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新商品・ソリューション・サービス解説 100 富士ゼロックス テクニカルレポート No.27 2018 働き方変革を実現「Cloud Service Hub」 Cloud Service Hub: Achieving Diversity in Work Styles 富士ゼロックスは、一人ひとりが高いパフォーマンスを 発揮できる多様な働き方を支援するコンセプトとして Smart Work Gatewayを2016年より提唱している。働 き方改革をねらうお客様の業務は多様化しており、お客様 自身がクラウドSaaS型の業務アプリケーションの活用を 検討する中で、Agilityを発揮し当社がソリューションを提 供していくために「複数のサービスに対応するためのフ レームワーク」を提唱し、それに基づく「Cloud Service Hub」シリーズをリリースした。本シリーズの商品は、イ ンターネット経由で業務用ソフトウェアを利用し、場所や 時間にとらわれずに業務を行うことを可能にする。政府が 掲げる働き方改革を受け、現在、企業はそれぞれ、より柔 軟かつ生産性の高い就労環境を模索している。このような 中で、「Cloud Service Hub」は、クラウドをより有効に 活用することで、働き方改革の実現を後押しすることを目 指している。本稿では、その概要や各種機能、そして今後 の取り組みについて紹介する。 Abstract Fuji Xerox began promotion of the Smart Work Gateway concept in 2016 to achieve diversity in work styles in which all workers can perform to their highest potential. As a part of the Smart Work Gateway concept, Fuji Xerox has released the Cloud Service Hub series. The solutions offered in the Cloud Service Hub are designed to enable employees to work at any time from any location using business software via the internet. In response to the “work- style reform” being promoted by the Japanese government, companies in Japan are making efforts to provide work environments that are more flexible for their workers and conducive to high productivity. Within this social context, the Cloud Service Hub aims to contribute to work-style reform by enabling effective use of the cloud. This paper gives an overview of the Cloud Service Hub, the features it offers, and efforts for the future. 執筆者(Author石野茂樹(Shigeki Ishino三浦 徹(Toru Miura小原裕美(Hiromi Oharaソフトウェア開発本部 第二SPF開発センター Solution Platform Development II, Software Development Group【キーワード】 クラウド、複合機、ワークスタイル、モバイルワーク、業務ク ラウド、サーバーレス・アーキテクチャー Keywordscloud service, multifunction device, work style, cloud for business, mobile work, serverless architecture

働き方変革を実現「Cloud Service Hub」 - Fuji Xerox...が広がっている。企業が働き方改革を実現するためには社 員が“いつでもどこでも働ける環境作り”が重要と考えら

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新商品・ソリューション・サービス解説

100 富士ゼロックス テクニカルレポート No.27 2018

働き方変革を実現「Cloud Service Hub」 Cloud Service Hub: Achieving Diversity in Work Styles

要 旨

富士ゼロックスは、一人ひとりが高いパフォーマンスを

発揮できる多様な働き方を支援するコンセプトとして

Smart Work Gatewayを2016年より提唱している。働

き方改革をねらうお客様の業務は多様化しており、お客様

自身がクラウドSaaS型の業務アプリケーションの活用を

検討する中で、Agilityを発揮し当社がソリューションを提

供していくために「複数のサービスに対応するためのフ

レームワーク」を提唱し、それに基づく「Cloud Service

Hub」シリーズをリリースした。本シリーズの商品は、イ

ンターネット経由で業務用ソフトウェアを利用し、場所や

時間にとらわれずに業務を行うことを可能にする。政府が

掲げる働き方改革を受け、現在、企業はそれぞれ、より柔

軟かつ生産性の高い就労環境を模索している。このような

中で、「Cloud Service Hub」は、クラウドをより有効に

活用することで、働き方改革の実現を後押しすることを目

指している。本稿では、その概要や各種機能、そして今後

の取り組みについて紹介する。

Abstract

Fuji Xerox began promotion of the Smart Work Gateway concept in 2016 to achieve diversity in work styles in which all workers can perform to their highest potential. As a part of the Smart Work Gateway concept, Fuji Xerox has released the Cloud Service Hub series. The solutions offered in the Cloud Service Hub are designed to enable employees to work at any time from any location using business software via the internet. In response to the “work-style reform” being promoted by the Japanese government, companies in Japan are making efforts to provide work environments that are more flexible for their workers and conducive to high productivity. Within this social context, the Cloud Service Hub aims to contribute to work-style reform by enabling effective use of the cloud. This paper gives an overview of the Cloud Service Hub, the features it offers, and efforts for the future.

執筆者(Author) 石野茂樹(Shigeki Ishino) 三浦 徹(Toru Miura) 小原裕美(Hiromi Ohara) ソフトウェア開発本部 第二SPF開発センター (Solution Platform Development II, Software Development Group)

【キーワード】

クラウド、複合機、ワークスタイル、モバイルワーク、業務ク

ラウド、サーバーレス・アーキテクチャー

【Keywords】 cloud service, multifunction device, work style, cloud for business, mobile work, serverless architecture

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働き方変革を実現「Cloud Service Hub」

富士ゼロックス テクニカルレポート No.27 2018 101

1. はじめに

政府による働き方改革の提唱を受け、現在、各企業はより

柔軟で生産性の高い就労環境を提供する方法を模索している。

そうした中、近年、インターネット経由で業務用ソフト

ウェアを利用して、場所や時間によらず業務を行えるよう、

クラウドを利用したコミュニケーションツールの本格活用

が広がっている。企業が働き方改革を実現するためには社

員が“いつでもどこでも働ける環境作り”が重要と考えら

れている。

「平成28年版 情報通信白書」1)によれば、クラウドサー

ビスの利用形態として上位に位置するのは、クラウド経由

でのドキュメントの共有や保管、メールサーバーをクラウ

ドに置くクラウドメールの利用、そして給与、財務会計、

人事などのクラウド業務ソフトの利用、といった形態であ

る(図1)。

2. 富士ゼロックスの取り組み

当社はこれまで、“ドキュメント業務/環境の最適化”と

“業務プロセス・働き方変革”への支援提供をテーマに、

複合機と連携したワークスタイル変革やモバイル活用ソ

リューションを提供してきた。それが、オフィスのドキュ

メントを“いつでもどこでも”閲覧・利用できる「Working

Folder®」や、“いつでもどこでも”プリントできる「Cloud

On-Demand Print®」といったサービスである。

そして2016年に、多様な働き方を支援するコンセプト

としてSmart Work Gatewayを提唱して以来、Boxや

OneDriveなどのストレージ型クラウドサービスと連携す

る「Cloud Service Hub」をはじめ、クラウド業務会計ソ

リューションと連動する「Cloud Service Hub for

Concur」、「Cloud Service Hub for freee」、クラウド顧

客管理ソリューションと連動する「Cloud Service Hub

for Sansan」を開発し、業務系クラウドサービスと連携し

たソリューションをシリーズとしてリリースしてきた。

3. 「Cloud Service Hub」とは

3.1 商品概要

「Cloud Service Hub」は、当社の複合機やプリンター

と、各種サービス提供者が提供するクラウドサービスとの

間に位置し、主に次の機能を提供する。

1) 複合機でスキャンしたドキュメントに各種画像処理

を行い、ストレージ型クラウドや業務連携クラウドへ

送付(格納)する

2) ストレージ型クラウドに格納されているドキュメン

トの取り出しや印刷を行う

3) ドキュメントが「Cloud Service Hub」を通過する

際に各種の付加価値処理を行い、次工程にとって最適

な形へとデータを加工する

モバイル端末で動作する「Fuji Xerox Print Utility」や、

Windows上で動作する「Fuji Xerox Print & Scan Hub」

とも連携し、複合機からの操作だけではなく、PCやモバイ

ル端末からもドキュメントの操作が可能となっている。

3.2 ソフトウェアの構成

「Cloud Service Hub」は、大きく次の5つのコンポー

ネントで構成される。

1) ユーザー管理/テナント管理

2) ドキュメント交換プラットフォーム

3) イメージ処理群

4) クラウドコネクター部

5) 複合機クライアント

図1 クラウドサービスの利用内訳

(出典:「平成28年版 情報通信白書」(2016年7月 総務省)) 図2 「Cloud Service Hub」のコンセプト

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働き方変革を実現「Cloud Service Hub」

102 富士ゼロックス テクニカルレポート No.27 2018

これらのうち、クラウド上で動作するコンポーネントは、

2つのデータセンターを使用している。

その1つは、お客様データの管理機能(ユーザーアカウ

ント管理、認証機能、テナント管理機能などを提供する「富

士ゼロックスダイレクト」)が稼働するデータセンター。も

う1つは、アプリケーション本体(Cloud Service Hub

サービス)が稼働するデータセンターである。

「富士ゼロックスダイレクト」は、日本国内のデータセ

ンター内に当社専用区画を構築し、その区画で各種サービ

スを提供している。このデータセンターは、日本データセ

ンター協会(Japan Data Center Council)のファシリ

ティ基準における最高レベルとなる「ティア4」に相当す

る高い信頼性を有する。

また、Cloud Service Hubサービスは、特定のクラウド

上で構築、運用されており、特定のクラウドが持つ高い可

用性と安全性を最大限に活かし、高い信頼性を確保している。

4. 商品技術

前節で述べた1)~5)のコンポーネントにおいて導入し

た、主要な商品技術について以下に述べる。

4.1 複数のサービスに対応するためのフレー

ムワーク

お客様が利用するクラウドサービスは多様であり、今後

「Cloud Service Hub」と接続するクラウドサービスは増

加していくことが予想される。だが、そのたびに新しいサー

ビスを立ち上げると、初期投資が常に必要となるうえ、開

発工数の観点でも効率的ではない。そのため「Cloud

Service Hub」は、複数のクラウドサービスへの接続をサ

ポートし、かつ対応するクラウドサービスごとに、異なる

商品として、短納期でお客様に機能を提供できるようにす

る必要がある。

このような仕様にするため、「Cloud Service Hub」は、

クラウドサービスへのアクセス部を抽象化し、またプラガ

ブルな(必要なときだけ接続したり連結したりできる)構

造とした。

前述のように、クラウドサービスにはストレージ型と業

務型の2種類がある。そのため「Cloud Service Hub」の

アクセス部も同様に2種類を定義した。両種は互いに高い

共通性を持つ構造とすることで、短期開発を可能とし、か

つ新しいサービスに対応する構成が容易に構築できるフ

レームワークとした。

また、業務系クラウドについては、接続するクラウド

サービスごとに利用目的や業務プロセスが異なるため、

各々異なる商品としてサービスを提供している。そのため、

複数の業務系クラウドサービスに対応することで、複数の

商品を同時に提供できる仕組みを採用している。

4.2 処理の流れを制御する仕組みの提供

「Cloud Service Hub」では、上述の付加価値を提供す

るモジュール群やクラウドサービスへ接続を行うプラグイ

ンといった多数のプラガブルモジュール群で構成されている。

これらのモジュール群の制御は接続するクラウドサー

ビスの種類や提供するサービスの内容によってさまざまで

ある。お客様の個別の業務フローに柔軟に対応したサービ

スを提供するためには、制御を画一的に扱うことはできない。

そこで「Cloud Service Hub」では、商品ごとに最適な

処理や性能を引き出すことを目的とした「タスク定義」と

呼ぶプラガブルな制御部を用意した。タスク定義では、各々

の商品にとって最適な処理フローが記述でき、さらにエ

ラー発生時の振る舞いについても記述することができるた

め、商品の特性に応じたきめ細やかな対応が可能である。

また、仕様変更などが発生した場合、既存のタスク定義

の修正、あるいは新しい処理を追加する必要があるが、そ

の際においても、記述変更が容易にできるようになってい

る。タスク定義自体もプラガブルであるため、大規模なデ

プロイ作業(ソフトウェアの実利用環境へのリリース)を

行うことなく、タスク定義のみを更新することが可能であ

る。これにより、仕様変更が必要な際も短納期で対応でき

ると同時に、システム運用の負荷が削減される。安定した

サービスの提供に大きな役割を果たしている。

4.3 ドキュメントへの付加価値の提供

「Cloud Service Hub」は、ユーザーが自ら操作できる

複合機などの機器とクラウドサービスの間に位置している。

この位置づけを利用して、ドキュメントが「Cloud Service

Hub」を通過する際に各種の処理を行い、付加価値の提供

を行う。

たとえば、「Cloud Service Hub for Concur」は、経

費精算システムであるConcur Expenseに領収書データ

を格納するのが主な用途である。ユーザーは、複合機の原

稿ガラスに複数の領収書を置けば、それらを一括してス

キャンできるが、Concur Expenseにデータとして格納す

るためには、各々の領収書が個別データとなっている必要

がある。

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働き方変革を実現「Cloud Service Hub」

富士ゼロックス テクニカルレポート No.27 2018 103

そこで「Cloud Service Hub」では、一括して読み込ん

だ複数の領収書を、個別の画像データとして分離する。そ

してその後、各画像データを正しい向きに回転させ、それ

ぞれに書かれた金額や日付を認識、抽出すれば、領収書ご

とにConcur Expenseへ経費レコードとして登録できる。

そうした処理を行うことで、元の紙の領収書がデータとし

て扱えるようになり、すなわち、付加価値が与えられたこ

とになる。

このように、複数枚の領収書を複合機で一括してスキャ

ンするだけで経費データが作成できるようになるため、作

業者は、領収書ごとに別個に経費データを作成していた従

来の煩雑な作業から解放され、本来の業務へ時間を振り向

けることが可能となる。

4.4 認証連携

各クラウドサービスへのアクセスにあたり、「Cloud

Service Hub」では、RFCで規定された安全な認可の仕組

みを用いている。この仕組みではクラウドサービスが

「Cloud Service Hub」に対し、安全なアクセスを行うた

めのトークンを発行する。

OAuth2を利用することで、「Cloud Service Hub」は

利用者のアカウント名やパスワードといった秘匿性の高い

情報を預かる必要がなくなる。また、利用者にとっては、

これら秘匿性の高い情報が暴露してしまう危険性を回避で

きるというメリットがある。

「Cloud Service Hub」は、ユーザーごとに発行された

トークンを管理したうえで、ユーザーが複数のクラウド

サービスをシームレスに扱うことを可能にするSSO

(Single Sign On)の機能を提供している。すなわちユー

ザーは、「富士ゼロックスダイレクト」のアカウントで一度

認証を行えば、各種クラウドサービスのアカウントを意識

することなくそれぞれのサービスにアクセスできる。

4.5 クラウド横断処理

「Cloud Service Hub」では、複数のクラウドサービス

を横断した処理が可能である。たとえば、複数のクラウド

サービスを一括して検索するといった機能である。

前述の認証連携の節に記載のように、「Cloud Service

Hub」は、ユーザーの情報と各クラウドサービスが発行し

たトークンを関連づけして管理している。この仕組みを利

用して、複数のクラウドサービスに対して一括で処理を行

うことで、クラウド横断処理を実現している。

「Cloud Service Hub」は、たとえばトークンを保持す

るクラウドサービス群全体に対し、同時に検索要求を出す

ことができる。そうすることで、どのサービスに保存して

いるのかを意識することなく目的の文書を探し出すことが

できる。

また、サービスごとに独自の検索アルゴリズムを持ち、

各々特徴のある検索機能をユーザーに提供している。

「Cloud Service Hub」では、それぞれのサービスが提供

する検索機能の特徴を生かすような設計を行っており、

Webブラウザーなどから検索した場合と検索結果に差が

生じないようにしている。ユーザーが違和感なく検索を行

うことができるようにするためである。

4.6 サーバーレス・アーキテクチャーの採用

お客様が実行する業務は、常に一定量というわけではな

い。日付や時間帯によって業務量は変化する。

領収書の処理を例にすると、1日の業務が終了する夕方、

一週間の業務が終了する金曜日、あるいは月末に処理量が

増大する傾向がある。これら特異日には業務量が定常時の

数倍から数十倍となる場合があり、定常状態では問題なく

処理可能なサーバー構成も、特異日では処理しきれず遅延

などが発生してユーザーの本来業務の遂行を阻害するおそ

れもある。そこで、「Cloud Service Hub」では、負荷に

応じて処理能力を動的に変化させることができるサーバー

レス・アーキテクチャーを採用した。

図3 「Cloud Service Hub」のデータフロー例

図4 「Cloud Service Hub」アーキテクチャー図

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新商品・ソリューション・サービス解説

働き方変革を実現「Cloud Service Hub」

104 富士ゼロックス テクニカルレポート No.27 2018

サーバーレス・アーキテクチャーでは、高負荷発生時に

備えて高価なサーバーを待機させる必要はなく、処理負荷

に応じてスケーラブルな処理性能の増強が可能である。ま

た、一時的に増強した処理性能は、不要になった時点で動

的に削減することも可能である。このため、サーバーの保

守や運用に必要となるコストの削減を図ることができると

ともに、高負荷発生時にも、特別な手順を踏むことなく負

荷に応じた適切な処理能力が確保できるようになり、安定

したサービスの提供が実現する。

4.7 ダウンローダブルUI

「Cloud Service Hub」は、既述のように多彩な機能や

各種の価値を追加することが可能な構成になっているが、

ユーザーが各種業務プロセスに応じて必要な操作を容易に

行えるためには、操作機器(たとえば複合機)のUIの変更

が必要となる。

たとえば、「Cloud Service Hub for Concur」は、最

初のバージョンは日本国内市場向けとされ、機能面もス

キ ャ ン 画 像 か ら 抽 出 し た 領 収 書 イ メ ー ジ を Concur

Expenseに格納する機能だけを提供していた。しかし現在

は、多言語対応となったうえ、領収書データから金額や日

付を抽出して経費レコードとしてConcur Expenseに格

納する機能を提供している。このため、複合機上に表示さ

れるUIも初期のバージョンと現バージョンでは大きく異

なっている。

通常、UIは複合機のファームウェアとしてハードウェア

本体に内蔵されており、変更するにはファームウェアの

バージョンアップが必要になる。しかし、ファームウェア

のバージョンアップは稼働中の複合機を停止しなければな

らないだけではなく、煩雑な操作が必要である。

これに対し、「Cloud Service Hub」では、UIは複合機

のファームウェアとして提供されるのではなく、クラウド

からダウンロードする方式を採用している。また、一般的

なPCのブラウザーのように、ネットワークの状況などに

よって表示が遅くなり操作性が低下してしまうのを防止す

るため、複合機にUIのコンテンツをダウンロードし、それ

を継続的に利用する方式を採用することで、操作性の向上

を図っている。ダウンロードするUIのコンテンツは、複合

機のファームウェアを変更することなく、動的な機能追加

とUIの更新が行える。

4.8 ドライバーレスプリント

一般にプリンターは、印刷時に専用のフォーマットを用

いるため、文書データをプリンターに直接送付して印刷す

ることはできない。このため、通常、クラウドに格納され

ている文書を印刷する場合、印刷対象の文書をいったんPC

にダウンロードし、PCよりプリンタードライバーを用いて

印刷するのが一般的である。

だが「Cloud Service Hub」では、印刷時に求められる

高い再現性を持つ文書変換エンジンを搭載している。それ

により、複合機の操作パネル上で、クラウドにある印刷対

象の文書を指定して直接複合機に送付して印刷を行うドラ

イバーレスプリントの機能を提供している。

ドライバーレスプリントは、クラウドサービスに格納し

た文書の印刷時に利用するだけではなく、モバイル端末内

の文書をプリントする際にも「Fuji Xerox Print Utility」

から利用できる。これにより、モバイル端末からの高品質

印刷を実現している。

5. おわりに

「Cloud Service Hub」は、急速に進展するクラウド化

と働き方改革に対する富士ゼロックスのアプローチの1つ

である。複合機をクラウドサービスのポータルと位置づけ、

クラウドで積極的に機能提供を行うこと、また多種多彩な

クラウドサービスに対応し、当社の技術を活かした高い価

値をお客様に速やかに提供することで、働き方改革を強力

に推し進めるサービスである。

現在の「Cloud Service Hub」は、世界的に展開してい

るストレージ型クラウドサービスと、日本で利用されてい

る業務クラウドとの連携が主である。

今後、業務クラウドの種類を拡充すること、そして提供

地域を広げていくことはもちろんであるが、柔軟に構成を

変化させることができるアーキテクチャーと、初期投資を

抑えて短期間で開発可能なフレームワークを活用して、当

社が持つ高い技術を「Cloud Service Hub」へ取り込んで

いくことを実現していきたい。 図5 「Cloud Service Hub for Concur」の複合機UIの例

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新商品・ソリューション・サービス解説

働き方変革を実現「Cloud Service Hub」

富士ゼロックス テクニカルレポート No.27 2018 105

また、ソリューションの目的に合わせて、複合機を含め

オンプレミスで処理すべきことと、クラウド側で処理すべ

きことをうまく配置し連携させ、最適なソリューションの

提供を行っていきたい。さらに、当社の技術だけではなく、

サードパーティーと協業することにより、自社のみの開発

では実現が難しいと思われる領域や各種のソリューション

提供においても多彩なクラウドサービスと連携し、お客様

にとって、有益な価値をいち早く提供していきたいと考え

ている。

商標について

Cloud Service Hubは富士ゼロックスの登録商標です。

BoxはBox.net, Inc.の商標または登録商標です。

OneDrive、および SharePoint®は、米国Microsoft Corporationの

米国およびその他の国における登録商標および商標です。

Concurは、米国 Concur Technologies, Inc.の商標および登録商標

です。

freeeおよび、クラウド会計ソフト freeeは、freee株式会社の登録商

標です。

Sansanは日本国、米国、およびその他の国における、Sansan株式会

社の登録商標です。

Amazon Web Services、“Powered by Amazon Web Services”ロゴ、およびかかる資料で使用されるその他のAWS商標は、米国その他

の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。

その他の商品名、会社名は、一般に各社の商号、登録商標または商標

です。富士ゼロックスは、他社の商品名、会社名について、いかなる

所有権も主張するものではありません。

参考文献

1) 総務省:“平成28年版 情報通信白書”(2016)

筆者紹介

石野茂樹 ソフトウェア開発本部 第二SPF開発センターに所属

専門分野:情報工学

三浦 徹 ソフトウェア開発本部 第二SPF開発センターに所属

専門分野:情報工学

小原裕美 ソフトウェア開発本部 第二SPF開発センターに所属

専門分野:情報工学