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の信頼性確保に関すの期待 の信頼性確保に関すの期待 の信頼性確保に関すの期待 の信頼性確保に関すの期待 Expectations for the AESJ Guideline for Simulation Credibility Assessment 本原子力学会2017の年会 計算科学技術部会 「の信頼性確保に関す 取組の現状と課題」 横浜国立大学名誉授 白鳥正樹 参考資 本原子力学会標準「の信頼性確保に関す :2015」(AESJ-SC-A0082015本原子力学会標準「外部に対す評価 法の選定に関す実基準:2014」(AESJ-SC-RK0082014本原子力学会標準「原子力発電所に対す地震起因と した確率論的評価に関す実基準:2015」(AESJ- SC-P006:2015本原子力学会標準「原子力発電所の確率論的評価 の推定に関す実基準:2015」(AESJ-SC- RK0012015柏崎苅羽原子力発電所6号及7号炉、確率論的評価 について(外部事象 地震PRA)、平成269月、東京電力株 式会社

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シミュレーションシミュレーションシミュレーションシミュレーションの信頼性確保に関するガイドラインへの期待の信頼性確保に関するガイドラインへの期待の信頼性確保に関するガイドラインへの期待の信頼性確保に関するガイドラインへの期待

Expectations for the AESJ Guideline for Simulation Credibility Assessment

日本原子力学会2017春の年会

計算科学技術部会セッション

「シミュレーションの信頼性確保に関する

取り組みの現状と課題」

横浜国立大学名誉教授

白鳥正樹

参考資料

• 日本原子力学会標準「シミュレーションの信頼性確保に関す

るガイドライン:2015」(AESJ-SC-A008:2015)

• 日本原子力学会標準「外部ハザードに対するリスク評価方

法の選定に関する実施基準:2014」(AESJ-SC-RK008:2014)

• 日本原子力学会標準「原子力発電所に対する地震を起因と

した確率論的リスク評価に関する実施基準:2015」(AESJ-SC-P006:2015)

• 日本原子力学会標準「原子力発電所の確率論的リスク評価

のパラメータ推定に関する実施基準:2015」(AESJ-SC-RK001:2015)

• 柏崎苅羽原子力発電所6号及び7号炉、確率論的リスク評価について(外部事象 地震PRA)、平成26年9月、東京電力株式会社

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日本学術会議報告(2011)

「ものづくり支援のための計算力学シミュレーションの品質保証に向けて」

• シミュレーションとは現実の世界で起こっている現象を数学モデルで記述

して、その仮想空間の中で起こる現象をコンピュータを駆使して解き、結

果を可視化等の手法により表示して、あたかもその解が現実空間で起

こった事象であるかの如くに見せる手法である。この言葉は極めて広義

の意味を持つが、本報告の表題である「ものづくり支援のための」シミュ

レーションと限定した場合には、これを「工学シミュレーション」と呼ぶこと

ができよう。この手法をものづくりのための有用な手段として活用するた

めには、設計が許容する誤差(あるいは不確かさ)の範囲で、この仮想空

間で求められた解が現実世界でおこる現象を正しく表していること、すな

わち「工学シミュレーションの品質保証」が必須の条件として求められる。

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日本計算工学会HQC研究分科会

• 背景背景背景背景

– 家電、自動車などの民生品から原子力発電所のような公衆安全に係わる施

設に至るまで、設計・製造におけるシミュレーションの役割の拡大

– 製品の品質や安全性に対して、計算技術者が責任ある役割を担うためには、

シミュレーションの信頼性を保証する方法論や技術の確立が不可欠

– 標準化の取り組みは、現状では欧米が大きく先行(米ASME、英NAFEMS)

• 趣旨・目的趣旨・目的趣旨・目的趣旨・目的

– 早期に情報分析の上、実務的な標準やガイドラインを整備していく必要

– 上記活動の端緒になるべく設置。日本計算工学会はCAE技術の産業横断的

な学会

• 体制体制体制体制 ・・・・ 期間期間期間期間

– 主査:白鳥正樹(横浜国大)、 副主査:越塚誠一(東京大学)、高野直樹(慶

応義塾大学)、幹事:吉田有一郎(東芝IS)、中村均(伊藤忠テクノソリューションズ)

– 国機関、車・電機・原子力・土木・鉄鋼のメーカ、大学、ソフト会社の専門委員

– 平成21年(2009年)6月~平成23年(2011年)5月、2年間(予定)

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学会標準の発行(HQC001 & 002)

2011年 7月初版、2014年改訂版および事例集を発行

学会事務局にて直売 5

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ASME V&V 10-2006 図4図4図4図4

物理現象物理現象物理現象物理現象

計算の生データ計算の生データ計算の生データ計算の生データ

概念的モデル概念的モデル概念的モデル概念的モデル

離散化された数式離散化された数式離散化された数式離散化された数式

Code Verification

数学的モデル化数学的モデル化数学的モデル化数学的モデル化

数理モデル数理モデル数理モデル数理モデル

計算結果計算結果計算結果計算結果

実験データ実験データ実験データ実験データ

実験のデザイン実験のデザイン実験のデザイン実験のデザイン

物理モデル物理モデル物理モデル物理モデル

実験結果実験結果実験結果実験結果

離散化して実装離散化して実装離散化して実装離散化して実装

計算計算計算計算

不確定性の不確定性の不確定性の不確定性の

定量的評価定量的評価定量的評価定量的評価

予備計算予備計算予備計算予備計算

実装実装実装実装

実験実験実験実験

不確定性の不確定性の不確定性の不確定性の

定量的評価定量的評価定量的評価定量的評価

定量的比較定量的比較定量的比較定量的比較

物理的モデル化物理的モデル化物理的モデル化物理的モデル化

Calculation Verification

Validation

ガイドラインへの期待(1)

1.1 制定の趣旨

原子炉にかかわるシミュレーションの分野では、この事故の教訓に基づ

き、シミュレーションが取り扱うべき対象の範囲及び事象想定が大きく拡

大することとなった。

また、自然現象の複雑さと我々が持つ知見の限界を認識し、シミュレー

ション技術の検証により、これを適切に運用すること、同事故に対するシ

ミュレーションの不確かさが大きなことからシミュレーション技術の向上へ

新たな知見を収集する取組の必要性が提言されている。

さらに、原子力関連施設で生じ得る低確率・高影響事象に対するリスク

の予測評価の信頼性および網羅性を着実に向上させるとともに、最新知

見に照らして継続的に改善することの必要性が再認識された。

このような諸課題を着実に解決していくためには、モデリング及び予測

における不確かさの定量化およびその低減に資する客観的な方法論の

枠組みを構築し活用することが重要である。

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ガイドラインへの期待(2)

1.1 制定の趣旨(つづき)

一方、シミュレーションに基づいて意思決定又は判断を行うためには、

シミュレーションの透明性及び分かり易さを改善するとともに、シミュレー

ションの信頼性を相応に向上させ、成熟度を高めることが必要となるが、

これと同時に、特定の対象または評価目的におけるシミュレーションの限

界、弱点及び不確かさについても性能として明確化し、追跡可能な信頼

性の評価尺度とすることが重要となる。

したがって、原子力分野でのシミュレーションの信頼性の確保とは、原

子力関連施設で生じ得る低確率・高影響の内的又は外的事象を含む特

定の評価目的に即したシミュレーションの予測性能を、高い説明性、追

跡可能性及び透明性をもって客観的に示すことであり、さらに必要な場

合に、最新の技術的知見に照らしてモデリングを適宜見直すとともに、そ

の予測性能向上のための道筋を示すための方法論を提示することであ

る。

ガイドラインへの期待(3)

1.1 制定の趣旨(つづき)

このとき、シミュレーション業務に対する品質保証システムが既に構築

され活用されている状況が前提とできる場合には、原子力分野での予測

評価を含むシミュレーションの信頼性確保のための方法論は、物理現象

及びこれが種々複合した事象を必要にして十分に模擬でき、最新の技術

的知見を反映できることを示すための方法論に帰着される。

このようなシミュレーションの信頼性確保のためには、そのモデリング

の検証及び妥当性確認の的確な実施を可能とし、併せてその信頼性を

継続的に改善するための仕組みが重要であり、その下でシミュレーショ

ンの予測性能を担保する必要がある。このためには、モデルの不確かさ

の評価を含めたV&V(以下、“モデルV&V”という。)のための方法論の確

立が喫緊の課題であることなどが指摘されている。

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京コンピューターシンポジウム2013(2013.5.31)

「持続可能社会に向けたHPCへの期待」 中村道治(JST)

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京コンピューターシンポジウム2013(2013.5.31)

「持続可能社会に向けたHPCへの期待」 中村道治(JST)

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安木剛:「計算力学と自動車開発の25年」

日本機械学会計算力学部門ニュースレターNo.49, Descember,2012

• 計算モデルの忠実度

自動車を比較的多数の部品の組み合わせから構成された複雑なシス

テムと仮定すると、各部品の特性と部品間の接合部の特性の両者を計

算力学で表現しなければなりません。部品の特性には剛性・強度に関係

する材料特性値・幾何学的形状などがあり、部品間の接合部の特性に

は破断や干渉に関係する溶接強度や摩擦係数などがあります。

これらは言わば Same as build の解析で、忠実度を向上させるとの考えに沿って衝突解析をより衝突試験にリアルに近づけるものです。すなわ

ち、小さな試験片レベルから実験との比較検証を積み重ね、自動車の衝

突安全性能の予測精度を維持するものです。

しかしながら、2012年現在では衝突解析の質の維持は計算力学のエンドユーザーの前述のような地道な努力に依存するところが大といっても

過言ではなく、自動車開発での計算力学の質のひとつの課題と考えてい

ます。

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原子力分野の解析の特色

• 設計、評価:従来の決定論的規格基準に則った解析

保守性が大きい。

=> V&Vも保守性が担保されていることを確認できれば良い。

基準耐力を超えた場合の安全裕度が未定。

建屋、機器、配管等によって裕度が異なる。

ストレステストを行って終局強度に対する知識を集積することが必要。

• PRA:主としてSAの予測に適用されるものと理解する。

SAという発生頻度が極めて少ない事象の予測が必要となる。

PRAの予測精度について、注意深い検証が必要。

保守的評価によって事故進展のシナリオが正しく求められないことを懸念

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耐震安全性評価のための地震PSAの活用

(3)フラジリティ評価の概要と耐震構造設計への活用

日本原子力学会 秋の大会 (大阪大学 山口 彰)

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配管系の耐震裕度評価

日本機械学会発電用設備規格委員会

原子力専門委員会

[耐震許容応力検討タスクフェーズ 2]

ひずみ範囲のばらつき(SAI-3H)

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エルボ脇部内面・周方向ひずみ

全解析結果+実験結果 全解析結果から解析Gを除いたもの+実験結果

降伏応力に規

格値を用いた

解析(解析G)

� 実験値に対する解析結果のばらつきは、±30mmで+30%~-18%程度(解析Gを除く)

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残留ひずみのばらつき(SAI-3H)

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� 実験値に対する解析結果のばらつきは、±70mm時で+240%~-115%程度となり、

ひずみ範囲のばらつきと比べると残留ひずみのばらつきは大きい。

耐震安全性評価のための地震PSAの活用

(3)フラジリティ評価の概要と耐震構造設計への活用

日本原子力学会 秋の大会 (大阪大学 山口 彰)

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ガイドラインへの期待:まとめ

このようなガイドラインをまとめられたことを高く評価する。

But,

低確率・高影響の事象:現象が複雑で情報が極めて少ない。

Then,

• シミュレーション技法の更なる向上

• データの充実(材料の構成式、減衰率、熱伝達率)

• 終局耐力に関する知見の充実

• 人材の育成

等の継続的活動が必要である。

補遺:「Scienceと科学」

野家啓一著、「科学哲学への招待」、ちくま学芸文庫(2015)

• Science(U):

“Scientia est potensia”(知は力なり)フランシスコ・ベーコン。 「信念

(belief)」や「意見(opinion)」に対する「知識(knowkedge)」の意味。

「理学部(Faculty of Science)」:「理」は「ことわり」とも読み「法則的秩序」

を表す言葉であることから、法則的知識という意味では「理学」のほうが

不加算名詞であるサイエンスの訳語にはふさわしいともいえよう。

• Sciences(C):

「個別諸科学」:物理学、数学、地質学、生物学等。

19世紀後半に“Sciences”の方法論が日本に輸入され、これを「科学」と呼

ぶようになった。

日本語の「科学」という言葉が「実証的知識」や「法則的知識」ではなく、は

じめから「個別諸科学」の意味を持っていたことは、日本が西欧から科学

を移入した時期と密接にかかわっている。また、そのことは日本人の科

学理解にも少なからぬ影響を及ぼしているのである。

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ご清聴ありがとうございました。

“分類すれば、複雑さは必ず低下する。

黒い白鳥が生まれるのは必ずそういうところだ。

凝り固まったプラトン性が黒い白鳥を呼ぶのである。

どんな形にせよ、私たちのまわりの世界を単純化すれば大変

なことになる可能性が生まれる。

不確実性の源をいくつか無視することになるからだ。”

ブラック・スワン-不確実性とリスクの本質-

Nassim Nicholas Taleb 著、 望月衛訳、ダイアモンド社、2009.

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