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第1回 ロマンス諸語の形成 川口 裕司 朝日カルチャーセンター新宿 ロマンス諸語の歴史と語源ーフランス語を中心に

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第1回ロマンス諸語の形成

川口 裕司

朝日カルチャーセンター新宿 ロマンス諸語の歴史と語源ーフランス語を中心に

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vin ワイン

フランス語で「酒」のことをboissonという。しかしこの単語は、vin「ワイン」の前では見る影もない。なぜだろうか。文献学的な言語研究では、1つの単語を手がかりにして、その文化の歴史がひもとかれる。時には予想もしないくらい、単語と文化がダイナミックに結びついていることがあり、言語研究者の興味はつきない。ワインはその典型例かもしれない。もしフランス語にワインがなかったらどうなっていたことだろう。astringent「タンニンが強い」、boisé「木の香りの」、corsé「こくのある」、fruité「果実風味の」、madérisé「酸化した」、tourné「変質した」などの形容詞は日の目を見ずに終わったかもしれない。

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1枚のタペストリー

パリのクリュニー国立中世美術館には、16世紀初頭につくられた1枚のタペストリーがある。果樹園に人々が集っている。男は足でブドウの実をつぶす。その後ろには圧搾機がセットされ、右手では樽詰めが行われている。たしかにワインづくりは人生の機微を映し出す格好のシーンともいえよう。しかしフランス語の場合にはもっと奥が深い。なぜならワイン自体が人格を兼ね備えているからである。

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そして文献へ例えば、13世紀初頭につくられた『聖ニコラ劇」には、gros「太った」あるいはmaigre「やせた」ワインが登場するし、フランス人は現在でもfaible「貧弱だ」、féminin「女性的だ」、souple「しなやかだ」、viril「男っぽい」などとワインの性格を形容する。

『世界のことば100語辞典 ヨーロッパ編』、千野栄一、石井米雄編、三省堂、1999、p.278.

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ロマンス諸語では

『ロマンス語比較辞典』, 伊藤太吾、大学書林、2020、p.411.

フランス語 ヴァンイタリア語 ヴィーノスペイン語 ビーノポルトガル語 ヴィーニョルーマニア語 ヴィン

フランス語 ヴィネーグルイタリア語 アチェートスペイン語 ビナグレポルトガル語 ビナグレルーマニア語 オツェット

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流れ

1.ロマンス諸語とは?2.ラテン語からロマンス諸語へ3.ラテン語の多様性4.ロマニアの分裂5.ロマンス諸語の語彙6.ロマンス諸語の語源7.「馬」について

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1.ロマンス諸語とは?

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ロマンス諸語の定義ロマンス語とは、ラテン語を継承する諸言語の総称である。ラテン語ははじめはイタリア中部のLatiumラティウムと呼ばれたテベレ川沿いの地域の言葉にすぎなかった。そのラテン語がローマの政治力と軍事力の拡大により支配者の言葉となり、帝国領内の各地で先住民の言葉に代わり公用語として普及したのである。しかし帝国の崩壊とともに各地は孤立し、ラテン語は世代から世代へと受け継がれるうちに固有の変化を遂げ、地域ごとに別の言語名で呼ばれている。類縁関係にあるこれらの言語は同一の語派にまとめられ、ロマンス諸語(以下単にロマンス語)と呼ばれる。『ロマンス言語学概論』、菅田茂昭、早稲田大学出版、 2009、p.1.

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ロマンス諸語の定義俗ラテン語に由来する諸言語を「ロマンス語」というのであるが、「ロマンス」とは一体いかなる意味を有するのであろうか。考古学上の発見が行われて「ロマンを感じる」というときの「ロマン」と「愛のロマンス」というときの「ロマンス」は果たして別であろうか。ヨーロッパには「ロマンチックな事を話すのがロマンス語である」という俗説があるが、これも決して根拠のない表現ではない。まず、ロマンス言語学で言う「ロマンス」と「ロマン」は同じことを指す。「ロマンス」は英語であり、「ロマン」はフランス語である。(...)「ロマンス」英語の述語Romance (<Romanice「ロマンス語で」)であり、「ロマン」はフランス語の述語roman (<romanus)であり、(...)元は同じこと(=ローマのことば)を指す。

『ロマンス語概論』、伊藤太吾、大学書林、2007、p.1.

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ロマニア (Romania)

ポルトガル語

スペイン語

フランス語

南仏語

カタルーニャ語 イタリア語

サルデーニャ語

ルーマニア語レト・ロマン諸語

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2.ラテン語からロマンス諸語へ

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ラティウム Latium

ラテン語ははじめはイタリア中部のLatiumラティウムと呼ばれたテベレ川沿いの地域の言葉にすぎなかった。そのラテン語がローマの政治力と軍事力の拡大により支配者の言葉となり、帝国領内の各地で先住民の言葉に代わり公用語として普及した。

菅田 (2009) p.1

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ラテン語の歴史区分

Andr Klump, Johannes Kramer, Aline Willems, Manuel des langues romanes, De Gruyter, 2014.

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古期ラテン語

BC240年~BC80年

古典ラテン語

BC80年~AD117年

キケロ

カエサル

ウェルギリウス

ホラティウス

オウィディウス

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アウグストゥス死去(AD14年)第2代皇帝ティベリウス(14-37年)からトラヤヌス(53-117年)の時代

帝国の領域拡大

セネカ

クウィンティリアヌス

タキトゥス

https://www.y-history.net/appendix/wh0103-069.html

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後期ラテン語(Late Latin)

AD180年~650年

ドナトゥス

プレスキアヌス

アウグスティヌス

聖ヒエロニムス

ボエティウス

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聖ヒエロニムスとウルガタ聖書

2世紀以来のラテン語訳聖書には不備が多かった。

382年に教皇ダマスス1世の要請により、ギリシア語やヘブライ語の原文を参照しながら、15年 (390-405年)かけてラテン語訳を完成した。

福音書以外の新約各書はヒエロニムスのものではないとされる。

ラテン語訳は広く普及したために、「普及版 Vulgata」と呼ばれた。

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3.ラテン語の多様性

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いろいろなラテン語

威信・規範

知識人のラテン語 sermo urbanus

地理

地方のラテン語 sermo rusticus

社会階層

兵士、民衆のラテン語 sermo castrensis, vulgaris

文体

日常的、親しいラテン語 sermo cotidianus, familiaris

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民衆のラテン語と知識人のラテン語

ラテン語 イタリア語 ラテン語 イタリア語

aurŭm「黄金」 > oro aureus「黄金の」 > aureo

flōre 「花」 > fiore flora 「植物相」 > flora

nĭvem「雪」 > neve niveus「雪の」 > niveo

dīscŭm「円盤」 > desco「食卓」 dīscŭm > disco

民衆的な言語使用 知識人の使用

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アウグスティヌス (354年-430年)

Melius est reprehendant nosgrammatici quam non intelligentpopuli.

「民衆に理解されないより、

文法家に非難されたほうがよい」

話しことばのラテン語が書きことばのラテン語から十分に離れるようになったのは650年頃

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プロブスの文法補遺 Appendix Probi(4世紀初)

作家偽プロブスの文章を集めた手稿末尾にある227語の俗語法

speculum non speclum「鏡」スペイン語 espejo, イタリア語 specchio

viridis non virdis「緑」スペイン語・イタリア語 verde, フランス語 vert

auris non oricla 「耳」スペイン語 oreja, ポルトガル語 orelha, フランス語 oreille, イタリア語 orecchia

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話しことばラテン語の優勢

3つの重要な要因

①西ローマ帝国における貴族階級の権力失墜

書きことばの権威が弱化

②キリスト教の普及

民衆教化による伝統語彙(古典ラテン語)の変化

③蛮族の侵入

瀕死の西ローマ帝国話しことばラテン語は帝国の各地域で異なる方向に進化

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ゲルマン民族の移動

https://sekainorekisi.com/glossary/%E8%A5%BF%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%9E%E5%B8%9D%E5%9B%BD/

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アウグスティヌスの『神の国』

410年に起きた西ゴート族によるローマ陥落を機に、異教徒によるキリスト教への非難が噴出する。『神の国』により、当時の精神的動揺を鎮めようとした(410-427年に執筆)。

2つの世界が存在する。1つは「神の国」であり、それはイエスが唱えた愛の共同体である。もう1つは「地の国」であり、世俗界である。「神の国」はやがて「地の国」にとってかわるが、「神の国」は精神的な世界であり、目で見ることができない。しかし、「地の国」において信仰を代表しているのは教会であり、その意味で、教会は重要性を持っていると説いた。

知の巨人アウグスティヌスは、ヨーロッパから海峡を渡って北アフリカに侵攻してきたヴァンダル族によって居住地のヒッポが包囲される中、430年8月28日に死去した。

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https://www.pinterest.jp/pin/695172892454745601/

476年 西ローマ帝国滅亡

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意外な事実:ゲルマン語の借用語

4世紀から5世紀にかけて、約30語程度のゲルマン語が借用された

*frisk 冷たい > スペイン語・イタリア語 fresco, フランス語 frais

*werra 戦い >スペイン語・イタリア語 guerra, フランス語 guerre

*blank 白 > スペイン語 blanco, フランス語 blanc,イタリア語 bianco

征服者が被征服者の言語を使用

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4.ロマニアの分裂

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ヴァルトブルクとロマニアの分裂

ヴァルター・フォン・ヴァルトブルク(Walther von Wartburg)

1888年、スイスのリードホルツに生まれ、1971年にバーゼルで死去。

最大の業績はFranzösisches Etymologisches Wörterbuch (FEW)『フランス語語源辞典』の編纂である。

ベルン、チューリッヒ、フィレンツェ、パリで勉強し。1921年にベルン大学講師。1929-39年にライプツィヒ大学、1940-59年にはバーゼル大学教授となった。

ポルトガル語

スペイン語

フランス語

南仏語

カタルーニャ語イタリア語

サルデーニャ語

ルーマニア語レト・ロマン諸語

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ロマニア分裂の諸要因

①地理的要因

②ローマ化の年代

③言語接触

④ローマ帝国の崩壊

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①地理的要因

ラ・スペツィアーリミニ境界(La Spezia – Rimini)

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東西ロマニア西ロマニア 東ロマニア

ラテン語 意味 ポルトガル語 スペイン語 フランス語 イタリア語 ルーマニア語

複数形 –s 壁 muros muros murs muri ―

君は~する -s 歌う cantas cantas chantes canti canţi

母音間 -p- 石鹸 sabão jabón savon sapone săpun

母音間 -t- 車輪 roda rueda roue ruota roată

母音間 -k- 火 fogo fuego feu fuoca foc

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②ローマ化の年代的要因

前241年 シチリア島

前237年 サルデーニャ島、

コルシカ島

前197年 ヒスパニア

前120年 ガリア・ナルボネンシス

前51年 ガリア

前15年 ラエティア

107年 ダキア

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ダキアのローマ化

107年 ダキア

ラテン語 意味 ラテン語 意味 ポルトガル語 スペイン語 フランス語 イタリア語 ルーマニア語

urbs 町civitas

hun. város町・町民

町cidade ciudad cité città oraș

os 口buccagula

顎喉

boca boca bouche bocca gură

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③言語接触

アスコリと基層語

1881年にアスコリ Ascoli (Graziadio Isaia Ascoli)は基層語のロマンス諸語への影響を主張した。しかし基層語が影響を与えている例は少ない。

ガリア語の影響(150語程度)

arpent 「土地の単位」, banne「籠」,borne「境界」,boue「泥」,bouleau「カバノキ」,braie「ズボン」,charpente「梁」,chemin「道」,chêne「コナラ」,など

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フランス語の中のガリア語caillou 「小石」

ガリア語 caljomouton 「羊」

ガリア語 multoラテン語 ovis

alouette「ひばり」ガリア語 alauda

alose「タイセイヨウヒラ」ガリア語 alausa

loche 「ドジョウ」ガリア語 leuka

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ゲルマン民族の移動

https://sekainorekisi.com/glossary/%E8%A5%BF%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%9E%E5%B8%9D%E5%9B%BD/

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上層語の影響

ゲルマン人の移動

・イタリアの地名・人名にランゴバルド族が280語程度の借用語

・フランク族はフランス語に200-700の借用語

・西ゴート族はスペインに定着し、幾つかの痕跡を残した

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④西ローマ帝国の崩壊284年 ディオクレティアヌス帝

帝国を行政的に4分割①東ローマ帝国(ニコメディア)②イタリアとアフリカ(ミラノ)③イリリア、マケドニア(シルミウム)④スペイン、ガリア、ブリテン(トリーア)

297年 帝国は12地域に分断324年 コンスタンティヌス帝330年 コンスタンティノープル遷都

西ローマの首都ラベンナ

476年 西ローマ帝国滅亡

傭兵隊長オドアケルが皇帝ロムルスを追放

http://histrace.com/overview_history/the_end_of_ancient_rome/

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ポルトガル語

スペイン語

フランス語

南仏語

カタルーニャ語 イタリア語

サルデーニャ語

ルーマニア語レト・ロマン諸語

5.ロマンス諸語の語彙

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全ロマニア型

ラテン語 意味 ラテン語 意味 ポルトガル語 スペイン語 フランス語 イタリア語 ルーマニア語

ignis 火 focus 竈の火 fogo fuego feu fuoco foc

equus 馬 caballus 役馬 cavalo caballo cheval cavallo cal

hiems 冬hibernum tempus

冬 inverno invierno hiver inverno iarnă

auris 耳 auricula 小耳 orelha oreja oreille orecchio ureche

vetus 古い vetulus 古い velho viejo vieux vecchio vechi

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東西ロマニア型

ラテン語 意味 ラテン語 意味 ポルトガル語 スペイン語 フランス語 イタリア語 ルーマニア語

edere 食べるmanducare

comedere

貪る会食する

comer comer manger mangiare a mânca

vir 男homo

hominem人類, 男 homem hombre

onhomme

uomo om

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周圏分布型

ラテン語 意味 ラテン語 意味 ポルトガル語 スペイン語 フランス語 イタリア語 ルーマニア語

afflare みつける tropare みつける achar hallar trouver trovare a afla

fervere 沸かす bullire 沸かす ferver hervir bouillir bollire a fierbe

humerus 肩 spatula 肩 ombro hombro épaule spalla umăr

magis 比較級 plus 比較級 mais más plus più mai

rogare 求める pregare 求める rogar rogar pregare prier a ruga

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周圏分布型

ラテン語 意味 ラテン語 意味 ポルトガル語 スペイン語 フランス語 イタリア語 ルーマニア語

caput 頭testa

capitia

素焼き壺小さい頭

cabeça cabeza tête testa cap

crus 脚gambaperna

動物の脚動物の太も

も・脚perna pierna jambe gamba picior

dies 日diurnus

dies

昼間の日

dia día jour giorno zi

pulcher 美しいbellus

formosus美しい

均整のとれたformoso hermoso beau bello furmos

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6.ロマンス諸語の語源

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マイヤー・リュプケヴィルヘルム マイヤー・リュプケ Wilhelm Meyer-Lübke

1861年、デューベンドルフ(Dübendorf チューリッヒ郊外)に生まれ、1936年、ボン(Bonn)で死去。文献学者、言語学。ロマンス諸語の比較文法に関する多数の著作を出版。ドイツ・チューリンゲン州のイェーナ大学(Friedrich-Schiller-Universität Jena)で 1887年から1890年まで教鞭をとり、1891年から1915年までウィーン大学、続いてボン大学に移った。

- Grammatik der romanischen Sprachen 『ロマンス諸語文法』 1890-1902年.(フランス語訳 1890-1906年)- Einführung in das Studium der romanischen Sprachwissenschaft 『ロマンス言語学研究入門』 1901年.- Romanisches etymologisches Wörterbuch (REW)『ロマンス諸語語源辞典』 Heidelberg, C. Winter, 1935年.

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ラテン語 ignis / focus 「火」

ラテン語 意味 ラテン語 意味 ポルトガル語 スペイン語 フランス語 イタリア語 ルーマニア語

ignis 火 focus 竈の火 fogo fuego feu fuoco foc

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3400 focus 「火」

ルーマニア語 foc

ダルマチア語(ヴェリア方言)fuk

イタリア語 fuoco

サルデーニャ語(ログドゥーロ方言)fogu,

レト・ロマンス語(エンガディン方言) fög

フリウリ語 fug

フランス語 feu

プロヴァンス語 fuec

カタルーニャ語 fuk

古スペイン語 huego

ポルトガル語 fogo

古ガスコン語(ベアルン方言) hoec 「竈, 家」

ボゴタ方言(コロンビア) fugo 「炉, いろり」

Ablt. (= Ableitung) 以下は派生語

REW, 1911年版.

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ロルフスとロマンス諸語の語彙分布ゲアハルト・ロルフス Gerhard Rohlfs

1892年にベルリンに生まれ、1986年にテュービンゲンで死去。ドイツの言語学者であり、南イタリア諸方言、ガスコン語について研究した。中でもロマンス諸語の語彙の歴史に関する優れた研究を残した。グルノーブル大学とベルリンのフンボルト大学で勉強した後、テュービンゲン大学とミュンヘンのルートヴィヒ・マクシミリアン大学で教鞭をとった。

Panorama delle lingue neolatine: Piccolo atlante linguistico pan-romanzo『新ラテン諸語概観:汎ロマンス語小言語地図』Gunter Narr, 1986.

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Fuoco, feu「火」ルーマニア語 focフリウリ語 fûcイタリア語 fuoco南イタリア方言 fuecu (7)ロンバルディア方言 fök (8)南イタリア・シチリア語 luci

< ラテン語 lūcisシチリア語 focu (3)サルデーニャ語 foguロマンシュ語 fiug (5)プロヴァンス語 fögu (2)フランス語 feuオック語 focガスコン語 houèc (1)カタルーニャ語 focスペイン語 fuegoアストゥリアス語 fuèu, fuíu (4)ポルトガル語 fogo

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ラテン語 ignisの末裔

フランス語

ignicole「火をあがめる」1732年

ignifuge 「耐火性の」1890年

ignition 「点火」 < ラテン語 ignitio

1370-80年 「やけど」の意味, 16世紀 「燃焼」Trésor de la Langue Française informatisé http://www.atilf.fr/tlfi

スペイン語

ígneo 「火の」 1444年

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ラテン語形の競合

原形 統合的比較級(旧システム)

分析的比較級(新システム)

altus 「高い」 altior magis altus plus altus

ロマンス諸語で衰退する。

口語では、文法家ワロー (Varro 前116-後27年)、劇作家プラウトゥス(Plautus 前254-184年)の頃からすでにmagisが用いられていた。

紀元後1世紀になりplusの比較級が登場する。たとえば神学者テルトゥリアヌス(Tertullianus 160-220年?)の例。

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Gerhard Rohlfs, Romanische Sprachgeographie, C.H. Beck’sche Verlagsbuchhandlung,

München, 1971, p.239.

magis / plus の競合

ガリシア・ポルトガル語chus cf. chus pequeno

古カスティリア語plus vermejo

マヨルカ島(Mallorca)、ルシヨン地方(Roussillon)、アンプルダー州(Empordà)

では、今日でもplusが使用される。

no en parlem pus

「私たちはその話はもうしません」

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統合的比較級の末裔風刺詩人 ユウェナリス(Juvenalis 60-128年)

Maiorque videtur et melior vicina seges.

「隣の畑は大きく良く見える」

「良い」 原形 bonus / 比較級 melior 「悪い」 原形 malus / 比較級 pejor

フランス語 meilleur フランス語 pire

南仏語 melhor 南仏語 pejer

イタリア語 migliore イタリア語 peggio

サルジニア語(サッサリ)migliori サルジニア語(サッサリ) péggiu

ロマンシュ語(エンガディン) melder ロマンシュ語(エンガディン) pir

カタロニア語 millor カタロニア語 pitjor

スペイン語 mejor スペイン語 peor

ポルトガル語 melhor ポルトガル語 pior

ルーマニア語 mai bun ルーマニア語 mai rău

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7.「馬」について

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ラテン語 equus / caballus 「馬」

ラテン語 意味 ラテン語 意味 ポルトガル語 スペイン語 フランス語 イタリア語 ルーマニア語

equus 馬 caballus 役馬 cavalo caballo cheval cavallo cal

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ラテン語 equus / caballus 「馬」

ルーマニア語 calレト・ロマンス諸語 chavagiイタリア語 cavalloサルデーニャ語 cad̥d̥uフランス語 cheval南仏語 cavalカタルーニャ語 cavallスペイン語 caballoポルトガル語 cavalo

ポルトガル語

cavaloスペイン語

caballo

フランス語

cheval

南仏語

caval

カタルーニャ語

cavall

イタリア語

cavallo

サルデーニャ語

cadd̥̥u

ルーマニア語

cal

レト・ロマンス諸語

chavagi

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ラテン語 equa / caballa 「雌馬」

ルーマニア語 iapă

イタリア語 cavalla

南イタリア、シチリア語jumenta

サルデーニャ語 ebba

フランス語 jument

中央高地方言 equa

南仏語 caballa

カタルーニャ語 egua

スペイン語 yegua

ポルトガル語 égoa

Einführung in die Romanische Etymologie, Max Pfister, Wissenschaftlich Buchgesellschaft,

Darmstadt, 1980, p.67.

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言語地理学 Linguistic Geography

ジュール・ジリエロン Jules Gilliéron

1854年、スイスのベルン州 Neuvevilleに生まれ、1926年にCergnaux-sur-Gléresseで死去。スイスの言語学者・方言学者。1883年から死ぬまで、パリの高等実習研究院(École Pratique des Hautes Etudes)で方言学を教えた。最大の功績は、1902-12年にかけて、Atlas Linguistique de la Franceを出版したことである。

方言調査1897年8月~1901年8月まで全8回調査

639地点で、延べ735人を調査

1421枚の言語地図

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フランスにおける雌馬

言語層の仮説

第1層:èga

どこでも後退し、中世以来領域を失い続けている。オーヴェルニュ地方とジュネーヴ近郊のみで残存。

第2紀層:cavala(イタリア起源)南フランスとリヨネ地方に広がる。

第3紀層:jument この語が広い領域に伝播した。東部では cavala 地区を分断し、リヨネ地方に達している。

Brun-Trigaud Guylaine, Yves Le Berre et Jean Le Dû, Lectures de l’Atlas

linguistique de la France de Gilliéron et Edmont Du temps dans l’espace,

Editions du Comité des travaux istoriues et scientifiques (CTHS), 2005, p.102.

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ラテン語 equus の末裔

フランス語

équidés 「ウマ科」 1834年équin 「馬のような」1509年 < ラテン語 equinuséquitation 「乗馬」1503年 < ラテン語 equitation

イタリア語

equino = フランス語 équinequisèto 「スギナ」 cf. フランス語 queue de cheval 馬の尻尾equitazione = フランス語 équitation

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参考文献• 『ロマン諸語』, Ch. カンプルー, 島岡・鳥居訳, 文庫クセジュ, 1975, 白水社

• 『ロマンス語入門』, R. ポズナー, 風間・長神訳, 1982,大修館書店

• 『ロマンス語比較文法』, 島岡茂, 1986, 大学書林

• 『ロマンス語の話』, 島岡茂, 1995, 大学書林

• 『ロマンス語学概論』, 伊藤太吾, 2007, 大学書林

• 『ロマンス語入門』, 町田健, 2011, 三省堂

• 『ロマンスという言語―フランス語は、スペイン語は、イタリア語は、いかに生まれたか―』, 小林標, 2019, 大阪公立大学共同出版会

• 『ロマンス語学概論』, 菅田茂昭, 2019, 早稲田大学出版部

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次回の予告

ロマンス諸語の現状