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Vol.03AUTUMN/WINTER2019
byCanon IT Solutions
お 客 さ ま と 共 に デ ジ タ ル イ ノ ベ ー シ ョ ン を 創 造 す る
[スティックバイドリーム]
編集
・発
行 キ
ヤノ
ンIT
ソリ
ュー
ショ
ンズ
株式
会社
企画
本部
〒
108-0075 港
区港
南2-16-6
キヤ
ノンSタ
ワー
☎03-6701-3603
ⓒ2019 Canon IT Solutions Inc.
発行
人 竹
中一
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制作
日経
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レシ
ーズ
特別企画
スマートファクトリーの時代に日本の製造業が勝つために特集
「AvantStage」で 製造業務を次のステージへ
DX を阻む原因はレガシーにあった金澤 中野さんがまとめられた「DXレポート」はなかなか刺激的な内容ですが、これまでお客さまのシステムをスクラッチ型で開発してきた私自身は複雑な心境です。というのは、これまでのシステム開発はお客さまのご要望をしっかりお聞きして、できる限り応えるのが基本で、プログラムを改修する場合にも、お客さまから「できるだけコストを抑えてほしい」といった要求に応える形で取り組んできました。 その積み重ねが日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を阻む障害になっているというご指摘を受けたことで、もっとこうしておけばよかったと反省する部分と、今からでもお客さまのビジネスに貢献できるようにあらためて取り組みたいという、両方の思いを持ちました。中野 あのレポートが生まれた背景には、DXに取り組む日本企業の皆さんを支援したいという強い気持ちがありました。経済産業省としては、3年ほど前からDXを推進すべく旗を振ってきましたが、実
際には多くの企業が踏み出せずにいました。 いろいろな方にお話を伺っている中で、DXに成功した企業の方は「社運を懸けて既存システムを刷新するプロジェクトに成功したからDXに踏み出すことができた」と言うんですね。聞いてみるとどの企業も古いシステムを抱えていて、それがDXの推進を阻んでいると分かりました。 ただ、それは過去の間違いだとは思っていません。むしろITが技術的に未熟だった時代から日本企業が積極的にIT化に取り組んだ結果だと思っています。金澤 確かに大変な苦労をしながら、その当時の最新技術や開発手法を駆使してシステムを開発してきました。そのシステムが巨大化・複雑化し、レガシーシステムになりましたから、「刷新」といっても簡単にはいきません。DXを阻む要因になっていると思います。
相手への気遣いが複雑なシステムに中野 調べていて刷新を阻む要因が4つあることが分かりました。第1にコストが高いこと。大企業であればあるほどコストがかかります。何百億円にも
「2025年の崖」の先には明 るい未来がある立ちはだかる古いものを変えることで
新しいメリットを引き出せる
2018年9月に経済産業省が発表した『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』は、世の中に大きなインパクトを与えた。
DXに取り組む日本企業にとって、複雑化した既存システムが大きな障害となっていて、2025年までにそれを克服しないと、デジタル化の大きな波に乗り遅れると警告したからだ。
こうした状況をキヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)はどう受け止め、ユーザー企業のために何をすべきなのか。中心となってレポートをまとめ上げた経済産業省参事官の中野剛志氏と
弊社代表取締役社長の金澤明が語り合った。(以下、敬称略)
SpecialDialogue [対談]
キヤノンITソリューションズ株式会社代表取締役社長
金澤 明Akira Kanazawa
経済産業省 製造産業局参事官(デジタルトランスフォーメーション・イノベーション担当)
(併)ものづくり政策審議室長
中野 剛志氏Takeshi Nakano
STIC × DREAM
02
なる。第2に、時間もかかる。5年や10年かかるかもしれない。第3には、コストも時間もかかる上に失敗するリスクがある。失敗してITベンダーと訴訟問題になっているケースもあります。 そして第4は、これを理解するのが難しかったのですが、新しいシステムを入れることは業務のやり方を変えることになることです。これまで業務プロセスに合わせてシステムを変えてきたわけですが、新しいシステムはそうではない。システムに合わせて業務のやり方を変える必要がある。例えて言うと、靴に合わせて足の大きさを変えなければならないのです。 そうなると情報システム部門だけで判断できることではありません。経営者の決断が必要になります。金澤 Fit to Standardという考え方ですね。新しいシステムには今の業務のやり方とは相いれない部分があって、それが大きな障害になることもあります。ただ、そこには日本独特の文化的な特質もあると思います。 これまで私たちがお客さまの求めるシステムを開発してきたように、情報システム部門も使う人にとって優しいシステムにしたいと考えています。そんな相手
を気遣う心が個別仕様のシステムづくりに反映されてしまったのだと思います。中野 もう1つ別の側面もあります。米国ではITエンジニアの7割がユーザー企業にいるといわれています。ソフトウェアの改修なども自分たちでやってしまいます。一方、日本は全く逆でベンダー企業に7割いて、ユーザー企業には3割しかいません。エンジニアが少ないために、どうしてもベンダーに丸投げしてしまいがちです。 裏を返すと、サービスが良くて信頼できるからこそ、アウトソースしたほうがよいという合理的な判断が働いていたわけです。ただ、依頼を受けるほうはむちゃな要求でも何とか応えようとします。その積み重ねが建て増しされて複雑になった大きな旅館のような、今の状況をつくり出してしまったと考えています。
刷新プロジェクトは人材育成のチャンス金澤 良かれと思ってやってきたことが「部分最適」といわれるような今の状況につながったのは確かです。ただ、大事なのはこれからどうするか、ということです。
既存システムを刷新すれば日本企業の強みがもっと生かせる
壁を乗り越えるための効果的な
アプローチを提案していく
「2025年の崖」の先には明 るい未来がある
STIC × DREAM
03
中野 まさにその通りです。民間企業が手を抜いていたことで起きた問題であれば、役所としては「自分で責任を取ってください」と言うしかありませんが、決してそうではありません。良かれと思って一生懸命取り組んできた結果なのです。 それが原因でDXに追随できないのであれば、役所としてできることはやっていこうと考えました。その1つが今回のDXレポートです。「2025年の崖」という言葉だけがセンセーショナルに受け止められましたが「崖を飛び越えて次に進んでほしい」というのが私たちの思いです。金澤 その思いは十分伝わってきますし、ユーザー企業のトップ層にも響いていると感じています。経済産業省がムードづくりをしてくれたことで、私たちもやりやすくなりました。 それを受けてご提案しているのが、一気にDXを進めるのではなく、3つのステップに分けて推進していくことです。 第1段階ではレガシーシステムを含めたITシステムの整理を行います。肥大化したシステムの不要な
機能を縮小、あるいは廃棄します。更新頻度の少ないシステムは塩漬けにして、頻繁に更新がある領域では機能分割や刷新を検討し、新しい領域はレガシーシステムの外側のクラウド上に機能を追加します。 第2段階は、SoR(System of Record)の維持とSoE(System of Engagement)のエンハンスです。SoRは従来の業務領域をカバーするシステムであり、競争力への影響度が低い領域については、できるだけ標準的なものに合わせて効率化すべきです。一方のSoEは、システムの頻繁な変更や機能追加があります。短期間で開発することが大きなテーマであり、ローコード開発が有効です。 そして最後の第3段階では、当社が長年にわたって注力してきた、画像解析や言語処理、数理技術などを活用して、デジタルを駆使したイノベーションを実現します。このように3段階に分けたグランドシナリオが必要であると考えています。中野 確かに古いシステムを刷新してDXを推進するのには、時間がかかるかもしれません。しかし、その先には素晴らしい景色が開けていると思うのです。そのためには、ユーザー企業が主体性を持って取り組むことが大きな鍵になります。 よくユーザー企業の方からは「システム刷新をやろうとしても人材がいない」という声を聞きますが、業務革新を伴うシステム刷新をやろうとすれば情報システム部門だけではできません。そこで各部門やIT子会社から人を集めることになり、これが将来に向けた大きな力になっていきます。 実際にシステム刷新を断行した企業では、人を集めて特別チームをつくったそうです。そこにはITが分かっていて業務が分かっていない人と、業務が分かっていてITが分かっていない人が混在していましたが、業務とシステムの変革を議論しているうちに、お互いの業務を知り、企業全体としてのITリテラシーが大幅に向上したそうです。 既存システムの刷新という一大プロジェクトは単なるコストではなく、企業全体を変える活動であり、デジタル人材を育成するチャンスなのです。
Special Dialogue [対談]
中野剛志(なかの・たけし) 1971年生まれ。1996年東京大学教養学部卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2005年英エディンバラ大学から博士号(政治思想)取得。経済産業省商務情報政策局情報技術利用促進課長などを経て、2019年7月から製造産業局参事官(デジタルトランスフォーメーション・イノベーション担当)(併)ものづくり政策審議室長。
ユーザー企業にとって刷新プロジェクトが
人材育成のチャンス
STIC × DREAM
04
金澤 システム刷新というプロジェクトを意味あるものにするためにも、できるだけ早く取り組むほうがよいと思います。着手が遅れるほど費用もかさんできます。しかも、全社的な取り組みですから、ベンダーだけでは進められません。成功の秘訣はお客さまが本気で踏み込んでくれることです。そのためには経営者の覚悟が必要です。 現状では、大手企業の間でも経営者のシステムへの温度差はさまざまです。そのため、経営者の覚悟やシステムへの理解、全社的な取り組みを推進できる組織体制づくりなど、ベンダーだけでは進められない部分の話をお客さまにしています。
新しい IT の世界でも日本の強みが生かせる中野 システムを刷新することで、得られるメリットはいろいろあります。例えば、最近注目されるアジャイル開発などももっと活用できるようになります。これは日本のものづくり現場にもともとあったワイワイガヤガヤのやり方にちなんでいるとか。この手法は日本企業には合っている気がしています。金澤 アジャイル開発であれば、スモールスタートもできて、変更にも柔軟に対応できます。当社では、ビジネス部門とIT部門間に存在する経験や意識のギャップを解消するためローコード開発プラットフォーム「Web Performer」を提供し、アジャイル開発をサポートしています。中野 アジャイル開発は雇用形態から見ても日本にぴったりだと思います。さまざまな職種の人が職掌を超えて意見を出し合っていきます。これは専門性に特化した雇用形態の国にはなじみません。日本企業の強みが生かせる手法です。金澤 新しいITの世界でも日本の強みが生かせるということですね。加えて、日本企業がDXを進めるということは、消費者の利便性や利益が高まり、少子化による労働力不足や環境破壊といった社会問題の解決の解につながるかもしれません。中野 一度全部をデジタル化してしまえば、後はかなり楽になるはずです。
見逃せないのは、ITの使い勝手が良くなって、ITが人間のほうに寄ってきてくれていることです。しかも製造業で働く人たちはもともとITにはなじみもありますし、今はデジタルに慣れたデジタルネイティブの社員も増えています。「2025年の崖」の先には日本企業の強みを生かせる世界が広がっているのです。金澤 中野さんがおっしゃるように、崖を飛び越えれば新しい世界が開けます。今後、子供の頃からスマホを手にしてきた世代が社会に出て活躍する時代が来ます。彼ら彼女らの感性がどんなビジネスモデルを打ち出し、どんなUI/UXを創造し世の中を変えていくかはとても楽しみです。今の経営層の世代は、新しい人たちの感性を生かせるような経営の仕組みや教育環境を整えていく責任があり、一方でビジネスを維持・向上させていくことも必要です。デジタル人材の不足などでDXを進めにくい企業にとっては、厳しい時代になる事が予想されますが、その中でも生き残れるようなサポートをITをもって考えるのが、われわれITベンダーの役割の1つであると考えています。本日は、どうもありがとうございました。
金澤 明(かなざわ・あきら) 1959年生まれ。1992年住友金属システム開発(現キヤノンITソリューションズ)入社。2015年に執行役員SIサービス事業本部開発統括センター長。2016年に上席執行役員SIサービス事業本部長。2017年に取締役。キヤノンマーケティングジャパン執行役員(現任)。2018年に常務執行役員。2019年3月に当社の代表取締役社長に就任。
信頼してもらえるパートナーとしての
付加価値を追求する
STIC × DREAM
05
今、世界規模でスマートファクトリー推進の動きが進行中だ。日本の製造業もさまざま
な形でチャレンジを続けている。ただ、この方向を目指すためには、いくつかの重要な課題に向き合う必要がある。情報共有を阻む心理的な壁を乗り越え、海外のライバルとのビジネスモデル競争にも勝ち抜かなければならない。この分野で積極的な活動を続ける東京大学大学院の越塚登氏に、スマートファクトリーへの道を展望してもらった。
C O N T E N T S
Special Column[特別企画]
Vol.03AUTUMN/WINTER 2019
02
[対 談]
「2025年の崖」の先には明るい未来がある既存システムを刷新すれば、日本企業の強みがもっと生かせる
経済産業省参事官
中野 剛志氏
キヤノンITソリューションズ 代表取締役社長
金澤 明
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[特別企画]スマートファクトリーの時代に日本の製造業が勝つために
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[特集]
「AvantStage」で製造業務を次のステー ジへ食品製造業が直面するサプライチェーンマネジメント の最適化
16
[事 例]マルハニチロ株式会社 様新生産管理システムで品質向上とデジタル統合管理を実現
18
[Pickup Solution]30年以上の実績を誇る「EDI-Master」シリーズで企業間取引を支える“EDI ソリューション”
20[Tech & Quality Report]
数理技術による移動体データ分析
22
[部門紹介]クラウドサービス推進本部クラウドサービスコンサルティング部専門性の高いメンバーが連携しながら医療情報のクラウド化を支援
23[日本史新発見] ~あの出来事の最新事情~
赤穂浪士は手厚くもてなされた!?
スマートファクトリーの時代に日本の製造業が勝つために
STIC × DREAM
06
はずです。つくったものがどのように運用されているかといった情報も重要ですから、保守サービス事業者などとの情報共有も欠かせません。その上で、究極的には国内外の関係するプレーヤーがつながり、調達・生産から販売、保守、廃棄に至る製品ライフサイクルの最適化を目指す――それが、私の考えるスマートファクトリーです」 越塚氏が例に挙げたのは、造船メーカーと船会社との間の情報共有である。造船メーカーは図面や部品などに関する製造情報を持っている。一方の船会社は、それぞれの船舶がどの時期に、どのような航海をしてきたかという情報を蓄積している。 「造船メーカーの情報が船会社と共有されれば、船体のどこに疲労がたまっているのかを推定することができます。結果として、メンテナンスの効率が高まります」と越塚氏は言う。 逆に、船会社の情報が造船メーカーに渡れば、耐久性やメンテナンス性を高めた船づくりに生かせるはずだ。製造側と運用側との情報共有は双方にメリットがある。スマートファクトリーの重要な視点だろう。
1994年、東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻博士課程修了。2009年から東京大学大学院情報学環教授。ユビキタス情報社会基盤研究センター長も務める。研究テーマはユビキタスコンピューティング、リアルタイムシステムなど。
共有可能な情報をサイロに閉じ込めていないか? 日本経済の牽引役といわれる製造業は、今大きな曲がり角に差し掛かっている。適切なハンドルさばきができるかどうかは、日本の行方にも大きな影響を与えるだろう。世界中のメーカーの多くが、スマートファクトリーを推進している。背景にあるのは、AIやIoTをはじめとする技術の進化だ。日本メーカーはこうした動きに対して、どのように向き合うべきだろうか。 この問題を考える前に、まずスマートファクトリーについて整理しておこう。 東京大学大学院教授の越塚登氏は、「スマートファクトリーの概念は非常に広いものであり、『これがスマートファクトリーだ』と一概には言えません。工作機械やロボットなどが置かれている工場だけを想定するのではなく、もっと広い視点で考える必要があると思います」と語り、こう続ける。 「生産をする現場という観点では、工場のような建屋のない場所、例えば建築現場などもスマートファクトリーになり得る
Special Column[特別企画]
N o b o r u K o s h i z u k a
東京大学大学院情報学環教授
越塚 登氏
スマートファクトリーの時代に日本の製造業が勝つために
STIC × DREAM
07
製造と卸売りや小売りなどの関係においても、同じことがいえる。ドイツの産業戦略である「インダストリー4.0」が目指すのも、このような方向でのサプライチェーンの最適化だ。 これには会社の垣根を越えた情報共有が求められる。しかし、この観点で見たとき、日本メーカーには課題があると越塚氏は指摘する。 「生産現場のノウハウには優れたところが多くありますが、残念ながら、それが工場や部門、あるいは社内といったサイロ内に閉じているケースが多い。自分たちの技術が外に出るのを嫌がる傾向があり、手持ちのノウハウだけを使って他社と差異化を図ろうとしているように見えます。海外メーカーが多様なプレーヤーとつながって新しい価値を創出しようとしている今、これまで通りのやり方でいいのかをあらためて考えてみる必要があるでしょう。また、社外との情報共有を行う際のセキュリティを心配する声もよく聞きますが、これは技術的に解決できる課題です」 企業にとって秘中の秘ともいえる「匠
たくみ
の技」は製品を差異化する決定的な要素である。とはいえ、製造全体に占める割合はそれほど多くはない。越塚氏は「業界によって違いますが、おそらく匠の技といえるのは5%程度ではないでしょうか」とみている。100個の部品から成る製品があるとすれば、そのうち5個が匠の技でつくられているというイメージだ。それならば、残り95%のデータは秘密にしておく必要はなく、取引先と共有する、あるいはオープン化することができるはずだ。 どの情報を企業秘密として非公開にし、どこまでをオープンにできるかを決めておき、できるところから情報共有することでスマートファクトリー実現への道が見えてくるだろう。
日本企業の強みは品質管理 日本企業のビジネスモデルに関わる課題もある。「サービス化の流れが進行し、サブスクリプションモデルなどが広がったときに、果たしてこれまでのような有利な戦い方ができるのだろうか」と越塚氏は懸念している。 「日本企業の強みはものづくりだ、とよくいわれます。これは半分正しくて、半分間違っていると思います。今や、中国やアジア諸国のほうが、多様なものを大量に生産しています。日本では、ものづくりの現場が少なくなっているのです。私自身は、日本の強みは品質管理にあると考えています。品質管理の重要性が高い分野では、日本企業は高い競争力を維持しています」 自動車は好例だろう。日本車が海外市場での評価を高める上で、高品質で故障が少ない点は大きな差異化ポイントになった。しかし、自動車がモビリティーサービスになると、状況は変わるかもしれない。これが、越塚氏の懸念である。 「サービスという観点では、トータルの品質こそが重要であり、モノ自体の品質は価値全体のごく一部という考え方が広がる可能性があります。海外では、そうした発想でサブスクリプショ
ンビジネスを展開する企業が少なくありません。自動車のサブスクリプションモデルで考えてみると、利用者にとってはモノ(自動車)自体の品質は本質的な問題ではありません。故障したとしても、すぐに代替の移動手段が提供されればそれでいいのです」 価値競争の主戦場がサービス品質にシフトしたとき、品質管理の比重は低下する。そんな時代が到来するかもしれない。 日本企業はものづくりにこだわりを持っている。だから、製品の品質を99%から99.99%に高めるために、品質管理を含めて多大な努力を傾注する。一方、海外のライバルは同じ土俵で戦おうとはせず、「製品品質は95%くらいでOK。その代わり、サービスレイヤーで勝負する」という戦略を取るのではないか。それが越塚氏の見立てだ。 その場合、サービス品質を高めるためのビジネスモデルやシステムこそがキモになる。故障しない製品をつくるのではなく、故障したときに代替品を用意できる流通の仕組みを整えることだ。工場と流通などの関係者をつないで情報をやりとりし、顧客視点での最高の満足を与えるような取り組みである。これも、スマートファクトリーの1つの形だ。 日本企業としては、1つの問いに向き合う必要がありそうだ。自分たちが提供する製品分野では、品質管理の重要性を将来にわたって高く維持できるか否か――。もし不安があるなら、サービス化に向けた取り組みを加速する必要がありそうだ。
エッジ重視のスマートファクトリーを目指す スマートファクトリーの将来を展望する上で、「クラウドとエッジ」の関係についても考える必要がある。工場で生成される大量のデータをすべてクラウドに載せて分析するのは、ネットワークの負荷を考えると現実的ではない。分析結果を工場設備の制御に即座に反映させようとすれば、ネットワークの遅延が問題になる。 そこで、エッジコンピューティングという考え方が注目されている。センサーなどから集めた一定のデータをエッジ(設備や機械など)で分析処理して、設備の制御を最適化するなどの価値を生み出そうというもの。リアルタイム処理が必要なデータはエッジ側、日次処理が可能なデータはクラウドといったすみ分けが進むと考えられるが、これらの境目が明確に定まっているわけではない。なお、両者の中間に工場内サーバーを置くなど、いくつかのレイヤーでの役割分担が進むという見方もある。 「クラウドとエッジ、どちらがスマートファクトリーのイニシアチブを握るか。それは、製造業の将来を左右するテーマです。クラウドを展開するプラットフォーマーは、当然、クラウド側で価値のあるデータを集めようとするでしょう。一方、製造業としてはエッジでインテリジェンスを生み出す仕組みを求めているはず。今後、プラットフォーマーと製造業の間で綱引きになる可能性があります」と越塚氏はみる。同様の主導権争いは、
Special Column[特別企画]
STIC × DREAM
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自動運転のシステムなど他の分野でも見ることができる。 そこで、越塚氏が今注力しているのが、製造業の強みを生かしたスマートファクトリーを目指す一般社団法人IVI(Industrial Value Chain Initiative、理事長:法政大学・西岡靖之教授)の活動だ。IVIには製造業や製造機械メーカー、ITベンダーなどの各社が参加しており、越塚氏も研究者としての立場から積極的に関与している。 「IVIでは工場間のデータ流通を地道に調査・分析するなど、地に足のついた活動と提言を行っています。クラウドがイニシアチブを握る形ではなく、製造業が主体性を持ってスマートファクトリーを推進できるよう、データ連携の在り方などを工夫しました。特に日本の製造業の方々には、IVIにぜひ注目してもらいたいですね」
「変えろ」というだけでは何も変わらない 工場をスマート化するにあたりいくつかの課題がある。その1つが、製造装置の問題だ。工場には古くから使い続けている製造装置があり、それにはセンサーが搭載されておらずインターネットにも接続できないものが多く、スマートファクトリーを実現するための障壁となっている。さりとて最新鋭の機器の導入には莫大な費用がかかる。 しかし後付けのIoT機器を活用することで、この問題を解決できる可能性がある。例えば、デジタル化されていないメーターの検針は、カメラを取り付けてAIで画像認識させることでデジタルデータとして取得できるようになる。このように後付けでセンサーを取り付け、データを取得する方法を考えていくのは有効である。
スマートファクトリー化は従来からの作業内容や作業員の配置を大きく変えることになるため、現場からは反発が予想される。変革を恐れる人や組織に対して、どのようにして合意を得るかというのは大きな課題だ。この課題を解決するためにマネジメントの役割は大きいと越塚氏は言う。 「工場をスマート化すれば、モノの流れや業務の流れも変わります。部長や課長の数、組織の形も同様です。マネジメントそのものを変えなければなりません。それは困難や苦しみを伴うプロセスですが、日本企業は『変える』ということを軽く考えているように感じます。組織を変えるための技術もあるし、経営学にはチェンジマネジメントという分野もあります。こうした専門的な知見に目を向けないまま、社長が『変えなさい』と言えば変わると思っているようでは、結局のところ何も変わらないでしょう。スマートファクトリーでも、同じことです」 スマートファクトリーを推進すれば、どこかの担当者はAIに置き換えられるかもしれない。その担当者をどのように説得するのか、あるいは当人の経験を生かせる別の場を用意することができるのか。そのためには、人間心理への洞察に基づく注意深いアプローチが必要だろう。また、組織の構造や在り方とITの変革も求められる。 「チェンジマネジメントには心理学や組織、ITという3方向からの取り組みが必要だと思います。一部だけを取り出して変えようとしても、現場の抵抗を受けて前に進まなくなるでしょう。スマートファクトリーはその種の変革であり、経営者には相当の覚悟が求められます」と越塚氏は言う。現場任せでは、スマートファクトリーは実現できない。今、経営者のリーダーシップとコミットメントが問われている。
スマートファクトリーの時代に日本の製造業が勝つために
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人手不足と生産性の課題をIT で解決するために
今、さまざまな産業分野で人手不足が深刻化しています。一方で、働き方改革を進める企業も増えています。人が足りないけれど、残業時間は増やせない――。こうしたジレンマを解決するために、生産性向上への取り組みは待ったなしといえるでしょう。 従業員の高齢化も進んでおり、スキルやノウハウの伝承も大きな課題となっています。ものづくりの現場においては業務が属人的になっていることが多く、熟練社員が退職すると製品の
「AvantStage」で製造業務を 次のステー ジへ食品製造業が直面するサプライチェーンマネジ メントの最適化キヤノンITソリューションズが提供する「AvantStage」は、製造業向けのソリューションとして長年の実績があります。特に、食品製造業向けの機能が充実しており、多くのお客さまからの支持を得ています。人手不足や物流危機など、食品業界を取り巻く環境は厳しさを増しています。課題を乗り越えるために、あらためてITに向き合う時期ではないでしょうか。AvantStageと当社のノウハウが皆さまの業務をサポートいたします。
質が大きく低下してしまうことにもなりかねません。 特に課題意識を高めている業界の1つが、食品製造業です。キヤノンITソリューションズSIサービス事業部製造・公共・流通営業本部営業第一部部長の森永明洋はこう話します。 「食品製造業のアイテム数は非常に多く、1商品当たりのバラエティーも豊富です。食品には賞味期限や出荷期限があり、他の商品と比べて複雑な管理が求められます。また、多品種少量生産の傾向が強く、人手に頼る部分が多いという特徴があります。検査工程を例に取っても、目視検査が多いなど、労働集約的な工程が多くを占めています。結果として、生産性がなかなか高まらない。こうした悩みは、食品製造業の多くの企業
Feature[特集]
Photos:TWO / w/b / 彩 / PIXTA(ピクスタ)
STIC × DREAM
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の帳票などで管理しているケースが多いので、スピード感のある対応が難しくなります」と森永は言います。
食品ロスを防止するために需要予測と生産計画を
一方で、近年は食品ロスに対する認識が高まっています。日本における食品廃棄物は年間2759万トン、本来食べられるにもかかわらず捨てられた食品ロスはその2割以上の約643万トンと政府は推計しています(2016年度)。食品ロスの原因には売れ残り、仕込みすぎ、納品期限切れなどがあり、企業側の取り組みによって改善できるものも少なくありません。 しかし廃棄を防ぐために生産量を削減すると、品切れが発生するリスクが高まります。品切れは機会損失が生じることに加え、消費者を競争相手に奪われてしまう危険もあります。食品ロスと品切れ防止はトレードオフの関係にあり、その中でバランスをとっていくには、需要予測の精度向上と、工場・生産ラインの生産能力を加味した生産計画が欠かせません。また、工場から各地の物流センターや倉庫へ、輸送能力も考慮した在庫補充計画も求められます。 このような状況から食品製造業においても、ITの導入の重要性が再認識されつつあります。こうしたニーズに対応して、キヤノンITソリューションズは食品製造業に対する提案活動を強化しています。
「AvantStage」で製造業務を 次のステー ジへ食品製造業が直面するサプライチェーンマネジ メントの最適化
に共通しているのではないでしょうか」 この課題の背景には、製造プロセス全体を通したIT化が進んでいないという現実があります。生産や購買、製造管理などのシステムが別々に動いており、各プロセスがシームレスにつながっていません。各工程で生成される情報は散在したままで、情報の一元管理が難しいという企業は多いのではないでしょうか。 「情報の散在は業務の効率にもマイナスの影響を与えますが、とりわけ大きな問題になるのがトラブルの発生時です。食品への異物混入などの問題が起きたとき、『どのロットに問題があるのか』『どこに出荷されたのか』といった情報を即座に知りたくても、かなりの時間がかかってしまいます。Excelや紙ベース
キヤノンITソリューションズ株式会社SIサービス事業部製造・公共・流通営業本部営業第一部 部長
森永明洋Akihiro Morinaga
STIC × DREAM
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ベストオブブリード型でカスタマイズに柔軟対応
キヤノンITソリューションズは、「AvantStage」を核に、お客さまのニーズに対応するソリューションを進化させてきました。AvantStageはお客さまの業務に合わせて基幹業務のソリューションを提供するコンセプトです。需要予測や需給計画を担う
「FOREMAST」、生産スケジューラの「Asprova」、生産計画や原価管理、販売物流などの機能を持つ「mcframe」、統合会計・人事給与の「SuperStream- NX」といった製品です(図1)。 「AvantStageの大きな特長は、ベストオブブリード型で提供していること。オールインワンで導入するケースもあれば、お客さまの解決したい課題に応じて一部の製品だけを提供することもあります。各製品が充実した機能を持っていて、比較的
低コストで導入することができます」と森永。この分野では海外製のパッケージ製品も多いのですが、AvantStageはすべて国産であり、日本の商習慣に即した機能も豊富にそろえています。 海外パッケージを導入する際には、これに対応するために相当のカスタマイズが必要になるでしょう。AvantStageを導入する場合、カスタマイズを最小限にすることができます。そのためのテンプレートなども用意しています。テンプレートでも対応が難しいときには、カスタマイズが発生しますが、その際にはSIerとしての経験とノウハウが強みになります。 他社ERPなどの既存システムとAvantStageのいくつかの製品を組み合わせて、全体のシステムを構築することもあります。システム間のスムーズな連携を実現するときにも、コンサルティングやSIのノウハウが生かされます。 「複数の会社が合併して成長してきた当社は、製鉄企業の情報システムや研究開発部門の流れもくんでいます。社内向けシステムの設計・開発などに携わってきたこともあり、製造業向けのソリューションが得意。こうした蓄積の上にノウハウを積み重ね、コンサルタントやSEなどの人材を育ててきました」と森永は語ります。 AvantStageを提供する際にも、単にパッケージを販売するということではなく、SIerとしてお客さまのニーズに向き合い、一緒に課題を解決するというスタイルを大事にしてきました。 導入のプロセスごとに厚みのあるエキスパートを擁し、それぞれが連携してシステム構築や定着化を支援する。ともすると運用・定着化のプロセスは見過ごされることもありますが、実際に効果を生み出す上で非常に重要です。 「運用・定着化をサポートする中で、お客さまの新たな課題が浮かび上がってくることもあります。その都度課題に対処しながら、当社のコンサルタントが長期的な視点でシステムの将来像を提案することもできる。長いお付き合いをベースに当社の経験とノウハウを提供し、お客さまの持続的な成長をサポートしていきたいと考えています」(森永)
標準プロセスを構築して多拠点に展開する
近年は、海外の生産拠点にAvantStageを導入する食品メーカーも増えています。キヤノンITソリューションズはタイやベトナム、中国・上海などにグループ会社を置いており、本社と連携しながらプロジェクトを進めています。 「私たちはロールアウトと呼んでいますが、日本の工場で標準化した仕組みを海外工場に展開するケースがあります。これにより、日本側から海外工場の工程管理を把握することができる。国内外の工場を同一の価値観で管理統制する上でも、AvantStageは有効です」 逆に、新たに立ち上げた海外工場で理想に近いシステムを構築し、それを国内工場に展開する企業もあります。こちらは
Feature[特集]
市場のニーズに応えられる情報基盤の整備
MES連携による業務効率化と作業ミスの防止
販売情報を素早く生産計画に反映してロスを削減
原価管理の精度を上げてコスト管理を徹底
製品・原材料情報システムとの連携
需要予測
製造管理(指図・製造実績)マスタ管理
購買管理 原価管理 品質・在庫管理
需給計画 生産スケジューラ
改善 1
改善 2
改善 3
改善 4
改善 5
販 売 管 理
生産計画(サイクル・工程)
グループ経営管理ダッシュボード
統合会計
開発・ワークフロー基盤
製造実行(MES)
改善 1
改善 3
改善 4
改善 5
改善 2
改善 5
市場のニーズに応えられる情報基盤の整備
MES連携による業務効率化と作業ミスの防止
販売情報を素早く生産計画に反映してロスを削減
原価管理の精度を上げてコスト管理を徹底
製品・原材料情報システムとの連携
需要予測
製造管理(指図・製造実績)マスタ管理
購買管理 原価管理 品質・在庫管理
需給計画 生産スケジューラ
改善 1
改善 2
改善 3
改善 4
改善 5
販 売 管 理
生産計画(サイクル・工程)
グループ経営管理ダッシュボード
統合会計
開発・ワークフロー基盤
製造実行(MES)
改善 1
改善 3
改善 4
改善 5
改善 2
改善 5
図 1:AvantStage の概要
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ロールイン。システム導入に対する抵抗感のない、または薄いところで「あるべき姿」を実現し、それを標準として日本に持ち込もうというアプローチです。ロールアウトにせよ、ロールインにせよ、自社標準を定めて多拠点に展開し、管理統制を目指すという考え方は同じです。 日本の食品製造業の課題の1つとして、属人化がしばしば指摘されます。工場ごとに工程管理のやり方が違ったり、ベテランのノウハウに依存する工程が多かったり、このような現状が人手不足を増幅している面もあるでしょう。AvantStageを中核に構築したシステムには、その企業の標準化したプロセスやノウハウも含まれます。AvantStageにより、属人化したプロセスを標準化し、1人当たりの生産性を高めることができます。 ここで、AvantStageの製品をみていきましょう。 mcframeは600社以上の導入実績を持つ、製造業向けの製品です。生産管理や原価管理、販売物流などのエリアをカバーし、受注や生産計画、出荷、在庫、原材料などに関する機能を幅広く提供。賞味期限管理、副産物管理など食品業界向けの標準機能も搭載しています。 Asprovaは全体の生産計画を、各工場に落とし込むための製品です。工場ごとの計画をつくるためには、それぞれの工場の設備負荷などの制約を把握する必要があります。これらを考慮した上で、工場ごとに生産スケジュールを策定。Asprovaは世界中の2500以上のサイトに導入されています。 SuperStream-NXは統合会計と人事・給与をカバーする製品で、国内9000社以上での実績があり、企業のグループ経営
管理を支える基盤として有効に活用されています。 会計分野では財務会計・管理会計をはじめ、支払管理や経費精算、債権管理、固定資産管理などを幅広くカバーしています。経営層および経営企画部門にとっては、各部門の状況をKPIに基づいて分析できる経営ダッシュボードにより、高度なマネジメントを支援。ビジネスの現状把握、スピード感のある意思決定のための情報基盤にもなります。AvantStageだけでなく、外部のさまざまなシステムと柔軟に連携することができます。IT部門にとっても生産性向上、負荷低減に役立つソリューションです。FOREMASTは次のページで細かく見ていきます。
進化を続ける AvantStageAI や IoT 導入の PoC にも活用
AvantStage導入の効果は企業によってさまざまです。「ロットトレースの時間が大幅に短縮できた」「在庫ロスが減って在庫の回転率が向上した」「現場の帳票が4分の1に減った」「検査時間が短くなった」といった声が寄せられています。 今後もAvantStageはさらに進化を続けます。AIやIoTの活用なども検討しており、一部では生産現場でのPoC(Proof of Concept:概念実証)をスタートしています。 「例えば、目視検査の効率化を目指したAI活用などを検討しています。検査工程に画像センサーを設置し、画像認識を用いて良品・不良品の分類を自動化するなど、大きな効率化につながる可能性があります」と語る森永は、今後もお客さまのニーズに合ったサービスを展開していきたいと考えています。
そのすべては製造業のお客さまのために…
数理技術を活用した需要予測・需給計画
世界2500サイト以上に導入、国内市場シェア約60%!
市場シェアNo.1生産スケジューラ
製造業様向け生産・原価・販売物流
顧客満足度No.1 会計・人事給与
需給マネジメントシステムで、欠品なき在庫削減を実現!● 自社開発のSIコアを駆使、お客さま独自モデルも追加可能● 製造業をはじめ、さまざまな業種に対し多数の実績
● 当社は販売パートナーとして、累計450サイト以上に導入● mcframeとの連携テンプレートを独自開発
国内企業9000社以上に認められたシリーズ製品!プロセス系、組立加工系を問わず600社以上の導入実績!● 製造業の多種多様なニーズに応える標準機能● フレームワークによる高い柔軟性とカスタマイズ性能
● 国内顧客満足度調査No.1(矢野経済研究所ERPパッケージ顧客満足度調査)● 人事・給与シリーズは、マイナンバー制度・電帳法にも対応
そのすべては製造業のお客さまのために…
数理技術を活用した需要予測・需給計画
世界2500サイト以上に導入、国内市場シェア約60%!
市場シェアNo.1生産スケジューラ
製造業様向け生産・原価・販売物流
顧客満足度No.1 会計・人事給与
需給マネジメントシステムで、欠品なき在庫削減を実現!● 自社開発のSIコアを駆使、お客さま独自モデルも追加可能● 製造業をはじめ、さまざまな業種に対し多数の実績
● 当社は販売パートナーとして、累計450サイト以上に導入● mcframeとの連携テンプレートを独自開発
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そのすべては製造業のお客さまのために…
数理技術を活用した需要予測・需給計画
世界2500サイト以上に導入、国内市場シェア約60%!
市場シェアNo.1生産スケジューラ
製造業様向け生産・原価・販売物流
顧客満足度No.1 会計・人事給与
需給マネジメントシステムで、欠品なき在庫削減を実現!● 自社開発のSIコアを駆使、お客さま独自モデルも追加可能● 製造業をはじめ、さまざまな業種に対し多数の実績
● 当社は販売パートナーとして、累計450サイト以上に導入● mcframeとの連携テンプレートを独自開発
国内企業9000社以上に認められたシリーズ製品!プロセス系、組立加工系を問わず600社以上の導入実績!● 製造業の多種多様なニーズに応える標準機能● フレームワークによる高い柔軟性とカスタマイズ性能
● 国内顧客満足度調査No.1(矢野経済研究所ERPパッケージ顧客満足度調査)● 人事・給与シリーズは、マイナンバー制度・電帳法にも対応
そのすべては製造業のお客さまのために…
数理技術を活用した需要予測・需給計画
世界2500サイト以上に導入、国内市場シェア約60%!
市場シェアNo.1生産スケジューラ
製造業様向け生産・原価・販売物流
顧客満足度No.1 会計・人事給与
需給マネジメントシステムで、欠品なき在庫削減を実現!● 自社開発のSIコアを駆使、お客さま独自モデルも追加可能● 製造業をはじめ、さまざまな業種に対し多数の実績
● 当社は販売パートナーとして、累計450サイト以上に導入● mcframeとの連携テンプレートを独自開発
国内企業9000社以上に認められたシリーズ製品!プロセス系、組立加工系を問わず600社以上の導入実績!● 製造業の多種多様なニーズに応える標準機能● フレームワークによる高い柔軟性とカスタマイズ性能
● 国内顧客満足度調査No.1(矢野経済研究所ERPパッケージ顧客満足度調査)● 人事・給与シリーズは、マイナンバー制度・電帳法にも対応
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Feature[特集]
図3 : FOREMASTのスコープ(製造業の場合)●製造業の需給計画・調整業務
【営業部門】 【SCM部門】
【物流部門・SCM部門】 【生産部門】
見込情報・商談情報
販促情報
受注・出荷情報
需要予測FOREMAST/DP
販売計画作成FOREMAST/PB
生産所要量計画FOREMAST/RP
在庫補充計画FOREMAST/RP
需給監視・需給調整FOREMAST/PB
需給調整FOREMAST/PB
供給計画生産計画
日次計画・オペレーション
月次・週次計画
【自動計画】
【自動計画】
顧客 出荷 在庫在庫移送 生産
調達先商品調達
原材料調達
●需給変化の早期発見●需給不具合早期対応●需給計画モデル見直し
●在庫レベル適正化●需給バランス確保●生産効率考慮
●営業情報収集●需要動向分析●予測精度把握
深刻な物流危機もあり需要予測の精度が問われる
ここからはAvantStageの製品の1つであるFOREMASTについて見ていきましょう。 FOREMASTは当社の強みである独自の高度な数理技術によるソリューションで、需要予測SIコア(FOREMAST/DP)、在庫補充計画SIコア(FOREMAST/RP)、需給調整SIコア
(FOREMAST/PB)といった、主な3つのSIコアとコンサルティングやシステム開発などのサービスで構成されています。これらのSIコアをベースに、企業固有の条件やニーズを踏まえたサービスを組み合わせてFOREMASTとして提供。定着化支援に注力している点も、AvantStageの他の製品と同様です(図2)。 近年、FOREMASTへの問い合わせが増えているのは、よ
り精度の高い需要予測や需給計画を求めるニーズが高まっているからでしょう。キヤノンITソリューションズSIサービス事業部数理技術コンサルティング部コンサルティングプロフェッショナルの淺田克暢はこう説明します。 「食品業界では需要予測が非常に重要です。加えて、近年の物流危機を受けて、商品を運びたいときに運べるという状況ではなくなりました。工場の倉庫から物流センターへの輸送負荷も考慮した在庫補充計画、それに基づく生産計画が求められるようになったのです」 物流危機はますます深刻化しています。かつては、トラックの確保は容易だったので、ぎりぎりのタイミングで運ぶという考えが主流でした。それが商品の鮮度を高め、在庫を最適化する方法だったのです。こうしたやり方はもはや通用しません。 そこで、輸送の平準化を図る企業が増えています。例えば、週末の輸送ができない場合には、土日を挟んだ月曜日と金曜日に輸送が集中しがち。そこで、一部を他の曜日にも振り向けることで、トラックを用意しやすくなります。年末年始に向けて以前は12月に入ってから積み荷を増やしていた企業であれば、1カ月前倒しして11月から準備を始めるという具合です。 物流環境の変化は、需給計画や在庫の発注補充計画にも大きな影響を与えます。より高度な管理や計画、より精緻なシステムが求められるようになりました。
需要予測で高い精度を実現食品に特化したオプションも
それでは実際にFOREMASTを使ってどのように需給計画を立てるのかを解説します。製造業の需給計画・調整業務を立てる上でのFOREMASTのスコープを図3に示しました。 まず、過去の出荷実績と外部から入手した情報(気象データなど)を基に、FOREMAST/DPが自動計算で需要を予測し
需給調整SIコアFOREMAST/PB
需要予測SIコアFOREMAST/DP
在庫補充計画SIコアFOREMAST/RP
需給計画コンサルティングサービス
FOREMAST® CS
需給計画システム開発FOREMAST® SI
SI:System Integration、DP:Demand Planner、RP:Replenishment Planner、PB:Plan Browser
CS:Consulting Service
図2 : FOREMASTとは
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ます。ここには「来月は集中的にこの商品を売る」といったビジネスサイドの意思は入っていません。そこで、こうした意思情報と需要予測などをインプットした上で、FOREMAST/PBで販売計画を作成します。これを基に、FOREMAST/RPが「どの商品を、どれだけ生産するか」という生産所要量計画を自動作成します。通常、週次または月次でこうしたサイクルを回します。 生産所要量計画ができると、このデータは別のシステムに受け渡されます。AvantStageでいえば、mcframeやAsprovaです。これらの生産計画や生産スケジュールを担うシステムにより、「どの工場で何をいついくつ生産するのか」といったことや、原材料調達の詳細が決まります。 生産計画はFOREMAST/RPに送られ、日次の在庫移送計画が立てられます。多くの食品メーカーは工場内または近くの倉庫のほかに、各地域にも物流センターのような施設を用意しています。工場倉庫・物流センター間の在庫移送に問題があれば、欠品や過剰在庫につながります。こうした事態が起きないよう、在庫移送を最適化するのがFOREMAST/RPの役割です。 FOREMASTのSIコア構成、その中の主要な3つのオプションについて説明しましょう(図4)。 まず、多段階補充オプションです。「工場倉庫→物流センター→顧客」というように、多段階の物流構造がある場合、工場倉庫と物流センターの在庫は連動しなければなりません。例えば、工場倉庫から物流センターに商品を10ケース送れば、工場倉庫側はマイナス10、物流センターではプラス10になります。こうした連動をリアルタイムで行うのが多段階補充オプションです。 次に、出荷期限オプションです。物流センターなどの在庫が翌日期限を迎えるような商品は明後日以降の出荷には対応でき
ません。そのため、倉庫から補充するなり、工場で生産するなりの対応が必要になります。こうした一連の機能を果たすのが出荷期限オプションです。また、出荷期限までに余裕のある在庫が一定以下に減ったときは、アラートを通知する機能も備えています。 「ある食品メーカーは以前、欠品に対処するために多くの負荷がかかっていたそうです。その日になって『出荷期限が間近だった』とか『在庫が足りない』と判明することが多く、そのたびに、他の倉庫に補充依頼をしたりしていました。FOREMAST導入後は出荷期限オプションのアラート機能を使うことで、発生しそうな問題に前もって対応できるようになりました。『イレギュラーの業務が減ったので、現場の負荷を大きく減らせた』との声をいただきました」(淺田) グループ予測オプションは、商品カテゴリなどでグループを設定して使います。例えば、味違いや容量違いの商品を1つのグループとして予測し、個別商品ごとに按分するものです。 FOREMASTは高い柔軟性を備えているため、お客さまのニーズに応じたカスタマイズが容易にできます。さらに、お客さまが自から開発した予測モデルやKPIを組み込んで使うことも可能です。
「使い勝手を考慮して画面や機能などを工夫しました。また、比較的低価格で導入できるのも、FOREMASTの特長です」と淺田。今後は予測モデルにAIを活用するなどの機能拡張も検討されています。 2018年9月に発表された経済産業省の「DXレポート」が指摘するように、日本企業のITは今、大きな課題に直面しています。長年使い続けた既存システムの見直しなしに、「2025年の崖」を乗り越えることはできないでしょう。キヤノンITソリューションズおよびAvantStageチームはお客さまとともにITの課題に向き合い、お客さまのビジネスの成長に貢献したいと考えています。
生産管理システム 在庫管理・販売管理システム
在庫補充計画SIコア(FOREMAST/RP)
需要予測SIコア(FOREMAST/DP)
需給調整画面 販売計画画面
図4 : FOREMASTのコア構成
発注先 工場 在庫拠点
在庫拠点 顧客
FOREMASTベース SIコア (FOREMAST/Base)
需給計画調整SIコア (FOREMAST/PB)
データ連携 SIコア (FOREMAST/IF)
多段階補充OP
出荷期限OP
グループ予測OP
カテゴリ編集オプション
生産計画(発注残)
在庫実績入庫予定 出荷実績在庫移送計画生産所要量
(発注量)
キヤノンITソリューションズ株式会社SIサービス事業部数理技術コンサルティング部コンサルティングプロフェッショナル
淺田克暢Katsunobu Asada
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2000 件のトラブルから目指すべき姿を描き出す
2007年にマルハとニチロの経営統合によって誕生したマルハニチロは5つの事業セグメントを持つ総合食品メーカーです。2018年から始まった中期経営計画では、10年後のビジョンを「グローバル領域で水産品、加工食品を生産・販売する総合食品企業」と定義し、経営戦略には「収益力のさらなる向上」「成長への取り組み」「経営基盤の強化」を掲げています。「成長への取り組み」の柱の1つとして、加工食品事業にデジタル統合基盤で
ある新生産管理システムを導入しました。 マルハニチロ株式会社情報システム部企画管理課課長役の鈴木創氏は「業務改革に取り組む以前の生産工場の業務は手作業が中心で、国内にある7つの生産拠点ごとに業務プロセスが異なるといった課題を抱えていました」と当時を振り返ります。また、環境の変化も危機意識を高めました。「食品の安心・安全を実現するために取引先の要求水準が一段と高くなったことや、従業員の世代交代への対応も必要でした。ミスの発生と作業の属人化を、業務改革で解消することが急務でした」(鈴木氏)
その切り札として期待されたのが、新生産管理システムの構築です。まず着手したのが2000件にも及ぶ過去に発生したトラブルの分析でした。鈴木氏は「いろいろな人がさまざまな失敗を起こしており、再発防止策も人の力量に依存している事実が見えてきました。一方、工場の従業員の声を聞く中で見えてきたのは、一人ひとりが失敗をしないように心掛けお客さまのために一生懸命にものづくりをしている姿でした。それでも人はミスをします。そこで“トラブルを未然に防ぐ環境づくり”こそがスマートファクトリー構築の鍵だという確信に至り、現状の業
マルハニチロ株式会社 様
新生産管理システムで品質向上とデジタル統合管理を実現
「世界においしいしあわせを」をスローガンに、グローバルで水産品、加工食品を生産・販売するマルハニチロにとって、加工食品領域の強化は成長戦略の柱の1つです。安心・安全な加工食品を提供し続けるために、同社ではキヤノンITソリューションズと協力して新生産管理システムを構築しました。ミス(失敗)の未然防止とデータの統合管理を実現し、製品品質の向上と業務効率化・高度化の両面で大きな成果を上げています。
QCDの究極的な向上を目指してスマートファクトリー構想を推進
販売管理システム
資材購買システム
会計システム
損益管理システム
生産スケジューラ Asprova
製造実行 QITEC
設備管理 AMISYS設備台帳 修繕記録 トラブル履歴
生産管理 mcframe
原 価 予算編成 日次損益 月次損益
製 造 製造指図製造実績
工数・ロス
在 庫 在庫照会在庫移動
廃 棄
品 質製造後検査出荷承認
月次・日次締め月次・日次締め処理
棚 卸し
購 買 発 注入荷実績受入検査
生産計画月次・日次生産計画
工程別生産計画
Asprova
本 社
mcframeQITECAMISYS
広 島冷 食
新石巻冷 食
大 江冷 食
群 馬冷 食 冷 食
宇都宮ハムソー
下 関加 工 練り製品
夕 張冷 食
導入予定
生産ダッシュボード 購買・在庫管理需給管理
原価管理 品質管理 設備管理製造管理
荷受け 入 荷現品ラベル
工程管理 巡回記録
製造実績 計 量投 入
出来高工程検査
稼働中
製造・購買・品質・原価・設備データ(全工場一元管理)
マルハニチロの生産管理システムの概要
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務とのギャップを明らかにしました」と語ります。解決にはICTの活用が不可欠と判断し、新生産管理システムの導入検討を本格的にスタートしました。 「求める機能要件を90項目に整理し、要件を満たす生産管理システムを探しましたが、すべての要件に適合するパッケージがなかったので、ITベンダーに提案を依頼しました」と鈴木氏は話します。2014年10月のことでした。
パッケージとの掛け算で標準化と共通化を推進
提示した主な提案依頼ポイントは「ミス防止およびロットトレースの具体策」
「生産計画から発注、製造などへの指図の展開方法と実績収集方法」「単品別・工程管理の具体策」「品質管理の具体策」の4つです。 パートナー候補は最終的に2社に絞られましたが、選択されたのはキヤノンITソリューションズでした。基幹業務パッケージ(mcframe)の使用を軸に、マルハニチロが提示した4つのポイントを実現するための体制が明確に提案されていたことが決め手でした。「文化が異なる7つの工場のあらゆる業務の改革を実現する上で、購買や在庫管理などの基本業務は、実績のある標準機能に合わせることが有効です。一方で製造や品質管理などメーカーとして強みを発揮したい業務は、納得いくまで機能強化をしたいと考
えました。パッケージの持つベストプラクティスの機能と当社が強みとする独自のノウハウを組み合わせるという掛け算を狙いました」と鈴木氏は語ります。 また、キヤノンITソリューションズが
「mcframe」をはじめとする生産管理システムの導入実績を豊富に持ち、食品業界に関する知識やERPの知識が高いと感じたことも大きな要因でした。「プロジェクトには延べ60人に参画してもらいましたが、さまざまなスキルを有したメンバーが1つにまとまり、チーム一丸となって推進することができました」(鈴木氏) しかし、プロジェクトの運営は簡単ではありませんでした。要件定義が膨らんで予算と見合わなかったり、300あるマスタを連携させるための設計・開発に時間がかかったりと、さまざまな壁にぶつかりました。運用テストで工場に常駐したときには、「作業のやり方を変えたくない」という現場からのプレッシャーを受けたこともあったそうです。
生産現場と経営をつなぎ改善努力も「見える化」
「立ちはだかる壁を乗り越えることができたのは“ぶれない活動骨子”を持ち続けたからです。お客さまに品質の良い製品を提供し続けたい。そのためには、製造に携わる従業員にとって働きやすい環境をつくることが必要だという視点で常に判断してきました」と鈴木氏はプロ
ジェクトを振り返ります。 生産現場における使いやすさや分かりやすさの追求、指図を間違いなく実行できる仕組み、製造実行システムを効率的に活用するための固定ラベルの開発など、ユーザーへの配慮を徹底したこともあって、新生産管理システムは2018年5月に無事運用を開始しました。 新システムの効果はすぐに表れます。配合・計量ミスなどの失敗が激減し、廃棄コストが削減されました。ロットトレースや合否判定にかかる時間も大幅に短縮されました。原料購買および在庫管理の標準化・効率化によって在庫回転率が2倍になった工場もあります。 現在、7つの工場と本社を合わせて2000人以上が新システムを活用しています。生産活動がデジタルで一元化されたことで、さまざまな効果が生まれています。製造担当者に明確な指図が出せるようになり、作業と同時に実績との照合が行われ、失敗の未然防止環境が構築されました。経営層に向けても、発生明細データの積み上げによるKPIなどの経営情報の見える化が実現できました。 実際にエンドユーザーからも「安心して作業ができる」「新人にも安心して任せられる」「作業指図が明確になった」などの声が上がり、「損益分析が容易になった」「営業部門として外部にアピールできる」といった事業を取り巻く関係者からも高く評価されているようです。 「今後は生産管理システムの機能を強化しながらグループ会社や他事業への展開を計画しています。また、IoTを活用した製造設備のリアルタイム把握、AI活用やビッグデータ解析によるデータ分析の高度化・自動化を目指していきたいです。デジタル統合管理のための基盤ができたので、今後さらに改良や拡張を重ね、業種や業界にこだわらない、製造業の模範となるスマートファクトリーに成長させていきたいと考えています」と鈴木氏。そこでもキヤノンITソリューションズが大きな役割を果たすことを期待されています。
マルハニチロ株式会社設 立 1943年3月31日代 表 者 代表取締役社長 伊藤 滋従業員数 連結1万1276人、単独1578人(2019年3月31日現在)住 所 東京都江東区豊洲3-2-20 豊洲フロント事業内容 漁業、養殖、水産物の輸出入・加工・販売、冷凍食品・
レトルト食品・缶詰・練り製品・化成品・飲料の製造・加工・販売、食肉・飼料原料の輸入、食肉製造・加工・販売
マルハニチロ株式会社
情報システム部
企画管理課 課長役
鈴木
創氏
◎基幹業務 トータルソリューションの 詳細はこちら
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新生産管理システムで品質向上とデジタル統合管理を実現
QCDの究極的な向上を目指してスマートファクトリー構想を推進
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2024 年の ISDN 終了に向け時間はあまり残されていない 企業間取引に関わる業務を効率的に行う上で、データのやりとりを行うEDI
( Electronic Data Interchange:電子データ交換)は大きな役割を担っています。小規模な企業では電話やファクスでやりとりするケースもありますが、一定規模以上の企業においては不可欠の仕組みといえるでしょう。 EDIは受発注や出荷、決済など幅広い業務において、企業間のやりとりに用いられています。また、輸出入の通関手続きや規制当局への報告業務などでも使われています。このEDIをめぐって、大きな環境変化が注目されています。 NTT東西は固定電話網からIP網へ
の切り替えを、2024年から25年にかけて実施すると発表。これに伴い、2024年にはISDNデータ通信サービスが終了する予定です。ISDNベースの従来型EDIを運用している企業は、「2024年問題」への対応が求められています。 新たな通信環境に対応するインターネットEDIに移行済みの企業もありますが、「これから」とか「検討中」という企業は多いでしょう。プロダクトソリューション営業本部企画部部長の赤須通隆は「まだ余裕があると思われるかもしれませんが、EDIを刷新するには相当の時間がかかります。あまり時間は残されていません」と注意を呼び掛けます。 EDIは自社だけで完結するものではなく、相手がいて成り立つシステムです。相手先の企業の理解を得て対応してもらう必要があります。プロダクトソリューション営業本部企画部企画課課長の花澤健二が、受発注を例に説明します。 「大手メーカーは多くのサプライヤーに日々、部品などの発注をEDI経由で行っています。こうしたサプライヤー向けには、新しい仕様についての説明会を開く必要があるでしょう。おそらく、これ
Pickup Solution
2024年に予定されるISDNデータ通信サービスの終了。企業間取引を支えるEDIシステムはISDN対応のものが多く、現在、こうしたシステムの再構築が必要とされています。長年EDIソリューションを手掛けてきたキヤノンITソリューションズは、こうしたお客さまのニーズに対応し、EDI製品とともに業界知識を生かしたSIサービスを提供しています。
迫りくるEDIの「2024年問題」混乱回避に向け早めの対応を
豊富なラインアップさまざまな通信プロトコルに対応。必要な機能だけを購入することも可能です。
トータルサポートシステム構築から導入・運用支援に至るまでEDIシステム全般をサポートします。
豊富な実績30年以上の導入実績があり、さまざまな業界、業務に関する幅広い知識を有します。
特長
30年以上の実績を誇る「EDI-Master」シリーズで企業間取引を支える
EDI ソリューション
(写真左) キヤノンITソリューションズ株式会社 プロダクトソリューション営業本部 企画部 部長
赤須 通隆 Michitaka Akasu
(写真右) キヤノンITソリューションズ株式会社 プロダクトソリューション営業本部 企画部 企画課 課長
花澤 健二 Kenji Hanazawa
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だけで何カ月もかかるはずです。そして、皆さんの理解を得て新しいEDIシステムを構築した後には、接続試験に半年、1年かかるかもしれません」
豊富なラインアップを用意マルチな稼働環境に対応
相手先との調整だけではありません。EDIシステムは販売管理や生産管理といった基幹システムともつながっています。EDIの刷新に際しては、こうした基幹システムと連携するためのインタフェース開発やテストなども必要。インターネットEDIに移行するためには相当の時間がかかると考えなければなりません。大企業の場合には、トータルで2~3年の期間を要する場合もあります。 最近はこうした課題意識が広がりつつあり、企業担当者の切迫感も高まっているようです。「今年に入ってから、お客さまから当社への問い合わせが相当増えています」と赤須は言います。 キヤノンITソリューションズは日本における大手EDIベンダーの1つです。ソリューションの特長は大きく3つあり
ます。 第1に豊富なラインアップ。日本では業界ごとにフォーマットや通信手順などが異なり、単一の製品ですべてをカバーするのは難しいのが実情です。こうした状況を踏まえて、当社の「EDI-Master」シリーズは多数の製品を用意、それぞれの業界固有のデータ交換方式をサポートしています。輸出入管理や医薬品安全管理といった特定業務向けのソリューションもあります。 「お客さまは必要に応じて、必要な機能だけを購入することができます。取引先が増えて新しいデータ交換方式に対応しなければならないときは、別の機能を追加するだけです」と赤須。こうしたスタイルにより、企業はEDIへの投資対効果を高めることができるでしょう。また、EDI-Masterは幅広い稼働環境に対応しています。WindowsやLinuxといったオープン系OSはもちろん、メインフレーム向けの製品もあります。 第2に製品開発からSI、保守対応までを一貫して手掛けていることが、独自の強みにつながっています。それぞれの
領域の専門家を擁していることが、プロフェッショナルなサービスにつながります。また、製品やサービスをワンストップで提供できるほか、スピード感のある柔軟な対応力も高く評価されています。
幅広い領域の専門家を擁しワンストップサービスを提供 第3に実績に基づく信頼感があります。「当社は30年以上にわたり、EDI製品を開発、販売してきました。累計の出荷総数は20万本以上になります。幅広い業界に向けて製品を提供してきたこともあり、それぞれの業界知識も厚く蓄積しています。こうした点がお客さまにも伝わり、当社への信頼感につながっているのだと思います」(花澤) 代表的なソリューションをいくつか紹介しましょう。まず、「EDI-Master B2B Gateway」はマルチプロトコル対応のEDIサーバーです。今後数年をかけてインターネットEDIに移行するとすれば、ISDNとインターネットが併存する期間が生じます。スムーズな移行のため、複数プロトコルをサポートする製品を必要とする企業は多いはずです。 もう1つは、暗号機能を提供する
「EDI-Master B2B TLS-Accelerator」です。インターネットEDIに対応しており、既存のEDIシステムに暗号機能を外付けすることができます。 当社のEDIソリューションは、これからも進化を続けます。クラウドサービスとしての提供、業界特化ソリューションの深掘り、基幹システムとの連携強化などの方向で、現在さまざまな取り組みが進行中です。私たちはお客さまのニーズに正面から向き合い、さらに製品とサービスを拡充させていきたいと考えています。
迫りくるEDIの「2024年問題」混乱回避に向け早めの対応を
◎ EDIソリューションの詳細はこちらht tps: / /www.canon-i ts .co. jp/solut ion/edi /
EDIソリューション概要導入企業
取引先・金融機関など
運用管理「JS Enterprise」
WEB-EDI構築フレームワーク
「B2B for WEB」
取引先
取引先・金融機関など
TLS中継サーバー「B2B TLS-Accelerator」
基幹システム
トランスレーター「TRAN for ANYs」 マルチプロトコル
EDIサーバー「B2B Gateway」
取引先・金融機関など
インターネット対応全銀
インターネット対応全銀
WEB-EDIWEB-EDI
インターネット
ISDN回線
JX/ebXML/AS2/SFTP/メール
JX/ebXML/AS2/SFTP/メール
2024年以降、ISDN回線を用いたEDI
は使用できなくなる
JCA/全銀/全銀TCPJCA/全銀/全銀TCP
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Tech & QualityReport
移動体データの特徴 移動体に搭載された位置センサーから取得できるデータはおおむね以下の項目構成となっている。1.移動体ID2.時刻、座標値(緯度、経度、高度など)3.その他属性(所属組織、事業セグメントなど) このような情報を持つ複数の移動体に対する分析方法として、従来では複数移動体による軌跡を座標に累積し可視化する方法(ヒートマップ、地図ヒストグラムなど)が一般的であった。見方を変えれば、時間軸を説明変数から外すことによって複数の移動体によるマクロ的な傾向を把握することを主眼としていた。しかし時間依存型の特徴を持つ移動体データを対象とした場合、このような累積方法では推移の特徴を捉えることができず、時間依存の改善知見を見落とす可能性がある。そこで移動体個別の時系列の動きを損なうことなく分析し、時間軸を無視すると失われてしまう動き方の類似性から改善知見を得ることを目指す。
数
理
技
術
に
よ
る
移
動
体
デ
ー
タ
分
析
R&D本部 数理技術部では、企業活動におけるオペレーションを数理最適化・シミュレーション・データ分析の3本柱の技術によって支援している。近年IoT技術の発展によりさまざまなデータが安価に取得できるようになってきたが、組織活動の観点での活用についてはまだ発展途上といってよい。本稿では多数の営業車に搭載されたテレマティクスから刻々と取得される膨大な移動体データに対し、DTW(Dynamic Time Warping:動的時間伸縮法)や多次元尺度構成法を駆使して組織的効率化の知見を発掘していく取り組みについて紹介する。
数理技術による移動体データ分析
DTW による乖離度の測定 DTWとは、時系列データ分析の一技術であり、系列間の乖離度を測定することができる。この技術の特長は、異なる長さの時系列データ同士であっても順序を崩すことなくサンプリング値を対応付けて、その値の差分値の合算を乖離度として評価できることである。 本技術はもともと音声データや株価データなどの時間軸に対して推移する一次元の指標値の比較評価に用いられてきたが、この考え方を、移動体データに拡張し比較評価を可能にした。 従来DTWが対象としていた時系列データはサンプリング間隔が一定であることを暗黙の前提としていたが、移動体データでは必ずしもサンプリング間隔の一定性が保証されない。むしろバラツキが大きい場合が多い。そこで従来のDTWにはなかった時間的なズレを含め乖離度dに換算する関数を案出した。
:各 系々列1,2の時刻 t における座標x , yを示す この関数は類似パターンを定義する上で重要な要素となっており、解析の目的に合った類似パターンが抽出されるよう実データに基づいてチューニングされている。具体的には空間距離に対して時間ズレ(t 2‒t1)についてはその多寡に応じて距離に換算し乖離評価する。その結果抽出された類似軌跡の例を図1に示す。手順として、まず①移動体データを分析対象として適切な単位に切り出し、次に②切り出されたデータの全一対に対してDTWで乖離度を計算する。そ
キヤノン IT ソリューションズが、これまで数多くのシステム開発によって培ってきた経験と品質向上への取り組みにより、お客さまの業務課題を解決した好事例や研究の成果をご紹介します。
図1 DTWによる類似軌跡の抽出右図ではほぼ重複した赤と白の軌跡が抽出されている
類似軌跡を
特定
❶ 前処理で対象切り出し ❸ 乖離度小の軌跡を抽出
❷ DTW法で 乖離度計測
位置座標
時間 乖離度マトリクス
0 10 100 10 0 50 100 50 0
d = √( x2 ‒ x1)2 +( y2 ‒ y1)2 + f ( t2 ‒ t1)
( x1 , y1, t1 ), ( x2 , y2 , t2 )
STIC × DREAM STIC × DREAM
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数
理
技
術
に
よ
る
移
動
体
デ
ー
タ
分
析
の情報をマトリクス状に配置したのが乖離度マトリクスである。そして③ここから値の小さい組み合わせを一対取り出せば、それが類似軌跡となる。 ここで、実務観点から前処理の「切り出し」について詳しく述べておきたい。移動体データは前節で述べたように単純な時刻位置情報の羅列である。移動体ID 1つを取り出してみても、その移動体IDが有効な間は切れ目なく続くデータとなっている。これを業務の視点から分析するには、「ひと仕事」を単位として切り出してやるのが妥当である。物流や営業用の車両であれば拠点を出発し外回りした後、拠点に戻るのが通常である。この一周を「ひと仕事」と考えれば、拠点から出て戻るまでを分割切り出しすればよい。ここで課題となるのは拠点に戻ったか否かの判定である。GPSは位置誤差を含んでいるし、拠点の停車位置が名義登録されている拠点住所から少しずれた停車場となっている場合もあり、一概に座標値との比較での戻り判定は成功しない。そこで拠点ごとにその付近の所定半径以内で所定時間以上停車している事象を抽出し、その重みづけ重心位置によって拠点座標を補正する。その上で、補正地点を基準とし、停車地点との距離および停車時間の重みづけ値を算出して拠点戻りを判定する。以上のように一見ローテクであるが適切に分析を施すためには地道にデータを観察してその特徴から法則性を見いだし、実用的な時間内で完結する処理を組み立てることも一連の技法を確立する上で極めて重要である。
乖離度の全体把握と知見発掘 前節で述べたように全一対の移動体データ乖離度を乖離度マトリクスとして算出できれば、乖離度の全体分布を把握することが可能となる。全体把握には乖離度マトリクスをカラースケールで俯瞰するなどの方法が考えられるが、要素の並び順に依存して全体の印象が左右されてしまう弱点がある(図2左)。 この短所を克服する技術として乖離度で表現された情報を低次元座標に配置することができる「多次元尺度構成法」を援用した。この方法で図2左の情報を二次元に配置した(図2右)。乖離度が低い移動体群は固まり、乖離度が相互に高い移動体は離れて配置されている。 乖離度を二次元に配置することで個体間の類似性を可視化でき、クラスタを形成することで「同類項」を抽出する
ことが可能となる。 業務視点でこれを捉えると、移動特性を同じくする個体をひとくくりで抽出しその属性を掘り下げることで、改善の足掛かりとすることができる。例えば対象が営業車両であるケースにおいては、異なる部門の営業担当者が近い場所をルート営業している状況に対し、部門間で連携してルート効率を向上させることが期待できる。また物流倉庫での作業動線のケースでは、標準動線のグループから外れた動線を抽出して例外事象との関連性を調査するなどして、整流化に資することも可能である。
最 後 に 位置センサーから取得されたデータは刻々と山のように蓄積されているが、その山に埋もれた知見を活用できた事例はまだ少ない。今回はその発掘技術を紹介したが、緒に就いたばかりで事例を拡大中である。 分析で最も重要なのはデータの山の切り崩し方と知見原石の評価である。仮説を設定し、データの山を試掘・評価し仮説修正するループを反復し洗練させていく。そしてその背景には業務知識が不可欠である。多様な事例を通じて今後も組織知として造詣を深め、最短で知見を掘り当てるよう磨きをかけていく所存である。
◉ Tech & Quality Report Web サイト https://www.canon-its.co.jp/company/ strength/quality/report.html
数理技術による移動体データ分析
キヤノンITソリューションズ株式会社R&D本部 数理技術部コンサルティングプロフェッショナル
小西 伸之Nobuyuki Konishi
図2 乖離度マトリクスと多次元尺度構成法
同じ乖離度マトリクスでも要素の並び順で印象が異なる
【乖離度マトリクス】 【多次元尺度構成法】
移動体の名前順
乖離度昇順 多次元尺度構成法によれば移動体間の
類似度が二次元距離で視覚的に表現される
STIC × DREAM STIC × DREAM
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DEPARTMENT INTRODUCTION
クラウドサービス推進本部と聞くと、Amazon Web Services(AWS)や
Microsoft Azureなどの多様なクラウドサービスを取り扱う組織と感じる方が多いかもしれません。しかし、その実は少し違っています。 クラウドサービス推進本部 本部長の笠谷弘治は「当本部は、キヤノンITソリューションズがクラウド化を支援、推進するために、全社横串を通した組織として2018年に発足しました。クラウドはデジタル社会に必須のプラットフォームであり、当社自身の価値創出とお客さまの価値創造の両輪を支援する役割を担っています」と説明します。 その中でもクラウドサービスコンサルティング部(以下、コンサルティング部)は、異色の存在に見えるでしょう。対象には、医療情報やヘルスケア情報を
取り扱うシステムのクラウド化も含まれているのです。 コンサルティング部 部長の上島努は「組織は2018年に発足し、クラウドの中でも主にAWSに関するコンサルティングを行い、実績を蓄積してきています」と語ります。一方で、AWSを取り扱うプレーヤーは多く、その中で当社ならではの強みを持つ必要に迫られたことも事実でした。 「そうした中で取り組んだのが、AWS上に医療関係のシステムを載せる際のコンサルティングです。国のガイドラインにきちんと準拠した形で電子カルテに代表される医療情報システムをAWS上に構築する支援をしています」(上島) 医療情報は個人の大切な情報であり、古くはデータの外部保管が許されない時代が続いていました。しかし、経済産業省、総務省、厚生労働省がそれぞれ医療情報の電子的な取り扱いに係るガイドラインを策定し、準拠した形であればクラウドの活用が可能になったのです。 とはいえ、実際に医療機関や医療サービスを提供する事業者のシステムが、ガイドラインに適しているかどうかを見極めるのは簡単なことではありません。情報セキュリティ分野で15年のキャリアを持つ武田和美は、「ベンダー5社とAWSが共同でガイドラインを解釈した
『医療情報システム向けAWS利用リファレンス』を作成し、導入前の評価を行えるようにしました。2019年6月にすべてのリファレンスが出来上がりました」と語ります。 2016年入社でAWSのアプリケーション開発に携わり、2019年にコンサルティ
ング部に配属された若手ITエンジニアの宮島和也は、「リファレンスへのお客さまの適合のチェックや、適合していない場合のシステム面の対応を担当しています。ガイドラインの目的を読み取り、開発、運用の双方の視点から負担が少ない対応を考えるようにしています」と言います。 医療情報は機密性が求められるものであり、データの安全・安心な管理を絶対条件とした上で、そのデータを社会に生かしていく仕組みが求められます。そのためにも「メンバーには、全員が自分の担当領域の専門家、社内の第一人者であってほしいと考えています」
(笠谷)。実際に、セキュリティに強い武田、テクノロジーに強い宮島のようなメンバーが、尖
とが
った能力と個性でコンサルティングを行っています。 クラウドサービス推進本部の人員は約80人おり、そのうちコンサルティング部は若手を中心とした約10人。多様な専門性を持ったメンバーが、フラットにコミュニケーションして相互の強みを理解しながら、社会貢献のための課題解決に向けて研
けんさん
鑽を続けています。「AWSのプロをそろえています」(上島)というキャッチフレーズで、コンサルティング部はさらに社会貢献の具体化に向けたチャレンジを続けていきます。
部 門 紹 介
クラウドサービス推進本部クラウドサービスコンサルティング部
専門性の高いメンバーが連携しながら医療情報のクラウド化を支援
キヤノンITソリューションズ部門担当者が思いを語る
キヤノンITソリューションズ株式会社クラウドサービス推進本部
本部長笠谷 弘治
Hiroharu Kasatani
キヤノンITソリューションズ株式会社クラウドサービス推進本部
クラウドサービスコンサルティング部部長
公認医療情報システム監査人補上島 努
Tsutomu Kamijima
キヤノンITソリューションズ株式会社クラウドサービス推進本部
クラウドサービスコンサルティング部公認医療情報システム監査人補
ISMS審査員補公認情報セキュリティ監査人
武田 和美Kazumi Takeda
キヤノンITソリューションズ株式会社クラウドサービス推進本部
クラウドサービスコンサルティング部ITエンジニア
宮島 和也Kazuya Miyajima
STIC × DREAM
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赤穂浪士は討ち入りを終え泉岳寺に凱がいせん
旋した後、熊本藩など四大名家に分けて50日近く預けられました。集団で吉良邸
を襲い当主の上野介を殺したので、通常でしたら直ちに斬首されるのですが、幕府内で助命論が台頭してすぐに判断を下せなかったためです。熊本藩で浪士の世話役を務めた堀内伝右衛門は、その間の詳しい様子を書き残しています。浪士の食事は二汁五菜と豪勢で、昼には菓子、晩には夜食が供されたとのこと。また、藩主の細川綱利は討ち入りを褒め、幕府に赦免を願い全員を家臣にしたいと公言し、浪士の居室に立派な湯殿(浴室)や雪
せっちん
隠(トイレ)も造っています。 浪士たちは世話役の伝右衛門に大いに信頼を寄せ、赤裸々に心情を語っています。大石内蔵助は豪華な食事で胃がもたれ、「いわしと玄米が恋しい。少し食べ物を軽くしてほしい」と依頼したそうです。 副将格の吉田忠左衛門は「私は兵法が好きで、討ち入りでは大石殿に内緒で采配を隠し持ち、実戦で振るった。血が付いているので見てほしい」と自慢しています。また「切腹後、白布で私の死骸を包んでほしい。年寄りの骸
むくろ
は見苦しいので」と頼んだともいいます。 伝右衛門と最も打ち解けたのは34歳の富森助右衛門です。ある日、鶏が雛
ひな
を育てる絵を見た助右衛門は「お恥ずかしいことに、2歳の伜せがれ
長太郎を思い出した」と語っています。切ない胸の内を察した伝右衛門は、長太郎の元へ出向いて人形を贈り、「さてもさても助右衛門によく似たる生
うまれつき
付にて候」と覚書に記しています。浪士たちに切腹の沙汰が出たとき、伝右衛門は非番でしたが、すぐに屋敷に駆けつけ、彼らと最期の盃
さかずき
を交わし、死に装束に着替えるのを手伝っています。特に仲のよかった富森助右衛門の「袴
はかま
を腰に当てた」とも書き留められています。 切腹はわずか1時間で終了し、遺骸はその日に泉岳寺へ運ばれました。他家からも亡
なきがら
骸が集まり、再び浪士らは一堂に会したのです。生前、助右衛門は「切腹となったら宗旨にかかわりなく1カ所にして葬ってほしい」と依願していました。その願いを伝右衛門は大目付の長瀬助之進に伝えており、その甲
か い
斐あってか、浪士は同じ空間で永と わ
久の眠りにつくことができたのでした。
泉岳寺には浅野長矩をはじめ赤穂浪士「四十七士」の供養墓があることで有名です。吉良上野介の首を洗ったといわれる首洗い井戸など赤穂浪士にまつわる史跡も残されています。毎年12月14日と4月上旬には義士祭が催され、赤穂浪士に扮
ふん
した人たちによるパレードが行われます。
ちょこっと 旅 ガイド
第3回
赤穂浪士は手厚くもてなされた⁉
河合 敦氏Atsushi Kawai
歴史作家・歴史研究家。多摩大学客員教授。早稲田大学非常勤講師。『世界一受けたい授業』(日本テレビ系)などテレビ出演多数。歴史の意外なエピソードの紹介や分かりやすい解説に定評がある。著書に『世界一受けたい日本史の授業』『日本史は逆から学べ』『逆転した日本史』など。
T H E I N T E R E S T I N G F A C T S A B O U T J A P A N E S E H I S T O R Y
【 泉 岳 寺】 東京都港区高輪 京浜急行・都営地下鉄 泉岳寺駅から徒歩2分
~ あ の 出 来 事 の 最 新 事 情 ~
日本史新 発見
氏
STIC × DREAM
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編集
・発
行 キ
ヤノ
ンIT
ソリ
ュー
ショ
ンズ
株式
会社
企画
本部
〒
108-0075 港
区港
南2-16-6
キヤ
ノンSタ
ワー
☎03-6701-3603
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発行
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INTER 2019
COVER [今号の表紙]
「デジタル技術が社会を動かす原動力に」という願いを込めて、期待感高まるイメージイラストを選びました。今、あらゆる場面でデジタル変革が進んでいます。今号全体に通ずるテーマである
「デジタルイノベーション」が皆さまのビジネスの原動力となるよう、本誌の情報をお役立ていただければ幸甚です。
EDITOR'S NOTES [編集後記]
ブラックボックス化した基幹系システムがDXの阻害要因になる――。昨年9月に経済産業省が発表し、さまざまな議論を巻き起こした「DXレポート」。同報告書ではシステム老朽化がもたらす最悪の将来シナリオを「2025年の崖」と表現しました。今号は、このDXレポートを作成した経済産業省の中野剛志さまをお招きする対談企画をはじめ、日本の製造業が勝ち残るためのスマートファクトリー戦略を探る有識者インタビュー、関連ソリューションの紹介や導入事例など、盛りだくさんの内容でお届けします。
次号STIC×DREAM Vol.04は、2020年春発行予定です。https://www.canon-its.co.jp/stic-dream/
◆本誌の無断転載はお断りします。◆本誌記載の社名、製品名およびシステム名は各社の登録商標または商標です。
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