熱や化学物質に対して極めて安定で環境中に長期に存在する。脂溶性があり、生体蓄積性がある。
水中では食物連鎖を通じて魚食性動物へ高濃度に濃縮・蓄積される。人体内でも肝臓、腎臓、肺、脳、母乳などの脂肪に富んだ組織に蓄積されやすい。
PCBは意図的に製造されたが、ダイオキシンは意図的に産生されたものではない。
PCBの立体構造
一般のPCB Coplanar PCB
2つのベンゼン環が同一平面上にない
2つのベンゼン環が同一平面上にある
PCBは塩素の位置や数によって毒性が大きく異なる。 コプラナーPCBはベンゼン環が同一平面上にあり、分子が安定しダイオキシンに相当する毒性を有する。
PCBの生物濃縮
湖底に沈澱している残留性汚染物質を微生物が摂取し、この微生物を動物プランクトンが摂取し、最終的にカモメではPCBが2500万倍に濃縮された。
表層海水中のPCB
世界中の表層海水に残留するPCB濃度分布。PCBは大気や海流によって世界中に拡散するだけでなく、生物濃縮により海産哺乳類に高濃度に蓄積されている。
母乳中の有機塩素系環境汚染物質の経年変化
PCBは1970年から減少傾向にあるが、ダイオキシン類は横ばい
ダイオキシンの毒性
人間が作り出した最強の毒物といわれる(サリンの数倍) 多様な毒性を持つ。致死毒性、発がん性、胸腺萎縮、脾臓萎縮、肝臓障害、内分泌障害、免疫毒性、生殖毒性
急性毒性はない 慢性毒性(遅延性致死毒性):致死量以上の投与でも即死せず(急性毒性はない)、1週間以上かけて死ぬ。甲状腺の萎縮壊死による死と推定
耐容1日摂取量(人間が一生摂取しても毒性を示さない摂取量、TDI):日本では4 pg-TEQ/kg体重、WHOでは1 pg-TEQ/kg体重を目標値
ダイオキシン類の毒性比較
半数致死量(g/kg)
10-9
10-8
10-7
10-6
10-5
10-4
ダイオキシン(2,3,7,8-TCDD)
ジベンゾフラン(2,3,7,8-TCDF)
サリン
ボツリヌス菌毒素D (細菌毒素)
パリトキシン (イソギンチャク毒)
テトロドキシン (ふぐ毒)
ムスカリン (キノコ毒)
天然物 人工物質
ダイオキシン類の毒性
最も毒性が強い2,3,7,8-TeCDDの毒性を1として他のダイオキシン類の仲間の毒性の強さを係数(毒性等価係数:TEF;Toxic Equivalency Factor)を用いて評価。通常、環境濃度はTEFと環境濃度を掛け合わせた値(毒性等量:TEQ; Toxic Equivalent )が使われる。
我が国におけるダイオキシン類の1人
1日摂取量(平成17年度)
1日のダイオキシン類摂取量の98%は食品から摂取
日本全国の排出総量と大気及び水質中のダイオキシン類濃度の推移
ダイオキシン類対策特別処置法成立
• 平成22年のダイオキシン類の排出総量として、315〜343g-TEQ/年を目標値。
• 循環型社会形成のための各種施策(循環型社会形成推進基本計画、各種リサイクル法に基づく措置、3R―発生抑制、再使用、再生利用の推進など)を通じた廃棄物の減量化などによって、廃棄物焼却施設からの排出量をさらに削減する。
土壌中のダイオキシン濃度
過去5年間の測定で土壌中のダイオキシン濃度に明確な低下傾向は見らない
⇒ 長い半減期。削減効果に時間を要する 。
高濃 度土壌は都内全域に散在
⇒ 燃焼由来の大気降下物、野焼き(焚き火)などの関与も推測される。
都内土壌のダイオキシン類濃度(TEQ)分布 (1999-2001年モニタリング結果) 土壌のダイオキシン類濃度分布
水田土壌中のダイオキシン類濃度推移
塩素系農薬(PCP製剤とCNP製剤)に不純物として含まれている主なダイオキシン類異性体は,それぞれ,OCDDと 1368-/1379-TeCDDであり,これらの異性体濃度の推移は,両製剤の出荷量(原体あたり)の推移と一致している。 ダイオキシン類の主な起源は,1960年前後は燃焼・焼却過程であるが,1960~1970年代はPCP製剤とCNP製剤である。1980年代以降は,再 び燃焼・焼却過程で生成されるダイオキシン類の割合が増加している。
九州の水田におけるダイオキシン類濃度の垂直分布
ダイオキシン類の環境放出量の変遷
焼却炉の改善や焼却条件の管理によりその生成量が劇的に抑制されている。 現在環境中に残っているダイオキシン類の多くは、1960年代から使われ始めた塩素系農薬(除草剤)やPCBに含まれていた不純物。
この現象は海外でも見られる。
日本の魚介類のダイオキシン類濃度
近海魚(スズキ、コノシロ)が高濃度汚染
これは何を意味しているのか?
イカを用いたダイオキシン類の地球規模汚染
日本近海で高濃度汚染
ダイオキシンのヒトへの悪影響最少量
影響 体内濃度 (ng/kg体重)
文献
精子数の減少 27.6 86.8
Faqi, 1998 Gray, 1997
子宮内膜症 40 Rier, 1993
学習能力低下 29-38 Schantz, 1989
遅延型過敏反応 86 Ohsako, 1999
関東地域のカワウの生息数と卵中の ダイオキシン類濃度
ダイオキシン類濃度
カワウの数
カワウの個体数とダイオキシン類濃度に負の相関がみられる
ダイオキシンの環境動態
環境保全の重要性を認識しよう!
各媒体の影響を明らかに出来る環境分析の社会的責務は大きい
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