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ビタミン B群 ビタミン B1 ビタミン B2 ビタミン B12 葉酸 ナイア シン 精神疾患と の役割 『セロトニンやドーパミンなどは、栄養(アミノ酸)がないと働かない』 と前回NST通信で紹介しました が、栄養がうまく身体の中で使われるためにはビタミンB群が必要です。不十分なエネルギー産生は認知的 問題や感情問題に繋がります。今回は神経伝達物質の生成に必要なビタミンB群について紹介します。 糖質をエネルギーに変える アルコール代謝に関与する 脳の働きに関与する 神経の働きを正常に保つ ビタミンB1はチアミンとも呼ばれ、 糖質代謝に必要なビ タミンであり、欠乏すると身体に糖を取り込めず重大な神経 障害を引き起こす事が知られています。代表的なものにはェルニッケ脳症があり、たいていの患者は、眼球症状後方 転倒混迷の3徴を呈する事が知られています。 その他に、 アルツハイマー病やパーキンソン認知症患者血清チアミン濃度が低いことが指摘されており、これらの疾 患に深く関連している可能性があります。 また、アルコール代謝にも関与し、欧州神経学会連盟EF NS)において、アルコール依存症やウェルニッケ脳症のよ うな症状を呈する患者には、ブドウ糖を含む糖質の投与前に チアミン200㎎の静脈内投与を、アルコール依存症でない 患者には1日100~200㎎の投与が推奨されています。 記憶力維持に有効。 欠乏症はうつ病、認知 機能低下、統合失調症 の危険因子に。 ヘモグロビン合成に 必要。 欠乏症にはカタトニ ア(緊張症)が認め られます。 木島 NST 通信 ビタミンB群の一部 他に、ビタミンB6、ビオチン、パントテン酸など 糖質、脂質、タンパ ク質をエネルギーに 変換。神経伝達物質 であるドーパミン精 製に重要。 欠乏症にペラグラ があります 発行日:2020 5 月発行 担当:NST 編集:栄養グループ ~精神科の臨床栄養療法<パート5>~ 糖質、脂質、タンパク質の 代謝に必要。鉄代謝に影 響をおよぼし、葉酸やビ タミン B6 などの B 群の代 謝を低下させる事により 精神障害に影響を及ぼし ます。 Q.ビタミン B1 を豊富に含んだ食品はどれでしょう? ビタミンB群は、栄養素の吸収や代謝、精神症状と非常に関わりが深いことがお分かり頂けたと思いま す。 ビタミンB群は水溶性のビタミンですので、たくさん摂取しても過剰症の心配はありません。 また、 ビタミン B 群互いに補い合いながら働くため出来るだけ複合的に摂取することを心掛 け、日頃から偏った食事ではなく、積極的にビタミンB群の多い食品の摂取を心がけ健康なココロと体を 作ってください♪ 答え:② ビールは逆にビタミン B1 が消費されるので注意!!その他、ビタミンB群の多い食品には、うなぎ、レバー、卵、青魚などがあります 次回は、鉄欠乏と精神症状の関係についてお届けします!お楽しみに★ にんじん 豚肉 りんご ビール 白米 【参考文献】(1)Krause’s Food & the Nutrition Care Process, 14e(2017) J.タイテルバウム他著(松末智先生 訳)(2)マンガでわかる ココロの不調回復 食べてうつぬけ(2017)奥平智之著

精神疾患と の役割Nutrition 26 March 2020 迫田 の栄養管理に関する論文が発表されました! Riccardo Caccialanza M.D. et al Clinical Nutrition and Dietetics

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Page 1: 精神疾患と の役割Nutrition 26 March 2020 迫田 の栄養管理に関する論文が発表されました! Riccardo Caccialanza M.D. et al Clinical Nutrition and Dietetics

ビタミン

B群

ビタミン

B1

ビタミンB2

ビタミンB12葉酸

ナイアシン

精神疾患と の役割 『セロトニンやドーパミンなどは、栄養(アミノ酸)がないと働かない』と前回NST通信で紹介しました

が、栄養がうまく身体の中で使われるためにはビタミンB群が必要です。不十分なエネルギー産生は認知的

問題や感情問題に繋がります。今回は神経伝達物質の生成に必要なビタミンB群について紹介します。

・ 糖質をエネルギーに変える

・ アルコール代謝に関与する

・ 脳の働きに関与する

・ 神経の働きを正常に保つ

ビタミンB1はチアミンとも呼ばれ、糖質代謝に必要なビ

タミンであり、欠乏すると身体に糖を取り込めず重大な神経

障害を引き起こす事が知られています。代表的なものにはウ

ェルニッケ脳症があり、たいていの患者は、眼球症状・ 後方

転倒 混迷の3徴を呈する事が知られています。

その他に、アルツハイマー病やパーキンソン認知症患者は

血清チアミン濃度が低いことが指摘されており、これらの疾

患に深く関連している可能性があります。

また、アルコール代謝にも関与し、欧州神経学会連盟・EF

NS)において、アルコール依存症やウェルニッケ脳症のよ

うな症状を呈する患者には、ブドウ糖を含む糖質の投与前に

チアミン200㎎の静脈内投与を、アルコール依存症でない

患者には1日100~200㎎の投与が推奨されています。

記憶力維持に有効。 欠乏症はうつ病、認知機能低下、統合失調症の危険因子に。

ヘモグロビン合成に必要。 欠乏症にはカタトニア(緊張症)が認められます。

木島 NST 通信

▲ ビタミンB群の一部 他に、ビタミンB6、ビオチン、パントテン酸など

糖質、脂質、タンパク質をエネルギーに変換。神経伝達物質であるドーパミン精 製に重要。 欠乏症にペラグラ があります

発行日:2020 年 5 月発行

担当:NST

編集:栄養グループ

~精神科の臨床栄養療法<パート5>~

糖質、脂質、タンパク質の代謝に必要。鉄代謝に影響をおよぼし、葉酸やビタミン B6などの B群の代謝を低下させる事により精神障害に影響を及ぼします。

Q.ビタミン B1を豊富に含んだ食品はどれでしょう?

ビタミンB群は、栄養素の吸収や代謝、精神症状と非常に関わりが深いことがお分かり頂けたと思いま

す。

ビタミンB群は水溶性のビタミンですので、たくさん摂取しても過剰症の心配はありません。

また、ビタミン B 群は互いに補い合いながら働くため出来るだけ複合的に摂取することを心掛

け、日頃から偏った食事ではなく、積極的にビタミンB群の多い食品の摂取を心がけ健康なココロと体を

作ってください♪

答え:② ビールは逆にビタミンB1が消費されるので注意!!その他、ビタミンB群の多い食品には、うなぎ、レバー、卵、青魚などがあります

次回は、鉄欠乏と精神症状の関係についてお届けします!お楽しみに★

① にんじん ② 豚肉 ③ りんご ④ ビール ⑤ 白米

【参考文献】(1)Krause’s Food & the Nutrition Care Process, 14e(2017) J.タイテルバウム他著(松末智先生 訳)(2)マンガでわかる ココロの不調回復 食べてうつぬけ(2017)奥平智之著

Page 2: 精神疾患と の役割Nutrition 26 March 2020 迫田 の栄養管理に関する論文が発表されました! Riccardo Caccialanza M.D. et al Clinical Nutrition and Dietetics

このイタリアの論文によると、Covid-19 での迅速な栄養管理の施行は、臨床的にある程度有用であり、低栄養に伴う症状の悪化防止に効果があるということが記されています。

Covid-19 が世界的に流行している今、

栄養管理の重要性を改めて認識し、患者だけでなく全ての人がしっかり栄養を摂り免疫力を高めていきましょう!

の栄養管理に関する論文が発表されました!

Riccardo Caccialanza M.D. et al Clinical Nutrition and Dietetics Unit, Fondazione IRCCS Policlinico San Matteo,Pavia,Italy Nutrition 26 March 2020

<要約>

【目的】 2019 年 12 月初旬に中国武漢から始まった肺炎を主とする新型コロナウィ

ルス感染症(Covid-19)は急速に世界中に広がり、イタリアは中国以外の国で最も重

大な危機にさらされている(3/25 現在)。Covid-19 罹患患者でよく見られるようにな

った、低栄養が転帰を悪化させている事態を考慮して当研究を行った。その目的は、非

ICU 入院患者における早期の栄養補給についての実践的プロトコールを提示することで

ある。これは、大抵の患者が入院時、重症炎症状態であり、食思不振になり食事摂取が

極端に減少しており、多くは酸素吸入を余儀なくされている状況に基づいている。

【方法】 消化性の高い軽食を中心に種々の高カロリー濃厚食品を全ての患者に提供す

る。経口的補助としてホエイタンパク質と共に総合ビタミン剤と多種微量元素製材の静

脈内投与を入院時に施行する。ビタミン D 欠乏の場合は、ビタミンD3(コレカルシフ

ェロール)を主に投与する。もし、栄養的に問題が見つけられたなら、2~3本の経口

栄養補助剤(ONS)を使用する。もし、2日連続で経口補助栄養剤が2本以下しか飲め

ないなら、そして呼吸状態が悪化するなら、補助的静脈栄養 PNを行う。

【結論】 当プロトコールには異論があることは分かっている。しかし、このような危

機的状況を何とか乗り切ることを念頭に、当プロトコールにより Covid-19 患者の栄養

管理を速やかにかつ実践的に施行することを目指した。臨床的にある程度有用であり、

当該患者における低栄養による悪影響防止に効果は認められるが、その精度は今後の検

討となろう。 (木島病院 診療顧問 松末 智Dr要約)

『非 ICU の新型コロナウィルス(Covid-19)入院患者での早期栄養補助補給 ~共通実践的プロトコールの理論的根拠と妥当性~』(2020.3.26)

が Covid-19の

迫田 JM

NST では今後、胃瘻評価スケールの導入を検討していきます!

※写真は患者に許可をいただき掲載しております

こんな はありませんか?

胃瘻患者

第1病棟:高木 Ns 第2病棟:橋本 Ns 第3病棟:板東 Ns 第4病棟:堤谷 Ns

第5病棟:白井 Ns 第6病棟:三隅 Ns 第7病棟:里見 Ns 第8病棟:番匠 Ns 第9病棟:槇本

Ns

この度、NST メンバーの一員として NST 活動に参加させていただくことになりました。 この1年間、NST を通じて適切な栄養管理について理解を深め、患者様の栄養サポーターとして活動していきたいと思います。

左の写真は実際にNST回診を行った胃瘻患者の皮膚トラブルの症例写真です。胃瘻カテーテルストッパー埋没により周囲に発赤・潰瘍を形成しています。 この胃瘻患者以外にも、胃逆流による瘻孔部の潰瘍形成などの皮膚トラブルが起きた症例も見られます。 このような胃瘻患者の皮膚トラブル防止のためにも、日頃から皮膚状態の観察が必要と考え、

▼ 2020年度 NST 新メンバー紹介 ▲