臨床感染症の基本臨床感染症の基本臨床感染症の基本臨床感染症の基本

〜〜〜〜臨床感染症学総論臨床感染症学総論臨床感染症学総論臨床感染症学総論〜〜〜〜

三重大学大学院 名張地域医療学講座

名張市立病院 総合診療科

谷崎隆太郎

一生使える！

三重大学大学院セミナー

発熱の3大原因といえば？

感染症

膠原病

悪性腫瘍など

なので，感染症に強くなっておくと，発熱患者の診療が

非常にスムーズになります，

感染症感染症感染症感染症 とはとはとはとは

感染症感染症感染症感染症 とはとはとはとは

微生物

細菌

ウイルス

真菌

寄生虫

必ず必ず必ず必ず 微生物微生物微生物微生物 が原因で起こる

どこから来てどこへ行く？どこから来てどこへ行く？どこから来てどこへ行く？どこから来てどこへ行く？

気道

消化管

尿路

皮膚，粘膜

唾液，鼻汁，痰

吐物，便

尿

血液，浸出液，

精液，膣分泌液

どこから来てどこへ行く？どこから来てどこへ行く？どこから来てどこへ行く？どこから来てどこへ行く？

気道

消化管

尿路

皮膚，粘膜

唾液，鼻汁，痰

吐物，便

尿

血液，浸出液，

精液，膣分泌液

原則として 侵入経路 と

それに起因する 臓器 病変がある

感染症診療の原則

① 患者背景

② 問題の臓器

③ 原因微生物

④ 適切な治療

⑤ 適切な経過観察

たったの5つ！

感染症診療の原則

① 患者背景

② 問題の臓器

③ 原因微生物

④ 適切な治療

⑤ 適切な経過観察

たったの5つ！

ある患者さん・・・

24歳 女性

38℃ 発熱，咽頭痛，鼻水

診断は何を考えますか？

たぶん

かぜ

ある患者さん・・・

24歳 女性

38℃ 発熱，咽頭痛，鼻水

1月のある日，周囲でインフルエンザが

流行している．

診断は何を考えますか？

たぶん

インフルエンザ

ある患者さん・・・

21歳 女性

38℃ 発熱，咽頭痛，関節痛．

診断は何を考えますか？

1月のある日

周囲でインフルエンザが流行中

たぶん

インフルエンザ

ある患者さん・・・

21歳 女性

38℃ 発熱，咽頭痛，関節痛．

診断は何を考えますか？

1月のある日

周囲でインフルエンザが流行中

性風俗店勤務．

もしかしたら

淋菌性咽頭炎

± 播種性淋菌感染症かも？

それでも大抵はかぜやインフルエンザです．

ある患者さん・・・

24歳 女性

38℃ 発熱，咽頭痛，関節痛

2日前にコートジボワールから帰国

診断は何を考えますか？

え？

コートジボワール？？

• このように，患者さんの背景によって想定すべき

疾患が変わってきます．

• でもこれは，感染症に限らず全ての疾患に

応用できる考え方なんです．

• 実は，皆さんはすでに普段から患者さんの

背景を考えて診療していると思います．

例えば・・・

ある患者さん・・・

20歳 男性

30分前から胸が痛い

痩せ型

診断は何を考えますか？

たぶん

気胸

ある患者さん・・・

64歳 男性

30分前から胸が痛い

BMI > 30

診断は何を考えますか？

たぶん

急性冠症候群

は外せない

ある患者さん・・・

45歳 男性

38℃ 発熱，頭痛，元気あり

診断は何を考えますか？

たぶん

副鼻腔炎？

まあ，元気なら髄膜炎の可能性は低そう

または風邪の初期

ある患者さん・・・

45歳 男性

38℃ 発熱，頭痛，元気あり

HIV 感染症で CD4 が 50/μl

診断は何を考えますか？

え？CD4 50？

クリプトコッカス髄膜炎や

結核性髄膜炎

をはじめとした 「HIV関連の疾患」 を鑑別に

入れざるをえない

たとえ元気でも

というわけで

• 患者背景，重要です．

• 物事の本質は「経過」にあります．

• 現在の所見だけでなく，患者さんが自分の

目の前にたどり着くまでの「人生の軌跡」に

興味を持つことがキモです．

感染症診療の原則

① 患者背景

② 問題の臓器

③ 原因微生物

④ 適切な治療

⑤ 適切な経過観察

たったの5つ！

ある患者さん・・・

• 45歳 男性

• 38℃ 発熱，頭痛

診断は何を考えますか？

問診問診問診問診 身体診察身体診察身体診察身体診察 感染症病名感染症病名感染症病名感染症病名

頭痛，嘔気・嘔吐，後頸部痛，羞明感 意識障害，意識変容，髄膜刺激徴候，

神経学的異常所見

髄膜炎，脳炎，脳膿瘍

咽頭痛 咽頭発赤，扁桃腫大 咽頭炎・扁桃炎

耳痛，耳閉塞感，耳漏，聴力低下 鼓膜混濁・発赤・腫脹 中耳炎

膿性鼻汁，前頭部痛，顔面痛，上顎痛 顔面叩打痛，前傾姿勢で症状増悪 副鼻腔炎

咳嗽，喀痰，呼吸困難 呼吸回数増加，SPO2低下，肺雑音 肺炎

腹痛（特に右上腹部痛），胆石の既往 腹部圧痛，Murphy徴候，右季肋部叩

打痛，黄疸

肝炎，肝膿瘍

胆嚢炎，胆管炎

下痢，嘔気・嘔吐，腹痛 腹部圧痛，腸蠕動音の異常 腸炎

腰背部痛，下腹部痛 膿尿，血尿，CVA叩打痛 腎盂腎炎

頻尿，残尿感，精巣痛 膿尿，血尿，前立腺圧痛，精巣腫大・

圧痛

前立腺炎，精巣上体炎

下腹部痛，異常帯下，不正性器出血，

排尿困難

腹部圧痛，子宮頸部の圧痛 骨盤腹膜炎

皮膚または褥瘡周囲の疼痛，熱感，

発赤，腫脹

皮膚の炎症所見，褥瘡からの浸出液

増加，排膿

蜂窩織炎，褥瘡感染

壊死性筋膜炎

関節痛，関節腫脹 関節可動域制限，関節の可動時痛 化膿性関節炎

頸部痛，背部痛，腰痛，四肢しびれ，

筋力低下，尿閉，失禁

脊椎叩打痛，四肢の筋力低下，感覚

障害，筋力低下，肛門括約筋弛緩

化膿性脊椎炎

例えば・・・

• 45歳 男性

• 38℃ 発熱，頭痛

• 前傾姿勢で症状が増悪する

• 頭痛は軽く，嘔気・嘔吐なし，

意識障害なし，項部硬直なし

問診問診問診問診 身体診察身体診察身体診察身体診察 感染症病名感染症病名感染症病名感染症病名

頭痛，嘔気・嘔吐，後頸部痛，羞明感 意識障害，意識変容，髄膜刺激徴候，

神経学的異常所見

髄膜炎，脳炎，脳膿瘍

咽頭痛 咽頭発赤，扁桃腫大 咽頭炎・扁桃炎

耳痛，耳閉塞感，耳漏，聴力低下 鼓膜混濁・発赤・腫脹 中耳炎

膿性鼻汁，前頭部痛，顔面痛，上顎痛 顔面叩打痛，前傾姿勢で症状増悪 副鼻腔炎

咳嗽，喀痰，呼吸困難 呼吸回数増加，SPO2低下，肺雑音 肺炎

腹痛（特に右上腹部痛），胆石の既往 腹部圧痛，Murphy徴候，右季肋部叩

打痛，黄疸

肝炎，肝膿瘍

胆嚢炎，胆管炎

下痢，嘔気・嘔吐，腹痛 腹部圧痛，腸蠕動音の異常 腸炎

腰背部痛，下腹部痛 膿尿，血尿，CVA叩打痛 腎盂腎炎

頻尿，残尿感，精巣痛 膿尿，血尿，前立腺圧痛，精巣腫大・

圧痛

前立腺炎，精巣上体炎

下腹部痛，異常帯下，不正性器出血，

排尿困難

腹部圧痛，子宮頸部の圧痛 骨盤腹膜炎

皮膚または褥瘡周囲の疼痛，熱感，

発赤，腫脹

皮膚の炎症所見，褥瘡からの浸出液

増加，排膿

蜂窩織炎，褥瘡感染

壊死性筋膜炎

関節痛，関節腫脹 関節可動域制限，関節の可動時痛 化膿性関節炎

頸部痛，背部痛，腰痛，四肢しびれ，

筋力低下，尿閉，失禁

脊椎叩打痛，四肢の筋力低下，感覚

障害，筋力低下，肛門括約筋弛緩

化膿性脊椎炎

副鼻腔炎ぽい！！

ある患者さん・・・

• 75歳 女性

• 38℃ 発熱，腰痛

問診問診問診問診 身体診察身体診察身体診察身体診察 感染症病名感染症病名感染症病名感染症病名

頭痛，嘔気・嘔吐，後頸部痛，羞明感 意識障害，意識変容，髄膜刺激徴候，

神経学的異常所見

髄膜炎，脳炎，脳膿瘍

咽頭痛 咽頭発赤，扁桃腫大 咽頭炎・扁桃炎

耳痛，耳閉塞感，耳漏，聴力低下 鼓膜混濁・発赤・腫脹 中耳炎

膿性鼻汁，前頭部痛，顔面痛，上顎痛 顔面叩打痛，前傾姿勢で症状増悪 副鼻腔炎

咳嗽，喀痰，呼吸困難 呼吸回数増加，SPO2低下，肺雑音 肺炎

腹痛（特に右上腹部痛），胆石の既往 腹部圧痛，Murphy徴候，右季肋部叩

打痛，黄疸

肝炎，肝膿瘍

胆嚢炎，胆管炎

下痢，嘔気・嘔吐，腹痛 腹部圧痛，腸蠕動音の異常 腸炎

腰背部痛，下腹部痛 膿尿，血尿，CVA叩打痛 腎盂腎炎

頻尿，残尿感，精巣痛 膿尿，血尿，前立腺圧痛，精巣腫大・

圧痛

前立腺炎，精巣上体炎

下腹部痛，異常帯下，不正性器出血，

排尿困難

腹部圧痛，子宮頸部の圧痛 骨盤腹膜炎

皮膚または褥瘡周囲の疼痛，熱感，

発赤，腫脹

皮膚の炎症所見，褥瘡からの浸出液

増加，排膿

蜂窩織炎，褥瘡感染

壊死性筋膜炎

関節痛，関節腫脹 関節可動域制限，関節の可動時痛 化膿性関節炎

頸部痛，背部痛，腰痛，四肢しびれ，

筋力低下，尿閉，失禁

脊椎叩打痛，四肢の筋力低下，感覚

障害，筋力低下，肛門括約筋弛緩

化膿性脊椎炎

ある患者さん・・・

• 75歳 女性

• 38℃ 発熱，腰痛

• CVA叩打痛あり

• 腰痛の叩打痛なし，膀胱直腸障害なし.

問診問診問診問診 身体診察身体診察身体診察身体診察 感染症病名感染症病名感染症病名感染症病名

頭痛，嘔気・嘔吐，後頸部痛，羞明感 意識障害，意識変容，髄膜刺激徴候，

神経学的異常所見

髄膜炎，脳炎，脳膿瘍

咽頭痛 咽頭発赤，扁桃腫大 咽頭炎・扁桃炎

耳痛，耳閉塞感，耳漏，聴力低下 鼓膜混濁・発赤・腫脹 中耳炎

膿性鼻汁，前頭部痛，顔面痛，上顎痛 顔面叩打痛，前傾姿勢で症状増悪 副鼻腔炎

咳嗽，喀痰，呼吸困難 呼吸回数増加，SPO2低下，肺雑音 肺炎

腹痛（特に右上腹部痛），胆石の既往 腹部圧痛，Murphy徴候，右季肋部叩

打痛，黄疸

肝炎，肝膿瘍

胆嚢炎，胆管炎

下痢，嘔気・嘔吐，腹痛 腹部圧痛，腸蠕動音の異常 腸炎

腰背部痛，下腹部痛 膿尿，血尿，CVA叩打痛 腎盂腎炎

頻尿，残尿感，精巣痛 膿尿，血尿，前立腺圧痛，精巣腫大・

圧痛

前立腺炎，精巣上体炎

下腹部痛，異常帯下，不正性器出血，

排尿困難

腹部圧痛，子宮頸部の圧痛 骨盤腹膜炎

皮膚または褥瘡周囲の疼痛，熱感，

発赤，腫脹

皮膚の炎症所見，褥瘡からの浸出液

増加，排膿

蜂窩織炎，褥瘡感染

壊死性筋膜炎

関節痛，関節腫脹 関節可動域制限，関節の可動時痛 化膿性関節炎

頸部痛，背部痛，腰痛，四肢しびれ，

筋力低下，尿閉，失禁

脊椎叩打痛，四肢の筋力低下，感覚

障害，筋力低下，肛門括約筋弛緩

化膿性脊椎炎

腎盂腎炎ぽい！！

このように，問診と身体診察でどの臓器がやられているかが

ある程度推定できます．

名張市立病院 総合診療科 学生向け感染症講義

〜臓器探しの旅〜

名張市立病院総合診療科では，実習に来た三重大学の

医学生全員に臓器探しの旅に参加してもらっています．

問診と身体診察でも，

臓器が想定できなかった

場合は・・・？

問診と身体診察だけでは診断が難しい感染症

感染症病名感染症病名感染症病名感染症病名 診断方法診断方法診断方法診断方法

感染性心内膜炎 血液培養（3セット以上）

心エコー（経食道＞胸壁）

急性胆管炎 採血で肝胆道系酵素上昇，腹部エコー，

腹部CT

Clostridium difficile 感染症 便のCDトキシン検査

膿瘍（特に肝膿瘍，腸腰筋膿瘍，

子宮留膿腫など）

腹部造影CT検査，腹部エコー

特発性細菌性腹膜炎 腹水検査（白血球数，グラム染色・培養）

眼内炎 眼底検査，血液培養

カテーテル関連血流感染症 血液培養

感染性大動脈瘤 血液培養，大血管造影CT

※マラリアやデング熱などの熱帯感染症も

でもちょっと待って！

本当に全部診察した？？

診察し忘れると診断が遠のく感染症

感染症病名感染症病名感染症病名感染症病名 診察方法診察方法診察方法診察方法

中耳炎（特に小児） 鼓膜の診察

蜂窩織炎 皮膚（特に下肢）の視診・触診

化膿性関節炎 関節の視診・触診

化膿性脊椎炎 脊椎の触診・叩打痛の有無

急性前立腺炎 直腸診

精巣上体炎 精巣の視診・触診

肛門周囲膿瘍 肛門周囲の視診・触診

感染性心内膜炎

眼瞼結膜・咽頭の点状出血，

手掌・足底の皮疹，心雑音

ツツガムシ症

日本紅斑熱

刺し口の観察（特に頭皮・陰部）

感染症診療の原則

① 患者背景

② 問題の臓器

③ 原因微生物

④ 適切な治療

⑤ 適切な経過観察

たったの5つ！

ヒトに感染する主な微生物4つ

• 細菌

• ウイルス

• 真菌

• 寄生虫

（プリオン）

ある患者さん・・・

• 84歳 女性

• 38℃ 発熱，咳，痰

たぶん

肺炎

肺炎の原因微生物は？

（例） 市中肺炎の原因菌

•肺炎球菌肺炎球菌肺炎球菌肺炎球菌

• インフルエンザ菌

• モラキセラ・カタラーリス

染まる

染まらない

• マイコプラズマ

• クラミドフィラ

• レジオネラ

グラム染色

＋忘れた頃にやってくる「結核」

グラム染色

細菌は4つに分類

球菌 桿菌

グラム陽性

グラム陰性

• G: Gram（グラム）

• P: Positive（陽性）

• C: Cocci（球菌）

• N: Negative（陰性）

• R: Rods（桿菌）

球菌 桿菌

グラム陽性

グラム陰性

GPCGPR

GNRGNC

グラム陰性桿菌グラム陽性球菌

白血球

肺炎球菌

インフルエンザ菌

背景に溶け込んで，一瞬何もないように

見えるのが特徴の1つ！

※よく見るとGNRとGNCの中間みたいな薄い赤色の菌がたくさんいるのが分かります

モラキセラ

グラム染色 染まる

肺炎球菌

インフルエンザ菌

モラキセラ

グラム陽性球菌

グラム陰性桿菌

グラム陰性球菌

横長のGPCが横向きに

連結しているのが特徴．

たまにハッキリ莢膜が

見える

球菌に見えるほど短い陰性桿菌であること，

うっかり見落としてしまうほど薄く染まることが

あるのが特徴

肺炎球菌が横向きなのに

対して縦向きに2個連結して

いるのが特徴の陰性球菌

感染症診療の原則

① 患者背景

② 問題の臓器

③ 原因微生物

④ 適切な治療

⑤ 適切な経過観察

たったの5つ！

菌名

肺炎球菌 モラキセラ インフルエンザ桿菌

PSSP PRSP BL (-) BL (+) BL (-) BL (+) PBP変異

PCG

ABPC◯ × ◯ × ◯ × ×

ABPC/SBT ◯ × ◯ ◯ ◯ ◯ ×

CTM ◯ × ◯ ◯ ◯ ◯ ×

CTRX

CTX◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯

PCG: ペニシリンG，ABPC: アンピシリン，ABPC/SBT: アンピシリン・スルバクタム

CTM (2nd

): セフォチアム，CTRX (3rd

): セフトリアキソン，CTX (3rd

): セフォタキシム

PSSP: ペニシリン感受性肺炎球菌，PRSP: ペニシリン耐性肺炎球菌

BL: βラクタマーゼ，PBP: ペニシリン結合タンパク

もしグラム染色で

菌が見えなかったら・・・

「肺炎（と思っている）患者の痰をグラム染色

したけど菌が見えなかった」

「菌が見えない」 というのも大事な情報

「グラム染色で染色されない病原体かもしれない」

という情報が得られるため

（抗菌薬の先行投与があれば，それが奏功している可能性も考える）

（例） 市中肺炎の原因菌

•肺炎球菌肺炎球菌肺炎球菌肺炎球菌

• インフルエンザ菌

• モラキセラ・カタラーリス

染まる

染まらない

• マイコプラズマ

• クラミドフィラ

• レジオネラ

グラム染色

＋忘れた頃にやってくる「結核」

原因菌はこっちかもしれない！

という情報が得られます

（例） 市中肺炎の原因菌

•肺炎球菌肺炎球菌肺炎球菌肺炎球菌

• インフルエンザ菌

• モラキセラ・カタラーリス

染まる

染まらない

• マイコプラズマ

• クラミドフィラ

• レジオネラ

マクロライド

テトラサイクリン

フルオロキノロン

βラクタム剤

（ペニシリン系，セフェム系，カルバペネム系）

は効かない

尿路感染症

原因菌原因菌原因菌原因菌

市中感染

大腸菌大腸菌大腸菌大腸菌＞＞クレブシエラ，プロテウス

医療関連感染

大腸菌大腸菌大腸菌大腸菌＞緑膿菌，腸球菌

①急性 腎盂腎炎

②急性 前立腺炎

③急性 精巣上体炎

（発熱していれば・・・）

大腸菌または Klebsiella pneumoniae

Pseudomonas aeruginosa（緑膿菌）

大腸菌 緑膿菌

抗緑膿菌作用のある抗菌薬

ST合剤

CTRX (or CTM)

大腸菌ぽいか，緑膿菌ぽい分かれば良い

とりあえず

大腸菌に使う抗菌薬と，緑膿菌に使う

抗菌薬は違うので，尿路感染症においても

微生物まで詰める姿勢は結構大事です．

（いや，かなり大事です）

つまり

感染症診療の原則

① 患者背景

② 問題の臓器

③ 原因微生物

④ 適切な治療

⑤ 適切な経過観察

たったの5つ！

よくなっている？

• よくなっているかどうかを判断するのに，

全身の指標がよく使われますが，局所の指標を

使ったほうがより正確に判断できる場合が

多いです．

（例）肺炎

全身

見た目の元気さ

発熱

食欲

意識，脈拍

ADL

白血球

CRP

呼吸困難

呼吸回数↑

咳の回数↑

痰の量・色

呼吸音の異常

痰グラム染色

PaO2 , SpO2↓

胸部Xp浸潤影

局所

（例）急性腎盂腎炎

全身

見た目の元気さ

発熱

食欲

意識，脈拍

ADL

白血球

CRP

頻尿

残尿感

背部痛

CVA叩打痛

尿中白血球数↓

尿亜硝酸塩↓

尿グラム染色で菌↓

局所

（例）急性腸炎

全身

見た目の元気さ

発熱

食欲

意識，脈拍

ADL

白血球

CRP

便回数↓

嘔気↓

嘔吐回数↓

腹痛↓

腸蠕動音改善

血便↓

局所

感染症感染症感染症感染症 典型的な臨床経過典型的な臨床経過典型的な臨床経過典型的な臨床経過

咽頭炎 2-3日以内に咽頭痛が改善に向かう

副鼻腔炎 2-3日以内に鼻汁，前頭部痛が改善に向かう

中耳炎 2-3日以内に耳痛が改善に向かう

肺炎

気管支炎

2-3日以内に気道症状（痰＞咳），呼吸状態（呼吸数，

SpO2）が改善に向かう

膀胱炎

腎盂腎炎

2-3日以内に頻尿，背部痛が改善に向かう

腸炎 2-3日以内に嘔吐，下痢，腹痛が改善に向かう

蜂窩織炎 2-3日以内に皮膚の発赤が改善に向かう

肺炎はこんな感じですが

全身

見た目の元気さ

発熱

食欲

意識，脈拍

ADL

白血球

CRP

呼吸困難

呼吸回数↑

咳の回数↑

痰の量・色

呼吸音の異常

痰グラム染色

PaO2 , SpO2↓

胸部Xp浸潤影

局所

経過観察に使用する指標

全身

見た目の元気さ

発熱

食欲

意識，脈拍

ADL

白血球

CRP

心不全でも

認められる

局所所見は？

呼吸困難

呼吸回数↑

咳の回数↑

痰の量・色

呼吸音の異常

痰グラム染色

PaO2 , SpO2↓

胸部Xp浸潤影

局所

経過観察に使用する指標

全身

見た目の元気さ

発熱

食欲

意識，脈拍

ADL

白血球

CRP

呼吸困難呼吸困難呼吸困難呼吸困難

呼吸回数呼吸回数呼吸回数呼吸回数↑↑↑↑

咳の回数咳の回数咳の回数咳の回数↑↑↑↑

痰の量・色痰の量・色痰の量・色痰の量・色

呼吸音の異常呼吸音の異常呼吸音の異常呼吸音の異常

痰グラム染色

PaOPaOPaOPaO2 , 2 , 2 , 2 , SpOSpOSpOSpO2222↓↓↓↓

胸部胸部胸部胸部XpXpXpXp浸潤影浸潤影浸潤影浸潤影

局所

心不全でも

認められる

局所所見は？

（通常は）

「痰のグラム染色で菌が

見えないこと」以外の

所見は肺炎と心不全では

かなり似ています．

※もちろん，起座呼吸，座位での頸静脈

怒張，心拡大，III音聴取などは肺炎では

あまり見られず，心不全を示唆します

肺炎

全身

見た目の元気さ

発熱

食欲

意識，脈拍

ADL

白血球

CRP

呼吸困難呼吸困難呼吸困難呼吸困難

呼吸回数呼吸回数呼吸回数呼吸回数↑↑↑↑

咳の回数咳の回数咳の回数咳の回数↑↑↑↑

痰の量・色痰の量・色痰の量・色痰の量・色

呼吸音の異常呼吸音の異常呼吸音の異常呼吸音の異常

痰グラム染色

PaOPaOPaOPaO2 / 2 / 2 / 2 / SpOSpOSpOSpO2222↓↓↓↓

胸部胸部胸部胸部XpXpXpXp浸潤影浸潤影浸潤影浸潤影

局所

（通常は）

「痰のグラム染色で菌が

見えないこと」以外の所

見は肺炎と心不全では

かなり似ています．

※もちろん，起座呼吸，座位での頸静脈

怒張，心拡大，III音聴取などは肺炎では

あまり見られず，心不全を示唆します

グラム染色は有用です！グラム染色は有用です！グラム染色は有用です！グラム染色は有用です！

というわけで，肺炎と心不全の鑑別にも

（※もちろんグラム染色の感度の限界もありますが）

感染症診療の原則

① 患者背景

② 問題の臓器

③ 原因微生物

④ 適切な治療

⑤ 適切な経過観察

たったの5つ！

まとめ

• 問題の臓器を探すためには問診と身体診察が

重要で，臓器が分かれば，原因微生物と

治療方針までたどり着ける（ことが多いです）

• 感染症診療の原則に沿って考えれば，

発熱患者の診療に対する負担は軽くなります

• 治療効果判定には全身よりも局所の指標の

ほうが有用です．

お気軽にお声がけ下さい

rtanizak20@clin.medic.mie-u.ac.jp

ご質問・相談は下記まで

https://www.facebook.com/ryutaro.tanizaki