10
No. 2018 11 66 α 詳しく! もっと 歩くために必要な足の構造と機能 足にトラブルを抱えている方は非常に多く、外反母趾や強剛母趾、 陥入爪、足底筋膜炎、開張足、モートン神経腫などが代表格です。そ れぞれ別の疾患に思えますが、原因の根本には足の構造やアライメン ト(各関節や骨の並び)の崩れがあることが非常に多いのです。 足は大小さまざまな 26 個の骨と靱帯、筋肉などで構成されていま す。足関節と足部に分かれており、足部は機能解剖学的に「前足部」 「中 足部」「後足部」の3つに分けられます。 FCT 学習会 ~足病変の発生機序から考える~ 糖尿病性足病変対する フットウェア Foot Care Team(フットケアチーム) 歩行しやすいように、足の構造を「柔らかい足」「硬い足」 にコントロールする働きをします。 後足部 小さな骨の集まりで構成されます。靱帯でしっかり結合 されているので動きは小さいですが、後足部の動きを前 足部に伝える働きをします。 中足部 後足部の位置や動きに合わせ、足部を安定させて衝撃を 吸収したり、歩行時には蹴り出しの役割を担います。 前足部 歩行をスムーズにするために重要になるのは、第 1 楔 けつじょうこつ 状骨と 第1中 ちゅうそくこつ 足骨で構成される第 1 列といわれる部分です。 -1- 1946(昭和21)年の設立以来 72年にわたり、義肢・装具の製 作や販売を行っています。 田村義肢製作所 義肢装具士として主にフットウェア(治療用の 靴型装具や足底装具)を担当。キャリア14年目。 田村義肢製作所 営業部 義肢装具士 いでら 良 一 かずほ チーフマネージャー 第1列 第1楔 けつじょうこつ 状骨 第 2 楔状骨 第 3 楔状骨 しょうこつ りっぽうこつ 方骨 第1中 ちゅうそくこつ 足骨 第 2~5 中足骨 まつせつこつ 節骨 ちゅうせつこつ 節骨 きせつこつ 節骨 きょこつ しゅうじょうこつ 状骨 足の骨格構造

FCT学習会 Foot Care Team(フットケアチーム) …...外反母趾は、第1MPT関節が曲がらず、その力が変形といったか たちで現れます。根元の中足骨が関与しており、その動きをコントロー

  • Upload
    others

  • View
    2

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: FCT学習会 Foot Care Team(フットケアチーム) …...外反母趾は、第1MPT関節が曲がらず、その力が変形といったか たちで現れます。根元の中足骨が関与しており、その動きをコントロー

No.2018年11月 66α詳しく!もっと

歩くために必要な足の構造と機能 足にトラブルを抱えている方は非常に多く、外反母趾や強剛母趾、

陥入爪、足底筋膜炎、開張足、モートン神経腫などが代表格です。そ

れぞれ別の疾患に思えますが、原因の根本には足の構造やアライメン

ト(各関節や骨の並び)の崩れがあることが非常に多いのです。

 足は大小さまざまな26個の骨と靱帯、筋肉などで構成されていま

す。足関節と足部に分かれており、足部は機能解剖学的に「前足部」「中

足部」「後足部」の3つに分けられます。

FCT学習会~足病変の発生機序から考える~

糖尿病性足病変に対する

フットウェア

Foot Care Team(フットケアチーム)

歩行しやすいように、足の構造を「柔らかい足」「硬い足」

にコントロールする働きをします。後足部

小さな骨の集まりで構成されます。靱帯でしっかり結合

されているので動きは小さいですが、後足部の動きを前

足部に伝える働きをします。

中足部

後足部の位置や動きに合わせ、足部を安定させて衝撃を

吸収したり、歩行時には蹴り出しの役割を担います。前足部

歩行をスムーズにするために重要になるのは、第1楔けつじょうこつ

状骨と

第1中ちゅうそくこつ

足骨で構成される第1列といわれる部分です。

- 1 -

1946(昭和21)年の設立以来

72年にわたり、義肢・装具の製

作や販売を行っています。

田村義肢製作所

義肢装具士として主にフットウェア(治療用の靴型装具や足底装具)を担当。キャリア14年目。

田村義肢製作所 営業部

義肢装具士 出い で ら

良 一か ず ほ

歩 氏

チーフマネージャー

後足部

中足部

前足部

第1列

第1楔けつじょうこつ

状骨第2楔状骨第3楔状骨

踵しょうこつ

立りっぽうこつ

方骨

第1中ちゅうそくこつ

足骨第2~5中足骨

末まつせつこつ

節骨

中ちゅうせつこつ

節 骨

基き せ つ こ つ

節骨

距きょこつ

舟しゅうじょうこつ

状 骨

足の骨格構造

Page 2: FCT学習会 Foot Care Team(フットケアチーム) …...外反母趾は、第1MPT関節が曲がらず、その力が変形といったか たちで現れます。根元の中足骨が関与しており、その動きをコントロー

アーチ構造によって

体重を支え、衝撃を吸収し、

歩行を推進させています

- 2 -

足のアーチ構造が持つ役割 足には「内側縦アーチ(土踏まず)」「外側縦アーチ」「横アーチ」

の3つのアーチ構造があります。アーチ構造は高さを変えることで、

高いアーチ構造へと変化するとき

 荷重位において、足の形を後ろから見ると、踵しょうこつ

骨は内反し

距きょこつかかんせつ

骨下関節は回か い が い い

外位となります。横おうそくこんかんせつ

足根関節は締まりの位置となり、

つま先立ちになると、足底腱膜が引っ張られ、内側縦アーチを高くする。

足底腱膜

横おうそくこんかんせつ

足根関節

距きょこつかかんせつ

骨下関節

外側縦アーチ

内側縦アーチ

横アーチ

アーチの動き

足のアーチ構造

回外位アーチ構造を高く変移させ、第1列は地面に

対して底屈位で固定化されます。この足の形

は骨同士の結束が強まることで足部の関節可

動域が減少し剛性のある硬い足へと切り替わ

り、歩行時の蹴り出しにも対応できる「てこ」

のような足になります。反面、衝撃吸収をす

る機能は減少します。

体重を支える、衝撃を吸収する、

歩行を推進させるなどの役割を

果たすことができます。歩行時

においては、アーチが高い低い

ではなく、適切な可動性とタイ

ミングで機能していることが重

要になります。

低いアーチ構造へと変化するとき

 荷重位において、足の形を後ろから見ると、踵骨は外反し距骨下関

節は回か い な い い

内位となります。横足根関節は緩みの

位置となり、アーチ構造は低く変移します。

この足の形は骨同士の結束が緩まることで足

部の関節可動域が増大し柔軟性のある柔らか

い足へと切り替わり、衝撃吸収や地面の凹凸

にも対応できます。しかし、支える土台とし

ては不安定な構造ともいえます。

回内位

Page 3: FCT学習会 Foot Care Team(フットケアチーム) …...外反母趾は、第1MPT関節が曲がらず、その力が変形といったか たちで現れます。根元の中足骨が関与しており、その動きをコントロー

ヒトは

アーチ構造を切り替えて

効率的に歩いています

- 3 -

正常歩行時のアーチ構造の変化 歩行という一連の流れにおいて、接地時はアーチ構造を低くし、推

進から蹴り出しにかけてはアーチ構造を高くし、支持性のある硬い足

へと切り替える必要性があります。

かかとが地面に設置する時は、比較的に

硬い足の状態で地面からの衝撃に備えて

います。

かかとが地面に接地し、床反力を利用し

て踵骨を外反させます。アーチ構造の低

下に伴い柔らかい足へと変化させ、衝撃

を吸収します。

足の上を身体が通っていく状態です。体

重を支えるためにアーチ構造を高くし、

柔らかい足から硬い支持性のある足へと

切り替わります。

接地

推進

接地前

アーチ構造は推進よりもさらに高くな

り、硬い支持性のある足は第1列をしっ

かり地面に固定化させて蹴り出しを行

い、身体を前方に運びます。

蹴り出し

Page 4: FCT学習会 Foot Care Team(フットケアチーム) …...外反母趾は、第1MPT関節が曲がらず、その力が変形といったか たちで現れます。根元の中足骨が関与しており、その動きをコントロー

足底圧の軌跡から

足のトラブルを推測できます

- 4 -

理想の荷重は、かかとの外側から母趾へ 足の裏にかかる荷重がどのような足底圧の軌跡をたどるか見てみる

と、理想的な歩行サイクル(正常歩行)はかかとの外側から母趾に軌

跡が通っていきます。これは、母趾がしっかりと地面を蹴り出してい

ることを表します。

 足部の機能が発揮できないと足底部にかかる圧力が局所的になりま

す。そのストレスは皮膚を硬く肥ひ こ う

厚させ、胼べ ん ち

胝形成にいたります。ま

た、機能低下が長期的に続くことでアライメント(各関節や骨の並び)

が崩壊し、最もゆがみの大きなところから痛みや変形といった症状が

現れてきます。

 足のアライメントが崩れると足底圧が偏った軌跡をたどります。足

の形を見ることで、圧のかかる部位の推測ができます。それは足底部

にできる胼胝や潰瘍の予防と治療の指標にもなります。

足底圧の軌跡

足のアライメントが崩れていると…… アーチが低い人(偏平足)

 アーチが低いため荷重は内側に偏ります。足底圧は内側型の軌跡を

通り、推進から蹴り出しにかけて第1列が固定化できないため、軌跡

は第2・第3中足骨頭の方へ向かいます。母趾の内側面でこじるよう

に蹴り出しを行い、第2・第3中足骨頭や母趾内側面に皮膚の肥厚や

胼胝が現れます。

 陥入爪は、母趾の内側でこじるように蹴り出しを行うために、床反

力が軟部組織を持ち上げて爪に食い込みます。傷や炎症よって腫れて

くるとさらに傷が食い込むという現象です。

アーチが高い人(硬い凹足タイプ)

正常歩行

内側型の軌跡・内側荷重に多い……外反母趾、陥入爪

アーチが低い人

足底圧の軌跡

Page 5: FCT学習会 Foot Care Team(フットケアチーム) …...外反母趾は、第1MPT関節が曲がらず、その力が変形といったか たちで現れます。根元の中足骨が関与しており、その動きをコントロー

変形の根本的な原因は

足部の機能低下です

- 5 -

アーチが高い人

偏平足と外反母趾のメカニズム 理想的な蹴り出しは、第1列を地面に固定化し、母趾の付け根の関

節(第1MPT関節)をしっかりと曲げる必要性があります。MPT関

節は、第1中足骨の底屈運動(傾斜する運動)が起こることによって、

蹴り出し時に必要な可動域を確保することができます。

 しかし、偏平足の方はアーチ構造が低く、柔らかい足のまま推進か

ら蹴り出しを行います。柔らかい足から硬い足への切り替えがうまく

いかないために、第1列は地面に対して固定化ができません。床反力

に負けて押し上げられます。第1中足骨の底屈運動ができないために、

第1MPT関節はしっかりと曲げることができません。曲がらない力

がどこに逃げるかが、外反母趾に深く関与してきます。

 外反母趾は、第1MPT関節が曲がらず、その力が変形といったか

たちで現れます。根元の中足骨が関与しており、その動きをコントロー

ルしている後足部の関節の崩れによって生じているともいえます。ま

た、強剛母趾は曲がらない力が関節同士がぶつかる力に変わります。

病名や症状は違いますが、外反母趾も強剛母趾も根本的な原因は足部

の機能低下です。

 アーチ構造が低下した足は、内側に荷重がかかるため、第1中足骨

は内に横に広がろうとします。しかし、その先の指先にある母趾の末

節骨は動きません。なぜなら蹴り出す筋肉の力で固定されているから

です。そのため、母趾の位置とは反対方向に中足骨がねじれてしまう

現象が起こります。変形した状態で母趾を曲げ伸ばす筋肉が働くとそ

の力はさらに変形を大きくし、最終的には第1MPT関節への脱臼を

起こします。

 理想のアーチ構造をつくり正常な機能を発揮するためには、かかと

周りの関節(距骨下関節、横足根関節)の動きをコントロールするこ

とが大事になります。理想のアーチは人それぞれ高さが違いますが、

外側型の軌跡・外側荷重に多い……二分脊椎

足底圧の軌跡

 アーチが高いことにより荷重は外側に偏ります。外側型の軌跡を通

り、衝撃吸収が働かないため、かかとや足関節、膝、股関節などに痛

みを伴います。第5中足骨底や第5中足骨頭に局所圧がかかり、その

分皮膚の肥厚や胼胝を認めます。

Page 6: FCT学習会 Foot Care Team(フットケアチーム) …...外反母趾は、第1MPT関節が曲がらず、その力が変形といったか たちで現れます。根元の中足骨が関与しており、その動きをコントロー

糖尿病患者数の増加を背景に

足潰瘍も増加しています

- 6 -

後足部が正しい位置にあるときにできるアーチの高さが、その人の理

想の高さともいえます。

 糖尿病の長期罹患によって糖尿病性神経障害を合併する

と、足の感覚が低下したり防御知覚が消失します。足部の機

能低下やアライメントの崩れによる足部変形といった足のト

ラブルを持つ方が足底にかかる局所圧や靴擦れによる痛みを

感じないまま歩き続けると胼胝が潰瘍化します。さらに感染

や血流障害を合併すると、治癒が困難になるハイリスクな足

病変へと変わります。最悪の場合はマイナー切断や大切断に

いたるケースもあります。

足のトラブルと糖尿病 糖尿病の患者数は増え続け、予備軍の方を含めると10人に1人は

糖尿病になるといわれています。足にトラブルを持つ方が、糖尿病に

罹患すると足病変が重症化することから、糖尿病性足潰瘍による足の

切断が大きな問題になっています。

糖尿病性足潰瘍

足の構造の崩れによるトラブル

胼胝鶏眼べんちけいがん

外反母趾

陥入爪など…

糖尿病

足潰瘍感染

足の切断

神経障害 外的要因

Page 7: FCT学習会 Foot Care Team(フットケアチーム) …...外反母趾は、第1MPT関節が曲がらず、その力が変形といったか たちで現れます。根元の中足骨が関与しており、その動きをコントロー

足底の除圧の重要性は

医療関係者にも十分に浸透していません

糖尿病患者の場合は……

糖尿病性潰瘍・壊疽ガイドライン

- 7 -

下肢切断率が高く、生命予後も不良

 糖尿病診療ガイドライン2016には「糖尿病患者の足切断

の80 ~ 85%は足潰瘍が先行し、下肢切断率は非糖尿病者

の8倍にのぼる」「糖尿病患者の下肢切断術後の生存率は非

糖尿病者より低く、術後3年間で約50%、5年で約40%と

の報告もある」と記載されています。

 背景には、糖尿病患者さんの心血管系障害の発症リスクの

高さがあります。下肢切断により日常生活動作が妨げられる

と心肺機能がさらに低下し、予後が低下することも考えられ

ます。そのため、糖尿病患者さんの予後改善には歩行可能な

足を残し、早期にリハビリを開始する必要性があります。

治療方針は、血流管理・感染対策・除圧 「糖尿病性潰瘍・壊疽ガイドライン」によると、糖尿病性足潰瘍の

治療方針は「血流管理」「感染対策」「除圧」の3本柱となっています。

しかし、血流管理や感染対策は従来から行われていますが、除圧に関

しては医療関係者にまだ十分に浸透していないようです。

 潰瘍部の除圧とは「圧力を減らす」「全く圧力をかけない」ことで、

潰瘍部の圧迫やズレ、せん断力を排除します。発生状況を検討し、適

切な除圧をすることで治癒の促進や再発予防につながります。

 免荷・足底圧の減圧方法はさまざまな種類があります。松葉杖、車

いす、ベッド上安静。フットウェアもその一端を担います。フットウェ

アは治療目的で作られた靴型装具や足底装具です。治療用と治療後の

2つに分けられます。

糖尿病性足潰瘍

血流管理 感染対策 除圧

Page 8: FCT学習会 Foot Care Team(フットケアチーム) …...外反母趾は、第1MPT関節が曲がらず、その力が変形といったか たちで現れます。根元の中足骨が関与しており、その動きをコントロー

患部にかかる負担を減らすと

治癒の促進につながります

- 8 -

治癒促進が目的の「治療用フットウェア」

 比較的安価で耐久性にも優れています。その場で加工し、装着が可

能です。足底に直接装着することによって生活の中で常時患部を免荷

することができます。患部にかかる負担を減らし治癒の促進にもつな

がっていきます。

[医療用フェルトの除圧例]

●第1中足骨頭に大きな潰瘍がある場合は、フェルトの長さを足趾

(足の指)にまでかけて支持する面積を増やし、潰瘍部をくり抜

いて除圧を図っています。かかと部にはフェルトをかけていませ

ん。後方に荷重をすることによって、前足部へかかる圧力を軽減

しています。

●第3中足骨頭に輪郭がはっきりしない胼胝が認められている場

合、荷重圧からできる胼胝は形が明確で硬さがありますが、輪郭

がはっきりしないような胼胝はズレから起きていることが多いで

す。ズレによるものなのでフェルトの支持面積はなるべく小さく

し、生活しやすいよう除圧を図ります。

●第5中足骨底や基部・外側面に潰瘍がある場合、股関節の外旋肢

位や足に内反変形があるとこのように胼胝や潰瘍ができることが

あります。除圧するためにフェルトの支持面積を足の横側、外側

面にも増やして除圧を図ります。

●第3中足骨頭に大きな潰瘍があり、第4趾・第5趾にクロートゥー

変形が認められる場合は、歩行時に外側に偏った荷重圧がかかっ

ていると推測されます。大きな潰瘍にはフェルト1枚では除圧が

できないため、2枚にします。糖尿病性足潰瘍でクロートゥーや

ハンマートゥーなどの足趾変形がある場合は、運動神経障害が考

えらえます。運動神経障害がある場合には感覚神経障害があるこ

とも予測できます。病態に合わせてフェルトの枚数や支持面積を

考慮し除圧を図る必要性があります。

 関節の動きを制御する必要がある場合に使用します。ソールが硬く、

サンダルでの踏み返しができないようになっています。踏み返しが起

こらないため、前足部にかかる圧力が減少します。治癒促進のため、

踏み返し動作を制限することで歩きづらくなることを患者さん自身に

理解していただくことが重要になります。

医療用フェルト

除圧サンダル

Page 9: FCT学習会 Foot Care Team(フットケアチーム) …...外反母趾は、第1MPT関節が曲がらず、その力が変形といったか たちで現れます。根元の中足骨が関与しており、その動きをコントロー

同じ場所に繰り返す症例が多いのは

足の変形や機能低下が変わらないからです

- 9 -

 医療用除圧サンダルを使用しても治療が遅延する場合には、患部周

辺の2関節の動きを固定する短下肢装具が用いられます。足関節や足

部の関節全体を固定することで、動きによるせん断力やズレを大きく

抑制します。また、装具底面は踏み返し動作を制御するので、歩行時

にスムーズな推進が行えるよう底面はロッカーソールという丸みをつ

ける加工を施すことが必要になってきます。

 治療後のフットウェアの目的は、創や潰瘍の再発防止と予防です。

 足の潰瘍は、治癒しても以前と同じ場所に繰り返す症例が非常に多

い特徴があります。これは、患部が治癒しても足部の変形や機能低下

が変わらないからです。こうした症例ではフットウェアの装着によっ

て継続的な足部の荷重やアライメントのコントロールを行う必要があ

ります。

 室内でも足を保護していると傷ができる可能性を大幅に軽減できま

す。適合型タイプのインソールと併用使用することが多いです。室内

用に適するよう、縫い目の少ない製法で足に優しい特殊生地を採用し

ています。足ハイバンドは適度に足をホールドし、前ズレによる傷も

予防します。免荷・荷重をコントロールする時間が長ければ長いほど

効果的です。

 日本は室内で靴を脱いで過ごすのが当たり前ですが、裸足歩行に

よって免荷・荷重のコントロールができなければ負担軽減は行えませ

ん。そのため室内でも足を保護する必要があります。

 局所圧の分散が可能になります。表層は足への適合、中層はせん断

力の軽減、下層はインソールの形状保持の役割があります。しかし、

ただ単にインソール全部を柔らかくするだけでは除圧になりません。

効率よく除圧するために、支持する部位と除圧する部位を明確に分け

て製作する必要性があります。

再発防止と予防が目的の「治療後フットウェア」

短下肢装具

室内用サンダル

適合型タイプのインソール

Page 10: FCT学習会 Foot Care Team(フットケアチーム) …...外反母趾は、第1MPT関節が曲がらず、その力が変形といったか たちで現れます。根元の中足骨が関与しており、その動きをコントロー

予防的フットケアで

早期介入を!

- 10 -

足病変の前兆を見逃さないことが大切 胼胝はリスクのサインです。足の裏に胼胝があれば足部の変形や可

動域制限、アライメントの不良が考えられます。

 足病変の前兆を見逃さずに、「フットウェアの装着」「適切な除圧」

「歩行の指導」「関節可動域の確保」といった早期介入によって創の悪

化を防ぐことが、歩くための足を守ることにつながると私たちは考え

ています。

 足部の変形や重度の外反母趾の症例では既成靴との適合が非常に難

しく、オーダーメイド靴が処方されます。透明の仮合用チェックシュー

ズを用いると、靴の中で足がどのように動いているか、靴が変形部に

どのように干渉しているかを実際に目で確かめることができます。

景習風実

整形靴