AWARD Cutter soil mixingexaward.com/swfu/d/auto-8IEjZZ.06.17AWARD-Csm...AWARD-Csm(AWARD-Cutter...

Preview:

Citation preview

AWARDア ワ ー ド

-Csmシーエスエム

工法 AWARD-Cutter soil mixing 工法

(気泡掘削による等厚式ソイルセメント地中連続壁の造成)

技術・積算マニュアル(案)

平成 26 年度版

気泡工法研究会

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

気泡工法の発展を望む

米倉 亮三

(東洋大学 名誉教授)

インフラストラクチャーの重要性が再認識されつつあるが、

この構築において品質の向上、耐久性の向上、適正な価格と共に自然への環境負荷の少なさ

は重要な項目です。

気泡工法(AWARD 工法)は地下構造物の構築において“微細な気泡粒”を介在させるこ

とにより、品質向上、価格及び環境負荷の低減等に大きな貢献をする工法と思われます。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

気泡工法に期待する

赤木 寛一

(早稲田大学理工学術院 教授)

土に気泡さらに水を添加し混練した気泡混合土は,流動性

と止水性が増加し,密度が減少します。土粒子,水及び気泡を適切に配合した気泡混合土は,

各々の密度には大きな差があるにもかかわらず,それらは分離することなく懸濁状態を保ち

ます。この懸濁物の性質を調べた結果,地中に掘削された溝壁を保持する機能があることが

確認されました。また,粘性土と気泡を混練した気泡混合土にセメント系懸濁液を混合する

と,土とセメントの混練性が向上し,少ないセメント量でも均質な強度発現が得られます。

このような気泡の特性を利用した施工性能の改良とともに,気泡は容易に破泡させることが

できるので,排泥土量が 1/2~1/3 に減少するので環境負荷が少なくなります。

これらの気泡の特性を最大限に生かした気泡工法は,各種の自然災害に打ち勝つ強靭な国

土づくりに資するとともに環境負荷低減に貢献する工法としてますます普及,発展が期待さ

れる工法と言えます。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

気泡工法研究会で開発した工法には、AWARDア ワ ー ド

(Air-form WAste Reduction methoD)を冠す

ることにしています。

気泡工法研究会

用語の解説

AWARDア ワ ー ド

工法のマニュアルで用いる用語の定義を以下に示す。

AWARDア ワ ー ド

工法

AWARD 工法は気泡掘削工法とポリマー安定液工法に大別できる。 気泡掘削工法

掘削時に気泡及び水を加えつつ気泡混合土を造成し、さらに気泡混合土に消泡剤を混入し

た固化材を添加・撹拌し地下構造物を構築する工法である。使用する施工機械の種類などに

より AWARD-Ccw 工法、AWARD-Trend 工法、AWARD-Demi 工法および AWARD-Csm 工法

に分類される。 ポリマー安定液工法

高膨潤性ポリマーを主材料とする安定液を使用し、場所打ち杭を造成する工法であり、

AWARD-Sapli 工法と称する。

AWARDア ワ ー ド

- C c wシーシーダブリュー

工法(AWARD-Continuous columned wall) 気泡掘削工法によるオーガー方式施工機を使用する柱列式ソイルセメント地中連続壁工法。

AWARDア ワ ー ド

-Trendト レ ン ド

工法(AWARD-Trench-cutting-in-depth) 気泡掘削工法によるカッターチェーン施工機を使用する等厚式ソイルセメント地中連続壁

工法。

AWARDア ワ ー ド

-Demiデ ミ

工法(AWARD-Deep-mixing) 気泡掘削工法によるオーガー方式施工機を使用する深層混合処理工法。

AWARDア ワ ー ド

- C s mシーエスエム

工法(AWARD-Cutter soil mixing method) 気泡掘削工法による水平多軸回転カッター施工機を使用する等厚式ソイルセメント地中連

続壁工法。

AWARDア ワ ー ド

-Sapliサ プ リ

工法(AWARD-Super absorbent-polymer-liquid) 高膨潤性ポリマー安定液を用いたアースドリル施工機、BH 施工機等による場所打ち杭工

法。 気泡混合土

掘削土と気泡及び水を混合した分離の生じない混合物。気泡安定液は狭義の気泡混合土で

ある。 気泡安定液

掘削土に気泡及び水を添加した分離の生じない懸濁液であり、掘削時に必要な溝壁の安定

性、流動性および土砂の保持特性を備えた安定液。 気泡

気泡掘削工法では起泡剤と圧縮空気を起泡プラントで起泡させた気泡を使用する。 気泡添加率 Q (%)

気泡を掘削土に添加する量の指標。土の乾燥重量に対する起泡剤の重量百分率で表す。 (g)

(%)(g)

×100Q起泡剤の重量

気泡添加率土の乾燥重量

気泡添加量 q ( /m 3) 気泡を掘削土に添加する量の指標。掘削土 1m3 に対し添加する気泡量( )で表す。

加水量 n ( /m 3) 水を掘削土に添加する量の指標。掘削土 1m3 に対し添加する水量( )で表す。

起泡剤 起泡剤は起泡剤原液を既定の倍率で水希釈し使用する。起泡剤の種類として合成界面活性

剤や蛋白系起泡剤がある。気泡掘削工法では耐消泡性、起泡性等より WTM 起泡剤(アルキ

ルサルフェート系の合成界面活性剤)を推奨する。 起泡剤原液

起泡剤は起泡剤原液を既定の倍率で水希釈し使用する。 希釈倍率

起泡剤原液の重量に対する希釈水の倍率を希釈倍率と言い、WTM 起泡原液の使用の場合

は 20 倍が標準である。 g

g起泡剤の重量( )

希釈倍率起泡剤原液の重量( )

起泡倍率 起泡剤に対するそれを起泡させた気泡の体積比。気泡掘削工法では WTM 起泡剤を 25 倍に

気泡させ、比重 0.04g/cm3 を標準気泡として使用する。

気泡の体積起泡倍率

起泡剤体積 消泡剤

消泡剤は消泡剤原液を既定の倍率で水希釈し使用する。消泡剤の作用は気泡を壊す作用と

気泡生成を抑える作用がある。 消泡剤原液

シリコーンオイル、オイルコンパウンド溶液の各型などがあり、水性の発泡液にはエマル

ジョン型が適している。 消泡剤添加率(%)

消泡剤を掘削土に添加する量の指標。土の乾燥重量に対する消泡剤の重量百分率で表す。

(g)(%)

(g)×100消泡剤の重量

消泡剤添加率土の乾燥重量

消泡率 気泡混合土に消泡剤を添加・混合することにより消泡した気泡の量の指標で、消泡した体

積に対する消泡前の気泡の体積百分率で表す。

(%) ×100消泡前の気泡の体積-残存気泡の体積消泡率

消泡前の気泡の体積

気泡残留率 va (%) ソイルセメント固化体の組成はそれぞれ Vs(固相)、Va(気相)及び Vw(液相)からなる

組成とし、気相は気泡によるものと仮定する。そのとき、ソイルセメント中の空気量は残留

した気泡量となるので、気泡残留率を空気間隙率で表す。

aab

v100(%)Vv v

V

b a a v: (%) (%)v v V Vここで、 気泡残留率 、  :空気間げき率 、  :空気の体積、  :土全体の体積 排泥比率

改良対象土量に対する余剰汚泥量の百分率とする。排泥土量は排泥中の気泡を消泡した値

を使用する。 消泡

気泡掘削工法では気泡安定液や気泡混合土中の気泡を消泡させるために、気泡安定液等に

消泡剤を添加した固化材スラリーを添加・混練し気泡を消泡させ強度増加等を図る。 最小含水比 wmin (%)

掘削土と気泡を混合した時に消泡が生じない掘削土の最小の含水比。 分離含水比 wsep (%)

土粒子と気泡と水が分散し懸濁状態を保つ気泡安定液の最大の含水比。 最小密度

溝壁の安定を保つための気泡安定液の最小の密度で 1.05g/cm3 とする。 気泡安定液管理図

気泡掘削工法における気泡安定液の管理を行う管理図であり、現場で計測する気泡安定液

の密度及び TF 値を管理図上にプロットしその状態を判断する。気泡安定液管理図は気泡安

定液の密度と TF 値の直交座標上に ①気泡安定液の懸濁安定性に係る最小含水比及び分離

含水比、 ②溝壁の安定に係る気泡安定液の密度、 ③掘削に係る気泡安定液の流動性を記

入した管理図である。 固化材添加率 C(%)

セメントを掘削土に添加する量の指標。土の乾燥重量に対する固化材の重量百分率で表す。

固化材スラリーの添加による気泡安定液の含水比 wwc の増加

(%) wcwc

s100Ww W

ここで、Ws:土の質量(g)、Wwc:固化材スラリー中の水量(g)

固化材の重量(g)土の乾燥重量(g)

固化材添加率C(%) = ×100

目 次

用語の解説

Ⅰ 施工編 ..................................................................... 1

1.AWARD-Csm 工法とは ......................................................... 2 1.1 工法の概要 ............................................................................................................................. 2 1.2 工法の特長 ............................................................................................................................. 3 1.3 工法の用途・適用土質 ......................................................................................................... 4

2.使用材料 .................................................................. 5 2.1 起泡剤および消泡剤 ............................................................................................................. 5 2.2 材料の安全性 ......................................................................................................................... 6

3.施工方法 .................................................................. 8 3.1 施工手順 ................................................................................................................................. 8 3.2 施工機械・設備の構成 ......................................................................................................... 9 3.3 掘削・固化液の標準配合 ................................................................................................... 12

4.施工管理・品質管理 ....................................................... 12 4.1 設計図書・要求品質の確認 ............................................................................................... 13 4.2 事前調査の概要 ................................................................................................................... 13 4.3 室内配合試験 ....................................................................................................................... 14 4.4 気泡管理図の作成 ............................................................................................................... 16 4.5 施工管理項目 ....................................................................................................................... 17

Ⅱ 積算編 .................................................................... 18

1.積算 ...................................................................... 19 1.1 AWARD-Csm 工法関連プラント ............................................................................................ 19 1.2 起泡剤・消泡剤材料費 ....................................................................................................... 20 1.3 安定液添加剤の変更に伴う工費比較 ............................................................................... 20 1.4 気泡用全自動プラント機械損料 ....................................................................................... 21 1.5 気泡プラント労務費 ........................................................................................................... 21 1.6 特許料 ................................................................................................................................... 21 1.7 発生泥土量 ........................................................................................................................... 21

Ⅲ 参考資料 .................................................................. 22

参-1 気泡掘削工法の理論(概要) ........................................... 23 参-2 気泡安定液管理図 ..................................................... 27 参-3 参考文献 ............................................................. 30

1

Ⅰ 施工編

2

1.AWARD-Csm 工法とは

1.1 工法の概要

AWARD-Csm(AWARD-Cutter soil mixing)工法とは、水平多軸回転カッターを使用

し、気泡掘削により等厚式のソイルセメント地中連続壁を造成する工法である。カッタ

ー先端から気泡を吐出しながら掘削・撹拌を行い、掘削土を流動性の高い気泡安定液と

した後、気泡安定液に固化材(消泡剤を添加した固化材スラリー)を注入し、気泡を消

泡しながら混合撹拌を行い、ソイルセメント壁を造成する。 なお、本マニュアルでは、気泡掘削に関連する部分を中心に記載するため、CSM 工法

の施工機械、施工方法等の詳細については、「CSM 工法標準積算資料」を参照のこと。

AWARD-Csm 工法では、カッターの先端部からシェービングクリーム状の気泡(写真

1-1)を吐出しながら掘削を行い、気泡と掘削土の混合土(気泡安定液)を造成する。気

泡安定液は土粒子、間隙水、気泡から構成され、その含水比が適切な範囲にある場合は

分離を生じず、流動性のある懸濁状態となる(写真 1-2)。流動性は気泡が球体であるた

め、土粒子等の非球体粒子間に生じる摩擦の軽減効果(ベアリング効果)によるものと

考えられている(図 1-1)。気泡安定液に消泡剤を添加した固化材スラリーを混合・撹拌

することで、気泡は消泡して地上に排出され、密実なソイルセメント壁が造成できる(図

1-2)。 掘削時の溝壁の安定は、気泡が地盤の間隙部分に入り込み、地盤の土粒子の骨格と一

体となって不飽和化し難透水層を形成することで、気泡安定液圧が溝壁に伝わり達成さ

れる。

写真 1-1 気泡 写真 1-2 気泡安定液(気泡と土の混合土)

図 1-1 気泡のベアリング効果 図 1-2 消泡による減量化

3

1.2 工法の特長

AWARD-Csm 工法は、以下の特長を有する。 1)余剰汚泥量の低減 2)固化材量の低減 3)施工効率の向上 4)改良体品質の向上 5)環境への負荷低減 6)工事費の低減

AWARD-Csm 工法は、掘削土と気泡を混合・撹拌することにより、土塊がほぐれ細粒

化し、それらは再付着しないので、流動性が良くなる。さらに、この気泡安定液に消泡剤

を添加した固化材スラリーを加えると、固化材スラリーと土粒子の混合撹拌性が向上する

と共に、気泡安定液中の気泡は消泡剤により破泡・集合して大きな気泡塊となって気泡安

定液中を上昇し、大気中に排出する。 気泡の添加により固化材スラリーの水固化材比(W/C)を低減できるため,余剰汚泥量や

固化材量の低減が可能となり,コストパフォーマンスに優れた環境配慮型の地中連続壁を造

成できる。

1) 余剰汚泥量の低減

気泡により流動性が確保された気泡混合土に固化材(消泡材が添加された固化材スラ

リー)を添加して混合撹拌することにより気泡を消泡させるので、添加した気泡は余剰

汚泥を増やす要因とはならない。また、2)の理由により使用する固化材量が少なくなる

ので、余剰汚泥量を低減できる。

2) 固化材量の低減

気泡添加により、気泡が土粒子間に入り込みベアリング効果を発揮することで、従来

工法に比べて、少量の加水で流動性を確保できる。このため、注入する固化材スラリー

の水固化材比(W/C)を低減できる。また、固化材が余剰汚泥となって地上に流出する

のを抑制できる。これらにより、固化材の添加効率が向上するため、添加固化材量の低

減が図れ、固化材料費の低減、余剰汚泥量の低減が実現できる。

3) 施工効率の向上

気泡安定液はベントナイト液と比較すると粘性が低いため、カッタートルクが低下し

機械負荷が軽減され、施工効率の向上が期待できる。また、気泡にはカッターと地山の

付着を減少させる効果がある。また、余剰汚泥量の低減により、貯留する用地の縮小が

可能である。

4

4)改良体品質の向上

気泡により流動性が向上することで、気泡混合土と固化材スラリーを均質に混合・撹

拌できる。その結果、造成した改良体の品質のばらつきが少ない。また、気泡は単粒で

あるので透水性が大きくなることはない。

5)環境への負荷低減

従来工法に比べて、地盤に注入する固化材スラリーや水の量が減るため、余剰汚泥の

処分量が減少する。そのため、運搬車両台数が減少し、それに伴う騒音振動の低減や CO2

排出量の削減が可能となる。気泡掘削時の残土は、ベントナイトのような細粒分を混入

させていないため、地山の土砂の状態に復元しやすく、処理・再利用が容易である。

6)工事費の低減

単位固化材量および余剰汚泥量の低減により、従来工法と比較して工事費の低減が可

能である。

1.3 工法の用途・適用土質

AWARD-Csm 工法は、水平多軸回転カッター掘削機によるソイルセメント地中連続壁の施

工に適用可能である。 1)工法の用途 2)施工深度、壁厚 3)適用土質

1)工法の用途

ソイルセメント地中連続壁、止水壁、地盤改良等に適用できる。

2)施工深度、壁厚

水平多軸回転カッターを用いた掘削機は、カッターを支持する方式により、ケリーバ

ータイプ、クアトロタイプがある。それぞれの施工深度、壁厚を表 1-1 に示す。

表 1-1 施工深度と壁厚

機 種 施工深度(m) 壁厚(mm)

ケリーバータイプ 35 500~900

クアトロタイプ 65(サイドカッター仕様の場合は 60m) 500~1200

3)適用土質

N値 200 以下の粘性土・砂質土・礫質土及び、軟岩Ⅰ級(qu≦5N/㎜2)に適用し、 それよりも硬質の地盤及びφ100 ㎜を超える径の礫を含む地盤は別途検討が必要である。

5

2.使用材料

起泡剤および消泡剤は、気泡掘削による等厚式ソイルセメント地中連続壁を造成する

時に重要な役割を果たすので、それらの選定及び起泡方法には十分注意する。

2.1 起泡剤および消泡剤

1) 起泡剤

起泡剤には合成界面活性剤系、樹脂石鹸系、蛋白質系等があるが、本工法では環境負

荷の少ない生分解性の合成界面活性剤系であるWTM起泡剤を標準起泡剤として使用す

る。AWARD-Csm 工法に適用する場合、希釈倍率は 20 倍、起泡倍率は 25 倍を基本と

する。 WTM起泡剤の特長を以下に示す。 少量の添加で優れた起泡力を示すので非常に経済的である。 微細で独立した気泡が得られ、安定した流動性を発揮する。 圧力の変化に対し安定した性能を発揮する。 生分解性で環境負荷が小さい。

表 2-1 WTM起泡剤原液の性状

主成分 アルキルサルフェート系界面活性剤

外観 透明(わずかに淡黄色)液体

匂い 芳香性の微臭

pH (1%水溶液) 6.0~8.5

密度(g/cm3) 0.98~1.02

凍結湿度(℃) -9

2) 消泡剤

AWARD-Csm 工法で推奨する消泡剤の一般性状を表 2-2 に示す。消泡剤原液は、原則と

して水で 20 倍に希釈して添加する。 本消泡剤の特長は以下の通りである。 WTM起泡剤との相性が良く再起泡の防止に優れている。 起泡剤の 0.5~1.0 倍の添加で充分な消泡効果を示す。 消泡効果の持続性に優れている。

1) 起泡剤は、環境負荷が小さい生分解性の合成界面活性剤系であるWTM起泡剤を使用

することを標準とする。 2) 消泡剤は、適切な消泡効果を有し起泡剤との相性がよく再起泡の防止に優れたものを

使用する。

6

表 2-2 消泡剤の一般性状

主成分 鉱物油系配合物

外観 淡黄色液体

匂い 微臭

pH (1%水溶液) 9.0

密度(g/cm3) 0.895

2.2 材料の安全性

起泡剤および消泡剤の安全性に関する概要を表 2-3~2-6 に示す。詳細はメーカーの「化

学物質安全性データシート(MSDS)」を参照すること。

1)起泡剤

表 2-3 成分情報

危険有害成分 なし

化学物質管理促進法 該当しない

労働安全衛生法 該当しない

毒物及び劇物取締法 該当しない

表 2-4 危険有害性の要約

最重要危険有害物 なし

有害性 皮膚に対して刺激性がある

環境影響 生分解性、蓄積性に関する知見は現在のところない

物理的及び化学的危険性 特になし

特定の危険有害性 可燃性液体(消防法 危険物 第 4 類 第 3 石油類)

2)消泡剤

表 2-5 成分情報

危険有害成分 なし

化学物質管理促進法 該当しない

労働安全衛生法 該当しない

毒物及び劇物取締法 該当しない

7

表 2-6 危険有害性の要約

最重要危険有害物 なし

有害性 目、皮膚、呼吸器を刺激する可能性がある

環境影響 高濃度では水生生物に有害であると推測される

物理的及び化学的危険性 特になし

特定の危険有害性 可燃性液体(消防法 危険物 第 4 類 第 4 石油類)

8

3.施工方法

3.1 施工手順

AWARD-Csm 工法の施工手順は、基本的に CSM 工法の手順に準じて行う。

以下、施工方法についてはクアトロタイプ(2 サイクル施工の場合)を例に記述する。 AWARD-Csm 工法の施工手順を図 3-1 に示す。掘削工は水平多軸回転カッター掘削機

の先端部から気泡を掘削土に添加・混合し、気泡安定液により溝壁を保持しながら掘削

を行う。次に造成工では消泡剤を添加した固化液を気泡安定液と混合し、ソイルセメン

ト壁を造成する。気泡安定液中の気泡は消泡剤により破泡し、地上部に排出される。造

成完了後、芯材の建込みを行う。

図 3-1 施工手順図(2サイクル施工の場合)

9

3.2 施工機械・設備の構成

AWARD-Csm 工法は、CSM 工法の施工機械や機械設備に加え、気泡を製造および圧送

する設備等が必要となる。

1)標準機械配置図

2)水平多軸回転カッター掘削機(CSM 機)

表 3-1 カッターの仕様

カッター正面図 カッター側面図

項目 BCM5 型

トルク 0-45kN・m

ホイール回転数 0-40rpm

重量 14500kg

a 2400mm

b 500-1200mm

c 5160mm

10

ベースマシン正面図 ベースマシン側面図

表 3-2 ベースマシン(クアトロタイプ:標準仕様)

ベースマシン

形式 MG24

クローラ幅 700mm

車体全幅(縮/伸) 3,280/4,300mm

全装備重量(t=800mm) 84t

接地面積(水平接地面) 58,800cm2

接地圧(全装備重量時) 1.42kgf/cm2

旋回速度 1.5rpm

走行速度 1.39km/h

ホースドラム引力 400kN

ブームシリンダーストローク 420mm

作動油圧 300bar

エンジン

機関型式 CAT 3126B

総行程容積 7,242cc

圧縮比 16:1

定格出力 210kW/2,100rpm

台数 2台

最大トルク 1,203Nm/1,500rpm

燃料タンク 950

11

3)施工機械・設備

表 3-3 施工機械・設備の一覧(例)

機 械 名 称 規 格 台数 摘 要

CSM 機 クアトロタイプ 1

クローラクレーン 1

全自動プラント 40m3/h 1 固化液+消泡剤混練り

気泡プラント 希釈気泡剤槽+流量計+発泡機 1 気泡製造

消泡プラント 2 連ミキサー(200 ) 1

空気圧縮機 2.5m3/ min 1 気泡製造用のエア圧送

〃 15.0m3/ min 1 撹拌用のエア圧送

スクイズポンプ φ75 60~370 /min 1 掘削液(気泡)送り用

グラウトポンプ MG10 30~120 /min 1 掘削液(加水)送り用

〃 SG30~40 1 固化液(消泡剤含む)送り用

流量計 1 加水量計量

セメントサイロ 30t 1

水槽 30m3 2

発動発電機 220KVA 1 プラント用

〃 45KVA 1 排泥回収用

高圧洗浄機 200V 3.7kw 3 カッター洗浄・他

バックホウ 0.45m3 1 布堀り・泥土積込み

ミニクレーン 4.9t吊り 1

写真 3-1 気泡プラント 写真 3-2 全自動プラント

12

3.3 掘削・固化液の標準配合

掘削・固化液の配合及び注入量については、施工条件や土質条件を十分検討し設計条

件を常に確保できるように選定する。ただし、施工中に著しく室内配合試験と異なるこ

とが確認された場合は再度検討を行う。 本施工の配合は、現場試験施工を行い、最終的に決定することを基本とする。

1)掘削液

表 3-4 掘削液の標準配合(掘削土 1m3当たり)

土質 気泡添加率 (%)

加水調整 (%) 備考

粘性土 0.5~2.0 0~30

一般土 1.0~2.0 0~20

砂、砂礫 1.0~2.0 0~10 粒度分布による

玉石、岩砕 1.0~2.0 0~5

2)固化液

表 3-5 消泡剤入り固化液の標準配合(掘削土 1m3当り)

土質 固化材 種類

固化材 添加量

(kg)

W/C (%)

消泡剤添加量 (kg)

粘性土

高炉セメント

B 種

220~250

80~200

0.3~1.6 起泡剤

原液比

1:1

一般土 180~250 0.5~1.8

砂、砂礫 180~250 0.6~2.0

玉石、岩砕 180~250 0.7~2.0

掘削時 固化時

図 3-2 プラント系統図の例

13

4.施工管理・品質管理

AWARD-Csm 工法の施工管理は、施工管理図に施工中の比重とテーブルフロー値を記

入し管理する。施工管理図は土質により異なるため、施工前に対象範囲で採取した土質

試料を用いて実施する室内試験結果を用いて施工管理図を描き、管理範囲を決定する。

4.1 設計図書・要求品質の確認

等厚式ソイルセメント連続壁工法の壁体に要求される品質は特記仕様書に従うものと

する。目標値が定められていない場合は表 4-1 に示す一般値を参考に安全率を考慮して

設定することが望ましい。

表 4-1 要求品質一般値

項 目 設定値 試験材令 備 考

一軸圧縮強さ 500kN/m2 28 日 特記仕様に従う

透水係数 1.0×10-5cm/s 28 日 特記仕様に従う

4.2 事前調査の概要

施工計画時に、ボーリング等で改良対象範囲の土質試料を採取し、室内試験を実施す

る。特に、深度方向で土質が異なる場合は、各土質の試料を採取する。なお、採取量は、

原則として全層、または、層別に必要数量を採取する。

1)室内試験項目

改良対象範囲の土質性状を把握し、最適な配合設計を実施するため、表 4-2 に示す室

内試験を行う。なお、採取した試料は 10mm オーバーを除去したのち、各試験を実施す

る。 表 4-2 土質試験一覧表

項 目 基準類 備 考

土粒子の密度試験 JIS A 1202:2009

土の含水比試験 JIS A 1203:2009

土の粒度試験 JIS A 1204:2009

土の細粒分含有率試験 JIS A 1223:2009

土の液性限界・塑性限界試験 JIS A 1205:2009

土の湿潤密度試験 JIS A 1225:2009

土懸濁液の PH 試験 JGS 0211-2009 腐植土を対象

土の強熱減量試験 JIS A 1226:2009 腐植土を対象

14

2)現地土のサンプリング

室内試験に用いる試料は対象土層に適したサンプリング方法で採取する。 なお、採取は基本的に全層、または、層別に必要数量を採取する。 採取土量は配合試験ケースに応じた必要土量を採取する。表 4-3 に必要土量の参考値を

示す。 表 4-3 室内試験に必要な土量(参考値)

試験項目 試験配合数 必要土量 (cm3)

土質試験 湿潤密度・粒度・含水比・密度・液塑性 1,000

21,400

第Ⅰ混合試験 6 配合×1000cc 6,000

第Ⅱ混合試験

供試体作成 9 配合×6×200cc 10,800

ブリージング率測定 9 配合×200cc 1,800

テーブルフロー値測定 9 配合×200cc 1,800

※ 必要土量は再試験も考慮し上記の 2 倍を確保

4.3 室内配合試験

AWARD-Csm 工法の配合は、施工に先立って室内配合試験を実施して決定する。室内

試験では以下の項目を決定する。 1)掘削時の気泡添加率、加水量 2)固化時の固化材添加量、消泡剤量

室内配合試験は、掘削に必要な流動性が得られる掘削液(気泡、水)の最適な注入量(気

泡添加量と加水量)を求めることを目的とした第Ⅰ混合試験、所要の品質が得られる固化

液(固化材、消泡剤)の配合条件(固化材添加量,W/C比)と注入量を求めることを目的

とした第Ⅱ混合試験で構成される。 室内配合試験のフロー図を図 4-1 に示す。

15

図 4-1 室内配合試験フロー図

固化材液添加

試料土の調整 各層の試料土を10mmふるいに通し、層厚で加重平均した調整混合を実施

第Ⅰ混合試験

試料土の計量気泡の作製

加水し30秒撹拌後、気泡添加

混合・撹拌 ソイルミキサーで10分混合・撹拌、途中5分で掻き落としを実施

測定   テーブルフロー測定   ベーンせん断測定   湿潤密度測定   含水比測定

φ50×h100mmプラモールド使用

第Ⅱ混合試験

第Ⅰ気泡混合土固化材スラリーの作製

固化材、水、消泡剤調整

混合・撹拌 ソイルミキサーで10分混合・撹拌、途中5分で掻き落とし実施

測定   テーブルフロー測定   ベーンせん断測定

第Ⅰ気泡混合土の決定(気泡量・水量の決定)

   湿潤密度測定   含水比測定   ブリージング率

供試体作製   一軸圧縮強度

   六価クロム

配合の決定 総合的に判断し、配合を決定

   六価クロム

養生 密封し、20±3℃、湿度80%の湿気箱内で養生

測定   一軸圧縮強度 材令;7、28日

16

4.4 気泡管理図の作成

気泡安定液を現場において管理するための方法として気泡安定液の密度とテーブ

ルフロー値(TF 値)の直交座標軸上に 4 種の管理項目をプロットした気泡安定液管

理図を作成する。この管理図を使用し、掘削状態の良否の判断や掘削状態を常に良

好な状態に保つための使用方法を示す。

1)気泡管理図

気泡安定液管理図の例を図 4-2 に示す。気泡安定液管理図の描き方はⅢ 参考資料の参

-2 を参照する。 掘削時の気泡安定液の状態は施工現場から気泡安定液を採取し、密度とテーブルフロ

ー値を計測し、気泡安定液管理図にプロットする。また、図 4-2 に示した領域番号に対

応する現象、影響、原因、対策を表 4-4 に示す。

図 4-2 気泡安定液管理図の例

表 4-4 各領域の現象・影響・原因・対策

境界番号

気泡安定液の密度およびテーブルフロー値(TF 値)が の領域内にあるときは

安定した施工が可能である。

の領域では、気泡安定液の密度が小さく、溝壁の崩壊が生じる危険がある。

気泡安定液の状態が から の境界に近づいたときには、気泡添加量を減少さ

せ密度を増加させる。

の領域では土粒子の分離・沈降が生じるので、 から の境界に近づいたと

きは加水量を減少させ、土粒子の分離・沈降を防ぐ。

の領域では TF 値が急激に小さくなり、流動性が損なわれるので、 から の

境界に近づいたときは気泡添加量を増やす。

の領域では気泡の消泡が生じるので、 から の境界に近づいたときは加水

量を増加させる。

140

160

180

200

220

240

260

280

1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.7 1.8

TF値(mm)

気泡安定液の密度(g/c )

Qmax≒2.2%

Wsep≒31%

Wmin=8.4%

A

E

D

C

B

Qmin=0.9%

等気泡添加率線

等含水比線

Wc≒25%

17

4.5 施工管理項目

AWARD-Csm 工法の施工管理項目は以下に示すとおりである。 1)改良材(固化材スラリー+消泡剤)の配合 2)起泡剤の配合 3)撹拌混合 4)改良体位置 5)改良深度、改良長 6)改良体の品質

1)改良材(固化材スラリー+消泡剤)の配合

所定の改良材が安定供給され、単位改良体ごとに所定量投入されることを確認する。

固化材スラリーが所定の水固化材比であるとともに、消泡剤が所定量添加されているこ

とを確認する。

2)起泡剤の配合

所定の気泡が安定供給され、改良体の単位改良長ごとに所定量投入されていることを

確認する。起泡剤が所定の発泡倍率であることを確認する。

3)撹拌混合

改良体の単位改良長ごとに、カッター昇降速度、カッター回転数が基準を満足してい

ることを確認する。

4)改良位置

施工位置の確認と鉛直性の確認を行い、所定の位置で施工していることを確認する。

5)改良深度、改良長

改良体の下端および上端が所定の深度であることを確認する。

6)改良体の品質

引上げ完了後に、サンプラーによりウェットサンプリングを行い、比重、一軸圧縮強

度試験、(簡易ベーンせん断試験)により品質確認を行う。

18

Ⅱ 積算編

19

1.積算

気泡掘削による等厚式ソイルセメント連続壁工法の積算は基本的に、「CSM 工法標準

積算資料」に準じて行う。 本章では AWARD-Csm 工法の適用に際して、付加される積算項目や留意事項を示す。

1.1 AWARD-Csm 工法関連プラント

AWARD-Csm 工法の適用に際しては、表 1-1 に示す資機材が必要となる。

表 1-1 使用資機材一覧表(AWARD-Csm 工法関連プラント)の一例

機種名、機種 台数 重量(t)定格電力

(kW)

気泡プラント 全自動専用気泡プラント(空気圧縮機別) 1 1.0 3.5

空気圧縮機 1 0.5 15.0

消泡プラント 2連ミキサー(200 ) 1 0.22 2.2

グラウトポンプ 気泡用グラウトポンプ 1 0.5 7.5

消泡剤用グラウトポンプ 1 0.065 3.7

発電機 上記資機材用発電機(60kVA) 1 1.2 -

1)資機材損料

表 1-1 に示す資機材の損料を計上する。

2)運搬費

表 1-1 に示す資機材の運搬費を計上する。

3)使用電力

表 1-1 に示す資機材の使用電力を計上する。

4)プラント設置・撤去

表 1-1 に示す資機材の設置・撤去費を表 1-2 に準じて計上する。

表 1-2 プラント設置・撤去歩掛

名称 規格 単位 設置・撤去

世話役 人 2.0

特殊作業員 人 2.0

普通作業員 人 4.0

クローラークレーン運転 油圧駆動式ウインチ・ラチスジブ型 50~55t吊 日 2.0

20

1.2 起泡剤・消泡剤材料費

室内配合試験で確認された気泡量に応じてロス率 10%を考慮し、起泡剤および消泡剤

の費用を計上する。

表 1-3 起泡剤・消泡剤

名称 仕様 数量 備考

起泡剤 WTM 起泡剤 ロス率 10%

消泡剤 ロス率 10%

1.3 安定液添加剤の変更に伴う工費比較

掘削安定液添加量については 1 サイクル施工時または 2 サイクル施工時のベントナイ

ト添加量で比較する。

表 1-4 従来 CSM 工法ベントナイト安定液の添加量と費用(1 サイクル施工)

材料名

混合土質 ベントナイト

金額 備考 添加量 (kg/m3) 単価

砂質土 10

- -

ロス率 10%砂礫土 15 - 粘性土 5 -

表 1-5 従来 CSM 工法ベントナイト安定液の添加量と費用(2 サイクル施工)

材料名

混合土質 ベントナイト

金額 備考 添加量 (kg/m3) 単価

砂質土 20

- -

ロス率 10%砂礫土 30 - 粘性土 10 -

表 1-6 気泡安定液の添加量と費用

材料名

混合土質 起泡剤 消泡剤

金額 備考 添加量 (kg/m3) 単価 添加量 (kg/m3) 単価

粘性土 0.3~1.6

0.3~1.6

ロス率 10%一般土 0.5~1.8 0.5~1.8 - 砂・砂礫 0.6~2.0 0.6~2.0 -

玉石・岩砕 0.7~2.0 0.7~2.0 -

注)細粒分含有率 15%未満では、別途細粒分を添加する必要性が発生する。

21

1.4 気泡用全自動プラント機械損料

気泡掘削においては CSM 標準機械設備以外に、表 1-7 に示す機械が必要となる。

表 1-7 気泡全自動プラント機械損料算定表

1.5 気泡プラント労務費

表 1-8 気泡掘削労務費

職種 単位 数量

特殊作業員 人・日 1

1.6 特許料

AWARD-Csm 工法の特許料を計上する。

発明の名称:安定液組成物(特許3725750号) 気泡安定液の調整方法と気泡掘削施工法(特許4970547号)

1.7 発生泥土量

表 1-10 に土質別の概算泥土発生率(暫定値案)を示す。 表 1-10 土質別の概算泥土発生率(暫定値案)

土質 泥土発生率(%)

砂礫質土 40~50

砂質土 50~60

粘性土 60

表 1-9 特許料

AWARD-Csm 工法特許料 200 円/m2

機種機関出力(KW)

質量(ton)

基礎価格(千円)

標準使用年数(年)

運転時間

(時間)

年間標準運転日数(日)

供用日数(日)

維持修理費率(%)

グラウトポンプ 15 1.0

3.7 1.5全自動起泡プラント

流量計

供用1日換算値

損料率

(×10-6

)損料額

損料率

(×10-6

)損料額

損料率

(×10-6

)損料額

残存率(%)

年間管理費率(%)

損料率

(×10-6

)損料額

運転1時間当り 供用1日当り 運転1時間換算値

気泡

22

Ⅲ 参考資料

23

参-1 気泡掘削工法の理論(概要)

気泡掘削工法では掘削機の先端から気泡(と水)を吐出し、掘削土、気泡、水の混合

した気泡混合土を造成し、気泡混合土に固化材スラリーを添加・混合し所定のソイルセ

メント地下構造物を構築する。掘削土と気泡の混合・混練した気泡混合土のうち、安定

液の特性を備えているものを気泡安定液と称する。 気泡安定液及び気泡混合土の固有の特性は下記の項目である。 懸濁状態に関わる気泡安定液の最小含水比 wmin及び分離含水比 wsep 溝壁の安定に係る気泡安定液の密度ρc 施工性に関わる気泡安定液の流動性 これらの特性は掘削土の物性値(比表面積 S、細粒分含有率 P、細粒分の液性限界 wL)

と気泡添加率Qおよび気泡安定液の含水比wcを変数とした実験式により表すことができ

る。これらの実験式に掘削土の物性値を入力すると気泡安定液の懸濁状態に関わる実験

式、溝壁の安定性に係る各種の実験式や流動性に関わる実験式は、定数や気泡添加率 Qと含水比 wc の一次式あるいは二次式で表されるので、気泡安定液、気泡混合土は気泡添

加率 Q と含水比 wcを変化させることによりコントロールすることが可能である。 実験的に得られた各種の実験式をまとめると以下の通りである。

1)最小含水比

最小含水比wminは式 1-1で表される。式 1-1に掘削土の物性値である細粒分含有率P (%)を代入すると最小含水比 wmin (%)は定数となる。

min (%) 6.97 0.0403w P (1-1)

なお、最小含水比とは掘削土と気泡を混合した時に消泡が生じない掘削土の最小の含

水比である。それ故、施工時においては掘削土の自然含水比 wnが最小含水比以下の場合

は、気泡と共に水を添加し、気泡の消泡を防ぐことが必要である。

2)分離含水比

土粒子、気泡及び水が分散し安定した懸濁状態にある気泡安定液に徐々に水を加える

と、懸濁状態が崩れ土粒子、気泡、水の分離が生じる含水比が存在する。この懸濁状態

が崩れる含水比を分離含水比 wsepとする。 分離含水比を計測するために、実験は図 1-1 に示す相欠き継手のあるプラスチック円

筒(内径 90mm、高さ 100mm)を上下に組み合わせた分離含水比測定装置を使用した。

この装置内に各種配合の気泡安定液を満たし、1 時間経過後の上部容器中の気泡安定液

質量に対する下部容器中の安定液質量の重量比をとると、重量比が 1.02 を超すと分離が

急速に生じることが分った。この実験結果より、分離含水比 wsepの実験式 1-2 を求めた。 式 1-2に掘削土の物性値である比表面積 S (cm2/g)、細粒分含有率 P (%)および液性限界

wL (%)を代入すると分離含水比 wsep (%)は気泡添加率 Q (%)の一次式となる。

sep L100(%) (0.0253 1.17 1.07)

100 100P Pw S Q w (1-2)

24

分離含水比 wsepは掘削土の土粒子と気泡と水が分散せず懸濁状態を保つ最大の含水比

であり、気泡安定液の含水比 wc が分離含水比以上であると、気泡安定液は分離する。そ

れ故、特に砂質土においては水量を加え過ぎると土粒子、気泡、水が分離し、掘削抵抗

は増大し、かつ芯材の挿入にも支障が生じる。

3)気泡安定液の密度

溝壁の安定液に係る気泡安定液の密度ρc (g/cm3) の理論式は式 1-3 で表される。掘削

土の物性値である粗粒分と細粒分土粒子の密度ρSS、ρSC (g/cm3)、水と気泡の密度ρw、

ρb (g/cm3) および細粒分含有率 P (%)を代入すると、気泡添加率 Q (%)と含水比 wc (%) の二次式となる。

3 s w bc

cs w b

ss sc w b

100(g/cm )100

cW W W w QwP P QV V V

(1-3)

気泡安定液の密度ρcは気泡添加率 Q の影響が大きく、およそ Q =2.3%の気泡を添加す

ると密度ρc=1.05 となり、これ以上の気泡を添加すると溝壁崩壊の危険が生じる。

4)流動性

砂に気泡を添加し混合すると、その流動性(TF 値)は気泡添加率 Q が 0~1%までは

急激に増加し、それ以上増加させても流動性は変わらない結果が得られた。さらに粘土・

シルト分の含有率(細粒分含有率 P)の異なる土に気泡を混合した場合の流動性の変化

を調べると、細粒分含有率 P =10 %を境界にその傾向が変わること等が分かった。これ

らを図 1-2、図 1-3 に示す。これらの実験結果に基づき流動性を表す実験式を求めると式

1-4-1~式 1-4-4 となる。 流動性を TF 値で表すと、TF 値(mm) は細粒分含有率 P (%) が 10 (%) 以上と以下、気

泡添加率が 1(%) 以上と以下の 4 つの領域で各々式 1-4-1~式 1-4-4 で表される。各式に

掘削土の物性値を代入すると Q と wcの二次式となる。

図 1-1 分離含水比測定器

25

領域 1:P<10、Q<1

1 ( 0.78 3.90)(0.817 0.180)( 0.0422 1.71 199)

cTF Q wQ S P

(1-4-1)

領域 2:P≧10、Q<1

2

L

(0.200 3.90)(0.817 0.180)( 0.0363 0.601 196)

cTF Q wQ S w

(1-4-2)

領域 3:P<10、Q≧1

3 L c( 0.231 0.00628 3.86)

( 0.0422 1.71 199)TF Q w w

S P (1-4-3)

領域 4:P≧10、Q≧1

4 L c

L

( 0.257 0.00316 4.10)( 0.0363 0.601 196)

TF Q w wS w

(1-4-4)

5)難透水層の形成

気泡安定液による難透水層の形成に関しては、気泡安定液の透過に伴い気泡は地盤の

間隙部分に入り込み、地盤の土粒子の骨格と一体となって不飽和化し、ベントナイト泥

膜の数倍の厚さを持った難透水層を形成する。この概念を図 1-4 に示す。 硅砂 7 号~珪砂 3 号により模擬地盤を作り、気泡安定液とベントナイト安定液による

透水量と時間の関係を図 1-5、図 1-6 に示す。図から、ベントナイト安定液では硅砂 3 号、

4 号では難透水層は形成できないが、気泡安定液では難透水層の形成が確認でき、さら

に、難透水層の形成時間が短いことも確認できた。これらのことより、気泡安定液はベ

図 1-2 TF 値と気泡添加率の関係 図 1-3 TF 値と細粒分含有率の関係

26

ントナイト系安定液よりも短い時間で難透水層の形成をなし、かつ粗い砂地盤への適用

性が良いことが実験結果より得られた。

6)気泡の圧縮変形について

気泡安定液中の気泡の圧縮変形に関する実験によると、気泡の圧縮変形は見かけ上ボ

イルの法則に従わないことが分かった。即ち、気泡安定液の体積は圧力を受けると一定

値に収斂し、この収斂値はボイルの法則による気泡量の圧縮量よりもかなり低いことが

判明した。 実験によると砂に 350 /m3(Q≒1%)を添加・混練した気泡安定液の体積圧縮率は、

上載荷重が 0~0.1MPa まではほぼ直線的に減少するが、0.1MPa を超えると 1.7%程度で

収斂する。気泡添加量は凡そ最大で 400 / m3 なので、実用上は掘削深度が深くなっても

気泡安定液の機能上の影響は少ないと思われる。なお、現在 AWARD-Csm 工法では掘削

深度 54m の施工実績がある。

図 1-5 気泡安定液 図 1-6 ベントナイト安定液

図 1-4 気泡安定液による難透水層形成概念図

27

参-2 気泡安定液管理図

気泡安定液を現場において管理するための方法として気泡安定液の密度ρc と TF 値の

直交座標軸上に 4 種の管理項目をプロットした気泡安定液管理図を提案し、この管理図

を使用し掘削状態の良否の判断や掘削状態を常時良好な状態に保つための使用方法を示

す。

1) 管理項目と管理限界値

気泡安定液の管理項目として 安定液の懸濁安定性に係る最小含水比 wminおよび分離含水比 wmax 溝壁の安定性に係る気泡安定液の最小の密度ρcmin 施工性に係る気泡安定液の最小の流動性 TFmin が挙げられる。 上記管理項目である気泡安定液の含水比 wcの管理範囲は式 1-5 の最小含水比 wmin と式

1-6 の分離含水比 wmaxの間であり、溝壁の安定液に係る気泡安定液の密度ρc の管理限界

は式 1-7 で、流動性に係る TF 値の管理限界は式 1-8 で表される。これらの式に掘削土の

物性値(P、S、wL、ρss、ρsc)、水の密度ρw と気泡の密度ρbをこれらの式に入力する

と、定数あるいは気泡安定液の気泡添加率 Q と気泡安定液の含水比 wcの一次式あるいは

二次式となる。

① 消泡より定まる管理限界

気泡安定液の含水比wcは気泡の消泡限界を表す最小含水比wminより大きく保たねばな

らないので、含水比の管理限界は式 1-5 で表される。

c min 6.97 0.0403w w P (1-5)

式 1-5 に掘削土の細粒分含有率 P を代入すると wminは定数となるので、気泡安定液の

含水比 wcはこの定数以上となるように管理する。

② 分離より定まる管理限界

分離含水比 wsepは土粒子の分離が生じる最小の含水比であり、分離含水比より定まる

管理限界値は式 1-6で表される。

c sep L100(0.0253 1.17 1.07)

100 100P Pw w S Q w (1-6)

式 1-6 に掘削土の物性値(S、P、wL)を代入すると、分離含水比 wsep は気泡添加率 Q の

単調増加函数となる。分離含水比 wsep を計算するには、Qmin(式 1-8 より決まる)を代入

すると wsep が求められる。それ故、掘削時には気泡安定液の含水比 wc を常時 wsep以下に

なるように管理する。

③ 溝壁の安定より定まる管理限界

溝壁安定性に関しては、気泡安定液の密度により管理を行う。管理限界値は土圧、地

28

下水圧に対抗するために、比重 1.05 以上を目標とすることができるので、管理条件は式

1-7 で表される。

ccmin c

c

ss sc w b

1001.05100

w QwP P Q

(1-7)

式 1-7に土の物性値及び含水比を代入すると、最大気泡添加率 Qmaxが求められる。

④ 施工性に関わる管理限界

気泡安定液の施工に必要な流動性はソイルセメント地中連続壁の施工においては芯材

の挿入性なので、TF 値の最小値を 170mm とする。 TF 値は細粒分含有率 P が 10%以上と以下および気泡添加率 Q が 1%以上と以下の 4 種

の領域 n(=1、2、3、4)において、TF 値の管理条件式は式 1-8 となる。

min n n n170TF TF α w β (1-8)

ここで、TFn:領域 n(1~4)の TF 値、αn、βn:領域 n における係数である。

領域 α β

P<10、Q<1 0.78 3.90Q (0.817 0.180)( 0.0422 1.71 199)Q S PP<10、Q≧1

L0.231 0.00628 3.86Q w

0.0422 1.71 199S P

P≧10、Q<1 0.200 3.90Q L(0.817 0.180)( 0.0363 0.601 196)Q S w

P≧10、Q≧1 L0.257 0.00316 4.10Q w

L0.0363 0.601 196S w

αn、βn の推定式に掘削土の物性値(S、P、wL)を代入すると、αn、βn は気泡添加率 Qの一次式あるいは定数となり、かつ αnは常時正の値である。したがって、この不等式の

等号成立は気泡安定液の含水比 wcが最小含水比 wminの時であり、式 1-5 で求めた wmin を

代入して得られた気泡添加率以上に保つことが必要である。この気泡添加率を最小気泡

添加率 Qmin とすると、TF 値を所定の管理値以上に保つための管理限界は最小気泡添加率

Qmin となる。それ故、掘削時には気泡添加率 Q を常時 Qmin 以上になるように管理する。

2) 気泡安定液管理図の作成および利用方法

前述のように、気泡安定液の密度ρc (式 1-7)および TF 値(式 1-8)は気泡添加率 Q と

気泡安定液の含水比 wc をパラメーターとした関数である。そこで含水比 wc を一定値と

し気泡添加率 Q を変化させて気泡安定液の密度ρc と TF 値を計算し、ρc と TF 値の直

29

交座標上でこれらの点を結ぶと等含水比線が描ける。同様に、気泡添加率 Q を一定値と

し含水比 wc を変化させてρcと TF 値を計算し、これらを結ぶと等気泡添加率線が得ら

れる。 この図上に管理限界値である最小含水比wmin、分離含水比wsep、最大気泡添加率Qmax、

最小気泡添加率 Qmin を記入すると、この 4 本の管理線で囲まれた内部の領域が気泡安

定液で安定した掘削が可能な領域となる。土質条件等が表 1-1 の時の、気泡安定液管理

図は図 1-7 となる。

表 1-1 土質条件等

図 1-7 に示す気泡安定液管理図の利用と対応手順は、下記のように要約することがで

きる。 掘削時の気泡安定液の状態は施工現場から気泡安定液を採取し、密度ρc と TF 値を

計測し、気泡安定液管理図にプロットする。 気泡安定液の密度および TF 値が の領域内にあるときは安定した施工が可能であ

粗粒分 ρss(g/cm3) 2.704

細粒分 ρsc(g/cm3) 2.704

水 ρw(g/cm3) 1.000

気泡 ρb(g/cm3) 0.040

Ds 50(cm) 0.07

S (cm2/g) ※1 323

P (%) 34.3

w L(%) 70.0w c(%) 25.0

※1:S=10.2×6/ρssDs 50

気泡安定液の含水比

密度(g/cm3)

粗粒分の50%平均粒径Ds50

細粒分含有率細粒分の液性限界

粗粒分の50%粒径の比表面積

140

160

180

200

220

240

260

280

1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.7 1.8

TF値

(mm)

気泡安定液の密度(g/c )

Qmax≒2.2%

Wsep≒31%

Wmin=8.4%

A

E

D

C

B

Qmin=0.9%

等気泡添加率線

等含水比線

Wc≒25%

図 1-7 気泡安定液管理図

Qmax≒2.2%

30

る。 の領域では、気泡安定液の密度が小さく、溝壁の崩壊が生じる危険がある。気泡

安定液の状態が から の境界に近づいたときには、気泡添加量を減少させ密度を増加

させる。 の領域では土粒子の分離・沈降が生じるので、 から の境界に近づいたときは

加水量を減少させ、土粒子の分離・沈降を防ぐ。 の領域では TF 値が急激に小さくなり、流動性が損なわれるので、 から の境界

に近づいたときは気泡添加量を増やす。 の領域では気泡の消泡が生じるので、 から の境界に近づいたときは加水量を

増加させる。 以上のように、掘削時の気泡安定液の管理は気泡添加量と加水量を組み合わせること

により達成できる。

参-3 参考文献

1) 近藤義正,中山貴司,赤木寛一:掘削土砂に気泡と水を添加した地盤掘削用安定液の開発

と適用,土木学会論文集 C,Vol.64(2008),No.3,pp.505-518,2008 年 7 月

2) 地盤工学会 地中連続壁工法編集委員会:地盤工学・実務シリーズ 20 地中連続壁工法,

pp.3-7,171-174,2004 年 11 月

3) 堀井陽三,今野昭三,大津正良,塩田堂太郎:地下連続壁工法,鹿島出版会,pp.96,1980

4) コンクリート混和剤の開発技術:株式会社 シーエムシー,pp.82-87,2000 年 11 月

5) コンクリート材料データブック:丸善株式会社,pp.115,2000 年 5 月

6) [泡]技術:工業調査会,平成 12 年 5 月,

7) 嘉門雅史,淺川美利:新体系土木工学 16 土の力学(1),技報堂出版, pp.115-157,1988

8) H. Akagi,Y. Kondo,T. Nakayama and H. Naoe:Cost reduction of diaphragm wall excavation using

air form and case record,Proc. 5th International Congress on Environmental Geotechnics,

pp.685-692, Thomas Telford, London 2006

9) Y. Kondo,T. Nakayama,H. Naoe and H. Akagi:Cost reduction of Diaphragm wall excavation

using air form,Proc. 5th International Conference of TC28 of the ISSMGE,Geotechnical Aspects

of Underground Construction in Soft Ground, pp.413-418,Amsterdam,The Netherlands,June,

2005

10) 赤木寛一:気泡材を利用した地盤掘削用安定液の研究開発,平成 16 年度~平成 17 年度科

学研究費補助金研究成果報告書,2006 年 3 月

11) 赤木寛一,近藤義正:気泡掘削工法,地盤工学会誌,60-11(658),November,2012

12) 請川誠ほか:AWARD-Demi 工法の開発(その 1:工法概要),土木学会第 67 回年次学術講

31

演会,(社)土木学会,2012

13) 三反畑勇ほか:AWARD-Demi 工法の開発 (その 2:施工試験概要),土木学会第 67 回年次

学術講演会,(社)土木学会,2012

14) 安井利彰ほか:AWARD-Demi 工法の開発(その 3:施工試験結果),土木学会第 67 回年次

学術講演会,(社)土木学会,2012

15) 事例にみる地盤の液状化対策‐被害を防止・修復する工法-:株式会社近代科学社,

pp.191-198

16) 安井利彰ほか:AWARD-Ccw 工法による柱列式ソイルセメント壁の施工,第 47 回地盤工学

研究発表会,(社)地盤工学会,2012

17) 安井利彰ほか:気泡掘削工法を適用した柱列式ソイルセメント壁の発生汚泥量低減効果,

第 10 回地盤改良シンポジウム,(社)日本材料学会,2012

18) 安井利彰ほか:気泡掘削工法を適用した柱列式ソイルセメント壁の発生汚泥量低減効果,

土木建設技術発表会,(社)土木学会,2013

19) 安井利彰ほか:気泡を用いた柱列式地中連続壁の施工,建設機械 2013.12

20) SMW 連続壁 標準積算資料[設計・施工・積算篇], SMW 協会, 2011.2

32

AWARD-Csm 工法 技術・積算マニュアル

発 行 日 2014 年 4 月

編集・発行 気泡工法研究会 http://exaward.com

事 務 局 〒140-0013 東京都品川区南大井 3-6-18 (太洋基礎工業株式会社 東京支店内) TEL. 03-5753-1291 FAX. 03-5753-1292