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2-5-1-1 寿 第5章 信頼性寿命解析 5.1 製造装置の耐久性の推定(ワイブル確率紙) 狭い意味での品質管理は,製品出荷までのプロセスにおける改善ですが,一方,市場に製品が出荷された後, ユーザの手に渡ってから,どのくらいの期間,製品が故障せずに品質が保たれるのだろうかということを考え るのが信頼性解析の目的になります. 故障などのデータは,試験データ(出荷前の実験データ),フィールドデータ(出荷後の市場における故障 データ)に分けられます.ここで,信頼性データ解析によって知ろうとしているのは,得られたデータそのも のの特徴ではなく,その背後に潜む「母集団」の特徴になります.この母集団に対して適切な分布を当てはめ て,製品の寿命などを推定することになります.信頼性解析に用いられる分布には,ワイブル分布や正規分布, 指数分布,対数正規分布,極値分布などがあります. また,出荷後に得られた顧客からのデータはその素性を考慮したうえで,層別して解析することも必要にな ります. 信頼性解析は,製品を使い始めてから故障に至るまでの時間を用いて行います.従ってデータを得るために は相当のコスト,時間を要するため,一定期間,または一定数の故障が発生した時点で実験を取りやめる場合 があります.前者を定時打ち切り,後者を定数打ち切りとよびます.また複数の原因で故障した場合などは, 原因ごとに層別解析が必要となり,ある原因に関しては故障が起こらなかったが,別の原因で故障してしまい, 実験を打ち切らざるを得ない場合などをランダム打ち切りといいます. ワイブル確率紙はすべての故障時間データが得られた完全データのほか,故障しなかったデータが含まれる定 時または定数打ち切りデータなどの不完全データの解析に用いることができます.ランダム打ち切りの場合には累積 ハザード紙を用います. 問題設定 JUSE機械工業社では同時期に使い始めた同型の3台の製造装置があります.使用開始から装置の耐久性 を確認するうえで,故障した際のデータを蓄積しています.それぞれの装置は,故障したら修理を行い,また 稼働させることとしていました.調査したところ,故障原因には大きく「割れ」と「歪み」の 2 種類があり, それぞれの故障が起こるまでの稼働時間を算出しました.また,修理を行った場合には,修理後から故障する までの稼働時間を測定するものとしました. これらをもとに,製造装置の故障パターンを知り,使用開始後 10000 時間までの故障をなくすために,原因 を追及し対策を考えます. 解析手法の選択 故障時間をデータとして扱い,製品の寿命を推定するため,信頼性解析で一般的に使われるワイブル確率紙 を使って解析を行います.故障原因が2つあり,ランダム打ち切りに相当するため,累積ハザード法を使って 推定を行います. 5.1 製造装置の耐久性の推定(ワイブル確率紙)

第5章 信頼性寿命解析 - Mie Universitysns.dousoukai.eng.mie-u.ac.jp/manual/bunkatsu/_pdf/katsuyou/sw5k… · 故障時間をデータとして扱い,製品の寿命を推定するため,信頼性解析で一般的に使われるワイブル確率紙

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  • 2-5-1-1

    信頼性寿命解析

    PART

    第5章

    第5章 信頼性寿命解析

    5.1 製造装置の耐久性の推定(ワイブル確率紙)

    狭い意味での品質管理は,製品出荷までのプロセスにおける改善ですが,一方,市場に製品が出荷された後,

    ユーザの手に渡ってから,どのくらいの期間,製品が故障せずに品質が保たれるのだろうかということを考え

    るのが信頼性解析の目的になります.

    故障などのデータは,試験データ(出荷前の実験データ),フィールドデータ(出荷後の市場における故障

    データ)に分けられます.ここで,信頼性データ解析によって知ろうとしているのは,得られたデータそのも

    のの特徴ではなく,その背後に潜む「母集団」の特徴になります.この母集団に対して適切な分布を当てはめ

    て,製品の寿命などを推定することになります.信頼性解析に用いられる分布には,ワイブル分布や正規分布,

    指数分布,対数正規分布,極値分布などがあります.

    また,出荷後に得られた顧客からのデータはその素性を考慮したうえで,層別して解析することも必要にな

    ります.

    信頼性解析は,製品を使い始めてから故障に至るまでの時間を用いて行います.従ってデータを得るために

    は相当のコスト,時間を要するため,一定期間,または一定数の故障が発生した時点で実験を取りやめる場合

    があります.前者を定時打ち切り,後者を定数打ち切りとよびます.また複数の原因で故障した場合などは,

    原因ごとに層別解析が必要となり,ある原因に関しては故障が起こらなかったが,別の原因で故障してしまい,

    実験を打ち切らざるを得ない場合などをランダム打ち切りといいます.

    ワイブル確率紙はすべての故障時間データが得られた完全データのほか,故障しなかったデータが含まれる定

    時または定数打ち切りデータなどの不完全データの解析に用いることができます.ランダム打ち切りの場合には累積

    ハザード紙を用います.

    問題設定

    JUSE機械工業社では同時期に使い始めた同型の3台の製造装置があります.使用開始から装置の耐久性

    を確認するうえで,故障した際のデータを蓄積しています.それぞれの装置は,故障したら修理を行い,また

    稼働させることとしていました.調査したところ,故障原因には大きく「割れ」と「歪み」の2種類があり,

    それぞれの故障が起こるまでの稼働時間を算出しました.また,修理を行った場合には,修理後から故障する

    までの稼働時間を測定するものとしました.

    これらをもとに,製造装置の故障パターンを知り,使用開始後10000時間までの故障をなくすために,原因

    を追及し対策を考えます.

    解析手法の選択

    故障時間をデータとして扱い,製品の寿命を推定するため,信頼性解析で一般的に使われるワイブル確率紙

    を使って解析を行います.故障原因が2つあり,ランダム打ち切りに相当するため,累積ハザード法を使って

    推定を行います.

    5.1 製造装置の耐久性の推定(ワイブル確率紙)

  • 2-5-1-2

    関連手法の説明(概要)

    ①ワイブル確率紙とは 信頼度とは,ある時刻に対象となる製品が正常に稼働している確率です.逆にある時刻までに故障が発生する確

    率を不信頼度といいます.ワイブル確率紙は,縦軸が不信頼度F(t)あるいはH(t),横軸に時間 tをとり,観測によって

    得られた故障時間を横軸の値とし,データを昇順に並べたときの順位から求められる不信頼度の推定値を縦軸の値

    としてプロットします.ここで,仮定が正しければ,直線状にプロットが並ぶことが確認できます.

    本事例の解析ストーリ

    使用する StatWorksの主な機能

    ① データファイルの読み込み

    ② ワイブル確率紙による解析を選択 ([手法選択]-[信頼性解析]-[確率紙])

    ③ ワイブル確率紙の直線の当てはめを確認 (ワイブル確率紙)

    ④ モード別,パラメータの推定 (パラメータ)

    ⑤ 予測(予測)

    データ収集 データ表

    本課題を解決するために,故障データを入手し,稼働時間(h),故障モード

    を記入したデータ表を作成しました.故障数は8個で,故障時間順に並べてみ

    ると,使用開始5600時間までに初期故障として「割れ」4件,その後,「歪

    み」が4件発生しているのがわかりました.

    稼働時間 故障モード

    660 割れ

    1500 割れ

    2700 割れ

    3400 歪み

    3800 割れ

    4200 正常打切

    4400 歪み

    4700 歪み

    5200 正常打切

    5600 歪み

    当てはめの妥当性を確認

    ②ワイブル確率紙の直線の

    ータの推定

    ③故障モードによるパラメ

    ④予測

    ①問題の設定とデータ収集

    解析

    タ推定による改善策の検討

    ⑨故障モード解析,パラメー

    対策の検討

    5.1 製造装置の耐久性の推定(ワイブル確率紙)

  • 2-5-1-3

    信頼性寿命解析

    PART

    第5章

    データを入力する場合は,「稼働時間」と「故障モード」の変数を作成します.故障モードは「質的変数」

    とし,「正常打切」の故障モードは必ずカテゴリ番号を1とします.それ以外の故障モードは任意のカテゴリ

    番号を割り振ります.ここでは「割れ」は2,「歪み」は3として入力します.ワークシート上で最初にカテ

    ゴリ番号を入力し,入力したカテゴリ番号のセルをダブルクリックするとカテゴリ名の設定ダイアログが表示

    されますので,そこでカテゴリ名を入力して下さい.カテゴリ名設定後,「質的データの表示形式」を「文字」

    に変更するとカテゴリ名がワークシート上に表示されます.

    StatWorksへのデータ入力

    5.1.1 ワイブル確率紙

    手順1 データを入力します.

    サンプルデータを読み込みます.

    手順2 メニューから[手法選択]-[信頼性解析]-[確率紙]

    を選択します.

    5.1 製造装置の耐久性の推定(ワイブル確率紙)

  • 2-5-1-4

    手順3 「変数指定」ダイアログが表示

    されます.

    データタイプの選択で,「特性

    値層別型或は特性値故障モード

    型」を選択します.

    解析で使用する変数の指定で

    「故障時間」を選択し,特性値(故

    障時間等)の「選択」ボタンをク

    リックします.続いて,「故障モ

    ード」を選択し,故障モードの「選

    択」ボタンをクリックします.最

    後に,[次へ進む]ボタンをクリ

    ックします.

    5.1 製造装置の耐久性の推定(ワイブル確率紙)

  • 2-5-1-5

    信頼性寿命解析

    PART

    第5章

    手順4 「属性の指定」ダイアログが

    表示されます.

    内容を確認して,[次へ]ボ

    タンをクリックします.

    手順5 「確率紙選択」ダイアログが表示されます.

    ここでは,事前に分布が仮定されていないので,種々の

    分布に対応できる[ワイブル確率紙]を選択します.

    信頼性解析ではワイブル分布を仮定することが一般的です.これはワイブル分布が多くの

    特徴を包含するような高い表現力を持つためです.実際,信頼性解析において,ワイブル確

    率紙上のプロットが直線化しないことは稀です.

    各確率紙の特徴は以下のようになります.

    ■ワイブル確率紙

    初期故障型,偶発故障型,摩耗故障型の全ての故障率のパターンを表現できるという点で

    信頼性解析向きの確率紙といえます.通常,分布が想定されていない場合はワイブル分布

    を指定します.

    ■正規確率紙

    時間の経過に従って故障率が増加する摩耗型の故障に使用します.

    ■対数正規確率紙

    確率変数の対数をとったものが正規分布に従う分布を対数正規分布といい,正規分布とは

    異なり,確率変数が負の値をとらないなど,信頼性を表す分布として適当なことも多いです

    が,故障率関数が特定の傾向を示さないなど,取り扱いが難しい部分もあります.

    ■極値確率紙

    例えば鉄板の腐食を考えた際,その厚さを腐食が貫いた場合に故障とみなします.鉄板

    に対して一定面積での領域での最大腐食値をデータとして収集し,時間に対して鉄板全体

    での最大腐食量を推定するような場合に用います.

    5.1 製造装置の耐久性の推定(ワイブル確率紙)

  • 2-5-1-6

    手順6

    「割れ」と「歪み」の「ワイブル

    確率紙」が表示されます.

    それぞれ,直線上にプロットされており,ワイブル分布に当てはまっているのがわかります.ただし,故

    障モードによって故障パターンが異なっています.

    「割れ」は使用後 660時間から故障が発生しているのに対し,「歪み」はある時期から急に故障が発生し

    ていることがわかります.

    ワイブル確率紙に直線をあてはめることは容易ですが,精度よく分布のパラメータを求め

    るためには以下の注意が必要です.

    1) 初期に見られる不具合があらかじめ除かれている場合には,位置パラメータγの推定と

    「ずらし」の処理を必要とすることがあります.また故障モードが異なっていたり,使用環

    境が異なっていたりするような,異なる母集団のデータが混在していないか注意が必要

    です.

    2) 少数データではデータごとの変動の影響を受けやすく,概ね,20個以下のデータは,本

    来は正しくワイブル分布に従っている場合であっても,往々にして曲がって打点されま

    す.

    3) フィールドデータ(製品出荷後の市場データ)は,製品出荷後の初期の時点ではF(t)の値

    が小さい領域のデータしか得られません.このようなデータに分布を当てはめても,真

    のパラメータの値が推定できるわけではありません.直線になるかならないかよりも,初

    期不良の内容に着目し,過去の技術的な蓄積から判断することが必要です.

    5.1 製造装置の耐久性の推定(ワイブル確率紙)

  • 2-5-1-7

    信頼性寿命解析

    PART

    第5章

    手順7

    次にそれぞれの故障モードのパラ

    メータを確認しましょう.画面上側

    のツールボタン[パラメータ]をク

    リックします.

    「パラメータ一覧」が表示されま

    す.

    それぞれの記号の意味は以下のとおりです.

    記号 意味

    n 打点数

    N サンプル数

    M 形状パラメータ

    η 尺度パラメータ

    γ 位置パラメータ

    MTT(B)F 平均故障寿命

    σ 標準偏差

    10パーセント

    故障が10%発

    生する時間

    形状パラメータmでは,以下の特徴を示すと言われています.

    m<1の場合 : 初期故障型

    m=1の場合 : 偶発故障型

    m>1の場合 : 摩耗故障型

    5.1 製造装置の耐久性の推定(ワイブル確率紙)

  • 2-5-1-8

    「割れ」はm=0.90で1に近いことから偶発故障型,歪みはm=5.02で摩耗故障型であることがわかり

    ます.

    割れは使用開始から660時間以降,ひずみは3400時間以降に故障が発生しています.割れは3800時間

    以降に故障が出ていません.

    なお,MTBF(故障までの平均時間)は,割れ8924時間,歪みは4668時間で,σが割れ9898時間,歪

    みが1064時間であることから,歪みによる故障が4668時間前後でかなり故障することがわかります.

    手順8

    次に使用開始 10000 時間までに,

    割れ,歪みはどのくらい発生するか,

    予測してみます.

    「ワイブル確率紙」に戻り,「予

    測」タブをクリックします.tのセ

    ルに 10000 を入力し,ツールボタン

    「計算開始」をクリックします.

    「割れ」の予測値として故障数に

    7が表示されます.同様に「歪み」

    も予測してみます.対象名を「歪み」

    に変更し,同様に 10000 時間後を予

    測すると故障数が10と表示されま

    す.

    10000 時間後までに,発生する故障数は,「割れ」が7,「歪み」が 10 と予測されました.「ワイプル

    確率紙」の「歪み」の直線からもわかるように,10000時間後には「割れ」よりも「歪み」の故障が増え,

    それ以降も「歪み」が継続的に発生していくことが予想されます.

    まとめ

    現在までの故障数は割れ4件,歪み4件で同数でしたが,歪みはある時期から増発するような傾向を

    示し,ワイブル確率紙を描いてみると,割れのmは0.901で偶発故障であり,使用開始3800時間以降は

    発生しておらず,歪みのmは 5.02 で摩耗故障であると考えられます.「歪み」は使用開始から 3400 時

    間以降に初めて発生し,その後,急激に故障回数が増えているようです.

    今後,さらに「歪み」による故障が増えていくことが予想されるため,「割れ」よりも,まず「歪み」

    の原因を調査し,対策を打つことが必要であることがわかりました.また「歪み」は,装置納入の初期

    調整に割れの原因が内在している可能性があります.

    「割れ」の原因として,2つの原因が考えられますが,1つは腐食により腐食割れが起こる場合,2

    つ目は遅れ破壊とよばれる水素による脆弱化が考えられるため,使用環境と材料を見直すことにしまし

    た.

    また,「歪み」は装置に対して偏った温度分布の状態が発生することで,歪みが生じている可能性が

    あるため,冷却用の水を循環させるポンプも含め,各部の温度を再調査することにしました.

    5.1 製造装置の耐久性の推定(ワイブル確率紙)

  • 2-5-2-1

    信頼性寿命解析

    PART

    第5章

    5.2 小型ランプにおける耐久性試験(加速性試験モデル)

    問題の設定

    ある自動車用小型ランプ(定格電圧=3.8V)に対し,電圧を4.5V,5.0V,5.5V,6.0V,6.5Vに変化させ,加速条

    件下での実験を行った寿命データ(ある劣化量に到達するまでの試験時間)を得ました.この場合,ある既定の

    劣化量に達した点を寿命(故障)と考えると,劣化故障となります(ここで,電球のフィラメントの断線の時間

    を観測する場合の故障モードは「断線」となります).このデータをもとに加速性が成り立つかどうか,電圧に

    対する寿命の加速式はどのようになっているかを考察します.ただし,定格電圧のもとでの小型電球の寿命は,

    ワイブル分布に従うことが事前情報によりわかっているものとします.

    解析手法の選択

    加速条件下で得た寿命データを用いるので,加速性試験モデルとして解析します.

    関連手法の説明(概要)

    ①加速試験とは 製品の信頼度を短時間で評価するため,アイテムを通常の使用環境条件と比べ過酷な条件(ただし,すぐ破壊した

    り,別の故障のメカニズムが働くようなストレス条件は不可とする)で行う試験を加速試験といいます.

    本事例の解析ストーリー

    立案と実施

    ータ収集における計画の

    ②解析目的の明確化とデ

    ③データの整理

    仮定の検討

    ④データの検証と分布の

    ①問題の設定

    解析

    ⑥結果の解釈

    対策の検討

    た解析

    ⑤モデルや分布を仮定し

    5.2 小型ランプにおける耐久性試験(加速性試験モデル)

  • 2-5-2-2

    使用するStatWorksの主な機能

    ① データファイルの読み込み ② グラフによる観察を選択 ([手法選択]-[信頼性解析]-[グラフによる観察]) ③ 確率紙を表示する ④ 各種特性値の推定を確認する ⑤ 両対数方眼紙へのプロット

    データの整理

    解析目的は,加速状態における小型電球の寿命を考察することにより,定格電圧のもとでの寿命を推定しよう

    とするものです.したがって,いくつかの加速条件を設定した上で,必要な故障データを収集し,加速性が成り立

    っていることを確認した上で,加速係数を求め,定格電圧のもとでの寿命を推定します.

    下表では,与えた負荷の4.5V,5.0V,5.5V,6.0V,6.5Vの電圧に対してフィラメントが断線するまでの時間

    (hr)のデータがとられています.

    データ表

    [サンプル名]

    4.5V

    [量的変数]

    5.0V

    [量的変数]

    5.5V

    [量的変数]

    6.0V

    [量的変数]

    6.5V

    [量的変数]

    1 83.0 18.33 7.23 3.79 1.79

    2 98.9 18.93 8.97 4.22 2.12

    3 103.7 24.33 9.77 4.39 2.14

    4 111.4 24.33 10.03 4.57 2.19

    5 114.6 25.60 10.57 4.78 2.24

    6 116.1 26.73 10.63 4.85 2.33

    7 117.4 26.80 10.73 5.01 2.38

    8 122.6 27.33 11.20 5.08 2.40

    9 137.7 28.67 11.70 5.15 2.47

    10 151.0 28.80 12.37 5.17 2.51

    11 29.53 12.40 5.32 2.53

    12 30.27 12.60 5.42 2.56

    13 30.80 13.20 5.74 2.61

    14 38.13 13.90 5.97 2.66

    15 14.03 6.30 2.83

    16 14.10 6.33 2.84

    17 6.61 2.89

    18 7.70 3.13

    19 3.19

    20 3.82

    5.2 小型ランプにおける耐久性試験(加速性試験モデル)

  • 2-5-2-3

    信頼性寿命解析

    PART

    第5章

    5.2.1 解析

    (1)データの読み込み

    手順1 サンプルデータを読み込みます.

    定格電圧負荷を与えることで,小型ランプ

    のフィラメントが断線するまでの時間を観測

    しています.

    また,ここでは,故障時間とともに負荷電

    圧の値をもつ電圧の変数を追加しています.

    (2)データの検証と分布の仮定の検討

    基本統計量やグラフを用いて,データの特徴を把握します.

    通常,事前情報等から分布が仮定できない場合には,確率紙プロットなどを用いて比較し,想定した分布を検

    証する必要があります.定格電圧のもとでワイブル分布に従うことが事前情報からわかっていますが,ここで

    は便宜的に,定格電圧により平均値やばらつきがどのようになっているかをみることにします.

    手順2 メニューから[手法選択]-[基本

    解析]-[統計量/相関係数]を選択

    します.

    手順3 「変数指定」ダイアログが表示され

    ます.

    [元データ]から電圧負荷のレベル

    の「4.5V」,「5.0V」,「5.5V」,「6.0V」,

    「6.5V」を選択します.

    5.2 小型ランプにおける耐久性試験(加速性試験モデル)

  • 2-5-2-4

    ボタンをクリックします.

    [次へ進む]ボタンをクリックします.

    基本統計量が表示されます.

    定格電圧の負荷を加えることで,平均値

    と標準偏差が小さくなっていますが,変

    動計数は0.162~0.178でほぼ一定です.

    平均値は電圧が大きくなるに従い減少していますが,標準偏差を平均値で割った変動係数はほぼ一定の値

    を示しています.

    ワイブル分布の変動係数はワイブル分布の形状パラメータmのみの関数として表示されるので,加速状態

    でのデータがともにワイブル分布に従うならば,各々の形状パラメータmが電圧の変動にかかわらず一定と

    なっているがわかります.

    5.2 小型ランプにおける耐久性試験(加速性試験モデル)

  • 2-5-2-5

    信頼性寿命解析

    PART

    第5章

    (3)モデルや分布を仮定した解析

    データの特徴把握や検証が済んだところで,加速試験モデルを描きます.

    手順4 メニューから[手法選択]-[信頼性解析]

    -[加速試験モデル]-[原データから解析]

    を選択します.

    手順5 「加速試験データの解析(原データか

    らの解析)の変数指定」ダイアログが表

    示されます.

    「4.5V」,「5.0V」,「5.5V」,「6.0V」,

    「6.5V」を選択し, をクリック

    して,「故障時間等の特性値」を選択し

    ます.

    手順6 次に,「ストレスレベル」として負荷を

    与えた「電圧」の情報を与えます.

    「電圧」を選択し, をクリッ

    クし,「ストレスレベル」の領域へ変数

    を入れます.

    [次へ進む]をクリックします.

    5.2 小型ランプにおける耐久性試験(加速性試験モデル)

  • 2-5-2-6

    手順7 [属性の指定]ダイアログが表示されます.

    故障データはフィラメントが断線するまで測

    定しているので,完全データにチェックをい

    れた状態で [次へ]ボタンをクリックします.

    手順8 次に「解析設定」を行います.

    まず解析モデルを「アレニウスモデル」か

    ら「べき乗則モデル」に変更します.

    寿命の指標としてここでは平均故障時間

    「MTTF」を設定します.

    [OK]ボタンをクリックします.

    負荷電圧ごとに層別された確率紙が表示されます.

    5.2 小型ランプにおける耐久性試験(加速性試験モデル)

  • 2-5-2-7

    信頼性寿命解析

    PART

    第5章

    各寿命データは,それぞれ,ほぼ直線上にのっており,ワイブル分布に従うとした仮定が4.5Vから6.5V

    までどの電圧でも成立していることがわかります.

    また,直線の傾き,すなわちワイブル分布の形状パラメータmの値もほぼ等しいようです.

    それぞれの値を確認するため,パラメータを表示します.

    手順8 ツールボタン[パラメータ]をクリックします.

    加速状態における形状パラメータmは 5.7~6.6 でほぼ一定であり,6.0 を仮定して解析しても支障がなさ

    そうであることがわかります. 平均寿命(MTTF)は負荷電圧4.5Vでは115.3281,6.5Vでは2.5783と,電圧

    を増すと短くなっていることがわかります.MTTFはη× (1 1/ )m に等しいのですが,mが一定であれば,ガンマ関数 (1 1/ )m はすべて同一なので,m=6に対して0.928であることが求まります. したがって, MTTF=0.928ηとなるため, MTTF のかわりに代表値として尺度パラメータηと電圧の関係

    式を求めることにします.

    5.2 小型ランプにおける耐久性試験(加速性試験モデル)

  • 2-5-2-8

    ワイブル確率紙に直線をあてはめることは容易ですが,精度よく分布のパラメータを求め

    るためには以下の注意が必要です.

    1) 初期に見られる不具合があらかじめ除かれている場合には,位置パラメータγの推定と

    「ずらし」の処理を必要とすることがあります.また故障モードが異なっていたり,使用環

    境が異なっていたりするような,異なる母集団のデータが混在していないか注意が必要

    です.

    2) 少数データではデータごとの変動の影響を受けやすく,概ね,20個以下のデータは,本

    来は正しくワイブル分布に従っている場合であっても,往々にして曲がって打点されま

    す.

    3) フィールドデータ(製品出荷後の市場データ)は,製品出荷後の初期の時点ではF(t)の値

    が小さい領域のデータしか得られません.このようなデータに分布を当てはめても,真

    のパラメータの値が推定できるわけではありません.直線になるかならないかよりも,初

    期不良の内容に着目し,過去の技術的な蓄積から判断することが必要です.

    手順9 電圧とηとの関係から加速寿命の関係式を求めることができます.[確率紙]画面に戻り,[加速試験モデ

    ル]タブをクリックします.画面上に電圧に対する寿命(MTTF)の加速式 lnL = -10.090018 ln S + 19.736151と回

    帰プロットが得られます.

    電圧に対する寿命の加速式(α乗則)の係数αは10.1です.つまり,解析の対象である小型電球の寿命は,

    電圧の10乗に反比例して寿命が短くなることが確認できました.

    5.2 小型ランプにおける耐久性試験(加速性試験モデル)

  • 2-5-3-1

    信頼性寿命解析

    PART

    第5章

    5.3 新旧部品の寿命の差を検定(2標本のKS検定)

    問題設定

    JUSE電気は,家電メーカーに対して部品を納入しています.市場環境の変化に伴い,家電メーカーより,部品

    の寿命を延ばすことが要請されました.そこで対象となる部品の素材を変更し設計・試作しました.

    従来の部品と新部品とで加速状態における寿命試験を行った結果の故障時間データを K-S 検定で比較し,新部

    品の改善効果の有無を検討することにしました.

    ・従来部品と新部品の寿命データの比較

    この部品の故障は,ほぼ同一故障モードで発生しています.その故障は温度加速により故障しやすくなりま

    す.従来部品に関しては開発時のデータが存在しています.そこで,新部品に関しても同様な温度加速状態で

    寿命試験をおこないました.そのため,サンプルを20個用意し,全ての部品が壊れるまで稼働させました.

    したがって,打切りデータはなく,完全データとなります.

    本事例の解析ストーリー

    認 なめらかであることを確

    の傾向を把握.故障傾向が

    ②解析線図に故障データ

    ることを確認

    の故障モードが同等であ

    従来部品と新部品の故障

    ③ワイブル確率紙により,

    を確認.

    更に伴う寿命の改善効果

    ④K-S

    検定により,

    設計変

    ①問題の設定とデータ収集

    解析

    5.3 新旧部品の寿命の差を検定(2標本のKS検定)

  • 2-5-3-2

    データ収集

    従来部品と新部品において得られた故障時間(単位:h)のデータは以下の通りです.

    No. 従来部品 新部品

    1 12.8 12.3

    2 13.7 19.2

    3 13.7 23.9

    4 29.9 25.3

    5 33.9 40.0

    6 43.3 49.9

    7 46.3 76.4

    8 49.0 86.3

    9 51.1 96.6

    10 54.7 97.4

    11 56.1 98.4

    12 62.0 103.3

    13 75.3 117.7

    14 76.3 124.2

    15 80.9 125.9

    16 95.8 137.6

    17 107.4 155.1

    18 116.5 187.3

    19 129.2 190.2

    20 156.9 233.1

    5.3.1 故障状況の確認

    サンプルデータを読み込みます.

    5.3 新旧部品の寿命の差を検定(2標本のKS検定)

  • 2-5-3-3

    信頼性寿命解析

    PART

    第5章

    手順1 メニューから[手法選択]-[信頼性解析]-[解

    析線図]を選択します.

    手順2 「変数指定」ダイアログが表示さ

    れます.

    データタイプの選択で,「特性

    値型」を選択し,解析で使用する

    変数の指定で「従来部品」と「新

    部品」を選択し,特性値(故障時

    間等)の「選択」ボタンをクリッ

    クします.「次へ進む」ボタンを

    クリックします.

    5.3 新旧部品の寿命の差を検定(2標本のKS検定)

  • 2-5-3-4

    手順3 「解析線図」が表示されます.

    従来部品,新部品ともに,裾を引くような分布になっていることがうかがえます.ワイブル分布を仮定

    した場合では,m>1となることが予想できます.また,傾向はなめらかで,自然な故障傾向であると推

    測できます.

    手順4 解析線図を閉じてワークシートに戻り,

    [手法選択]-[信頼性解析]-[確率紙]を

    選択します.

    手順5 「変数指定」ダイアログが表示されま

    す.

    ここでは解析線図での変数指定と同

    様な方法で

    ①データのタイプ:特性値型

    ②解析で用いる変数:

    「従来部品」,「新部品」

    を指定します.

    右のリストに変数を移行できたら

    「次へ進む」ボタンをクリックします.

    5.3 新旧部品の寿命の差を検定(2標本のKS検定)

  • 2-5-3-5

    信頼性寿命解析

    PART

    第5章

    手順6 「属性の指定」ダイアログが表

    示されます.

    ここでは特に設定を変更する

    必要はないので「次へ」ボタンを

    クリックします.

    手順7 「確率紙選択」ダイアログが表示されます.

    ここでは,「ワイブル確率紙」を選択します.

    手順8 ワイブル確率紙に従来部品

    と新部品の故障データがプロ

    ットされます.また,それぞ

    れのプロット点において回帰

    線が推定され描画されていま

    す.

    手順6 「従来部品」,「新部品」

    それぞれ推定したパラメー

    タを確認します.

    ツールボタン「パラメー

    タ」をクリックします.

    5.3 新旧部品の寿命の差を検定(2標本のKS検定)

  • 2-5-3-6

    「パラメータ一覧」が表示されます.

    ・ ワイブル確率紙においては従来部品,新部品の故障データ共に,回帰直線のあてはまりがよく,ワイブル

    分布に従っているとみなすことができます.

    ・ 従来部品,新部品それぞれの回帰線の傾き(尺度パラメータ:m)の値は1.60,1.39と共に1より大きく,

    磨耗故障型となっています.

    ・ 回帰線の傾き(形状パラメータ:m)の値には大きな違いはないので,両故障データの故障モードに違いは

    ないものと推測することができます.

    5.3.2 2標本K-S検定

    手順1 メニューから「手法選択」-[信頼性解析]

    -[2標本K-S検定]を選択します.

    5.3 新旧部品の寿命の差を検定(2標本のKS検定)

  • 2-5-3-7

    信頼性寿命解析

    PART

    第5章

    手順2 「変数指定」ダイアログが表示さ

    れます.

    データタイプの選択で「特性値型」

    を選択します.

    さらに「従来部品」を特性値(第1群)へ,

    「新部品」を特性値(第2群)へ設定し,

    「次へ進む」ボタンをクリックします.

    手順3 「属性の指定」ダイアログが表示され

    ます.

    ここでは特に設定を変更する必要は

    ないのでこのまま「次へ」ボタンをク

    リックします.

    手順4 「仮説の設定」ダイアログが表示さ

    れます.

    今回は,新部品による故障時間が従

    来品の故障時間と比べて,大きい傾向

    となったかどうかを仮説検定します.

    なお,仮説検定の対象は故障時間では

    なく,累積故障確率(Fn)についておこ

    なうので,注意が必要です.

    さて,帰無仮説H0は,従来品(1)の

    故障時間(x1)が新部品(2)の故障時

    間(x2)と同等な傾向と仮定します.

    一方,対立仮説H1は,新部品(2)の故障時間(x2)が従来品(1)の故障時間(x1)より大きい傾向(これが

    ありたい姿として設定します)という仮説を設定し, 帰無仮説H0が棄却されるかどうかを検定することにしま

    す.

    すなわち,「仮説の設定」ダイアログでは,

    ・帰無仮説H0:F1 = F2

    ・対立仮説H1:F1 > F2

    ・有意水準:0.05 と設定し,[OK]ボタンをクリックします.

    5.3 新旧部品の寿命の差を検定(2標本のKS検定)

  • 2-5-3-8

    ここで故障時間の大小関係と累積確率Fn(x)の大小傾向は逆となる点に注意が必要です.

    例えば 群Aの故障時間データ 1,2,3,4,5

    群Bの故障時間データ 3,4,5,6,7

    を取得したとします.

    F(t)

    このように,Fa(t),Fb(t)は上図のようになります.

    すなわち,群Aと群Bの故障時間でみるとデータの傾向は群Bの方か大きい傾向にありますが,

    累積確率FaとFbの比較では Fa > Fb となります.

    このように,検定の目的と仮説の設定については注意が必要です.

    手順5 「2標本K-S検定」 画面が表示

    されます.

    さて,グラフより累積分布関数

    の傾向は,定性的には,全体的に

    新部品のほうが右側にずれている

    ことが読み取れます.新部品が従

    来品と比べて,故障時間が大きい

    傾向となっているかどうかの検定

    は P 値の大きさをみて,定量的に

    確認します.

    P値が4.1 %であり,「5 %より小

    さいので仮説H0は有意水準5 %で

    棄却される 」ということがわかり

    ます.つまり,帰無仮説が棄却され

    たので,新部品の故障時間は従来

    品と比べて統計的にみて大きい傾

    向があるといえそうです.

    ・検定により,新部品の寿命データが旧部品の寿命データより大きい傾向にあるとみなすことができそうで

    す.

    群Bの

    累積確率 Fb

    関数の大小関係は縦方向

    取得データの大小関係は横方向

    群Aの

    累積確率 Fa

    1 2 3 4 5 6 7 (時間)

    1

    5.3 新旧部品の寿命の差を検定(2標本のKS検定)

  • 2-5-4-1

    信頼性寿命解析

    PART

    第5章

    5.4 市場故障データの解析(CHM,ワイブル確率紙)

    問題設定

    JUSE 電気は,ガス給油機Aを販売しています.この商品は,工場から出荷された製品がお客様のもとに届

    き,そこで不具合が発生した場合に,サービスマンが修理に駆けつけ,不具合の原因を除去し,再使用可能な

    ものへと復元しています.

    出荷後の流れ

    量販店 → お客様購入 → 家電使用 → 不具合発生 → 故障修理 → 再使用可能

    現在,この「修理の症状原因データ」を即日にサービスマンが入力し,翌朝,工場で確認することができる

    ようになっているのですが,日々のデータから重大な不具合を検出することがかなり困難になってきました.

    また最近では,製品の開発サイクルが短くなり,発売後の製品の出来ばえを短期間のうちに判断すること

    が要求されるようになってきました.市場には製造月の異なる製品が次々に投入されることで,製造と市場故

    障の関係が見づらくなっています.

    そこで,この不具合を早急に確認し,修理の内容や期間等を判断できるようプロジェクトチームを発足し

    対策に乗り出しました.ガス給油機Aの,07年2月までの出荷台数は18120台,07年3月から現在までの

    出荷台数は27083台です.検討した結果,以下の3点に対して確認することになりました.

    ・故障の発生に何らかの傾向がないか.

    ・07年3月から,強度を改善した製品を出荷しているが.その前後で故障傾向に差がないか

    ・今後の故障数を予測する.

    解析手法の選択

    まず予備解析を行い,故障の発生状況を確認します.予備解析では,時系列的な市場での故障数の推移や故

    障原因による製造月ごとの故障発生のばらつきを見る上で層別ヒストグラムを使います.また,製造あるいは

    市場との故障発生の傾向を確認するには,「コンポーネントアワーマップ(CHM)」で解析します.

    ガス給油機の製造出荷で07年3月以前と以後で故障の傾向が変わったかどうかを確認し,さらに今後の故障

    発生確率を予測するためにはワイブル確率紙を用います.

    5.4 市場故障データの解析(CHM,ワイブル確率紙)

  • 2-5-4-2

    関連手法の説明(概要)

    ①コンポーネントアワーマップ(CHM)とは コンポーネントアワーマップ

    (CHM)は,膨大なデータの集約と可

    視化を比較的容易に行うことのでき

    るツールです.必ずしも統計的な解

    析ツールではありませんが,市場に

    おける製品の故障発生傾向や,特異

    な故障発生を比較的感度よく表現で

    きます.このように,CHMは市場にお

    ける製品の信頼性評価をしようとす

    るときに,第一次的に検討の対象と

    すべき故障発生が存在するか否かを

    確認するスクリーニング・ツールの

    役割を果たします.

    CHM は縦軸に製造ロット,横軸に故障の発生月または稼働月をとった表を作成し,製造数に応じてセルの高

    さが高くなるようにし,各セルには故障数に応じてプロットを行います.それにより,故障に一定の傾向があ

    る場合の特徴がとらえやすくなり,季節変動がある場合には,横軸を故障月にすると,特定の月で故障が発生

    していることが確認できます.また横軸を稼働月にすることで初期故障や摩耗故障等,故障発生の傾向を視覚

    的に把握することができます.

    本事例の解析ストーリー

    使用するStatWorksの主な機能

    ① 故障数の推移を確認 ([手法選択]-[基本解析]-[モニタリング]-[度数グラフ]) ② 故障原因別の故障数の把握 ([手法選択]-[基本解析]-[モニタリング]-[層別ヒストグラム]) ③ 故障率推移の確認([手法選択]-[基本解析]-[グラフ]-[折れ線グラフ]) ④ 故障発生の傾向を把握([手法選択]-[信頼性解析]-[CHM]) ⑤ 故障発生率の予測([手法選択]-[信頼性解析]-[確率紙])

    ②故障数の推移を確認

    把握

    ③故障原因別の故障数の

    ④故障率推移の確認

    ①問題の設定

    予備解析

    ⑤故障発生の傾向を把握

    継続

    ⑦故障発生状況の監視を

    対策の検討

    ⑥故障発生率の予測

    予測

    5.4 市場故障データの解析(CHM,ワイブル確率紙)

  • 2-5-4-3

    信頼性寿命解析

    PART

    第5章

    データの収集

    JUSE電気では,故障した製品に対して,以下の項目のデータを記録しています.

    製造番号 : 1台毎に与えた識別番号

    製造年月日

    購入年月日

    受付日

    故障月数

    製品が作られた年月日

    お客様が購入された年月日

    不具合のコールを受け付けた年月日

    製造してから故障するまでの月数

    不良内容 : 不具合発生部位

    稼働月 : 購入してから故障するまでの月数

    予備解析では,製造から故障が発生するまでの月数を使って解析しますので,製造年月日と受付日を使って

    「故障月数」の変数を作成しています.また,ワイブル確率紙では,稼働月を使って解析しますので,「購入

    年月日」と「受付日」から「稼働月」の変数を作成しています.月数は[手法]-[信頼性解析]-[日付変換]の機

    能を使って作成を行うことができます.ここでは,ひと月を30日として,月数に変換します.

    サービスセンターデータ(一例)

    No. 製造番号 製造年月日 購入年月日 受付日 故障月数 製造年月 不良内容 稼働月

    1 35000367 2006/10/1 2007/3/2 2007/07/03 10 06/10 トルクモータ ー 5

    2 35000749 2006/10/1 2007/5/31 2007/12/06 15 06/10 トルクモータ ー 7

    3 35001706 2006/11/1 2006/11/30 2007/03/28 5 06/11 トルクモータ ー 4

    4 35001780 2006/11/1 2007/10/15 2008/10/18 24 06/11 トルクモータ ー 13

    5 35001845 2006/11/1 2006/12/26 2007/05/24 7 06/11 トルクモータ ー 5

    6 35002098 2006/11/1 2006/11/30 2007/10/13 12 06/11 トルクモータ ー 11

    : : : : : : : : :

    ワークシートのデータ 解析での使用有無 備考

    変数名 変数属性 予備解析 CHM ワイブル確率紙

    製造番号 サンプル名 ○

    製造年月日 サンプル名 ○ 日付は yyyy/mm/dd の形式で入力しま

    す. 購入年月日 サンプル名

    受付日 サンプル名 ○

    不良内容 質的変数 ○

    故障月数 量的変数 ○ 「製造年月日」と「受付日」から「日

    付変換」機能を使って作成します.

    製造年月 質的変数 ○

    稼働月 量的変数 ○ 「購入年月日」と「受付日」から「日

    付変換」機能を使って作成します.

    改善 質的変数 ○

    2007年2月までの製造品を「07/02ま

    で」,それ以降を「07/03から」とし

    てカテゴリ名を入力します.

    製造年月 サンプル名 ○

    製造年月日分のデータを入力します. 生産台数 量的変数 ○

    故障台数率 量的変数 ○

    5.4 市場故障データの解析(CHM,ワイブル確率紙)

  • 2-5-4-4

    データ表は,次のようになります.

    5.4.1 製造年月別の故障件数の確認

    (1)「度数グラフ」を作成し,どの月に故障が多いかを確認する

    手順1 データファイルの入力

    サンプルデータを読み込みます.

    手順2 メニューから[手法選択]-[基本解析]-[モニタリング]

    を選択します.

    5.4 市場故障データの解析(CHM,ワイブル確率紙)

  • 2-5-4-5

    信頼性寿命解析

    PART

    第5章

    手順3 モニタリングの「変数指定」ダイア

    ログが表示されます.

    ここでは,質的変数「製造年月」を

    指定し,解析対象の「選択」ボタンを

    クリックします.[次へ進む]ボタン

    をクリックします.

    手順4 各製造年月の故障件数に関する度

    数グラフが表示されます.

    06 年 11 月,06 年 10 月,07 年 02

    月の故障件数が多く,07年08月以降

    の故障件数は少ないことが見てとれ

    ます.

    ただし,各製造年月の故障件数は,

    各製造年月での製造数や経過月数な

    どの影響を受けますので,それらを考

    慮して検討する必要があります.

    (2)「層別ヒストグラム」を作成し,故障内容を確認する

    手順1 メニューから[手法選択]-[基本解析]-[モニタリ

    ング]を選択します.

    5.4 市場故障データの解析(CHM,ワイブル確率紙)

  • 2-5-4-6

    手順2 モニタリングの「変数指定」ダイアロ

    グが表示されます.

    ここでは,量的変数「故障月数」,

    質的変数「不良内容」を指定し,解析

    対象の「選択」ボタンをクリックしま

    す.[次へ進む]ボタンをクリックし

    ます.

    手順3 不良内容別にみた故障月

    数の「層別ヒストグラム」が

    表示されます.

    ここでは特に「排水フィルター」が他の不良内容より多く(n=230),故障月数のばらつき(s=7.82)も

    やや大きいことがわかります.

    (3)折れ線グラフを作成し,全体の変動を確認する

    手順1 メニューから[手法選択]-[基本解析]-[グラフ]

    を選択します.

    5.4 市場故障データの解析(CHM,ワイブル確率紙)

  • 2-5-4-7

    信頼性寿命解析

    PART

    第5章

    続いて,「グラフの選択」ダイアログで「折れ線グラフ」ボタンを選択

    します.

    手順2 「データ形式」ダイアログが表示されます.

    データの形式を指定します.

    ここでは,「サンプル別」を指定し,[OK]ボタンを

    クリックします.

    手順3 「変数指定」ダイアログが表示され

    ます.

    ここでは,量的変数の「故障台数率」

    を指定し,サンプル名を「S10 製造

    年月」に変更してから,[次へ進む]

    ボタンをクリックします.

    ※ 故障台数率は毎月の故障件数/

    毎月の生産台数により求めて

    います.

    5.4 市場故障データの解析(CHM,ワイブル確率紙)

  • 2-5-4-8

    製品の強度を改善した製造年月07年03月を境に故障台数率が小さくなっている,つまり故障の割合が低く

    なっていることがわかります.

    07年03月前と後で,グループを分けて,さらに詳しく解析をする必要があります.

    5.4.2 コンポーネントアワーマップで故障発生状況を確認する

    コンポーネントアワーマップでは,月次生産台数と不具合発生の割合をマトリックス上で視覚的に観察する

    ことができます.

    マップを観察しながら,ロットの絞込みや,改善効果の確認を行います.

    手順1 メニューから[手法選択]-[信

    頼性解析]-[CHM(コンポーネン

    トアワーマップ)]を選択します.

    手順2 「変数指定」ダイアログが表示され

    ます.

    まず,データタイプの選択で「原

    データ表型」を選択します.

    続いて,サンプル名の「製造年月

    日」,「受付日」を選択して「製造

    日,販売日,故障発生日等」の「選

    択」ボタンをクリックし,次に「故

    障月数」を選択して故障数の「選択」

    ボタンをクリックします.

    最後に,[次へ進む]ボタンをク

    リックします.

    5.4 市場故障データの解析(CHM,ワイブル確率紙)

  • 2-5-4-9

    信頼性寿命解析

    PART

    第5章

    手順3 「CHM」(コンポーネントアワーマップ)が表示されます.

    縦軸に製造年月日,横軸に稼動月(実際に商品が稼動している月数)として,故障件数をマーク(*)で表し

    ています.

    手順4 実際の生産台数が考慮されていな

    いので,各月の生産台数を設定します.

    「CHM」画面上側のツールボタン[縦

    軸設定]をクリックします.

    5.4 市場故障データの解析(CHM,ワイブル確率紙)

  • 2-5-4-10

    「縦軸設定」ダイアログが表示されます.

    各月に対応した生産台数を設定します.

    初期設定では,何も入力されていませんが,

    ここでは,ワークシートに既に「生産台数」

    が入力されていますので,これを利用します.

    「縦軸設定」ダイアログの画面右側の[変

    数から]ボタンをクリックします.

    量的変数の「生産台数」を指定し,[次へ

    進む]ボタンをクリックします.

    「数量」の列に数値が入力された「縦軸設

    定」ダイアログが表示されます.

    設定がよければ,[OK]ボタンをクリック

    します.

    5.4 市場故障データの解析(CHM,ワイブル確率紙)

  • 2-5-4-11

    信頼性寿命解析

    PART

    第5章

    手順5 生産台数を考慮した故障頻度を表す「コンポーネントアワーマップ」が表示されます.

    ・ 改善後の07年03月から06月まではセルの高さが高く,生産台数が多いことがわかります.この期間は

    生産台数が多いわりには,プロットがそれ以前に比べて少なく,故障の頻度が減っていることがうかがえ

    ます.

    手順6 さらに[オプション]-[表示形式]タブの故障数,

    故障割合をチェックし,件数表示形式を「故障割

    合(着色)」とし,それらを表示してみます.

    必要な設定をし,[OK]ボタンをクリックし

    ます.

    5.4 市場故障データの解析(CHM,ワイブル確率紙)

  • 2-5-4-12

    故障確率(割合)0.01%以上,0.05%以上がそれぞれ着色されます.

    ・ 改善前の07年02月までの故障割合をみると,生産台数の1%以上が故障していましたが,03月以降は,

    故障割合が1%未満になり,改善の効果が見られます.

    ・ 改善前に比べ,改善後は故障確率0.05%以上の月が少なくなっており,故障は稼働月の初期段階で収まっ

    ているのが視覚的にわかります.

    ・ 今後,工場で月次の生産台数を把握し,お客様からの故障品の購入年月日,不具合発生日,製造年月等の

    データを逐次収集することにより,修理内容や期間等がすぐに判断できます.

    5.4.3 発生率を予測する

    ここまでの解析結果を踏まえて,生産月が07年02月までと,07年03月以降にわけて解析を行い,ワイブ

    ル確率紙で予測を行ってみます.

    手順1 メニューから[手法選択]-[信頼性解析]-[確

    率紙]を選択します.

    5.4 市場故障データの解析(CHM,ワイブル確率紙)

  • 2-5-4-13

    信頼性寿命解析

    PART

    第5章

    手順2 「変数指定」ダイアログが表示されます.

    まず,データタイプの選択で「特性値層

    別型或いは特性値故障モード型」をクリッ

    クします.

    続いて,「稼働月」を選択して特性値(故

    障時間等)の「選択」ボタンをクリックし,

    次に「改善」を選択して層別の「選択」ボ

    タンをクリックします.

    [次へ進む]ボタンをクリックします.

    手順3 「属性の指定」ダイアログが表

    示されます.

    ここでは,「不完全データ」と

    設定します.

    07/02 月までの発生台数は,

    18120 台,07/03 からの発生台数

    は,27083台となります.

    「07/2まで」のカテゴリ名称に

    対応する「総データ数」欄をダブ

    ルクリックし,「18120」を入力

    し,同様に「07/3 から」のカテゴリ名称に対応する「総データ数」欄に「27083」を入力します.設定がよけ

    れば[次へ]ボタンをクリックします.

    ※不完全データとして計算する場合,累積ハザード法で計算を行います

    手順4 「確率紙選択」ダイアログが表示されます.

    [ワイブル確率紙]を選択します.

    5.4 市場故障データの解析(CHM,ワイブル確率紙)

  • 2-5-4-14

    手順5 「ワイブル型累積ハザード紙」が表

    示されます.

    07/02以前と07/03以降の2種類のプロットを比較すると,ほとんど傾きに違いがないことが確認できま

    す.初期不良は対策をとることで改善できましたが,依然として偶発故障は残っているようです.

    手順6 ツールボタン「パラメータ」をクリックし,改善前,改善後のパラメータを確認します.

    改善後のMTTF(故障までの平均時間)が2050ヶ月から4990ヶ月に向上しているのがわかります.

    手順7 今後の故障発生率,故障件数を予測

    します.

    改善前,改善後のパラメータを閉じ

    て,「予測」タブをクリックします.

    初期設定では,「tからの予測」で,

    対象は「07/2まで」となっています.

    07/2 月のプロットに対して経過時

    間(t)を入力することによって,故

    障発生率と故障件数を計算します.

    ここでは,「t」の欄のセルをダブ

    ルクリックし,上から順に「30」,「40」,

    「50」,「60」と入力します.

    入力後,画面上側のツールボタン

    [計算開始]をクリックします.

    5.4 市場故障データの解析(CHM,ワイブル確率紙)

  • 2-5-4-15

    信頼性寿命解析

    PART

    第5章

    手順8 07/03 以降についても同様に予測を

    行います.

    「対象名」のリストから「07/3から」

    を選択します.

    「予測」画面の計算結果が初期化さ

    れますので,手順6と同様に「t」欄

    に「30」,「40」,「50」,「60」と

    入力後,ツールボタン[計算開始]を

    クリックします.

    予測の計算結果をまとめると次のようになります.

    07/02以前 07/03以降

    経過月数 H(t)% 故障数(累計) H(t)% 故障数(累計)

    30 1.6167 291 0.6291 170

    40 2.1423 384 0.8368 226

    50 2.6550 477 1.0441 281

    60 3.1856 568 1.2510 337

    なお,確率紙の画面で縦軸をF(t)にしてから予測の画面にいくと,不信頼度F(t)の予測値も求めることがで

    きます.

    ・改善後は故障割合が,生産台数の1%以上から1%未満に減少し,初期段階での故障は改善されたようです.

    ・改善後のMTTF(故障までの平均時間)が2050ヶ月から4990ヶ月に向上しました.

    ・さて,解析時での故障データの最大稼働月数は33ヶ月でした.その10ヶ月後に予測値に対して実績がどう

    なったかを検証することにしました.

    10ヶ月後に故障した台数は140台でした.予測値と比較した結果,経過月30と40の10ヶ月間で07/02以

    前の予測の生産品が93台 (07/02以前 故障数(累計) 384-291で求める),07/03以降の生産品が56台

    (07/03以降 故障数(累計) 226-170から求める)で計149台の故障発生が予測され,ほぼ実績に近い値が

    得られたことが確認されました.

    5.4 市場故障データの解析(CHM,ワイブル確率紙)

    第5章 信頼性寿命解析5.1 製造装置の耐久性の推定(ワイブル確率紙)5.2 小型ランプにおける耐久性試験(加速性試験モデル)5.3 新旧部品の寿命の差を検定(2標本のKS検定)5.4 市場故障データの解析(CHM,ワイブル確率紙)