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一般演題 1 演題3 アンギオテンシンⅡ タイプ 1 レセプターブロッカー(ARB)による NASH の 酸化ストレス抑制効果の検討 小野正文、広瀬享、野崎靖子、増田弘誠、吉岡明美、小笠原光成 高橋昌也、秋澤直明、岩崎信二、西原利治、大西三朗 高知大学消化器内科学 【目的】非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、炎症や線維化の進展など進行性の肝疾患であるが、 未だに有効な治療法は確立されていない。近年、レニン―アンギオテンシ系(RAS)が、慢性炎症 や組織の線維化に重要な役割を果たしていることが、肝臓においても徐々に明らかになってきて いる。NASH 患者においても RAS を抑制することで肝線維化進展抑制に寄与しているとの報告が あるが、酸化ストレスの抑制効果についての検討はなされていない。そこで今回我々は、NASH ラットモデルに対し、アンギオテンシンⅡ タイプ 1 レセプター(AT1)ブロッカー(ARB)を投与 し、NASH の酸化ストレス抑制効果について検討を行った。 【方法】6 週令の雄 Wistar rat を、1)コントロール食+普通水を投与した群、2)コリンーメチオ ニン欠乏食(MCD)+普通水を投与した群、3)MCD 食+0.005%オルメサルタン含有水 (0.75mg/kg/day)を投与した群の 3 群に分類し、15 週間飼育した。肝組織にて肝の線維化、肝 脂肪滴量評価を行う目的で、それぞれアザン染色、オイルレッド O 染色を行い、その面積率を算 出した。さらに、肝での TNF-α発現量を Real-Time RT-PCR にて検討を行った。また、酸化スト レスによる DNA 障害度の指標として 8-OHdG、HNE を免疫染色にて評価した。 【成績】肝臓/体重比、肝線維化進展および肝脂肪滴量は、MCD食+普通水投与群に対してMCD+ARB 投与群で有意に抑制された(p<0.01)。また、肝での TNF-α発現量は ARB 投与群で明らかな発 現抑制効果が認められた(p<0.03)。またα8-OHdG に対する免疫染色では、MCD 食+普通水投与 群に対して MCD+ARB 投与群で有意に抑制され(p<0.001)、酸化ストレスの軽減が見られた。 【結論】ARB は、肝脂肪化抑制、酸化ストレスの抑制などを介して NASH 肝の病状進展を抑制す る効果があると考えられた。

アンギオテンシンⅡ タイプ 1 ARB NASH 酸化ストレス抑制効 …netconf.eisai.co.jp/nash/report/003/03.pdf群に対してMCD+ARB投与群で有意に抑制され(p<0.001)、酸化ストレスの軽減が見られた。

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  • 一般演題 1

    演題3

    アンギオテンシンⅡ タイプ 1レセプターブロッカー(ARB)による NASH の

    酸化ストレス抑制効果の検討

    小野正文、広瀬享、野崎靖子、増田弘誠、吉岡明美、小笠原光成

    高橋昌也、秋澤直明、岩崎信二、西原利治、大西三朗

    高知大学消化器内科学

    【目的】非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、炎症や線維化の進展など進行性の肝疾患であるが、

    未だに有効な治療法は確立されていない。近年、レニン―アンギオテンシ系(RAS)が、慢性炎症

    や組織の線維化に重要な役割を果たしていることが、肝臓においても徐々に明らかになってきて

    いる。NASH 患者においても RAS を抑制することで肝線維化進展抑制に寄与しているとの報告が

    あるが、酸化ストレスの抑制効果についての検討はなされていない。そこで今回我々は、NASH

    ラットモデルに対し、アンギオテンシンⅡ タイプ 1レセプター(AT1)ブロッカー(ARB)を投与

    し、NASH の酸化ストレス抑制効果について検討を行った。

    【方法】6週令の雄 Wistar rat を、1)コントロール食+普通水を投与した群、2)コリンーメチオ

    ニン欠乏食(MCD)+普通水を投与した群、3)MCD 食+0.005%オルメサルタン含有水

    (0.75mg/kg/day)を投与した群の 3群に分類し、15週間飼育した。肝組織にて肝の線維化、肝

    脂肪滴量評価を行う目的で、それぞれアザン染色、オイルレッド O染色を行い、その面積率を算

    出した。さらに、肝での TNF-α発現量を Real-Time RT-PCRにて検討を行った。また、酸化スト

    レスによる DNA 障害度の指標として 8-OHdG、HNE を免疫染色にて評価した。

    【成績】肝臓/体重比、肝線維化進展および肝脂肪滴量は、MCD 食+普通水投与群に対して MCD+ARB

    投与群で有意に抑制された(p<0.01)。また、肝での TNF-α発現量は ARB 投与群で明らかな発

    現抑制効果が認められた(p<0.03)。またα8-OHdG に対する免疫染色では、MCD 食+普通水投与

    群に対して MCD+ARB 投与群で有意に抑制され(p<0.001)、酸化ストレスの軽減が見られた。

    【結論】ARB は、肝脂肪化抑制、酸化ストレスの抑制などを介して NASH 肝の病状進展を抑制す

    る効果があると考えられた。