固体エレクトロニクスⅠ
npnトランジスタ
大阪工業大学 工学部 電子情報通信工学科
フェルミ・ディラックの分布関数は
絶対0°の時にはフェルミ準位が電子の持てる最高エネルギー。
しかし、常温ではフェルミ準位以上のエネルギーをもつ電子が現れる。
そのとき、物質中の電子数は変わらないので、高エネルギー電子が抜けた穴が、フェルミ準位以下にできる。
フェルミ・ディラックの分布関数(1)
( )1
1
+= −
kTWW F
eWf
T = 絶対 0°
電子のエネルギー
電子が存在する確率
10
T = 常温
←フェルミ準位 WF
常温では、 高エネルギーの電子
電子の抜けた穴
フェルミ・ディラックの分布関数(2)
T = 絶対 0°
電子のエネルギー
電子が存在する確率
10
T = 常温
←フェルミ準位 WF
<常温>
ちょうど、絶対0°で水平だった水面が常温では熱エネルギーで波立ち、水しぶきが上に跳んで、元の水面以下に泡ができることに相当する。
水面
<絶対0°> 水面が平坦で
波は無し
水面
水しぶき
泡(水が抜けた跡) 温度が高くなればなるほど波は高くなる。
フェルミ・ディラックの分布関数(3)
T = 絶対 0°
電子のエネルギー
電子が存在する確率
10
T = 常温
←フェルミ準位 W F
<常温>
絶対零度のときには、電子は統計的に、フェルミ準位以下で存在するが、常温になると熱エネルギーで高いエネルギーをもつものが現れ、電子の抜けた穴は半導体では正孔として存在する。
水面
水しぶき
泡(水が抜けた跡) 温度が高くなればなるほど波は高くなる。
電子の数
正孔の数 水の抜けた跡 (アワ)
フェルミ・ディラックの分布関数(4)
電子の数
正孔の数
半導体では、禁止帯の中にフェルミ準位が描かれ、フェルミ準位が伝導帯に近ければ、水しぶき(電子)が伝導帯に達して導電に寄与するn形となる。(禁止帯内にキャリアは存在できないことに注意)
フェルミ準位が価電子帯に近ければ泡(電子の抜けた穴:正孔)が価電子帯に届いて、導電に寄与するp形となる。
<n形>
電子の数
正孔の数
<p形>
多数キャリア:電子
多数キャリア:正孔
伝導帯
価電子帯
フェルミ準位
フェルミ準位
少数キャリア:正孔
少数キャリア:電子
ベース接地 平衡状態
フェルミ準位WFは水平。 水面がエミッタ、ベース、コ
レクタで一致しているため流れがない。
電子数、正孔数がエミッタ、ベース、コレクタで一致しているため拡散によるキャリア移動がない。
n np
電子
正孔
2 2 2
WF
E
B
C
n np
ベース接地 動作状態
順方向バイアス 逆方向バイアス 4 2 1
フェルミ準位WFに段差がつくられた。
水面がエミッタ → ベース → コレクタへとだんだんに下がっている。
水面の段差に従って水(電子)が動く。
電子数がエミッタ4、ベース2、コレクタ1と密度が異なるので電子はエミッタ → ベース → コレクタへと拡散によって移動する。
E B
C
ベース接地 E-B間順方向バイアス増加
n np0VLR
5 2 1
(1) (2) (2) (5)
小さい電池 (順方向)
小さい電池の挿入でエミッタ-ベース間のフェルミ準位WFに段差が大きくなった。
段差に相当する水の量が大きくなったので、エミッタからベースへの水量が 増えた。
コレクタに到着する水量(電子数)が増える。
電子数がエミッタ5、ベース2、コレクタ1と密度差が大きくなりエミッタ → ベース → コレクタへの電子拡散量は増加する。
E
B
C
エミッタのバンド上昇
ベースのバンドは動かない (ベース接地だから)
ベース接地 E-B間順方向バイアス減少
n np0VLR
3 2 1
(1) (2) (2) (3)
小さい電池 (逆方向)
小さい電池の挿入でエミッタ-ベース間のフェルミ準位WFに段差が小さくなった。
段差に相当する水の量が小さくなったので、エミッタからベースへの水量が 減った。
コレクタに到着する水量(電子数)が減る。
電子数がエミッタ3、ベース2、コレクタ1と密度差が小さくなりエミッタ → ベース → コレクタへの電子拡散量は減少する。
E
B
C
エミッタのバンド下降
ベースのバンドは動かない (ベース接地だから)
入力電圧によるバンド位置の変化
n np0VLR
AC
iv
+
-t
入力電圧
-
+ ivE
B
C (ベース接地)
Vi によってエミッタのバンドが上・下する。
Io
iv
+
-t
ベース接地 出力電圧
入力電圧
n np0VLR
AC
iv
ov
+
-
t
oov
出力電圧 は電池によるバイアスのみの時の電圧
電子電流
電流
-
+
0
0
00V
LRIV ⋅= 000
エミッタ接地 平衡状態
n p n
2 2 2 フェルミ準位WFは水平。 水面がエミッタ、ベース、コ
レクタで一致しているため流れがない。
電子数、正孔数がエミッタ、ベース、コレクタで一致しているため拡散によるキャリア移動がない。
E B
C
n p n
エミッタ接地 動作状態
4 2 1
フェルミ準位WFに段差がつくられた。
水面がエミッタ → ベース → コレクタへとだんだんに下がっている。
水面の段差に従って水(電子)が動く。
電子数がエミッタ4、ベース2、コレクタ1と密度が異なるので電子はエミッタ → ベース → コレクタへと拡散によって移動する。
ベース接地の場合と全く同じ (しいて言えばE-C間の電圧、B-C間の電圧が電池1つ分減った)
E B
C
n p0VLRn
エミッタ接地 E-B間順方向バイアス増加
5 2 1
小さい電池 (順方向)
E B
C
小さい電池の挿入でエミッタ-ベース間のフェルミ準位WFに段差が大きくなった。ベース部のバンドが下がった。
段差に相当する水の量が大きくなったので、エミッタからベースへの水量が 増えた。
コレクタに到着する水量(電子数)が増える。
電子数がエミッタ5、ベース2、コレクタ1と密度差が大きくなりエミッタ → ベース → コレクタへの電子拡散量は増加する。
ベースの バンド下降
エミッタのバンドは動かない (エミッタ接地だから)
n p0VLRn
エミッタ接地 E-B間順方向バイアス減少
3 2 1
小さい電池 (逆方向)
小さい電池の挿入でエミッタ-ベース間のフェルミ準位WFに段差が小さくなった。ベース部のバンドが上がった。
段差に相当する水の量が小さくなったので、エミッタからベースへの水量が 減った。
コレクタに到着する水量(電子数)が減る。
電子数がエミッタ3、ベース2、コレクタ1と密度差が小さくなりエミッタ → ベース → コレクタへの電子拡散量は減少する。
E B
C
ベースの バンド上昇
エミッタのバンドは動かない (エミッタ接地だから)
入力電圧によるバンド位置の変化
n p
AC
0VLRn
iv
+
-t
入力電圧
iv- +
0
Vi によってベースのバンドが上・下する。
E B
C
エミッタ接地 出力電圧
n p
AC
0VLRn
iv
+
-t
入力電圧
ov
+
-
t
oov
出力電圧
iv- +
Io
0
0
入力電圧の方向と出力電圧の測り方
VO 出力電圧は矢印の始点を基準に 矢印の先端の値を測る
VOの向きが反対になると出力電圧は絶対値が同じで負の値となる。
+
-0Viv
iv
0V
+
-0Viv
iv
0V
0
0 0
0iv
0V
+
-0Viv
電池分0
0iv
0V
+
-0Viv
電池分0
0iv
0V
-
+0Viv
電池分
0
0
入力電圧波形と出力電圧波形 iv
+
-t
入力電圧波形
n np0VLR
AC
ー
+ iv n np
0VLR
AC
+
- iv
左のような入力電圧波形があったとし、以下の図のようにVOを測った場合出力電圧波形はそれぞれ次のようになる
ov
+
-
t
oov
ov
+
-
t
oov−
出力電圧波形 出力電圧波形
0
0
0
コレクタ接地
トランジスタの記号 npnトランジスタを電子回路等で使用 する記号で表すと以下のようになる
+
-
ベース接地
エミッタ接地